病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第四十話 属性持ち

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「お仕事には納期があるのよ。決められた日に決められた物を手に入れないといけないの。分かる?」
『ピィ~?』

 都合の悪い、ううん、都合の良い時に鳥になれるんだね。
 お姉さんのお説教が始まっているけど、『僕、何も分からない』という瞳で鳥になっている。
 
「それでレベルは上がったの?」
『いっぱい上がって敏捷MAXになった!』

 こういうのは聞こえるんだね。
 お説教を諦めてお姉さんが聞くと、自信満々に素早く答えた。

「それは良かったわね。ピーちゃんはGランクの魔物だから、レベルは早く上がるのよ。それで魔力は上げているのよね? どのぐらいになったの?」
『ピィ? 魔力上げてない。今は耐久上げてる。バードストライク強くしている』
「ピーちゃん、前に言ったでしょ。物理攻撃力を上げてもドラゴンには勝てないって。まずは魔力を上げて【属性持ち】にならないと強くなれないのよ」
『属性持ちって何?』
「…………」

 お姉さんが黙っているってことは前に話したんだと思うよ。
 忘れたの? うん、忘れたから聞いたんだね。
 当たり前のこと聞いてゴメンね。怒らないで。

「属性には【火・水・風・地】の四つの基本属性があるの。ピーちゃんには風属性が向いているから、魔法具は風属性にしているのよ」
『うん、役立ってる』
「鳥と風は相性抜群なのよ」

 お姉さんに聞かれて、ピーちゃんは頷いている。
 僕なら火属性がカッコよさそうだから、火属性の魔法具を使いたいな。

「つまり魔法具がないピーちゃんは雑魚なのよ!」
『雑魚なの‼︎』

 まさかの指を指されての雑魚呼ばわりにピーちゃんはショックを受けた。
 でもね、ピーちゃん。ピーちゃんが雑魚だってみんな知ってるよ。
 知らなかったのはピーちゃんだけだよ。

「でも、魔力を上げていけば属性持ちになれる可能性があるのよ。魔法具なしでも今と同じかそれ以上のことを出来るようになるんだから」
『へぇー、そうだったんだ』
「今度は忘れちゃ駄目よ。それと灰色ドラゴンも今のピーちゃんと同じで無属性よ。灰色ドラゴンは属性持ちになると【成獣】と呼ばれるようになるわ。クラスもCからBに上昇するのよ。ピーちゃんも属性持ちになったら、Fにしてあげるわね」
『わぁーい。Fになれるんだ』

 お姉さんに言われてピーちゃんは喜んだ。
 でも、喜んだフリだった。
 なぜか僕に向かって怒って言ってきた。

『Fだと? 誰に言ってんだ! ドラゴン倒してくるからAにしろ!』

 その理屈が通用するなら、大鳥倒したからDランクになっているよ。
 あと、怒るなら僕じゃなくてお姉さんに怒ってね。僕、無関係だから。

「それで魔力はどのくらいになったの?」

 僕の家から再び数日前の冒険者ギルドに戻った。

『うーんと34』
「あら、凄いじゃない。50ぐらいまで上がれば可能性が出てくるわよ。ポイント使わずに、ここまで自然に上がるのは珍しいわね。何か特別な訓練でもやってるの?」

 それはない。ピーちゃんは日向ぼっこしかしていない。
 特訓も枕体当たりぐらいしか見たことがない。

『やってない。この薬草食べたら少しずつ上がってる』

 やっぱりやってなかった。
 収納袋から竜薬草を取り出した。
 食って寝ているだけだった。

「ちょっとピーちゃん⁉︎ これ何⁉︎」

 受付に置かれた竜薬草をお姉さんがすごい勢いで掴んだ。

『薬草。ヤバイ子のお母さんが作った』
「こんな薬草、初めて見たわ! 魔力があふれまくってるじゃない!」
『ふぅ~ん。普通に花壇に生えてるよ』
「花壇って……ヤバイ子の母親も別の意味でヤバイわね。父親は何してるの?」
『うーんとよく旅に出て、子供の風呂覗いている』
「父親もヤバイわね。別の意味で」

 お姉さんが言うには、子供は確実に父親似だそうだ。
 ピーちゃん、僕のお父さんは子供のお風呂を覗く変態じゃないよ。
 覗いた変態鳥はピーちゃんでしょ。
 
 ♢♢♢
 
 お姉さんからお説教と再教育を受けたピーちゃんはもう一度Dダンジョンに向かった。
 やり残した仕事があるからだ。

『……よし、行けそうだ』

 トンネルの出口からチョコンと顔を出して、外を確認した。
 大鳥達【ガルーダ】は待ち伏せていなかった。
 大鳥の名前はお姉さんが教えてくれた。

 もちろん名前が分かったところでやることは変わらない。
 魔物狩りの次は果物狩りだ。
 今度は仲間は呼ばないで隠れて飛んでいく。
 雑鳥の相手は疲れるからやらないそうだ。

 ムチ猫【ドクロヒョウ】が見えたら、身体を丸めて木の実のフリをした。
 ガルーダが見えたら、葉っぱを咥えて隠れた。

 ピーちゃん、ビビってるよね?
 ピーちゃんの話は疑ってないから、ちょっとレベル見せてよ。
 これでレベル20ちょっとだったら、どこら辺から嘘だったか正直に教えてもらうよ。

『ふぅー、今日は勘弁してやる』

 ガルーダが気づかずに飛び去っていくと、ピーちゃんはひと安心した。
 どう見てもビビっている。今日は本当に果物狩りだけに来たらしい。
 トゲトゲの大きな赤い果物、大きくて丸い紫の果物、玉ねぎみたいに皮が重なったピンク色の丸い果物。
 とにかく木にぶら下がっている果物っぽいのを集めまくった。

『あっ、これも持って帰ろ』

 地面に落ちている薪のような木があったから、それも収納袋に入れたそうだ。

『レナスが喜ぶ』

 喜ばなかったよ。ブチ切れたよ。床に叩きつけたよ。
 僕へのお土産は果物だけでよかったよ。そういえば、まだ果物貰ってないよ。
 全部お姉さんに売ってきてないよね?

 ピーちゃんはこうして無事に果物狩りを成功させた。
 レベル偽証を疑った僕はしっかり土下座させられて、ののしられた。
『ドラゴンと戦うから力温存した。そんなことも分からないの? このボケ』
 ののしられるって結構キツいんだね。悔しくて涙が出そうになっちゃった。
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