40 / 70
第四十話 属性持ち
しおりを挟む
「お仕事には納期があるのよ。決められた日に決められた物を手に入れないといけないの。分かる?」
『ピィ~?』
都合の悪い、ううん、都合の良い時に鳥になれるんだね。
お姉さんのお説教が始まっているけど、『僕、何も分からない』という瞳で鳥になっている。
「それでレベルは上がったの?」
『いっぱい上がって敏捷MAXになった!』
こういうのは聞こえるんだね。
お説教を諦めてお姉さんが聞くと、自信満々に素早く答えた。
「それは良かったわね。ピーちゃんはGランクの魔物だから、レベルは早く上がるのよ。それで魔力は上げているのよね? どのぐらいになったの?」
『ピィ? 魔力上げてない。今は耐久上げてる。バードストライク強くしている』
「ピーちゃん、前に言ったでしょ。物理攻撃力を上げてもドラゴンには勝てないって。まずは魔力を上げて【属性持ち】にならないと強くなれないのよ」
『属性持ちって何?』
「…………」
お姉さんが黙っているってことは前に話したんだと思うよ。
忘れたの? うん、忘れたから聞いたんだね。
当たり前のこと聞いてゴメンね。怒らないで。
「属性には【火・水・風・地】の四つの基本属性があるの。ピーちゃんには風属性が向いているから、魔法具は風属性にしているのよ」
『うん、役立ってる』
「鳥と風は相性抜群なのよ」
お姉さんに聞かれて、ピーちゃんは頷いている。
僕なら火属性がカッコよさそうだから、火属性の魔法具を使いたいな。
「つまり魔法具がないピーちゃんは雑魚なのよ!」
『雑魚なの‼︎』
まさかの指を指されての雑魚呼ばわりにピーちゃんはショックを受けた。
でもね、ピーちゃん。ピーちゃんが雑魚だってみんな知ってるよ。
知らなかったのはピーちゃんだけだよ。
「でも、魔力を上げていけば属性持ちになれる可能性があるのよ。魔法具なしでも今と同じかそれ以上のことを出来るようになるんだから」
『へぇー、そうだったんだ』
「今度は忘れちゃ駄目よ。それと灰色ドラゴンも今のピーちゃんと同じで無属性よ。灰色ドラゴンは属性持ちになると【成獣】と呼ばれるようになるわ。クラスもCからBに上昇するのよ。ピーちゃんも属性持ちになったら、Fにしてあげるわね」
『わぁーい。Fになれるんだ』
お姉さんに言われてピーちゃんは喜んだ。
でも、喜んだフリだった。
なぜか僕に向かって怒って言ってきた。
『Fだと? 誰に言ってんだ! ドラゴン倒してくるからAにしろ!』
その理屈が通用するなら、大鳥倒したからDランクになっているよ。
あと、怒るなら僕じゃなくてお姉さんに怒ってね。僕、無関係だから。
「それで魔力はどのくらいになったの?」
僕の家から再び数日前の冒険者ギルドに戻った。
『うーんと34』
「あら、凄いじゃない。50ぐらいまで上がれば可能性が出てくるわよ。ポイント使わずに、ここまで自然に上がるのは珍しいわね。何か特別な訓練でもやってるの?」
それはない。ピーちゃんは日向ぼっこしかしていない。
特訓も枕体当たりぐらいしか見たことがない。
『やってない。この薬草食べたら少しずつ上がってる』
やっぱりやってなかった。
収納袋から竜薬草を取り出した。
食って寝ているだけだった。
「ちょっとピーちゃん⁉︎ これ何⁉︎」
受付に置かれた竜薬草をお姉さんがすごい勢いで掴んだ。
『薬草。ヤバイ子のお母さんが作った』
「こんな薬草、初めて見たわ! 魔力があふれまくってるじゃない!」
『ふぅ~ん。普通に花壇に生えてるよ』
「花壇って……ヤバイ子の母親も別の意味でヤバイわね。父親は何してるの?」
『うーんとよく旅に出て、子供の風呂覗いている』
「父親もヤバイわね。別の意味で」
お姉さんが言うには、子供は確実に父親似だそうだ。
ピーちゃん、僕のお父さんは子供のお風呂を覗く変態じゃないよ。
覗いた変態鳥はピーちゃんでしょ。
♢♢♢
お姉さんからお説教と再教育を受けたピーちゃんはもう一度Dダンジョンに向かった。
やり残した仕事があるからだ。
『……よし、行けそうだ』
トンネルの出口からチョコンと顔を出して、外を確認した。
大鳥達【ガルーダ】は待ち伏せていなかった。
大鳥の名前はお姉さんが教えてくれた。
もちろん名前が分かったところでやることは変わらない。
魔物狩りの次は果物狩りだ。
今度は仲間は呼ばないで隠れて飛んでいく。
雑鳥の相手は疲れるからやらないそうだ。
ムチ猫【ドクロヒョウ】が見えたら、身体を丸めて木の実のフリをした。
ガルーダが見えたら、葉っぱを咥えて隠れた。
ピーちゃん、ビビってるよね?
ピーちゃんの話は疑ってないから、ちょっとレベル見せてよ。
これでレベル20ちょっとだったら、どこら辺から嘘だったか正直に教えてもらうよ。
『ふぅー、今日は勘弁してやる』
ガルーダが気づかずに飛び去っていくと、ピーちゃんはひと安心した。
どう見てもビビっている。今日は本当に果物狩りだけに来たらしい。
トゲトゲの大きな赤い果物、大きくて丸い紫の果物、玉ねぎみたいに皮が重なったピンク色の丸い果物。
とにかく木にぶら下がっている果物っぽいのを集めまくった。
『あっ、これも持って帰ろ』
地面に落ちている薪のような木があったから、それも収納袋に入れたそうだ。
『レナスが喜ぶ』
喜ばなかったよ。ブチ切れたよ。床に叩きつけたよ。
僕へのお土産は果物だけでよかったよ。そういえば、まだ果物貰ってないよ。
全部お姉さんに売ってきてないよね?
ピーちゃんはこうして無事に果物狩りを成功させた。
レベル偽証を疑った僕はしっかり土下座させられて、ののしられた。
『ドラゴンと戦うから力温存した。そんなことも分からないの? このボケ』
ののしられるって結構キツいんだね。悔しくて涙が出そうになっちゃった。
『ピィ~?』
都合の悪い、ううん、都合の良い時に鳥になれるんだね。
お姉さんのお説教が始まっているけど、『僕、何も分からない』という瞳で鳥になっている。
「それでレベルは上がったの?」
『いっぱい上がって敏捷MAXになった!』
こういうのは聞こえるんだね。
お説教を諦めてお姉さんが聞くと、自信満々に素早く答えた。
「それは良かったわね。ピーちゃんはGランクの魔物だから、レベルは早く上がるのよ。それで魔力は上げているのよね? どのぐらいになったの?」
『ピィ? 魔力上げてない。今は耐久上げてる。バードストライク強くしている』
「ピーちゃん、前に言ったでしょ。物理攻撃力を上げてもドラゴンには勝てないって。まずは魔力を上げて【属性持ち】にならないと強くなれないのよ」
『属性持ちって何?』
「…………」
お姉さんが黙っているってことは前に話したんだと思うよ。
忘れたの? うん、忘れたから聞いたんだね。
当たり前のこと聞いてゴメンね。怒らないで。
「属性には【火・水・風・地】の四つの基本属性があるの。ピーちゃんには風属性が向いているから、魔法具は風属性にしているのよ」
『うん、役立ってる』
「鳥と風は相性抜群なのよ」
お姉さんに聞かれて、ピーちゃんは頷いている。
僕なら火属性がカッコよさそうだから、火属性の魔法具を使いたいな。
「つまり魔法具がないピーちゃんは雑魚なのよ!」
『雑魚なの‼︎』
まさかの指を指されての雑魚呼ばわりにピーちゃんはショックを受けた。
でもね、ピーちゃん。ピーちゃんが雑魚だってみんな知ってるよ。
知らなかったのはピーちゃんだけだよ。
「でも、魔力を上げていけば属性持ちになれる可能性があるのよ。魔法具なしでも今と同じかそれ以上のことを出来るようになるんだから」
『へぇー、そうだったんだ』
「今度は忘れちゃ駄目よ。それと灰色ドラゴンも今のピーちゃんと同じで無属性よ。灰色ドラゴンは属性持ちになると【成獣】と呼ばれるようになるわ。クラスもCからBに上昇するのよ。ピーちゃんも属性持ちになったら、Fにしてあげるわね」
『わぁーい。Fになれるんだ』
お姉さんに言われてピーちゃんは喜んだ。
でも、喜んだフリだった。
なぜか僕に向かって怒って言ってきた。
『Fだと? 誰に言ってんだ! ドラゴン倒してくるからAにしろ!』
その理屈が通用するなら、大鳥倒したからDランクになっているよ。
あと、怒るなら僕じゃなくてお姉さんに怒ってね。僕、無関係だから。
「それで魔力はどのくらいになったの?」
僕の家から再び数日前の冒険者ギルドに戻った。
『うーんと34』
「あら、凄いじゃない。50ぐらいまで上がれば可能性が出てくるわよ。ポイント使わずに、ここまで自然に上がるのは珍しいわね。何か特別な訓練でもやってるの?」
それはない。ピーちゃんは日向ぼっこしかしていない。
特訓も枕体当たりぐらいしか見たことがない。
『やってない。この薬草食べたら少しずつ上がってる』
やっぱりやってなかった。
収納袋から竜薬草を取り出した。
食って寝ているだけだった。
「ちょっとピーちゃん⁉︎ これ何⁉︎」
受付に置かれた竜薬草をお姉さんがすごい勢いで掴んだ。
『薬草。ヤバイ子のお母さんが作った』
「こんな薬草、初めて見たわ! 魔力があふれまくってるじゃない!」
『ふぅ~ん。普通に花壇に生えてるよ』
「花壇って……ヤバイ子の母親も別の意味でヤバイわね。父親は何してるの?」
『うーんとよく旅に出て、子供の風呂覗いている』
「父親もヤバイわね。別の意味で」
お姉さんが言うには、子供は確実に父親似だそうだ。
ピーちゃん、僕のお父さんは子供のお風呂を覗く変態じゃないよ。
覗いた変態鳥はピーちゃんでしょ。
♢♢♢
お姉さんからお説教と再教育を受けたピーちゃんはもう一度Dダンジョンに向かった。
やり残した仕事があるからだ。
『……よし、行けそうだ』
トンネルの出口からチョコンと顔を出して、外を確認した。
大鳥達【ガルーダ】は待ち伏せていなかった。
大鳥の名前はお姉さんが教えてくれた。
もちろん名前が分かったところでやることは変わらない。
魔物狩りの次は果物狩りだ。
今度は仲間は呼ばないで隠れて飛んでいく。
雑鳥の相手は疲れるからやらないそうだ。
ムチ猫【ドクロヒョウ】が見えたら、身体を丸めて木の実のフリをした。
ガルーダが見えたら、葉っぱを咥えて隠れた。
ピーちゃん、ビビってるよね?
ピーちゃんの話は疑ってないから、ちょっとレベル見せてよ。
これでレベル20ちょっとだったら、どこら辺から嘘だったか正直に教えてもらうよ。
『ふぅー、今日は勘弁してやる』
ガルーダが気づかずに飛び去っていくと、ピーちゃんはひと安心した。
どう見てもビビっている。今日は本当に果物狩りだけに来たらしい。
トゲトゲの大きな赤い果物、大きくて丸い紫の果物、玉ねぎみたいに皮が重なったピンク色の丸い果物。
とにかく木にぶら下がっている果物っぽいのを集めまくった。
『あっ、これも持って帰ろ』
地面に落ちている薪のような木があったから、それも収納袋に入れたそうだ。
『レナスが喜ぶ』
喜ばなかったよ。ブチ切れたよ。床に叩きつけたよ。
僕へのお土産は果物だけでよかったよ。そういえば、まだ果物貰ってないよ。
全部お姉さんに売ってきてないよね?
ピーちゃんはこうして無事に果物狩りを成功させた。
レベル偽証を疑った僕はしっかり土下座させられて、ののしられた。
『ドラゴンと戦うから力温存した。そんなことも分からないの? このボケ』
ののしられるって結構キツいんだね。悔しくて涙が出そうになっちゃった。
195
お気に入りに追加
1,303
あなたにおすすめの小説

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長
ハーーナ殿下
ファンタジー
貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。
しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。
これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件
シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。
旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる