病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第二十九話 血が飲みたいのかも

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 僕を放置してピーちゃんが部屋に寝に帰った。
 僕は寝ている場合じゃない。

『ぐぐぐっ!』

 ヨダレを垂れ流す時間は終わりだ。
 右拳を地面につけて、気合いで立ち上がった。

『ハァハァ、ハァハァ』

 ピーちゃん、君は気づいてないけど、とんでもない相手を敵に回してしまったんだよ。
 鞘を拾って、剣も拾うと地獄の猛特訓を開始した。

『一、二、三……』

 剣を高く振り上げると、地面に向かって叩きつけるように振り下ろす。
 それを何度も繰り返す。腕が上がらなくまで続けるつもりだ。

『ぐっ、五十! ハァハァ、ハァハァ!』

 これ以上は無理だ。両腕が悲鳴を上げている。
 額から流れ落ちた汗が顎から地面に落ちていく。
 これ以上続けたら明日の朝ご飯を震える手で食べることになる。

『よし、歩こう』

 この程度で地獄の猛特訓は終われない。
 腕が使えないなら足を使う。
 村の中を十分、いや、十五分は歩こう。

『あぁ~、涼しいぃ~』

 家と畑と小さな川しかない村を歩いていく。
 熱くなった身体を夜風が冷やしていく。
 激しい運動したことないから分からなかったけど、これが清々しい気分なんだと思う。
 嫌な気持ちが身体の熱と一緒に、スッーと身体から抜けていく。

 ガサガサ、ガサガサ。

『ん? 何だろ……』

 畑の中で何かが動いている。
 近づいて見てみると、茶色いウサギが野菜の葉っぱを食べていた。

『キュッ、キュッ』
『可愛いなぁ~。ピーちゃんと違って』

 花壇の薬草食べてたら剣で追い払うけど、他所の畑なら優しい気持ちで見ていられる。
 家に連れて帰って窓枠で飼おうかな?
 僕とウーちゃんが楽しそうに遊んでいるの見たら、きっとピーちゃん、カーテンをクチバシで噛んで嫉妬しちゃうぞ。

『美味しそうだなぁ~。いただきまぁ~す』
『キュッキュッ!』
『はっ! 僕は一体なにをしてるんだ⁉︎』

 鳴き声と手の中で暴れる何かに気がつくと、ウサギを食べようとしてた。
 慌てて手から離して逃してあげた。

『一体、いつの間に移動したんだ?』

 五メートルは離れて見ていたのに、気がついた時にはウサギを持っていた。
 無意識に捕まえたらしい。それもウサギが逃げられない素早い動きでた。

『もしかして、血が飲みたいのかも』

 だとしたらマズイ。このままだと朝起きたら、ピーちゃんが干からびている。
 さっきだって寝ているのを余裕で捕まえられた。
 一緒の部屋に寝てたら確実にちゅーちゅーしちゃう。
 何とかしなくては……

 そういえばニワトリを飼っている人が村にいた。
 一羽ぐらいなら、いなくなっても分からないはずだ。
 この時間なら飼っている人もニワトリも寝ている。
 今ならどっちも飲み放題だ。

『って! 何考えているんだ、僕は!』

 危ない、危ない。危うく悪い魔物として討伐されるところだった。
 犯罪じゃなくて、安全な方法で血を手に入れないと。

『あっ、良いこと思いついた。クッククク、ピーちゃんを利用してやる』

 血を手に入れる方法を考えていたら、名案を思いついた。
 ピーちゃんに仕返しが出来て、僕が強くなれる方法だ。
 
 吸血鬼のお兄さんが言っていた。
『強い魔物の血を飲めば、太陽の下でも生きられるようになって、強くもなれる』って。

 僕じゃ魔物は倒せないから諦めていたけど、僕が倒さなくてもよかった。
 ピーちゃんに魔物を取ってきてもらう。
『ダンジョンでバターナイフの試し斬りしてきなよ』って言えば喜んで行く。
『倒した魔物を証拠に持ってきてね』と言えば必ず持ってくる。
 僕の手の平でピーちゃんを踊らせてやる。
 
 ♢♢♢

『ごめん、ピーちゃん。昨日は僕が悪かったよ。仲間になるのは諦めるね』

 一睡もせずに朝までピーちゃんを我慢すると、目を覚ましたピーちゃんに謝った。

『別に気にしてない。お腹大丈夫?』
『平気だよ。それで昨日の話しで気になったことがあるんだけど、いいかな?』
『なに?』

 ピーちゃんが興味を示したので、寝ずに考えた話をしてみた。
 予想通りピーちゃんが食いついた。

『分かった。魔物取ってくる』
『うん、頑張ってね』

 窓から飛んでいくピーちゃんをベッドから見送った。
 アイツが魔物の素材を集めていたから助かった。
 倒した魔物を持って帰る理由はこれで十分だ。
 金欠ピーちゃんにはお金が必要だ。

『じゅるり。ピーちゃん、お土産楽しみに待ってるね』

 ヨダレを拭き取るとベッドに横になった。
 今日は朝からよく寝れそうだ。
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