29 / 70
第二十九話 血が飲みたいのかも
しおりを挟む
僕を放置してピーちゃんが部屋に寝に帰った。
僕は寝ている場合じゃない。
『ぐぐぐっ!』
ヨダレを垂れ流す時間は終わりだ。
右拳を地面につけて、気合いで立ち上がった。
『ハァハァ、ハァハァ』
ピーちゃん、君は気づいてないけど、とんでもない相手を敵に回してしまったんだよ。
鞘を拾って、剣も拾うと地獄の猛特訓を開始した。
『一、二、三……』
剣を高く振り上げると、地面に向かって叩きつけるように振り下ろす。
それを何度も繰り返す。腕が上がらなくまで続けるつもりだ。
『ぐっ、五十! ハァハァ、ハァハァ!』
これ以上は無理だ。両腕が悲鳴を上げている。
額から流れ落ちた汗が顎から地面に落ちていく。
これ以上続けたら明日の朝ご飯を震える手で食べることになる。
『よし、歩こう』
この程度で地獄の猛特訓は終われない。
腕が使えないなら足を使う。
村の中を十分、いや、十五分は歩こう。
『あぁ~、涼しいぃ~』
家と畑と小さな川しかない村を歩いていく。
熱くなった身体を夜風が冷やしていく。
激しい運動したことないから分からなかったけど、これが清々しい気分なんだと思う。
嫌な気持ちが身体の熱と一緒に、スッーと身体から抜けていく。
ガサガサ、ガサガサ。
『ん? 何だろ……』
畑の中で何かが動いている。
近づいて見てみると、茶色いウサギが野菜の葉っぱを食べていた。
『キュッ、キュッ』
『可愛いなぁ~。ピーちゃんと違って』
花壇の薬草食べてたら剣で追い払うけど、他所の畑なら優しい気持ちで見ていられる。
家に連れて帰って窓枠で飼おうかな?
僕とウーちゃんが楽しそうに遊んでいるの見たら、きっとピーちゃん、カーテンをクチバシで噛んで嫉妬しちゃうぞ。
『美味しそうだなぁ~。いただきまぁ~す』
『キュッキュッ!』
『はっ! 僕は一体なにをしてるんだ⁉︎』
鳴き声と手の中で暴れる何かに気がつくと、ウサギを食べようとしてた。
慌てて手から離して逃してあげた。
『一体、いつの間に移動したんだ?』
五メートルは離れて見ていたのに、気がついた時にはウサギを持っていた。
無意識に捕まえたらしい。それもウサギが逃げられない素早い動きでた。
『もしかして、血が飲みたいのかも』
だとしたらマズイ。このままだと朝起きたら、ピーちゃんが干からびている。
さっきだって寝ているのを余裕で捕まえられた。
一緒の部屋に寝てたら確実にちゅーちゅーしちゃう。
何とかしなくては……
そういえばニワトリを飼っている人が村にいた。
一羽ぐらいなら、いなくなっても分からないはずだ。
この時間なら飼っている人もニワトリも寝ている。
今ならどっちも飲み放題だ。
『って! 何考えているんだ、僕は!』
危ない、危ない。危うく悪い魔物として討伐されるところだった。
犯罪じゃなくて、安全な方法で血を手に入れないと。
『あっ、良いこと思いついた。クッククク、ピーちゃんを利用してやる』
血を手に入れる方法を考えていたら、名案を思いついた。
ピーちゃんに仕返しが出来て、僕が強くなれる方法だ。
吸血鬼のお兄さんが言っていた。
『強い魔物の血を飲めば、太陽の下でも生きられるようになって、強くもなれる』って。
僕じゃ魔物は倒せないから諦めていたけど、僕が倒さなくてもよかった。
ピーちゃんに魔物を取ってきてもらう。
『ダンジョンでバターナイフの試し斬りしてきなよ』って言えば喜んで行く。
『倒した魔物を証拠に持ってきてね』と言えば必ず持ってくる。
僕の手の平でピーちゃんを踊らせてやる。
♢♢♢
『ごめん、ピーちゃん。昨日は僕が悪かったよ。仲間になるのは諦めるね』
一睡もせずに朝までピーちゃんを我慢すると、目を覚ましたピーちゃんに謝った。
『別に気にしてない。お腹大丈夫?』
『平気だよ。それで昨日の話しで気になったことがあるんだけど、いいかな?』
『なに?』
ピーちゃんが興味を示したので、寝ずに考えた話をしてみた。
予想通りピーちゃんが食いついた。
『分かった。魔物取ってくる』
『うん、頑張ってね』
窓から飛んでいくピーちゃんをベッドから見送った。
アイツが魔物の素材を集めていたから助かった。
倒した魔物を持って帰る理由はこれで十分だ。
金欠ピーちゃんにはお金が必要だ。
『じゅるり。ピーちゃん、お土産楽しみに待ってるね』
ヨダレを拭き取るとベッドに横になった。
今日は朝からよく寝れそうだ。
僕は寝ている場合じゃない。
『ぐぐぐっ!』
ヨダレを垂れ流す時間は終わりだ。
右拳を地面につけて、気合いで立ち上がった。
『ハァハァ、ハァハァ』
ピーちゃん、君は気づいてないけど、とんでもない相手を敵に回してしまったんだよ。
鞘を拾って、剣も拾うと地獄の猛特訓を開始した。
『一、二、三……』
剣を高く振り上げると、地面に向かって叩きつけるように振り下ろす。
それを何度も繰り返す。腕が上がらなくまで続けるつもりだ。
『ぐっ、五十! ハァハァ、ハァハァ!』
これ以上は無理だ。両腕が悲鳴を上げている。
額から流れ落ちた汗が顎から地面に落ちていく。
これ以上続けたら明日の朝ご飯を震える手で食べることになる。
『よし、歩こう』
この程度で地獄の猛特訓は終われない。
腕が使えないなら足を使う。
村の中を十分、いや、十五分は歩こう。
『あぁ~、涼しいぃ~』
家と畑と小さな川しかない村を歩いていく。
熱くなった身体を夜風が冷やしていく。
激しい運動したことないから分からなかったけど、これが清々しい気分なんだと思う。
嫌な気持ちが身体の熱と一緒に、スッーと身体から抜けていく。
ガサガサ、ガサガサ。
『ん? 何だろ……』
畑の中で何かが動いている。
近づいて見てみると、茶色いウサギが野菜の葉っぱを食べていた。
『キュッ、キュッ』
『可愛いなぁ~。ピーちゃんと違って』
花壇の薬草食べてたら剣で追い払うけど、他所の畑なら優しい気持ちで見ていられる。
家に連れて帰って窓枠で飼おうかな?
僕とウーちゃんが楽しそうに遊んでいるの見たら、きっとピーちゃん、カーテンをクチバシで噛んで嫉妬しちゃうぞ。
『美味しそうだなぁ~。いただきまぁ~す』
『キュッキュッ!』
『はっ! 僕は一体なにをしてるんだ⁉︎』
鳴き声と手の中で暴れる何かに気がつくと、ウサギを食べようとしてた。
慌てて手から離して逃してあげた。
『一体、いつの間に移動したんだ?』
五メートルは離れて見ていたのに、気がついた時にはウサギを持っていた。
無意識に捕まえたらしい。それもウサギが逃げられない素早い動きでた。
『もしかして、血が飲みたいのかも』
だとしたらマズイ。このままだと朝起きたら、ピーちゃんが干からびている。
さっきだって寝ているのを余裕で捕まえられた。
一緒の部屋に寝てたら確実にちゅーちゅーしちゃう。
何とかしなくては……
そういえばニワトリを飼っている人が村にいた。
一羽ぐらいなら、いなくなっても分からないはずだ。
この時間なら飼っている人もニワトリも寝ている。
今ならどっちも飲み放題だ。
『って! 何考えているんだ、僕は!』
危ない、危ない。危うく悪い魔物として討伐されるところだった。
犯罪じゃなくて、安全な方法で血を手に入れないと。
『あっ、良いこと思いついた。クッククク、ピーちゃんを利用してやる』
血を手に入れる方法を考えていたら、名案を思いついた。
ピーちゃんに仕返しが出来て、僕が強くなれる方法だ。
吸血鬼のお兄さんが言っていた。
『強い魔物の血を飲めば、太陽の下でも生きられるようになって、強くもなれる』って。
僕じゃ魔物は倒せないから諦めていたけど、僕が倒さなくてもよかった。
ピーちゃんに魔物を取ってきてもらう。
『ダンジョンでバターナイフの試し斬りしてきなよ』って言えば喜んで行く。
『倒した魔物を証拠に持ってきてね』と言えば必ず持ってくる。
僕の手の平でピーちゃんを踊らせてやる。
♢♢♢
『ごめん、ピーちゃん。昨日は僕が悪かったよ。仲間になるのは諦めるね』
一睡もせずに朝までピーちゃんを我慢すると、目を覚ましたピーちゃんに謝った。
『別に気にしてない。お腹大丈夫?』
『平気だよ。それで昨日の話しで気になったことがあるんだけど、いいかな?』
『なに?』
ピーちゃんが興味を示したので、寝ずに考えた話をしてみた。
予想通りピーちゃんが食いついた。
『分かった。魔物取ってくる』
『うん、頑張ってね』
窓から飛んでいくピーちゃんをベッドから見送った。
アイツが魔物の素材を集めていたから助かった。
倒した魔物を持って帰る理由はこれで十分だ。
金欠ピーちゃんにはお金が必要だ。
『じゅるり。ピーちゃん、お土産楽しみに待ってるね』
ヨダレを拭き取るとベッドに横になった。
今日は朝からよく寝れそうだ。
350
お気に入りに追加
1,303
あなたにおすすめの小説

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長
ハーーナ殿下
ファンタジー
貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。
しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。
これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件
シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。
旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる