病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第二十六話 夜中に知らない人が来た

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 しっかり寝て休んで怪我を回復させると、ピーちゃんは出発した。
『ドラゴン倒す方法探してくる』とまだ諦めていなかった。
 諦めなければ、いつかは叶うかもしれないね。

「次はどんな冒険が聞けるかな?」

 見えなくなるまで見送ると、窓から離れてベッドに戻った。

 急に部屋が静かになった。いつもの退屈な日々が始まった。
 でも、前よりも退屈じゃなくなった。
 ピーちゃんと出会ったからだ。冒険の話をしてくれるからだ。

 それに僕の病気も治るかもしれない。
 ピーちゃんと一緒に冒険できるかもしれない。
 そんな日が来ると思うと、退屈だなんて思っている暇はない。
 どんな冒険をしようかと考えるだけで、一日があっという間に過ぎてしまう。

 コツコツ、コツコツ。

「……んみゃ、ピーちゃん?」

 ぐっすり寝ていると窓を叩く音に目が覚めた。
 窓の外は真っ暗だ。こんなに早く帰ってくるとは思ってなかった。
 フラフラ立ち上がると窓に向かった。

「えっ、誰……?」

 でも、窓の外にいたのはピーちゃんじゃなかった。
 フードローブで頭と身体を隠した、真っ赤な光る目をした人間だった。

「ご、強盗かも⁉︎」

 一気に目が覚めた。
 この村が強盗に襲われた話は一度も聞いたことないけど、どう見ても強盗だ。
 ベッドの近くに立て掛けていた剣を取ると、鞘から抜いて窓の外に構えた。

『なんだ、話に聞いていたよりは元気そうじゃないか。おい、子供。私はお前の父親から頼まれてきた。その物騒な物をさっさとしまえ』

 顔が窓にくっつくぐらいに近づけて、窓の外の男が言ってきた。
 落ち着いた声で、窓に見える顔は若々しい。二十五歳ぐらいだ。

「本当にお父さんに頼まれたのなら証拠を見せてよ」

 窓の外にお父さんの姿は見えない。
 夜遅くに知らない男が一人で来たら警戒して当然だ。
 それに家にはお母さんがいる。男の僕が守るんだ。

『証拠だと? そんなものはない。治療が不要だというのならこのまま帰る。それでもいいのか?』

 それは困る。証拠がないのも困る。
 でも、怪しい男を家に入れたくない。

「だったら薬だけ置いて帰って。お金ならお父さんが払ったよね」

 だったらこうするしかない。
 僕に必要なのは薬で、怪しい男は必要ない。
 
『……疑り深い子供だ。時間がないと言われて急いで来てやったのにこの扱いか。悪いが特別な薬でな。使えるのは私だけだ』
「‼︎」

 そんなの反則だ。それだと家に入れるしかない。
 
『……時間切れだ。この話はなかったことにさせてもらう。薬の代金は迷惑料として貰っておく』
「ちょっと待って! 入れるから!」

 僕が悩んでいると言ってきた。
 強盗じゃないとしても、良い人じゃない。ほとんど脅迫だ。
 男が帰ろうとしたので、急いで剣をベッドに放り投げると窓を押し開けた。

「開けたよ。さあ、早く治療して」
『治療はここからでも出来る。家に入るつもりはない』

 窓から下がって入りやすくしたのに断られた。
 僕の悩んでいた時間返せ。

『さて、治療する前に確認することがある。私の治療方法は特別でな。本人の許可なしに行なうつもりはない。お前は本当に治療を受けるつもりがあるのか?』

 赤い目の男が訊いてきた。そんなの答えは決まっている。

「当たり前でしょ。僕は元気になって、普通に暮らしたいんだ」
『普通にか。平凡を望むなら私の治療は受けるべきではない。受ければお前は人間ではなくなる』
「人間じゃなくなる……? それってどういう意味なの?」

 言っている意味が分からない。今度は僕が訊いた。

『言葉通りの意味だ。人間として死ぬか、【魔物】として生きるか。選ぶのはお前だ。後悔するのもな』
「魔物って……」

 男が何を言っているのか理解できない。
 魔物になれば生きられるみたいだけど、どんな魔物になるかで答えは変わる。
 ピーちゃんみたいになるなら、お父さんには別の治療方法を探してもらう。

「希望の魔物になれるんですか?」
『残念ながらなれる魔物は【吸血鬼】だ』
「あっ!」

 僕の質問に男が口を開いて、上の歯に付いてある鋭い二本の牙を見せてきた。

『私の血を分けることで、お前は吸血鬼になれる。得るものは大きいが、失うものはそれ以上だ。その覚悟があるなら答えろ。お前は命を望むか?』
「…………そんなの決まっている。僕は生きたい!」

 何度訊かれたって答えは決まっている。
 答えを聞くと男が僕の手を掴んだ。

『これがお前が人間として感じる最後の痛みだ』
「うぐっ……! ゔぁああああ‼︎」

 そう言って、僕の手首に噛み付いた。
 全身を内側からズタズタに切り裂かれる痛みに襲われて、僕は意識を失った。
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