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第二十五話 調子に乗っちゃったんだね
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「あれ? ちょっと待て……」
こうして無事にピーちゃんは家に帰ってきた。
でも、おかしい。家に帰ってきた時のピーちゃんはボロボロだった。
竜薬草食べて回復したのなら、ボロボロなのはおかしい。
「ピーちゃん、まだ話してないことあるよね?」
『……ないよ』
僕も受付のお姉さんを見習って、丁寧に話を聞くことにした。
♢♢♢
冒険者ギルドを出たピーちゃんは、街に住む鳥の巣で朝まで休むと飛び立った。
目指したのは僕の家じゃなくて、灰色ドラゴンが飛び回る灰竜山だ。
魔竜石はいっぱい取ってきたばかりだから、あるとしても少ししかない。
ここを目指した理由が分からない。
『アイツに負けないようにドラゴン倒してやる』
ピーちゃん、調子に乗っちゃったんだね。
レベル上がって、今なら勝てると勘違いしちゃったんだね。
無事に灰竜山に到着すると、一匹のドラゴンに狙いを定めた。
狙っているのは顎下だ。前回は腹下を狙って失敗している。
ちょっとは考えたみたいだ。
超加速でドラゴンの顎下まで気づかれずに接近すると、その硬そうな顎に一発ぶち込んだ。
『”バードストライク”』
『ぬぅ、何だ?』
顎が少し浮いたそうだ。手ごたえを感じたそうだ。
ピーちゃんがそう言っているんだから信じてあげるしかない。
『おい、またあの鳥が来たぞ。クソ泥棒だ』
『今日こそ焼き鳥だ。焼き鳥にして食ってやる』
そんなピーちゃんに気づいた他のドラゴンが集まってきた。
あっという間に四十を超えるドラゴンに包囲された。
『……卑怯者め』
群れに挑んだのはピーちゃんだよ。囲まれても文句言えないからね。
しかも、最初に手を出したのはピーちゃんだよ。文句の前に言うことあるよね。
『おもしれい。全員沈めてやる』
ごめんなさい、でしょ。
『”超加速”——”残像”』
まだやる気みたいだ。再び加速するとドラゴンの頭を狙った。
そんな真っ直ぐ飛んでくるピーちゃんに、ドラゴンの口から炎が吹き出された。
ドラゴンの大きな身体を半分以上も隠せる巨大な炎の息だ。
その炎にピーちゃんは完全に飲み込まれた。
『効かないよ』
もちろん燃えたのは残像だ。
本物のピーちゃんは炎の息を真下に回避して、そのまま急上昇して首を狙った。
二度目のバードストライクが炸裂した。
『……いつの間に移動しやがった』
ピーちゃん、こっちも効いてないみたいだよ。
小石がぶつかった程度なんじゃないの?
『おもしれい。倒れるまでやってやるよ』
♢♢♢
「それで自分が倒れる寸前までやってきたんだね。で、倒せたの?」
『……あと少しで倒せた。一対一なら』
聞かなくても分かるけど聞いてみた。やっぱり倒せてなかった。
それになんか言い訳している。一対一でも絶対倒せなかった。
『コレあげる。疲れたからもう寝る』
話疲れたのか収納袋を逆さまにすると、袋から剣を床に落として寝てしまった。
やりたい放題だ。アイツから預かった大切な剣じゃなかったの。
仕方ないと諦めてベッドから出ると、床から剣を拾ってみた。
思ったよりも重くない。これなら僕でも振り回せそうだ。
剣の柄を右手で持つと、左手で鞘を持って抜いてみた。
「わぁっ~、これが剣か!」
汚くて安そうな剣だってピーちゃん言ってたけど、そんなことなかった。
めちゃくちゃ綺麗で切れそうな剣だ。
「ふんっ、やぁっ」
振り回すのは危ないから、適当にカッコいい構えを取ってみた。
両手で持って剣先を上に向けたり、斜め下に向けたりした。
「もしかしたら、僕……剣士の才能あるかも」
もうなんか初めて持った気がしない。
窓の外に立ってある木も真っ二つに出来そうな気がする。
「よし、やってやる」
やっぱり構えるだけじゃ物足りない。
剣を持ったら思いっきり振り回したい。
剣を持って玄関から外に出ると、木に向かって水平に振り回した。
「えいっ!」
乾いた音が鳴った。真っ二つどころか、一ミリ切れたかも怪しい。
木から剣を離すと部屋に戻った。ちょっと体調が悪かったみたいだ。
部屋に戻ると剣を鞘に戻して、僕もベッドに戻った。
お父さんが僕の病気が治る薬を持って帰るまで、木を切り倒すのは我慢だ。
病気が治って元気になったら、もう一度挑戦してやる。
こうして無事にピーちゃんは家に帰ってきた。
でも、おかしい。家に帰ってきた時のピーちゃんはボロボロだった。
竜薬草食べて回復したのなら、ボロボロなのはおかしい。
「ピーちゃん、まだ話してないことあるよね?」
『……ないよ』
僕も受付のお姉さんを見習って、丁寧に話を聞くことにした。
♢♢♢
冒険者ギルドを出たピーちゃんは、街に住む鳥の巣で朝まで休むと飛び立った。
目指したのは僕の家じゃなくて、灰色ドラゴンが飛び回る灰竜山だ。
魔竜石はいっぱい取ってきたばかりだから、あるとしても少ししかない。
ここを目指した理由が分からない。
『アイツに負けないようにドラゴン倒してやる』
ピーちゃん、調子に乗っちゃったんだね。
レベル上がって、今なら勝てると勘違いしちゃったんだね。
無事に灰竜山に到着すると、一匹のドラゴンに狙いを定めた。
狙っているのは顎下だ。前回は腹下を狙って失敗している。
ちょっとは考えたみたいだ。
超加速でドラゴンの顎下まで気づかれずに接近すると、その硬そうな顎に一発ぶち込んだ。
『”バードストライク”』
『ぬぅ、何だ?』
顎が少し浮いたそうだ。手ごたえを感じたそうだ。
ピーちゃんがそう言っているんだから信じてあげるしかない。
『おい、またあの鳥が来たぞ。クソ泥棒だ』
『今日こそ焼き鳥だ。焼き鳥にして食ってやる』
そんなピーちゃんに気づいた他のドラゴンが集まってきた。
あっという間に四十を超えるドラゴンに包囲された。
『……卑怯者め』
群れに挑んだのはピーちゃんだよ。囲まれても文句言えないからね。
しかも、最初に手を出したのはピーちゃんだよ。文句の前に言うことあるよね。
『おもしれい。全員沈めてやる』
ごめんなさい、でしょ。
『”超加速”——”残像”』
まだやる気みたいだ。再び加速するとドラゴンの頭を狙った。
そんな真っ直ぐ飛んでくるピーちゃんに、ドラゴンの口から炎が吹き出された。
ドラゴンの大きな身体を半分以上も隠せる巨大な炎の息だ。
その炎にピーちゃんは完全に飲み込まれた。
『効かないよ』
もちろん燃えたのは残像だ。
本物のピーちゃんは炎の息を真下に回避して、そのまま急上昇して首を狙った。
二度目のバードストライクが炸裂した。
『……いつの間に移動しやがった』
ピーちゃん、こっちも効いてないみたいだよ。
小石がぶつかった程度なんじゃないの?
『おもしれい。倒れるまでやってやるよ』
♢♢♢
「それで自分が倒れる寸前までやってきたんだね。で、倒せたの?」
『……あと少しで倒せた。一対一なら』
聞かなくても分かるけど聞いてみた。やっぱり倒せてなかった。
それになんか言い訳している。一対一でも絶対倒せなかった。
『コレあげる。疲れたからもう寝る』
話疲れたのか収納袋を逆さまにすると、袋から剣を床に落として寝てしまった。
やりたい放題だ。アイツから預かった大切な剣じゃなかったの。
仕方ないと諦めてベッドから出ると、床から剣を拾ってみた。
思ったよりも重くない。これなら僕でも振り回せそうだ。
剣の柄を右手で持つと、左手で鞘を持って抜いてみた。
「わぁっ~、これが剣か!」
汚くて安そうな剣だってピーちゃん言ってたけど、そんなことなかった。
めちゃくちゃ綺麗で切れそうな剣だ。
「ふんっ、やぁっ」
振り回すのは危ないから、適当にカッコいい構えを取ってみた。
両手で持って剣先を上に向けたり、斜め下に向けたりした。
「もしかしたら、僕……剣士の才能あるかも」
もうなんか初めて持った気がしない。
窓の外に立ってある木も真っ二つに出来そうな気がする。
「よし、やってやる」
やっぱり構えるだけじゃ物足りない。
剣を持ったら思いっきり振り回したい。
剣を持って玄関から外に出ると、木に向かって水平に振り回した。
「えいっ!」
乾いた音が鳴った。真っ二つどころか、一ミリ切れたかも怪しい。
木から剣を離すと部屋に戻った。ちょっと体調が悪かったみたいだ。
部屋に戻ると剣を鞘に戻して、僕もベッドに戻った。
お父さんが僕の病気が治る薬を持って帰るまで、木を切り倒すのは我慢だ。
病気が治って元気になったら、もう一度挑戦してやる。
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