病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第二十五話 調子に乗っちゃったんだね

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「あれ? ちょっと待て……」

 こうして無事にピーちゃんは家に帰ってきた。
 でも、おかしい。家に帰ってきた時のピーちゃんはボロボロだった。
 竜薬草食べて回復したのなら、ボロボロなのはおかしい。

「ピーちゃん、まだ話してないことあるよね?」
『……ないよ』

 僕も受付のお姉さんを見習って、丁寧に話を聞くことにした。

 ♢♢♢

 冒険者ギルドを出たピーちゃんは、街に住む鳥の巣で朝まで休むと飛び立った。
 目指したのは僕の家じゃなくて、灰色ドラゴンが飛び回る灰竜山だ。
 魔竜石はいっぱい取ってきたばかりだから、あるとしても少ししかない。
 ここを目指した理由が分からない。

『アイツに負けないようにドラゴン倒してやる』

 ピーちゃん、調子に乗っちゃったんだね。
 レベル上がって、今なら勝てると勘違いしちゃったんだね。

 無事に灰竜山に到着すると、一匹のドラゴンに狙いを定めた。
 狙っているのは顎下だ。前回は腹下を狙って失敗している。
 ちょっとは考えたみたいだ。

 超加速でドラゴンの顎下まで気づかれずに接近すると、その硬そうな顎に一発ぶち込んだ。

『”バードストライク”』
『ぬぅ、何だ?』

 顎が少し浮いたそうだ。手ごたえを感じたそうだ。
 ピーちゃんがそう言っているんだから信じてあげるしかない。

『おい、またあの鳥が来たぞ。クソ泥棒だ』
『今日こそ焼き鳥だ。焼き鳥にして食ってやる』

 そんなピーちゃんに気づいた他のドラゴンが集まってきた。
 あっという間に四十を超えるドラゴンに包囲された。

『……卑怯者め』

 群れに挑んだのはピーちゃんだよ。囲まれても文句言えないからね。
 しかも、最初に手を出したのはピーちゃんだよ。文句の前に言うことあるよね。

『おもしれい。全員沈めてやる』

 ごめんなさい、でしょ。

『”超加速”——”残像”』

 まだやる気みたいだ。再び加速するとドラゴンの頭を狙った。
 そんな真っ直ぐ飛んでくるピーちゃんに、ドラゴンの口から炎が吹き出された。
 ドラゴンの大きな身体を半分以上も隠せる巨大な炎の息だ。
 その炎にピーちゃんは完全に飲み込まれた。

『効かないよ』

 もちろん燃えたのは残像だ。
 本物のピーちゃんは炎の息を真下に回避して、そのまま急上昇して首を狙った。
 二度目のバードストライクが炸裂した。

『……いつの間に移動しやがった』

 ピーちゃん、こっちも効いてないみたいだよ。
 小石がぶつかった程度なんじゃないの?

『おもしれい。倒れるまでやってやるよ』

 ♢♢♢

「それで自分が倒れる寸前までやってきたんだね。で、倒せたの?」
『……あと少しで倒せた。一対一なら』

 聞かなくても分かるけど聞いてみた。やっぱり倒せてなかった。
 それになんか言い訳している。一対一でも絶対倒せなかった。

『コレあげる。疲れたからもう寝る』

 話疲れたのか収納袋を逆さまにすると、袋から剣を床に落として寝てしまった。
 やりたい放題だ。アイツから預かった大切な剣じゃなかったの。

 仕方ないと諦めてベッドから出ると、床から剣を拾ってみた。
 思ったよりも重くない。これなら僕でも振り回せそうだ。
 剣の柄を右手で持つと、左手で鞘を持って抜いてみた。

「わぁっ~、これが剣か!」

 汚くて安そうな剣だってピーちゃん言ってたけど、そんなことなかった。
 めちゃくちゃ綺麗で切れそうな剣だ。

「ふんっ、やぁっ」

 振り回すのは危ないから、適当にカッコいい構えを取ってみた。
 両手で持って剣先を上に向けたり、斜め下に向けたりした。

「もしかしたら、僕……剣士の才能あるかも」

 もうなんか初めて持った気がしない。
 窓の外に立ってある木も真っ二つに出来そうな気がする。

「よし、やってやる」

 やっぱり構えるだけじゃ物足りない。
 剣を持ったら思いっきり振り回したい。
 剣を持って玄関から外に出ると、木に向かって水平に振り回した。

「えいっ!」

 乾いた音が鳴った。真っ二つどころか、一ミリ切れたかも怪しい。
 木から剣を離すと部屋に戻った。ちょっと体調が悪かったみたいだ。
 部屋に戻ると剣を鞘に戻して、僕もベッドに戻った。

 お父さんが僕の病気が治る薬を持って帰るまで、木を切り倒すのは我慢だ。
 病気が治って元気になったら、もう一度挑戦してやる。
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