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第十九話 一番宝箱
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案内は出来るけど、入り口の場所は覚えていない。
ピーちゃんは飛び立つともう一度二つの入り口を探してみた。
その結果、片方は獣道っぽいけどある程度道が出来ていたそうだ。
つまりこっちの入り口は知られているダンジョンの入り口らしい。
地図と包囲磁石で確認したので、間違いないと杖おじさんが言ったそうだ。
これでピーちゃんだけのせいには出来なくなった。
「あのぉ、【新生ダンジョン】は何となく分かるんですけど、【一番宝箱】って何ですか? 宝箱ならダンジョンに普通に何個もありますよね」
案内するピーちゃんの後ろで、アイツがおじさん達に聞いている。
僕もピーちゃんの話しで、ダンジョンが魔物の家ってぐらいしか理解してない。
「まあ、知らなくて当然だな。俺達も新生ダンジョンを見つけるのは初めてだ」
口顎ひげおじさんが教えてくれるらしい。
さっきまで怒っていたのに、今は凄い上機嫌だ。
そんなに凄いダンジョンなんだろうか?
「そうなんですね。それで一番宝箱って何なんですか?」
「ああ、そうだったな。新生ダンジョンには宝箱が一つしかないんだ。しかもその中身が唯一無二の超貴重品らしい。それが何なのか知らねえが、凄いって噂は何度も聞いたことがある」
「そ、それは凄そうですね。絶対手に入れないと」
「当たり前だ! 俺達で絶対に手に入れるからな! お前も死ぬ気で頑張れよ!」
「は、はい! 頑張ります!」
上機嫌な口顎ひげおじさんが一番宝箱のことを教えてくれると、最後にアイツの背中をバンバン叩いて気合いを注入した。アイツも叩かれて喜んでいる。
「頑張るのもいいが、手に負えない魔物がいた場合は諦めるぞ。新生ダンジョンは何がいるか分からないからな」
そこに邪魔するように金髪おじさんが言ってきた。
それに対して口顎ひげおじさんがしぶしぶ納得しようとして、何かに気づいたみたいだ。
「ああ、分かってるよ。死んだら意味ねえからな……って、あの鳥使えねえか? 宝箱開けて、中身取ってくるぐらいは出来るだろ」
「うむ、確かにそうかもしれないな。持ち逃げされる危険もあるがな」
「ちっ、良い手だと思ったんだけどな」
ピーちゃん、持ち逃げできるチャンスあるってさ。聞いてたよね?
僕、一番宝箱の中身期待しているからね。
どんなの持ってきたか早く続きを話して教えてね。
「ここか……確かにギルドでもらった地図には載ってない。こりゃー当たりだな」
荒れ果てた道無き道を進み続けて、ダンジョンの入り口に四人は到着した。
山の崖に草木に隠れるようにアーチ型のトンネルが開いている。
入り口付近の草を剣で刈り取り、地面に座るとダンジョン探索の準備が始まった。
大きめの収納袋から腕や足を守る鉄板を取り出したり、パンや水を食べたり飲んだりする。
そして、休憩と準備を終わらせると四人は立ち上がり、入り口前まで移動した。
「よし、誰が最初に入る? 噂じゃ最初に入った人間が欲しい物が宝箱から出るらしい。俺は何でも斬れる剣が欲しい」
「俺は靴だな。どんな場所も楽に動けて、壊れなくて、どんなに歩いても疲れない靴が欲しい」
「俺は指輪だ。使える魔法の威力を何十倍、何百倍にも引き上げる指輪だ」
金髪おじさんがおじさん二人に聞くと、二人はこう答えた。
そして、口顎ひげおじさんがアイツにも聞いた。
「アトラス、お前は何が欲しいんだ? 言ってみろ」
「えっと、俺も剣が欲しいです」
「それは駄目だ。同じ物だと奪い合いになる。宝箱から出た物と欲しいと思った物が同じ奴が貰うのが一番宝箱のルールだ。剣以外に欲しい物はないのか?」
同じ物は駄目なんだね。金髪おじさんが駄目な理由を教えてくれた。
「でも、剣以外で欲しい物なんてないし……炎とか雷とか出せる魔法の剣は駄目ですか?」
「うむ、まあいいだろう。何でも斬れる剣とは違うからな。おい、鳥。お前は欲しい物はないのか?」
やっぱり欲しい物は譲れないみたいだ。
アイツが悩んだ末にやっぱり剣が欲しいと言うと、仕方ないといった感じで許可された。
そして、ついでとばかりにピーちゃんにも金髪おじさんが聞いてきた。
ピーちゃんの願いなんて聞かなくても分かる。
【僕の病気が治る薬】だ。
そうだよね、ピーちゃん?
『レベルがいっぱい上がって欲しい』
ピ、ピーちゃん⁉︎ それ本気で言ってるの⁉︎
百年の友情も冷めちゃうよ。
「レベルなら頑張って自分で上げろ。しょうもない願いのお前が一番後ろだ」
ほら、どうでもいい願いだから最後尾になったよ。
友達の病気を治す薬が欲しいって言えば、先頭になってたんだからね。
壊れた友情を治す薬もそう簡単にないんだからね。
「じゃあ、マルス、俺、テレンス、アトラス、鳥の順番で入る。欲しい物が出なかった場合は鑑定後に換金した金を分けるか、欲しい奴が同じ換金額を払えばそいつの物になる。文句はないな?」
「まあ、いざという時はやっぱ火力が頼りなるからな。仕方ねえ、譲ってやるか」
入る順番が決まったようだ。杖おじさんが先頭で入ると最後にピーちゃんが続いた。
この先に何があるのか分からないけど、ピーちゃん、頑張って持ち逃げするんだよ。
僕との友情を取り戻すチャンスだよ。
ピーちゃんは飛び立つともう一度二つの入り口を探してみた。
その結果、片方は獣道っぽいけどある程度道が出来ていたそうだ。
つまりこっちの入り口は知られているダンジョンの入り口らしい。
地図と包囲磁石で確認したので、間違いないと杖おじさんが言ったそうだ。
これでピーちゃんだけのせいには出来なくなった。
「あのぉ、【新生ダンジョン】は何となく分かるんですけど、【一番宝箱】って何ですか? 宝箱ならダンジョンに普通に何個もありますよね」
案内するピーちゃんの後ろで、アイツがおじさん達に聞いている。
僕もピーちゃんの話しで、ダンジョンが魔物の家ってぐらいしか理解してない。
「まあ、知らなくて当然だな。俺達も新生ダンジョンを見つけるのは初めてだ」
口顎ひげおじさんが教えてくれるらしい。
さっきまで怒っていたのに、今は凄い上機嫌だ。
そんなに凄いダンジョンなんだろうか?
「そうなんですね。それで一番宝箱って何なんですか?」
「ああ、そうだったな。新生ダンジョンには宝箱が一つしかないんだ。しかもその中身が唯一無二の超貴重品らしい。それが何なのか知らねえが、凄いって噂は何度も聞いたことがある」
「そ、それは凄そうですね。絶対手に入れないと」
「当たり前だ! 俺達で絶対に手に入れるからな! お前も死ぬ気で頑張れよ!」
「は、はい! 頑張ります!」
上機嫌な口顎ひげおじさんが一番宝箱のことを教えてくれると、最後にアイツの背中をバンバン叩いて気合いを注入した。アイツも叩かれて喜んでいる。
「頑張るのもいいが、手に負えない魔物がいた場合は諦めるぞ。新生ダンジョンは何がいるか分からないからな」
そこに邪魔するように金髪おじさんが言ってきた。
それに対して口顎ひげおじさんがしぶしぶ納得しようとして、何かに気づいたみたいだ。
「ああ、分かってるよ。死んだら意味ねえからな……って、あの鳥使えねえか? 宝箱開けて、中身取ってくるぐらいは出来るだろ」
「うむ、確かにそうかもしれないな。持ち逃げされる危険もあるがな」
「ちっ、良い手だと思ったんだけどな」
ピーちゃん、持ち逃げできるチャンスあるってさ。聞いてたよね?
僕、一番宝箱の中身期待しているからね。
どんなの持ってきたか早く続きを話して教えてね。
「ここか……確かにギルドでもらった地図には載ってない。こりゃー当たりだな」
荒れ果てた道無き道を進み続けて、ダンジョンの入り口に四人は到着した。
山の崖に草木に隠れるようにアーチ型のトンネルが開いている。
入り口付近の草を剣で刈り取り、地面に座るとダンジョン探索の準備が始まった。
大きめの収納袋から腕や足を守る鉄板を取り出したり、パンや水を食べたり飲んだりする。
そして、休憩と準備を終わらせると四人は立ち上がり、入り口前まで移動した。
「よし、誰が最初に入る? 噂じゃ最初に入った人間が欲しい物が宝箱から出るらしい。俺は何でも斬れる剣が欲しい」
「俺は靴だな。どんな場所も楽に動けて、壊れなくて、どんなに歩いても疲れない靴が欲しい」
「俺は指輪だ。使える魔法の威力を何十倍、何百倍にも引き上げる指輪だ」
金髪おじさんがおじさん二人に聞くと、二人はこう答えた。
そして、口顎ひげおじさんがアイツにも聞いた。
「アトラス、お前は何が欲しいんだ? 言ってみろ」
「えっと、俺も剣が欲しいです」
「それは駄目だ。同じ物だと奪い合いになる。宝箱から出た物と欲しいと思った物が同じ奴が貰うのが一番宝箱のルールだ。剣以外に欲しい物はないのか?」
同じ物は駄目なんだね。金髪おじさんが駄目な理由を教えてくれた。
「でも、剣以外で欲しい物なんてないし……炎とか雷とか出せる魔法の剣は駄目ですか?」
「うむ、まあいいだろう。何でも斬れる剣とは違うからな。おい、鳥。お前は欲しい物はないのか?」
やっぱり欲しい物は譲れないみたいだ。
アイツが悩んだ末にやっぱり剣が欲しいと言うと、仕方ないといった感じで許可された。
そして、ついでとばかりにピーちゃんにも金髪おじさんが聞いてきた。
ピーちゃんの願いなんて聞かなくても分かる。
【僕の病気が治る薬】だ。
そうだよね、ピーちゃん?
『レベルがいっぱい上がって欲しい』
ピ、ピーちゃん⁉︎ それ本気で言ってるの⁉︎
百年の友情も冷めちゃうよ。
「レベルなら頑張って自分で上げろ。しょうもない願いのお前が一番後ろだ」
ほら、どうでもいい願いだから最後尾になったよ。
友達の病気を治す薬が欲しいって言えば、先頭になってたんだからね。
壊れた友情を治す薬もそう簡単にないんだからね。
「じゃあ、マルス、俺、テレンス、アトラス、鳥の順番で入る。欲しい物が出なかった場合は鑑定後に換金した金を分けるか、欲しい奴が同じ換金額を払えばそいつの物になる。文句はないな?」
「まあ、いざという時はやっぱ火力が頼りなるからな。仕方ねえ、譲ってやるか」
入る順番が決まったようだ。杖おじさんが先頭で入ると最後にピーちゃんが続いた。
この先に何があるのか分からないけど、ピーちゃん、頑張って持ち逃げするんだよ。
僕との友情を取り戻すチャンスだよ。
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