病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
上 下
19 / 70

第十九話 一番宝箱

しおりを挟む
 案内は出来るけど、入り口の場所は覚えていない。
 ピーちゃんは飛び立つともう一度二つの入り口を探してみた。

 その結果、片方は獣道っぽいけどある程度道が出来ていたそうだ。
 つまりこっちの入り口は知られているダンジョンの入り口らしい。
 地図と包囲磁石で確認したので、間違いないと杖おじさんが言ったそうだ。
 これでピーちゃんだけのせいには出来なくなった。

「あのぉ、【新生ダンジョン】は何となく分かるんですけど、【一番宝箱】って何ですか? 宝箱ならダンジョンに普通に何個もありますよね」

 案内するピーちゃんの後ろで、アイツがおじさん達に聞いている。
 僕もピーちゃんの話しで、ダンジョンが魔物の家ってぐらいしか理解してない。

「まあ、知らなくて当然だな。俺達も新生ダンジョンを見つけるのは初めてだ」

 口顎ひげおじさんが教えてくれるらしい。
 さっきまで怒っていたのに、今は凄い上機嫌だ。
 そんなに凄いダンジョンなんだろうか?

「そうなんですね。それで一番宝箱って何なんですか?」
「ああ、そうだったな。新生ダンジョンには宝箱が一つしかないんだ。しかもその中身が唯一無二の超貴重品らしい。それが何なのか知らねえが、凄いって噂は何度も聞いたことがある」
「そ、それは凄そうですね。絶対手に入れないと」
「当たり前だ! 俺達で絶対に手に入れるからな! お前も死ぬ気で頑張れよ!」
「は、はい! 頑張ります!」

 上機嫌な口顎ひげおじさんが一番宝箱のことを教えてくれると、最後にアイツの背中をバンバン叩いて気合いを注入した。アイツも叩かれて喜んでいる。

「頑張るのもいいが、手に負えない魔物がいた場合は諦めるぞ。新生ダンジョンは何がいるか分からないからな」

 そこに邪魔するように金髪おじさんが言ってきた。
 それに対して口顎ひげおじさんがしぶしぶ納得しようとして、何かに気づいたみたいだ。

「ああ、分かってるよ。死んだら意味ねえからな……って、あの鳥使えねえか? 宝箱開けて、中身取ってくるぐらいは出来るだろ」
「うむ、確かにそうかもしれないな。持ち逃げされる危険もあるがな」
「ちっ、良い手だと思ったんだけどな」
 
 ピーちゃん、持ち逃げできるチャンスあるってさ。聞いてたよね?
 僕、一番宝箱の中身期待しているからね。
 どんなの持ってきたか早く続きを話して教えてね。

「ここか……確かにギルドでもらった地図には載ってない。こりゃー当たりだな」

 荒れ果てた道無き道を進み続けて、ダンジョンの入り口に四人は到着した。
 山の崖に草木に隠れるようにアーチ型のトンネルが開いている。

 入り口付近の草を剣で刈り取り、地面に座るとダンジョン探索の準備が始まった。
 大きめの収納袋から腕や足を守る鉄板を取り出したり、パンや水を食べたり飲んだりする。
 そして、休憩と準備を終わらせると四人は立ち上がり、入り口前まで移動した。

「よし、誰が最初に入る? 噂じゃ最初に入った人間が欲しい物が宝箱から出るらしい。俺は何でも斬れる剣が欲しい」
「俺は靴だな。どんな場所も楽に動けて、壊れなくて、どんなに歩いても疲れない靴が欲しい」
「俺は指輪だ。使える魔法の威力を何十倍、何百倍にも引き上げる指輪だ」

 金髪おじさんがおじさん二人に聞くと、二人はこう答えた。
 そして、口顎ひげおじさんがアイツにも聞いた。

「アトラス、お前は何が欲しいんだ? 言ってみろ」
「えっと、俺も剣が欲しいです」
「それは駄目だ。同じ物だと奪い合いになる。宝箱から出た物と欲しいと思った物が同じ奴が貰うのが一番宝箱のルールだ。剣以外に欲しい物はないのか?」

 同じ物は駄目なんだね。金髪おじさんが駄目な理由を教えてくれた。

「でも、剣以外で欲しい物なんてないし……炎とか雷とか出せる魔法の剣は駄目ですか?」
「うむ、まあいいだろう。何でも斬れる剣とは違うからな。おい、鳥。お前は欲しい物はないのか?」

 やっぱり欲しい物は譲れないみたいだ。
 アイツが悩んだ末にやっぱり剣が欲しいと言うと、仕方ないといった感じで許可された。
 そして、ついでとばかりにピーちゃんにも金髪おじさんが聞いてきた。

 ピーちゃんの願いなんて聞かなくても分かる。
【僕の病気が治る薬】だ。
 そうだよね、ピーちゃん?

『レベルがいっぱい上がって欲しい』

 ピ、ピーちゃん⁉︎ それ本気で言ってるの⁉︎
 百年の友情も冷めちゃうよ。

「レベルなら頑張って自分で上げろ。しょうもない願いのお前が一番後ろだ」

 ほら、どうでもいい願いだから最後尾になったよ。
 友達の病気を治す薬が欲しいって言えば、先頭になってたんだからね。
 壊れた友情を治す薬もそう簡単にないんだからね。

「じゃあ、マルス、俺、テレンス、アトラス、鳥の順番で入る。欲しい物が出なかった場合は鑑定後に換金した金を分けるか、欲しい奴が同じ換金額を払えばそいつの物になる。文句はないな?」
「まあ、いざという時はやっぱ火力が頼りなるからな。仕方ねえ、譲ってやるか」

 入る順番が決まったようだ。杖おじさんが先頭で入ると最後にピーちゃんが続いた。
 この先に何があるのか分からないけど、ピーちゃん、頑張って持ち逃げするんだよ。
 僕との友情を取り戻すチャンスだよ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下
ファンタジー
 貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。  しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。  これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。 旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

処理中です...