上 下
7 / 70

第七話 空飛ぶ灰色ドラゴン

しおりを挟む
『あれがドラゴンかな?』

 ピーちゃん、ドラゴン知らなかったんだね。だから来ちゃったんだね。
 山の周りを飛び回る灰色の大きな鳥がたくさんいたんだって。
 ピーちゃん、鳥とドラゴンは全然違うよ。僕でも知っているよ。

 ドラゴンはとっても強くて、大きな翼が背中に生えた大きなトカゲだ。
 口には鋭い牙が生えていて、しかも火まで吐くと言われている。
 ドラゴンを倒した人は『勇者』や『英雄』と呼ばれる伝説の人になれるらしい。
 それが『ドラゴン』だ。

『う~ん、穴がない。上の方かな?』

 パタパタと山の下の方を探してみたけど、穴が見つからなかったそうだ。
 でも、山の上の方はドラゴンが飛び回っている。とっても危険だ。
 ピーちゃんの話し通りなら山は岩山だ。それも三角形の尖った岩山だ。
 隠れられる場所はなかったそうだ。

 だから、ピーちゃんは泥だらけになった。
 泥で青い羽根を汚して茶色にして目立たないようにした。
 ピーちゃん、賢い。これで安心だね。

『美味そうな鳥だな。食ってやる』
『‼︎』

 と思ったのに、飛んでいるうちに泥が身体から取れちゃった。
 そして、灰色子供ドラゴンに見つかってしまった。
 大きさを聞いたら、縦にベッド1、横にベッド2、厚さはベッド1だった。
 ドラゴンから見たらピーちゃんなんて、豆粒と同じだ。
 お願いだから食べないで見逃してほしい。

『グオオォ!』

 もちろんそれは無理なお願いだった。
 ドラゴンが口を開けて襲いかかってきた。
 食べられないようにピーちゃんは素早く避けると、ドラゴンの首から背中を通り抜けて、背中に隠れた。
 それも茶色の魔法袋を頭から被った状態で。

『あの鳥、どこ行きやがった?』

 ドラゴンはピーちゃんを見失ったみたいだ。小さくて良かったね、ピーちゃん。
 しばらく飛び回ると探すのを諦めて、ドラゴンは山に空いてある無数の穴の一つに入った。

 どうやら穴はドラゴンの巣穴みたいだ。
 こんな危険な場所にピーちゃんを石拾いに行かせるなんて、冒険者ギルドは酷いところだ。
 ピーちゃんの為にも、もう二度と行かないように言ってやる。

『ぐぅー、ぐぅー』

 ドラゴンは巣穴に入ると、唸るようなイビキ声を上げて寝てしまった。
 ピーちゃんにとっては逃げるチャンスだ。でも、ピーちゃんは逃げなかった。
 このチャンスを石拾いを使った。僕ならきっと逃げると思う。
 僕もピーちゃんの勇気を見習いたいな。

 背中から暗い穴の中を探すと、すぐにドラゴンの近くに転がっている、たくさんの石ころを見つけた。
 大きさは僕の頭ぐらいで、全体的に黒色で青、赤、黄、緑の光る粒々が入っている石ころだ。
 ピーちゃんが袋から一つを取り出すと僕に見せてくれた。
 記念に何個か持ってきたもので、僕に全部プレゼントしてくれるそうだ。
 ピーちゃんの『勇気の証』だ。これを持っていると何だか勇気が出そうな気がするよ。

『ぐぅー、ぐぅー』

 ドラゴンが寝ている間に巣穴の光る石を全部魔法袋に入れると、ピーちゃん脱出作戦が始まった。
 外には飛び回るドラゴンがいる。見つかれば食べられちゃう。
 ピーちゃんは覚悟を決めると巣穴から飛び出した。それも袋を被っていない状態でだ。
 ピーちゃん、勇気の安売りはやめた方がいいよ。

『美味そうな鳥だな。食ってやる』
『駄目だ。あれは俺が食う』
『いいや、俺が食う。邪魔するな』
『邪魔なのはお前だ。お前から食うぞ』

 これが正解だったみたいだね。ピーちゃん、ゴメンね。
 ピーちゃんを誰が食べるかで、ドラゴンが言い争いを始めた。
 その隙にピーちゃんは急降下した。
 地面まで逃げると、その後は地面スレスレを飛んで逃げたそうだ。
 もちろん袋は被っていない。ピーちゃん、運が良かっただけだからね。
 次に同じことやったら帰れないからね。
 
 こうやって無事にピーちゃんは冒険者ギルドに帰ってこれた。
 でも、今度は行く前に僕に相談してね。
 頼りにならないと思うけど、心配ぐらいは出来るから。

『鉱石取ってきた』

 冒険者ギルドの扉が開いた瞬間に中に入ると、受付に止まってピーちゃんが報告した。

「あら、鳥さん。早かったのね。迷わずに山には行けた?」
『大丈夫、鳥に聞きながら行った。たくさんドラゴン飛んでた』
「ん? 子竜山のドラゴンは飛ばないわよ。大きい茶色のトカゲがいるだけで、翼がないから飛べないわよ」
『ピィ~~?』

 ピ、ピーちゃん⁉︎ 可愛く鳴いても、首を傾げても駄目だよ。
 道、というか山間違えたよね? 違う山行っちゃったんだよね。

「もしかして『灰竜山』に行っちゃった? 灰色の大きなドラゴンが飛んでいる山よ」
『うん、その山行った。大丈夫、次は間違えない』

 お姉さんに聞かれて、ピーちゃんは自信満々に答えた。
 その自信がどこから来るのか知りたい。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下
ファンタジー
 貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。  しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。  これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな ・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー! 【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】  付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。  だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。  なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!  《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。  そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!  ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!  一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!  彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。  アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。  アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。 カクヨムにも掲載 なろう 日間2位 月間6位 なろうブクマ6500 カクヨム3000 ★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...