ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

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第四章:商人編

第149話 闇金袋

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「あの村最悪だな!」

 安全な廃教会に戻れたので、さっきまでの嘘を神様に懺悔した。
 あんな住民の教育が行き届いてない村は初めて見た。
 あれで町を名乗るなんて恥知らずだ。
 最低でも住民を、いや人間を二万人用意してから名乗れ。

「ふぅー、スッキリした」
「大変でしたね」
「お前の所為だろ!」
「あうっ!」

 メルが他人事みたいに言ったから、頭を手の平で軽く叩いた。
 全ての元凶はお前だ。

「宝箱も無いのに嘘吐きやがって。取られたお金は、お前の身体で払ってもらうからな」
「えぇー! 酷いです! 私も被害者なのに!」
「俺が被害者だ。しばらく作業場で回復水を作り続けろ。三万本売れたら許してやる」

 回復水は一本10ギルだ。三万本売れたら、俺が飲まされた聖水の値段になる。
 情けで岩瓶を作ってやるから、それにせっせと回復水を入れればいい。

「あんな水、そんなに売れないです! モンスター倒した方が早いです!」
「売れないからいいんだよ。作ったら荷車に乗せて町中で売るんだぞ」
「うぅぅ、酷いです……」

 メルが別の方法で弁償すると言っているが、これは罰だから難しい方が良いに決まっている。
 泣いて許される悪戯の範疇を超えている。今回はしっかりと反省してもらう。

「それにしても……何だ、あの化け物達は? アイツらが魔人だろ」

 あれが普通の町だったら、俺も暴れて更地に変えていた。
 だけど識別眼で調べたら、町の住民のほとんどが魔法を習得していた。
 聖魔法や闇魔法といった貴重な魔法を使えたり、魔法を二つ、三つ使えるのもいた。

 さっきの雑貨屋のオヤジも、普通に回復魔法と風魔法の二つを持っていた。
 あの町には異常に二属性魔法使いが多すぎる。

「モンスターの肉を食べればいいのか?」

 辺境の野蛮な住民の身体構造なんて知らないけど、魔術の指輪のようにモンスターを食べれば、その魔法属性を習得するのだろうか。
 称号持ちや知らないアビリティと、とにかく知らない情報が多すぎる。

「とりあえず買収するか……」

 知らないなら調べればいい。
 ミノタウロスの魔石を大量に雑貨屋に寄付しよう。
 ついでに新商品も渡して、少しずつ交流する。
 仲良くなれば、ポロッと口を滑らせる事もあるだろう。

 ♢

 家に戻ると、メルに水の指輪、回復の指輪、魔石製造の三種の神器を渡した。
 メルは薬品製造LV7だから、一本目から回復水LV4を作れた。
 岩瓶の容器を三万本作ってやるから、その間に外の大船に商品を積み込ませる。

「はい、ご苦労様でした。ああ、疲れないから問題ないか。ほら、さっさと回復水を作れ」
「むぅー!」

 新しい店員が睨んでいるが、喉が渇いたのなら回復水でも飲んでいろ。
 俺は貸した金の取り立ては恐ろしく厳しいんだ。

「瓶を割って、金だけ用意するんじゃないぞ。町で聞き込みするからな」
「むぅー!」

 大船に乗ると、念の為にズル賢い方法をしないように注意した。
 メルは庭で睨んでお見送りしている。今回はお喋りメルはお留守番だ。

 十五時間後……

「ああ、疲れた。配達とか面倒だな」

 荷物が多いから、前よりも時間がかかってしまった。
 雑貨屋の前に楕円形の大船を着陸させた。

「すみません。買取りお願いします」

 大船から抜け出すと、扉を叩いて自分で開けた。
 時刻は午前一時頃と、ダンジョンの青空が嘘のような深夜だ。

「はぁ? またお前か」
「あっ……」

 嫌がらせだろうか。カウンターには青髪の男がいた。
 名前はザックス、炎と風の二つの魔法を持っている。
 俺の顔を見ただけで、明らかに不機嫌な顔になった。

「おい、その髪全部剃れよ。同じ青髪で俺まで魔人だと思われるだろうが」
「いえいえ、俺の薄い髪なんて足元にも及びません。次元が違います」

 ザックスは立ち上がると、お客様は神様のはずなのに、いきなりハゲになれと脅してきた。
 額に黄色と黒色のマダラ柄のバンダナを巻いて、濃い青髪を上に向けて立てている。
 同じ青髪でも空のように透き通る俺の髪と、殴られた跡の青あざのような汚い髪は全然違う。

「フフッ、よく分かっているじゃないか。立って歩かずに四つん這いで歩くんだな。そしたら、可愛がられる」
「参考にさせてもらいます。買取りをいいでしょうか?」

 どうやら低姿勢で対応した方が良いみたいだ。
 侮辱するように軽く笑うと、機嫌が少し良くなった。

「ああ、いいぜ。一日経っているんだ。二百個ぐらいは持ってきたんだろ?」
「はい、外に大量に持ってきました。ちょっと多いんですけど、買取りのお金は足りますか?」
「はぁ? テメェー、何の心配してんだよ。ブッ殺すぞぉー!」
「す、すみません! お許しください!」

 ちょっと挑発して全部買取らせるつもりだったのに、馬鹿の火加減は難しい。
 一瞬で最大火力になると、服の襟首を掴んで殺そうとしてきた。
 俺もすぐに床に逃げて土下座した。これで可愛がられるはずだ。

「チッ。まったく舐めやがって……次は殺すぞ!」
「は、はい! 気をつけます! こちらです」

 何とか許されたみたいだ。四つん這いの状態で外まで案内した。
 俺にここまでさせたんだ。もう買取れないとは言わせない。

「何だ、この黒い塊は? これを黒魔石とか言うつもりか?」
「とんでもない。この船の中に魔石があります」
「……罠じゃないだろうな?」

 馬鹿なのか、ザックスは疑っている。
 罠を仕掛けるつもりなら、この大船で町に突っ込んで建物を破壊して、教会に逃げるに決まっている。

「とんでもない。少々お待ちください……」

 立ち上がって大船に触れると、余計な部分を分解していく。
 大船が壊れていき、中から岩箱に入れられた魔石が見えてきた。

「何だ、この量は? 何個あるか数えてきたんだろうな!」
「すみません。10から先は数え切れないので分かりません」
「テメェー、巫山戯やがって! 人を呼んでくる。そこを動くんじゃねぇぞ!」

 馬鹿げた量を見て、ザックスがカンカンに怒っている。
 だけど、人を呼ばれて集団暴行されるつもりはない。
 呼びに行かれる前に止めた。

「その必要はありません! 全額寄付させてもらいます」
「はぁ? 寄付だと?」
「はい。定期的に寄付させていただきます。是非とも、この素晴らしい町と交流させてください」
「……」

 丁寧にお辞儀して、怒る青髪に寄付を申し込んだ。
 ミノタウロスの魔石は一万二千個以上はある。金額にしたら、1400万ギルの大金だ。
 月に一回の寄付を断る馬鹿はいない。

「寄付なんて要らねえよ。金なら払ってやる」
「はい?」

 だけど、馬鹿はいる。

「まったく……こんなに牛ばかり食えるかよ。竜とか鳥とか蛇とか持って来い」
「すみません。次からはそうします」

 人は呼びに行かないようだけど、ザックスが岩箱の中の魔石を調べて文句を言っている。
 岩箱を軽く持ち上げたり、上の魔石を退けて中まで見ている。
 偽魔石でもないか、調べられているみたいだ。

「数えるのが面倒だから、重さで買取らせてもらうぞ」
「はい?」
「二十五キロの三十箱だから、1800万ギルでいいな?」
「はい……」

 本当に払うつもりがあるみたいだ。
 ザックスは黒い革袋に手を突っ込むと、すぐに引き抜いた。
 右手には金貨が握られている。

「ほら、受け取れ。同じ魔石は一万個以上は買取らないからな」
「すみません。ありがとうございます」

 両手を広げて、落とされる金貨を受け取った。
 明らかに枚数が少ないけど、竜が刻まれた百万ギル硬貨だった。
 この村の被害者の数が半端ない。

「す、凄い大金ですね。どうやって手に入れたんですか?」

 答えは分かっているけど、口が勝手に動いてしまった。
 俺の質問にザックスは黒い革袋を見せてきた。

「金ならいくらでもあるんだよ。これがあるからな」

【闇金袋:呪具ランクX】——入っているお金が10日で10%増える魔法の袋。

「……」

 どうやら偽金貨を渡されたようだ。
 知らない町で買い物して、本物に変えないといけない。
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