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第四章:商人編
第148話 換金所
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「用は済んだな。町から出て行ってもらう」
「まだ終わってないです!」
「何だと?」
もう喋らないでほしいけど、もう喋ってしまった。
呪解師の家を出ると、ゼクトが帰れと言ったのに、メルがまだ帰らないと言い出した。
友達の家じゃないんだから、邪魔だと言われたら帰らないと駄目だ。
「このままだと家に帰れないです。旅費が無くなりました。換金所とか無いんですか?」
「換金所ならあるが、お前達に利用させるつもりはない」
「ほら、メル。迷惑なんだから帰るぞ」
俺と同じようにお金の心配をしてくれるのは嬉しいが、今はお金よりも心配するものがあるだろ?
金と命の両方を取られる前に退散するぞ。換金所は外の町で探せばいい。
メルの左腕を掴んで町を出ようとした。
「えぇー⁉︎ このままだとお金取られただけですよ! 紙切れ貰っただけですよ。こんなの泥棒です!」
「俺達が泥棒だと!」
だけど、メルが俺の右手を振り解いて抗議してきた。
どうやら馬鹿ではなかったみたいだが、今それを言うのは馬鹿だ。
メルの失礼発言に監視の男達が怒った。
事実を言っているだけだが、このままだとマズイ事になる。
「コラ、メル! この人達は泥棒じゃない。一ヶ月後に商品が用意されてなくても、追加料金を請求されても、また一ヶ月後に来るように言われても、泥棒じゃないんだ。分かったな!」
「……」
別に悪意はない。親として子供を叱っているだけだ。
あとでアイスクリームを買ってやるから、黙って叱られなさい。
「はい、分かりました……ぐすっ、お金は諦めます」
「そうだ。分かればいいんだ。すみません、お騒がせしてしまって」
しっかり叱ったから、メルが半泣き状態になった。
ついでに俺も平謝りで謝ったから、これで一件落着だ……
「魔人のくせに舐めやがって。俺達を金を騙して奪う泥棒扱いか?」
「ゼクト、コイツら殺した方がいい。悪い噂を撒き散らすだけだ」
とは行かなかった。やっぱりメルの泥棒発言に怒っている。
青髪と緑髪の男二人が殺そうと詰め寄ってきた。
それを他の三人が立ち塞がって止めた。
「くだらない。言わせておけばいいだけだ」
「その通りだ。魔人の言う事を信じる人間はいない」
「チッ。仕方ねぇな。ほら、さっさと帰れ!」
「ありがとうございます。すぐに帰ります」
仲間達に説得されて許してくれたみたいだ。
イライラしながらも、奪われていた剣を青髪の男が返してくれた。
てっきり一生奪われたままだと疑ってしまった。
「待て」
「えっ?」
小船を作っていると、ゼクトが言ってきた。
やっぱり帰すつもりがないと言うつもりだろうか。
「監視付きなら、換金所を使っていい」
「はい?」
「おい、何言ってんだ⁉︎ 魔人だぞ⁉︎」
予想外の言葉で反応に困った。それはゼクトの仲間も同じみたいだ。
青髪の男が俺達を指差して、また興奮している。
「だったら、外の換金所を使わせるつもりか? 金を奪われて、換金所を使わせてもらえなかった。そう宣伝してもらいたいのか?」
「だから、殺そうと言ったんだ。今からでも遅くない」
「魔人達と全面戦争するつもりか? 不干渉の掟を破っても、手に入るのは死体の山だけだ。元人間だから町に入れた。今殺せば魔人を殺した事になるぞ」
「くっ……!」
話し合いの途中だけど、殺されるなら逃げたい。
外の町に換金所があるなら、そっちを使うし、悪い噂を流すつもりもない。
まあ、それを言っても信用されてないから、駄目なのは分かっている。
返した剣で俺から先に攻撃させて、正当防衛を狙っているならそれもない。
俺は大人しく武器を捨てて降参する男だ。
「分かった。だったら、お前達だけで監視しろ。何かあったら死んで責任取れ。その覚悟があるならな」
「大丈夫だ。何か起こる前に終わらせる」
「フン。安心しろ。変な動きをしたら先に殺しておいてやるよ」
話し合いが終わったみたいだけど、ここから外の換金所を使うとは言いにくい。
まさかとは思うけど、この喧嘩も俺達から金を搾り取る罠じゃないだろうか。
♢
「はぁ……死ぬかと思った」
何とか生きて町の外に出られた。
魔石と素材は町の外周にある、小さな換金所で買取りしてくれるそうだ。
どうせ魔石一個1ギルで買取られるだけだ。もう騙されない。
「隊長、二人でパパッと倒しましょう! 魔石一個1500ギルらしいですよ!」
「誰に聞いたか知らないが、安く買い叩かれるだけだ。アイスクリーム買ってやるから帰るぞ」
「じゃあ、一個だけ買取ってもらいましょうよ。それならいいですよね?」
「まあ、一個だけならいいか」
メルのやる気が漲っている。
腕を振り上げて、モンスターに八つ当たりしたいようだ。
仕方ないのでストレス発散を手伝ってやる。
小船を作って、少し町から離れた場所で赤牛を倒した。
町に近づくモンスターは、自警団という野盗に狩られている。
「ちょっと待っていろよ」
このまま赤魔石を持っていけばいいが、このまま泣き寝入りするのは悔しい。
習得済みの魔石製造のアビリティを使って、小船の中に青魔石を大量に作っていく。
一個1500ギルならば、334個作れば、奪われた金を回収できる。
「隊長、大丈夫なんですか? バレたら殺されますよ」
「分裂するスライムを倒したとか言えばいいんだよ」
メルが心配しているが、俺は魔石を売りに行くだけだ。何の問題もない。
パパッと適当な数を作ると、さっき案内された換金所に向かった。
換金所の壁には、魔石を咥えた犬の看板が取り付けられている。
「すみません。買取りお願いします」
換金所の大きさは明らかに一軒家だ。だから、軽く扉をノックした。
変な行動をするだけで殺されるなら、他所様の家の扉は勝手に開けない方がいい。
強盗として処理されてしまう。
「看板が見えないのか? 勝手に入れ」
しばらくすると面倒くさそうに、灰色髪の顎髭男が扉を開けて出てきた。
白の長袖シャツに緑の袖無し上着、紺色の長ズボンを履いている。
どう見ても寝起きの家主が出てきたとしか思えない。
「すみません、お邪魔します」
部屋に入るとカウンターが一つだけ、他は商品が置かれている棚しか見えない。
今度はこの雑貨屋で何か買わないといけないらしい。
「おい、こっちは暇じゃないんだ。買取って欲しいのがあるなら、さっさと持ってこい」
「すみません。珍しい物がたくさんあったので……」
お客の姿は一人も見えないが、寝るのに忙しいようだ。確かに外の町は夜だった。
カウンターのオヤジに赤魔石と青魔石を一個ずつ見せた。
時間が経ってちょっと冷静になった。やられてもやり返したらいけない相手がいる。
「人工魔石は駄目だ。赤は1500ギルになる。まさか、これ一個だけじゃないだろうな?」
「すみません。赤牛が強過ぎてこれだけです」
「あんな雑魚も倒せないのか。10歳の子供でも倒せるぞ」
たった一個で起こされて、オヤジが怒っている。
でも、正直に外の小船に三百個以上あるとは言えない。
もっと怒られる。
だけど、高額で赤魔石を買取ってくれるみたいだ。
家にあるミノタウロスの魔石でも運んでみるか。
「すみません。Bランクダンジョンの魔石も買取ってくれますか?」
「ああ、問題ない。魔石は食糧だ。こうやって肉に変えられるからな」
「……何ですか、それ?」
自宅の魔石を買取ってもらえるか聞いてみた。
すると、オヤジがいいと言った後に魔石を肉に変えた。
魔石の買取りよりも、そっちの肉の方を詳しく聞きたい。
「何だ、こんなのも知らないのか? 『復元』だ。ダンジョンで生き残りたいなら覚えないと死ぬぞ」
「そんなアビリティ見た事ないですよ。どうやって覚えるんですか?」
「それはお前達が他所者だからだ。この町の人間なら全員使える」
「じゃあ、お金を払うんで教えてください」
「はぁ? 呼吸の仕方なんて自分で分かるだろ。死にたくないなら息でもしてろ」
オヤジは呆れた感じに馬鹿にするだけで、習得方法を教えてくれない。
なるほど。魔人は死んでもいいから当然だ。自力で習得するしかない。
「じゃあ、今度はたくさん持ってきます」
「せいぜい頑張れ。ほれ、お小遣いだ」
「うっ……ありがとうございます。メル、帰るぞ」
明らかに馬鹿にされている。
帰ろうとすると、カウンターに2000ギル置かれた。
銀色の硬貨二枚をお礼を言って受け取ると、商品を見ているメルを呼んだ。
次に来る時は、2000万ギル払わせてやる。
「まだ終わってないです!」
「何だと?」
もう喋らないでほしいけど、もう喋ってしまった。
呪解師の家を出ると、ゼクトが帰れと言ったのに、メルがまだ帰らないと言い出した。
友達の家じゃないんだから、邪魔だと言われたら帰らないと駄目だ。
「このままだと家に帰れないです。旅費が無くなりました。換金所とか無いんですか?」
「換金所ならあるが、お前達に利用させるつもりはない」
「ほら、メル。迷惑なんだから帰るぞ」
俺と同じようにお金の心配をしてくれるのは嬉しいが、今はお金よりも心配するものがあるだろ?
金と命の両方を取られる前に退散するぞ。換金所は外の町で探せばいい。
メルの左腕を掴んで町を出ようとした。
「えぇー⁉︎ このままだとお金取られただけですよ! 紙切れ貰っただけですよ。こんなの泥棒です!」
「俺達が泥棒だと!」
だけど、メルが俺の右手を振り解いて抗議してきた。
どうやら馬鹿ではなかったみたいだが、今それを言うのは馬鹿だ。
メルの失礼発言に監視の男達が怒った。
事実を言っているだけだが、このままだとマズイ事になる。
「コラ、メル! この人達は泥棒じゃない。一ヶ月後に商品が用意されてなくても、追加料金を請求されても、また一ヶ月後に来るように言われても、泥棒じゃないんだ。分かったな!」
「……」
別に悪意はない。親として子供を叱っているだけだ。
あとでアイスクリームを買ってやるから、黙って叱られなさい。
「はい、分かりました……ぐすっ、お金は諦めます」
「そうだ。分かればいいんだ。すみません、お騒がせしてしまって」
しっかり叱ったから、メルが半泣き状態になった。
ついでに俺も平謝りで謝ったから、これで一件落着だ……
「魔人のくせに舐めやがって。俺達を金を騙して奪う泥棒扱いか?」
「ゼクト、コイツら殺した方がいい。悪い噂を撒き散らすだけだ」
とは行かなかった。やっぱりメルの泥棒発言に怒っている。
青髪と緑髪の男二人が殺そうと詰め寄ってきた。
それを他の三人が立ち塞がって止めた。
「くだらない。言わせておけばいいだけだ」
「その通りだ。魔人の言う事を信じる人間はいない」
「チッ。仕方ねぇな。ほら、さっさと帰れ!」
「ありがとうございます。すぐに帰ります」
仲間達に説得されて許してくれたみたいだ。
イライラしながらも、奪われていた剣を青髪の男が返してくれた。
てっきり一生奪われたままだと疑ってしまった。
「待て」
「えっ?」
小船を作っていると、ゼクトが言ってきた。
やっぱり帰すつもりがないと言うつもりだろうか。
「監視付きなら、換金所を使っていい」
「はい?」
「おい、何言ってんだ⁉︎ 魔人だぞ⁉︎」
予想外の言葉で反応に困った。それはゼクトの仲間も同じみたいだ。
青髪の男が俺達を指差して、また興奮している。
「だったら、外の換金所を使わせるつもりか? 金を奪われて、換金所を使わせてもらえなかった。そう宣伝してもらいたいのか?」
「だから、殺そうと言ったんだ。今からでも遅くない」
「魔人達と全面戦争するつもりか? 不干渉の掟を破っても、手に入るのは死体の山だけだ。元人間だから町に入れた。今殺せば魔人を殺した事になるぞ」
「くっ……!」
話し合いの途中だけど、殺されるなら逃げたい。
外の町に換金所があるなら、そっちを使うし、悪い噂を流すつもりもない。
まあ、それを言っても信用されてないから、駄目なのは分かっている。
返した剣で俺から先に攻撃させて、正当防衛を狙っているならそれもない。
俺は大人しく武器を捨てて降参する男だ。
「分かった。だったら、お前達だけで監視しろ。何かあったら死んで責任取れ。その覚悟があるならな」
「大丈夫だ。何か起こる前に終わらせる」
「フン。安心しろ。変な動きをしたら先に殺しておいてやるよ」
話し合いが終わったみたいだけど、ここから外の換金所を使うとは言いにくい。
まさかとは思うけど、この喧嘩も俺達から金を搾り取る罠じゃないだろうか。
♢
「はぁ……死ぬかと思った」
何とか生きて町の外に出られた。
魔石と素材は町の外周にある、小さな換金所で買取りしてくれるそうだ。
どうせ魔石一個1ギルで買取られるだけだ。もう騙されない。
「隊長、二人でパパッと倒しましょう! 魔石一個1500ギルらしいですよ!」
「誰に聞いたか知らないが、安く買い叩かれるだけだ。アイスクリーム買ってやるから帰るぞ」
「じゃあ、一個だけ買取ってもらいましょうよ。それならいいですよね?」
「まあ、一個だけならいいか」
メルのやる気が漲っている。
腕を振り上げて、モンスターに八つ当たりしたいようだ。
仕方ないのでストレス発散を手伝ってやる。
小船を作って、少し町から離れた場所で赤牛を倒した。
町に近づくモンスターは、自警団という野盗に狩られている。
「ちょっと待っていろよ」
このまま赤魔石を持っていけばいいが、このまま泣き寝入りするのは悔しい。
習得済みの魔石製造のアビリティを使って、小船の中に青魔石を大量に作っていく。
一個1500ギルならば、334個作れば、奪われた金を回収できる。
「隊長、大丈夫なんですか? バレたら殺されますよ」
「分裂するスライムを倒したとか言えばいいんだよ」
メルが心配しているが、俺は魔石を売りに行くだけだ。何の問題もない。
パパッと適当な数を作ると、さっき案内された換金所に向かった。
換金所の壁には、魔石を咥えた犬の看板が取り付けられている。
「すみません。買取りお願いします」
換金所の大きさは明らかに一軒家だ。だから、軽く扉をノックした。
変な行動をするだけで殺されるなら、他所様の家の扉は勝手に開けない方がいい。
強盗として処理されてしまう。
「看板が見えないのか? 勝手に入れ」
しばらくすると面倒くさそうに、灰色髪の顎髭男が扉を開けて出てきた。
白の長袖シャツに緑の袖無し上着、紺色の長ズボンを履いている。
どう見ても寝起きの家主が出てきたとしか思えない。
「すみません、お邪魔します」
部屋に入るとカウンターが一つだけ、他は商品が置かれている棚しか見えない。
今度はこの雑貨屋で何か買わないといけないらしい。
「おい、こっちは暇じゃないんだ。買取って欲しいのがあるなら、さっさと持ってこい」
「すみません。珍しい物がたくさんあったので……」
お客の姿は一人も見えないが、寝るのに忙しいようだ。確かに外の町は夜だった。
カウンターのオヤジに赤魔石と青魔石を一個ずつ見せた。
時間が経ってちょっと冷静になった。やられてもやり返したらいけない相手がいる。
「人工魔石は駄目だ。赤は1500ギルになる。まさか、これ一個だけじゃないだろうな?」
「すみません。赤牛が強過ぎてこれだけです」
「あんな雑魚も倒せないのか。10歳の子供でも倒せるぞ」
たった一個で起こされて、オヤジが怒っている。
でも、正直に外の小船に三百個以上あるとは言えない。
もっと怒られる。
だけど、高額で赤魔石を買取ってくれるみたいだ。
家にあるミノタウロスの魔石でも運んでみるか。
「すみません。Bランクダンジョンの魔石も買取ってくれますか?」
「ああ、問題ない。魔石は食糧だ。こうやって肉に変えられるからな」
「……何ですか、それ?」
自宅の魔石を買取ってもらえるか聞いてみた。
すると、オヤジがいいと言った後に魔石を肉に変えた。
魔石の買取りよりも、そっちの肉の方を詳しく聞きたい。
「何だ、こんなのも知らないのか? 『復元』だ。ダンジョンで生き残りたいなら覚えないと死ぬぞ」
「そんなアビリティ見た事ないですよ。どうやって覚えるんですか?」
「それはお前達が他所者だからだ。この町の人間なら全員使える」
「じゃあ、お金を払うんで教えてください」
「はぁ? 呼吸の仕方なんて自分で分かるだろ。死にたくないなら息でもしてろ」
オヤジは呆れた感じに馬鹿にするだけで、習得方法を教えてくれない。
なるほど。魔人は死んでもいいから当然だ。自力で習得するしかない。
「じゃあ、今度はたくさん持ってきます」
「せいぜい頑張れ。ほれ、お小遣いだ」
「うっ……ありがとうございます。メル、帰るぞ」
明らかに馬鹿にされている。
帰ろうとすると、カウンターに2000ギル置かれた。
銀色の硬貨二枚をお礼を言って受け取ると、商品を見ているメルを呼んだ。
次に来る時は、2000万ギル払わせてやる。
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