ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

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第三章:魔人編

第118話 集団いじめ

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【名前:ゾンビハンター 年齢:7歳 性別:ゾンビ 身長:130センチ 体重:26キロ】
【進化素材:殺生白珠七個、神金剛石七個】
【移動可能階層:35~50階】

 秘密基地で大人しくなっているメルを調べた。成長期なのか、また身長と体重が増えている。
 それに盗賊のシーフから、狩人のハンターになっている。ちょっと更生したみたいだ。
 これなら問題なく、外に連れていく事が出来る。

「よし、行くぞ。乗客に噛み付いたりするなよ」
「あうっ」

 言葉はまだ話せないようだが、理解力があれば問題ない。
 俺の注意に頷いたので、メルを暗い秘密基地から明るい地上に連れ出した。
 地上に出ると早速、アレンが睨みつけながら近づいてきた。

「んっ? 本当に前と同じ子供か? 少しデカくないか?」
「ゔゔっ!」
「痛ぁーッ⁉︎ このガキ、石投げやがった!」

 怒ったメルがアレンの顔面に岩人形を投げつけた。これは仕方ない。
 弓泥棒の人質野朗だから、半殺しにされても文句は言えない。
 大袈裟に痛がっているけど、心配するだけ時間の無駄だ。
 さっさと自己紹介を終わらせよう。

「紹介するメルだ。メル、コイツがロビン、コイツがオヤジ、コイツが坊主頭だ」
「あうっ」
「オヤジじゃない。町で職人をやっているジャンだ。と言っても、会うのは三度目だな。まあ、よろしく頼む」
「回復・支援担当のリュド=バルトだ。リュドでいい」
「いっゔ」

 乗客三人を指差して紹介すると、メルは覚えたのか頷いた。
 まあ、覚えなくてもいい連中だ。全員「あうっ」と呼べばいい。
 
「ちょっと! 何で俺の自己紹介だけしないんだよ!」
「そんなの覚えているからに決まっているだろうが! この変態人質痴漢野朗が!」
「ゔゔゔっ!」
「うぐっ……」

 お前の為に全員が気を利かせてやっていたのに、下らない事を聞いてきた。
 喋れないメルに代わって、怒りの気持ちを込めて代弁してやった。

「確かに必要ないですね。加害者は忘れても、被害者は覚えているものです」
「いやいや、副隊長の指示じゃないですか⁉︎」
「私は連れてきて欲しいと頼んだんです。後ろから抱き着けとは一言も言ってません」
「やっぱりか、この変態め! お前は一番後ろで後ろ向きに座れ! その汚い目で二度とメルを見るんじゃないぞ!」

 一番悪い奴と小船の新しい席順が決まった。
 メルは先頭の俺の後ろに座ってもらう。流石に一番前は危険だ。
 でも、誰かの後ろに座らせるのも危険だ。
 信じているが、乗客に噛みついたら聖水が必要になってしまう。

 ♢

 地下46階……

 メルを仲間に加えると、46階の宝箱探しを始めた。
 といっても、進化したメルのお陰でそこまで苦労していない。
 進化した事で『宝箱探知LV6』『モンスター探知LV1』になっている。
 俺達の仕事は襲ってくるデーモンを倒しながら、世間話をするだけだ。

「そういえば、45階の不死身の植物はどうやって倒したんだ? すり下ろして倒したのか?」
「すり下ろす? あれは身体の細胞を破壊すれば倒せる。簡単で効果的なのは火だな。デカイ焚き火を作って、その中に投げ込めばいい。まあ、そんな手間をかけたくないなら……これだな」

 ウッドエルフの倒し方を聞いたら、オヤジが砲身の付いた長めの短剣を見せてきた。
 得意げに見せているが、その武器が魔法を撃つ銃なのは知っている。

「ちょっと見せてもらってもいいか?」
「ああ、いいぜ。見れるものならな」

 意味深な台詞を言って、ニヤリとオヤジが笑って、赤い刀身の剣銃を渡してきた。
 調べられても困らないのか、調べられない自信があるようだ。
 どちらにしても気持ち悪い笑みだが、調べるLV7の実力を見せてやろう。

【フレイム・インパクト:剣銃ランクX】——刀身と砲撃に炎属性を有する。
【使用素材:魔術、魔力、炎耐性、物理耐性、斬撃、射撃、炎竜の牙、炎竜の鱗、巨人の鉱石、虹色魔玉】
【必要アビリティ:武器製造LV7、道具製造LV7】

「……」

 なるほど、全然分からない。使った素材と必要なアビリティが分かっただけだ。
 それにランクXとか意味不明すぎる。威力が低いのか、高いのか、どっちか分からない。
 
「興味があるならうちの店に来い。お前は筋が良い。あの子供の服は上手く作れているぞ」
「それはどうも……ダンジョンから出られたら見学に行かせてもらうよ」

 褒められ勧誘されたが、今すぐに作れない武器に興味はない。
 魔法武器は金を貯めて、製作を依頼して手に入れるとしよう。
 手製のオリジナル武器をオヤジに返してやった。

 地下47階……

 46階の宝箱は五個しかなかった。誰が一個盗ったかという犯人探しが始まった。
 軽い取り調べと持ち物検査の結果、俺、ヴァン組、クォーク組、ホールド組の誰も盗っていなかった。
 だとしたら、オルファウス組かモンスターしか考えられない。
 モンスターはあり得ないから、犯人はオルファウスに決定された。

 でも、盗られたものは返ってこない。おそらく、もう使われてしまった後だ。
 真犯人探しが始まる前に、別の話題に切り替えるとしよう。
 燃える町を占拠する巨人を指差して、どうやって倒すか聞いてみた。

「あの巨人はどうやって倒したんだ? 集団で瓦礫を投げつけてくるだろ?」
「瓦礫は知らないが、普通は多数で撹乱して足を狙うな。ある程度の数を動けなくしてから、一体ずつ倒している」
「こっちも似たようなものです。たまに後ろを向いている巨人の首に、矢を直接射って倒す事もありますけどね」
「ふーん。一体ずつは一体ずつでも、まずは周囲の巨人の動きを奪った後か」

 俺の質問にリュド、ロビンの順番で教えてくれた。
 人数は六人いるけど、メルとメルの護衛の俺が外れると、四人になってしまう。
 ちょっと戦力的に不安なメンバーだけが残ってしまった。

 他のヤツらは、まだ下の階で火竜の素材を集めているのか、47階には誰も来ていない。
 俺としては、先に48階の宝箱から探して、47階に戻るのがベストだと思う。

「巨人の手足を切断すれば、安全に探せるとは思うがどうする? 人を呼んでくるか?」
「攻撃が三人、防御が二人もいれば十分ですよ。私、アレン、カナンが攻撃役。ジャンとリュドはメルの護衛をお願いします」
「まあ、そうなるだろうな。じゃあ、若いのに頑張ってもらうとするか」

 ロビンに勝手に作戦を決められてしまったが、俺だけ反対するとビビっていると疑われてしまう。
 やる気になっている、リュドとホールドにメルを預けて剣を抜いた。

「本気ですか、副隊長? 実質二人でやるようなもんですよ!」

 だけど、この臨時パーティには一人だけビビリが紛れ込んでいたようだ。
 アレンが俺の方をチラチラ見て、ロビンに危ないと言っている。
 その意見には俺も賛成だが、俺の方を見て言っているのが気に食わない。

「よく分かっているじゃないか。アレン、俺達の足を引っ張るんじゃないぞ」
「はぁ? お前に言ってんだよ! お前だけEランク冒険者だからな! 下から二番目だからな!」
「じゃあ、お前の実力はFだな。ビビってないでさっさと動けなくするぞ。それともビビり過ぎて、お前が動けないのか?」
「何だと! お前から動けなくしてやってもいいんだからな!」

 弱い犬ほどよく吠えるらしい。確かによく吠えてくるが、噛みつく勇気はないらしい。
 これだけ俺に言われているのに、殴りかかって来ない。
 先に殴ってやるから、殴り返してくるか試してやろうか。

「もういいでしょ。口喧嘩は終わりです。口ではなく、手と足を動かしてください。私が前から攻撃して注意を引きつけるので、二人は左右から別々の足を攻撃してください。それぐらいは出来ますね?」

 これから野良犬を拳で躾けるところだったのに、時間切れのようだ。ロビンが止めてきた。
 確かに野良犬の躾には時間がかかる。あとで人目のつかない所でやるとしよう。

「当たり前だ。アレン、行くぞ」
「なに、命令してんだよ。俺が左足を狙うから、お前は右足を狙えよ。分かったな!」
「いや、全然分かんない。俺が左足を狙うから、お前が右足を狙ってくれ。右手と左手、どっちか分かるよな?」
「ああーッ‼︎ もう駄目だ! もう我慢できない!」

 戦闘前なのに、味方一人の精神が恐怖で錯乱したようだ。
 右手と左手を丁寧に教えていると、いきなり奇声を上げて怒り出した。
 怖くてチビリそうなら、その辺の火の消化活動をしてくればいい。
 そのぐらいの時間は待っててやるよ。
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