ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

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第三章:魔人編

第112話 間話:オルファウス

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 地下49階『王城主戦場』……

 青空の下、小高い丘の上から広がる大草原を見渡す。
 銀の全身鎧を着た三千を超える顔の見えない兵士達が、綺麗な四角の形に並んでいる。
 武器は剣、槍、斧、弓、杖、盾と多種多様で、馬に乗っている兵士もいる。
 何度も見た風景ではあるが、戦場のピリピリした雰囲気にはいつも興奮させられる。

「うわぁー! これを突破して、あの城に行くのは無理ですよ!」
「三千から四千人の間だな。しかも、門は閉じられているか……」

 のんびり待っていると、丘に作られた門型の階段を下りて、銀髪と緑髪が二番乗りでやって来た。
 驚いて帰ろうとする銀髪とは対照的に、緑髪は冷静に戦力を確認している。
 戦う気がないのと、戦う気しかない正反対の二人組だ。

「ここは初めてか? 良かったら、門を通る方法を教えてやろうか?」
「……」

 陽気に話しかけてやったのに、二人は警戒しているのか無言だ。
 まあ、独り言でいいだろう。コイツらには頑張ってもらわないと俺が困る。

「銀の鎧を着た兵士は倒しても無駄だ。何度でも復活する。鎧の色が違う将軍が七人いるから、そいつらを優先的に倒せばいい。一人倒せば、そいつが操っている兵士が四百人ぐらい消えるからな」

 丘の上から鎧兵士の大軍を指差して教えてやる。
 少し探しただけでも赤、青、緑の鎧を着た将軍を見つけた。

「……つまりはここから倒せば楽に進めるわけですか」
「まあ、それが出来れば簡単だろうな」
「ちょっと副隊長遅いですよ。何やってたんですか!」
「荷車の移動です。デカイのがいなくなったので、必要最低限の荷物以外も持ってきました」

 銀髪と緑髪に遅れて、他の連中もようやく来たようだ。
 金髪の弓使いがもう弓矢を構えて狙おうとしている。
 
「上では助かりました。邪魔以外にも出来るとは思いませんでした」
「邪魔した覚えも助けたつもりもない。手柄を横取りしただけだ。あまりにも遅かったからな」
「そうですか。では、今度は早く倒すとしましょう」

 お礼なのか、文句なのか分からないが、まだ俺の話の途中なのに気の短いヤツだ。
 色違いの鎧を着た将軍達に向かって、矢を次々に発射していく。
 合計二十一本、七つの方向に矢は飛んでいった。

 バキィン‼︎
 
「えっ⁉︎」
「やはり、そう簡単には行きませんか」

 そして、将軍を守る見えない壁によって弾かれた。

「話は最後まで聞いた方がいい。最後まで聞かなくても分かるなら、別に聞かなくてもいいがな」

 予想通りの結果に笑いながら教えてやった。
 金髪は弾かれても驚いてないようだが、試し射ちの所為で鎧兵士の大軍が向かって来ている。
 階段の中に逃げ込んで、そこから安全に攻撃するつもりなら兵士しか倒せない。

 将軍は杖の兵士が魔法の壁で守っている。杖の兵士は盾の兵士が守っている。
 将軍を倒したいなら、最低でも盾と杖の兵士を倒すしかない。
 これが49階の簡単な攻略法だが、そう簡単には行かない。

 まあ、将軍を一人倒すとかなり楽になる。
 全員で一人倒して、階段で休憩を繰り返すのが妥当な作戦だ。
 将軍は宝箱を持っているから、倒せば一週間は現れない。

「……考えている時間はなさそうですね。遠距離と近距離に分かれて戦いましょう。遠距離隊が邪魔な兵士を倒して道を作ります。そこを突き抜けて近距離隊が将軍を仕留めてください」

 確かに金髪の言う通り、時間は待ってくれない。
 ダッダッダッと、力強い馬の蹄と地響きが足裏に伝わってきた。
 馬に乗った兵士が槍を突き出して、丘を駆け登ってくる。

「よーし、やってやるぜ!」
「ちょっと待て! まずは数を減らす。氷で動けなくすれば、倒す必要もなくなる」
「確かにそうだな。それなら俺にも協力させてくれ」

 剣や槍を構えた六人が、今すぐにでも飛び出そうとしていたが、それはオヤジに止められた。
 確かに金髪の作戦は力尽くの作戦で、敵の実力が分からない状況では危険過ぎる。
 自分達の実力に自信があるのは結構だが、時にはオヤジのような慎重さも大切だ。

「なるほど、賢いやり方かもしれない。通用すればな」

 魔銃から放たれる氷の閃光に撃ち抜かれた兵士達が、次々に凍り付いて停止していく。
 黒髪の魔法双剣士も氷の吹雪で協力している。凍った地面で兵士達が転倒している。

 一応、鎧兵士の弓兵が矢で反撃しているが、近距離隊に叩き落とされている。
 このまま上手く続けば、半分以上は氷漬けに出来るかもしれないな。
 
「今度は見学するのか?」
「そうしたいが無理そうだ。壊され始めた」

 少し離れた後方から奮闘する金髪達を見守っていると、エストが聞いてきた。
 長期戦を覚悟に将軍を一人ずつ倒すつもりなら、それでもいいだろうが、氷漬け作戦は失敗だ。
 凍り付いた兵士を動ける兵士が攻撃して殺している。
 ここの将軍は頭も使うから、簡単な対策はすぐに考えて実行する。

「最低でも将軍二人は倒す。俺とラスが援護するから、エスがトドメを刺す。それでいいな?」
「いつも通りの作戦だな。話す価値も聞く価値もない」
「だが、覚える価値はある。さあ、始めるぞ」

 簡単な説明を終わらせると、黄色の鎧を着た将軍への攻撃を開始した。
 対人戦闘の訓練と資金集めに、49階はたまに来ている。
 兵士の実力は地下25階の骸骨双剣士よりも少し強く、将軍は火竜並みの強さだ。
 邪魔な兵士を瞬殺して、復活する前に将軍を倒せる実力があれば、簡単に攻略できる。

 だが、この方法は魔力消費が激しいから、俺達三人でも一日で将軍全員は倒せない。
 それに将軍を全員倒しても、一番手強いのがもう一人残っている。

「あぁ、面倒くさい」

 シトラスが不満を呟きながら、六本の鎖で兵士を掴んで鉄球のように振り回す。
 鉄球の代わりになった兵士が、他の兵士に激しく打つけられる。
 潰れた鎧からは赤い血が流れ出している。

「少し借りるぞ」

 その死んだ鎧兵士の武器を重力で浮かせて、掴んで投げ飛ばす。
 投げ飛ばした武器が兵士達の鎧を貫通して倒していく。
 コイツらは魔石を落とさないから、武器を弾代わりに使うのが一番都合が良い。
 
「そろそろ終わりそうだな」

 こっちで派手に暴れて援護してやっているから、エストが盾兵士に到着している。
 振り上げた手から黒い刃を飛ばして、盾ごと兵士を切り倒している。
 凝縮された岩の刃は紙のように薄いのに、切れ味はBランクの武器に匹敵する。
 盾兵士と杖兵士を瞬殺すると、鎧を着た黒馬に騎乗した黄将軍を狙って、手を振り上げた。

「ぐっ!」
「ヒヒーン!」

 飛んできた黒い刃を黄将軍は剣を振り下ろして防いだが、馬の方は防げなかったようだ。
 宙に飛んだエストの右足蹴りが馬の首を切断して、さらに左足の回転蹴りが将軍を地面に蹴り落とした。
 
「終わりだな」

 エストに接近戦で黄将軍が勝てるとは思えない。
 十秒もしないうちに銀鎧の兵士達が停止して、すぐに消えていった。
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