ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

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第三章:魔人編

第109話 不死身の植物

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 順調に宝箱を見つけていたのに問題が起きた。ウッドエルフに見つかってしまった。
 戦闘は避けられそうにないので、剣を素早く水平に三回振って、鮮やかに三つの首を切断した。
 剣の素早さ上昇の加護の効果なのか、いつもよりも滑らかな感じに身体が動いてくれた。

「フッ。弱すぎ」
「オオオッー!」
「えっ、えっ⁉︎ 何これ⁉︎」

 だけど、鞘に剣を戻すのはまだ早いようだ。戦いはまだ終わっていなかった。
 身体の切断面から凄い勢いで、緑色の植物のつるが伸びてきて、頭を修復している。
 矢を射たれる前に、慌てて高速の乱れ切りで、手足や胴体をバラバラに切断した。

「ふぅー、危ない危ない。動物じゃないから、首を切っても死なな……んっ?」

 どうやらこの予想も違うようだ。
 地面の切断された頭や手足は何も起きないのに、胴体からまたつるが伸び始めている。
 胴体部分に心臓みたいな物があって、それを破壊しないと死なないようだ。

「くっ、分裂して増えないだけマシだと思うしかないか!」

 切っても死なないなら、叩いたら死ぬかもしれない。
 だけど、それを試す時間はない。胴体を狙って剣を振り下ろす。
 次に小さくなった胴体を黒岩で覆っていき、岩塊の中に急いで閉じ込める。

「ふぅー、これで安心だな」

 何とか三体のウッドエルフを岩塊に閉じ込めた。壊される可能性もあるが、時間稼ぎにはなる。
 だけど、時間稼ぎをするつもりはない。ウッドエルフ一体の岩塊を壊した。
 叩いたら死ぬのか試してやる。
 
「オラッ、オラッ、オラッー!」

 これはイジメではない。全身を修復させてから岩塊で再拘束した。
 顔と両手、両足を拘束されたウッドエルフの胴体をデタラメに殴りつける。
 念の為に股の間の急所も何度も踏みつける。

「これは駄目だな。全然死なない」

 七十発以上の暴行を加えると結論を出した。
 ウッドエルフは切っても死なないが、叩いても死なない。
 身体を調べてみたけど、手掛かりもなさそうだ。岩塊に閉じ込めるしかない。

 細かく切って岩塊に閉じ込めると、宝箱探しを再開した。
 念の為にスコップを作って、岩塊を一体だけ乗せて引き摺っている。
 ウッドエルフが自力で脱出できるか、検証する必要がある。

「毒とかで倒すのか? でも、毒の枝矢を使うから効かないか」

 宝箱を探しながらも、倒し方を考え続けるが全然分からない。
 姉貴の手帳にも倒し方は書いてなかったから、倒せなかったのかもしれない。
 倒せないなら、考えるだけ無駄だな。

 ♢

「よし、残り一個だな」

 六個目の赤い宝箱を開けて、中から虹色魔玉を手に入れた。
 遭遇したウッドエルフを次々に拘束したので、この森もかなり安全になった。
 今のところは岩塊に閉じ込めると、脱出不可能なようだ。

「次は青でも良いかもな。頼んだぞ、メル」
「ゔゔっ、ゔゔっ」

 宝箱を探すように左肩に手を乗せて頼んだ。
 すると、メルが首を左右に振って断ってきた。

「嫌々じゃないんだよ。残り二個なんだから頑張れ。見つけたら遊んでいいから」
「ゔゔっ、ゔゔっ」
「はぁ……俺の何が気に入らないんだ?」

 全部だと言われそうだが、とりあえず聞いてみた。
 人形、果物は飽きたみたいだから、追いかけっこでもしてやればいいのだろうか?
 でも、メルは何も喋らないから分からない。

「指差すだけでいいぞ。特別に俺がおんぶしてやる」
「ゔゔっ、ゔゔっ」
「まったく、わがままだな。馬にでもさせるつもりか?」

 破格の条件を出してやったのに、断られるとは思わなかった。
 メルは首を左右に振っている。俺のおんぶが気に入らないようだ。
 流石に俺も大人のプライドがあるから、絶対に馬にはならない。

「宝箱を探すつもりはないんだな?」
「ゔゔっ」
「んっ、あるのか?」
「あうっ」
「俺を揶揄っているのか?」
「ゔゔっ」

 聞き方から悪いと思って、縦と横の質問形式に変えてみた。
 すると、探すつもりはあるとメルは答えた。やっぱり俺を馬にさせたいようだ。
 だったら、プライドぐらいは捨ててやる。
 
「分かった。馬になって背中に乗せれば探してくれるんだな?」
「ゔゔっ」
「何だよ、馬じゃないのかよ。他の遊びなんて知らないぞ」

 さっきから予想が全部ハズレている。遊びたいわけじゃないのかもしれない。
 となると……宝箱を探せない、見つけられない。つまりは無いという事か?

「もしかして、この森にはもう宝箱は無いのか?」
「あうっ、あうっ!」
「はぁ……だったら、最初からそう言えよ。じゃあ、待ち伏せだな」

 やっと予想が当たった。メルが縦に激しく頷いている。
 最近通ったのは、ヴァン達ぐらいしかいないから、盗んだ犯人はアイツらだ。
 44階の宝箱は探したくないし、46階の階段の前に行って、戻ってくるのを監視するか。

「まったく嫌がらせか? 取るなら全部取って行けよな。余計な時間を使わせやがって」
「あうっ」

 姉貴の手帳を頼りに階段の場所に進んでいく。
 地味な嫌がらせにはイラッと来るけど、逆に考えれば、虹色魔玉を集めているという事だ。
 残りはたったの八個だ。45階に戻ってきたところを狙えば、俺とメルの分が手に入る。

「ククッ。良い作戦を思いついたぞ。これなら完璧だ!」
「あうっ?」

 どうやって襲おうか考えていると、とんでもない作戦を思いついてしまった。
 岩塊に閉じ込めているウッドエルフを全部集めて、階段から上がってきたヴァン達を襲わせよう。
 森の中に二百体近くはいるから、絶対に助からない。

「いや、待てよ……? 俺は大丈夫なのか?」

 完璧な作戦だと笑っていたが、冷静になって考え直すと、重大な欠点がありそうだ。
 ウッドエルフを閉じ込めた岩塊を壊すには、近くにいないといけない。
 そして、長時間閉じ込めらていた、ウッドエルフ達の怒りの矛先が、誰に向くか考えた方がいい。
 それは手足を切って、腹を殴りまくって、急所を蹴り潰した相手に決まっている。

「……ヤバそうだな。やめておくか」

 俺まで絶対に助からない作戦は却下する事にした。
 やはり一人ずつ襲撃した方が安全そうだ。

「んっ? 何かあるぞ」

 灰色レンガで作られた階段口の前に、人工的に作られた四角い岩柱が置かれている。
 明らかに罠の臭いしかしないが、バラの臭いで嗅覚は麻痺している。
 周囲を警戒しつつ階段に近づいていくと、腹の高さの岩柱の上に、白い紙の角が飛び出していた。

「手紙か? でも、完全に埋まっているな」

 紙を摘んで引っ張ってみたが、岩柱の中に完全に埋まっていて取れない。
 他にも虹色に光る何かが埋まっているが、少ししか見えない。
 まさか、本物の虹色魔玉ではないだろうけど、両方とも岩柱を壊さないと取れない。

「なるほど。これはそういう罠か」

 この罠の意味が分かってしまった。取るには壊さないといけはい。
 でも、壊したら俺の存在が知られてしまう。
 つまり、45階に俺が来ているか調べる為の罠だ。

 だったら、やる事は簡単だ。壊して作り直せば問題ない。
 だが、奴らは俺が地魔法使いなのを知っている。
 作り直すぐらいは簡単に予想できるはずだ。

「くっ、意味不明な罠で俺を混乱させるつもりか!」

 右拳を振り上げて、壊すか、壊さないかの葛藤を繰り返す。
 でも、近くにアイツらが潜んでいるなら、この葛藤の時間にもう襲われている。
 誰もいないのならば、さっさと壊した方がいいに決まっている。
 
 ドガッ!

「……何も起きないな?」

 岩柱を殴り壊して素早く周囲を警戒したけど、無意味な心配だったようだ。
 地面に岩片と一緒に落ちている、長方形の紙と虹色に輝く玉を拾った。

「嘘だろ⁉︎ 本物だ」

 まさかと思って調べてみたけど、本物の虹色魔玉だった。
 普通は偽物を使うに決まっている。

「どういうつもりなんだ? 全然意味が分からない」

 とりあえず虹色魔玉は貰っておくけど、目的が分からない。
 休戦とか和解の申し出なのだろうか? 半分に折り畳まれた手紙を広げてみた。

『お前の大切なものを預かっている。殺されたくなければ、50階まで取りに来い』
「……何これ?」

 手紙を読んでみたけど、和解の申し出ではなかった。どちらかというと脅迫文に近い。
 その前に俺に大切なものが分からない。人なのか、物なのか教えてほしい。
 多分、壊すじゃなくて、殺すだから人間なんだろう。

 だとしたら消去法で考えると、大切なものはリエラぐらいしか思い浮かばない。
 虹色魔玉を使えば俺が50階に行けると、口の軽いリエラが白状したのだろう。
 これだから女は駄目だ。俺ならどんな拷問を受けても、叫び声一つ上げない。

「また人質とは汚い奴らだな。男なのに恥ずかしくないのか?」

 こんな卑怯な手を使う相手は絶対に許せない……とは思いつつも、俺も人質を使った経験がある。
 やられたから、やり返されても文句は言えないだろう。
 とりあえず進化してから、取り返せそうなら50階に行くとするか。
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