51 / 172
第二章:ゾンビ編
第51話 間話:負傷冒険者
しおりを挟む
「イテテテ……完璧に頭イカれてやがる」
目の部分だけが開いている、鼻や口がしっかり作られた仮面を着けた奴に襲われた。
全身打撲と複数の骨折で身体が痛い。今の状態だと歩くのも無理だ。
「たまに居るんだよ。何年冒険者をやっても芽が出ないやつがおかしくなる事がよ」
「馬鹿な奴だよな。動けるやつが町に連絡に行ったから、一つしかない出入り口は封鎖されるのによ」
馬鹿なのは意味不明な行動を見れば分かる。
仮面の男は太陽石七個を要求してきて、渡したら、今度は命水晶と竜水銀を七個渡せと言ってきた。
流石に七個あったのは竜水銀だけだった。命水晶は二個しかなかった。
「くそ、あの野朗! 絶対に盗んだ装備で強くなるつもりだぞ!」
「まずは両腕を斬り落とそう。そうすれば指輪の効果はなくなる!」
「いや、目を潰そう! 見えなければ攻撃しようがない!」
俺も同じ気持ちだ。手も目も足でも何でもいい。
やられた分はキッチリ返さないと怒りが収まらない。
苦労して宝箱から手に入れた装備を簡単に渡すつもりはない。
「待て。やめておけ」
「何言ってんだよ! 俺達から装備を奪ったアイツを見逃すつもりか!」
「そうだ! 今度は油断も手加減もしねぇ! 最初から最後まで全力でブチ殺してやる!」
「手も足も出ずに負けたばかりだろう。少しは冷静になれ」
負傷もしてない腰抜け共が反対しているが、岩に閉じ込められた仲間も救出された。
奪われたのは装飾品と冒険者カードだけだ。武器と鞄は部屋の隅に置かれていた。
武器を手に取って、アイツを追いかけて、四十人以上で襲撃すればブチ殺せる。
「死にたいなら好きにしろ。アイツが持っていた剣を見てないのか?」
「剣? 剣なら冒険者なら誰でも持っている」
「あの黒い剣は『ゴーレムブレイカー』だ。カナンが自慢していた剣と言えば分かるだろう?」
「つまりはCランク冒険者か……」
これこら一致団結して突撃しようとしていたのに、腰抜けがやる気を削ぐ事を言ってくる。
確かゴーレムブレイカーは、三十階以上のモンスター素材で強化されたCランク武器だ。
俺達はDランク武器だか、武器の性能差なんて人数で圧倒すればどうとでもなる。
「くそ、腰抜け共め! うぐっ、身体が動けば俺が戦うのに!」
何とか起き上がろうとするが、ハンマーみたいな右手で打ち抜かれた腹が悲鳴を上げている。
至近距離で特大の矢でも撃たれたように、まったく反応できなかった。
「そういえば、アイツ……カナンに似てなかったか? 地魔法を使っていただろう」
「確かに背格好は似ていたな。冒険者を襲って装備を盗むなんて、いかにもアイツがやりそうな事だ」
俺が起き上がろうと奮闘していると、何故か話が脱線して、剣の話から犯人探しに変わっていた。
「でも、カナンはあんなに強くないぞ。そもそも魔力量が化け物だ。絶対にカナンじゃない」
「いや、Aクラスのジャンヌの弟だ。本当は生きてて、一ヶ月間でCランクに成長したのかもしれない」
「その話には無理があるって。わざわざ死んだフリをする意味が分からん」
武器が同じで地魔法が使えても、アイツがカナンじゃないのは誰でも分かる。
あの仮面の男の実力は間違いなく、Cランク上位だ。流石にいい加減にしろと怒鳴った。
「そんな話、どうでもいいだろう! アイツを追わないのかよ!」
犯人がカナンじゃないのは明白だ。
いつまでも女みたいにペチャクチャ喋っている暇があるなら、男らしい戦いに行け。
「おっと、そうだったな。でも、水中遺跡は足場が狭いんだよな。水の中で溺れさせるか?」
「集団でやるなら、二十三階の荒野の方が広くて良い。でも、行くのが面倒だな。それに見失ったら意味がない」
「だったら水中遺跡でやるしかねぇだろ! 話なんていいから、さっさと行けよ!」
戦いやすい場所まで仮面の男を付けられるわけがない。
途中で気づかれて反撃されるだけだ。そんな事も分からない馬鹿達を怒鳴りつける。
だけど、今度は俺を無視して話を続けている。
「確かに急いだ方がいいが、確実に倒すなら、二十一階の冒険者と協力して挟み撃ちにした方が良いだろうな」
「だったら足の速いやつが先回りして、階段で休んでいる冒険者と、連絡を取ればいいんじゃないのか?」
「よし、それで行こう。アイツなら途中で遭遇した冒険者を襲うから、俺達の方が早く階段に到着できる」
「……」
ヤバイな。凄く良い作戦だと思う。コイツら頭良いんだな。
無駄な話し合いだと思っていたが、俺の方が無駄に怒っていただけみたいだ。
これ以上余計な事を言っても、恥をかくだけだ。
お口にチャックして、静かに勇者達の出陣をお見送りした。
目の部分だけが開いている、鼻や口がしっかり作られた仮面を着けた奴に襲われた。
全身打撲と複数の骨折で身体が痛い。今の状態だと歩くのも無理だ。
「たまに居るんだよ。何年冒険者をやっても芽が出ないやつがおかしくなる事がよ」
「馬鹿な奴だよな。動けるやつが町に連絡に行ったから、一つしかない出入り口は封鎖されるのによ」
馬鹿なのは意味不明な行動を見れば分かる。
仮面の男は太陽石七個を要求してきて、渡したら、今度は命水晶と竜水銀を七個渡せと言ってきた。
流石に七個あったのは竜水銀だけだった。命水晶は二個しかなかった。
「くそ、あの野朗! 絶対に盗んだ装備で強くなるつもりだぞ!」
「まずは両腕を斬り落とそう。そうすれば指輪の効果はなくなる!」
「いや、目を潰そう! 見えなければ攻撃しようがない!」
俺も同じ気持ちだ。手も目も足でも何でもいい。
やられた分はキッチリ返さないと怒りが収まらない。
苦労して宝箱から手に入れた装備を簡単に渡すつもりはない。
「待て。やめておけ」
「何言ってんだよ! 俺達から装備を奪ったアイツを見逃すつもりか!」
「そうだ! 今度は油断も手加減もしねぇ! 最初から最後まで全力でブチ殺してやる!」
「手も足も出ずに負けたばかりだろう。少しは冷静になれ」
負傷もしてない腰抜け共が反対しているが、岩に閉じ込められた仲間も救出された。
奪われたのは装飾品と冒険者カードだけだ。武器と鞄は部屋の隅に置かれていた。
武器を手に取って、アイツを追いかけて、四十人以上で襲撃すればブチ殺せる。
「死にたいなら好きにしろ。アイツが持っていた剣を見てないのか?」
「剣? 剣なら冒険者なら誰でも持っている」
「あの黒い剣は『ゴーレムブレイカー』だ。カナンが自慢していた剣と言えば分かるだろう?」
「つまりはCランク冒険者か……」
これこら一致団結して突撃しようとしていたのに、腰抜けがやる気を削ぐ事を言ってくる。
確かゴーレムブレイカーは、三十階以上のモンスター素材で強化されたCランク武器だ。
俺達はDランク武器だか、武器の性能差なんて人数で圧倒すればどうとでもなる。
「くそ、腰抜け共め! うぐっ、身体が動けば俺が戦うのに!」
何とか起き上がろうとするが、ハンマーみたいな右手で打ち抜かれた腹が悲鳴を上げている。
至近距離で特大の矢でも撃たれたように、まったく反応できなかった。
「そういえば、アイツ……カナンに似てなかったか? 地魔法を使っていただろう」
「確かに背格好は似ていたな。冒険者を襲って装備を盗むなんて、いかにもアイツがやりそうな事だ」
俺が起き上がろうと奮闘していると、何故か話が脱線して、剣の話から犯人探しに変わっていた。
「でも、カナンはあんなに強くないぞ。そもそも魔力量が化け物だ。絶対にカナンじゃない」
「いや、Aクラスのジャンヌの弟だ。本当は生きてて、一ヶ月間でCランクに成長したのかもしれない」
「その話には無理があるって。わざわざ死んだフリをする意味が分からん」
武器が同じで地魔法が使えても、アイツがカナンじゃないのは誰でも分かる。
あの仮面の男の実力は間違いなく、Cランク上位だ。流石にいい加減にしろと怒鳴った。
「そんな話、どうでもいいだろう! アイツを追わないのかよ!」
犯人がカナンじゃないのは明白だ。
いつまでも女みたいにペチャクチャ喋っている暇があるなら、男らしい戦いに行け。
「おっと、そうだったな。でも、水中遺跡は足場が狭いんだよな。水の中で溺れさせるか?」
「集団でやるなら、二十三階の荒野の方が広くて良い。でも、行くのが面倒だな。それに見失ったら意味がない」
「だったら水中遺跡でやるしかねぇだろ! 話なんていいから、さっさと行けよ!」
戦いやすい場所まで仮面の男を付けられるわけがない。
途中で気づかれて反撃されるだけだ。そんな事も分からない馬鹿達を怒鳴りつける。
だけど、今度は俺を無視して話を続けている。
「確かに急いだ方がいいが、確実に倒すなら、二十一階の冒険者と協力して挟み撃ちにした方が良いだろうな」
「だったら足の速いやつが先回りして、階段で休んでいる冒険者と、連絡を取ればいいんじゃないのか?」
「よし、それで行こう。アイツなら途中で遭遇した冒険者を襲うから、俺達の方が早く階段に到着できる」
「……」
ヤバイな。凄く良い作戦だと思う。コイツら頭良いんだな。
無駄な話し合いだと思っていたが、俺の方が無駄に怒っていただけみたいだ。
これ以上余計な事を言っても、恥をかくだけだ。
お口にチャックして、静かに勇者達の出陣をお見送りした。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異端の紅赤マギ
みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】
---------------------------------------------
その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。
いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。
それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。
「ここは異世界だ!!」
退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。
「冒険者なんて職業は存在しない!?」
「俺には魔力が無い!?」
これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・
---------------------------------------------------------------------------
「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。
また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・
★次章執筆大幅に遅れています。
★なんやかんやありまして...

クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる