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第二章:ゾンビ編
第47話 脱出の時
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三週間後……
「予想通り現れたな」
一ヶ月間の強制的な引きこもりがやっと終わった。
祭壇に青い宝箱が現れ、壁にはゾンビが落ちてくる穴が現れた。
そして、念願の出入り口の階段も大きく口を開けている。
「俺に同じ手は通用しない」
両手を壁に向けると、祭壇に向かって歩きながら、十四個のゾンビ穴に分厚い岩塊を発射して蓋をしていく。
失敗した経験から、何も学ぼうとしないのは馬鹿がする事だ。
不自然な穴があったら入る前に、塞げ。とにかく塞げば良い事も悪い事も何も起きない。
「これを開けるのは出た後にしないとな」
祭壇の青い宝箱の前まで来たが、不用意に開けて、また閉じ込められるのはゴメンだ。
祭壇の台座を破壊して、台座ごと持ち上げた。あとは宝箱とジェイゾンビと一緒に脱出するだけだ。
「はぁ……長かった」
「グガァ、グガァ!」
大きな岩レンガに閉じ込めた、ジェイゾンビを引き摺りながら、階段を上っていく。
一ヶ月間で一度も空腹や眠気を感じなかった。
お陰様で二十四時間、魔法の修行は出来たが退屈で死にそうだった。
でも、これだけ修行した成果が『地魔法LV6』と中途半端な力を得た程度だった。
まあ、二十四時間でも一ヶ月は短過ぎた。修行効果二倍でも二ヶ月、十倍でも十ヶ月だ。
神に選ばれた大天才の俺でも、LV8になるには三年の修行は必要なのだろう。
「邪魔だ」
ドガァン‼︎ 階段の天井を塞ぐ邪魔な蓋を、地面から大きな石柱を迫り上げさせて、宙に打ち上げた。
この程度で今の俺の足止めが出来ると思ったら大間違いだ。
「ふぅー、これが外の空気か……中と同じだな」
久し振りの外の空気を吸ってみたが、さっきまで居た部屋の中と一緒だった。
まあ、同じ二十階だ。変わらないのは当たり前だ。
部屋の中に誰もいないのが気になるが、五日で助けに誰も来なかった。
無能な奴らには期待するだけ、時間の無駄だと再確認できて良かった。
「さてと、お楽しみの時間だ」
青い宝箱を開けると、銀色の指輪が出てきた。
この時点で『剣術LV1』じゃないかと、嫌な予感がしているが『調べる』を使ってみた。
【神器の指輪:使用者に体術LV1を与える】
【LV2強化素材:ゾンビの骨五本、槍魚人の鱗五枚、獅子王の皮五枚】
「体術か……」
持ってないアビリティだから、指輪を填めれば少しは強くなれる。
だが、強化するにはゾンビの『行動可能階層二十階』をどうにかしないといけない。
人間に戻るまでは、階段にある神の結界で二十階から外には出られない。
でも、調べるでゾンビの情報を見た時に、進化素材:太陽石七個とあった。
おそらく、これが手掛かりだと思う。進化すれば階段を通れる可能性がある。
だが、そう簡単に太陽石を七個も手に入れられないのは知っている。
「よし、これで準備完了だな」
だから、二十階をうろついている冒険者を襲う事にした。
青白い肌に布を巻いて隠して、顔には地魔法で作った仮面を装着した。
これでゾンビだとバレる心配はない。
「フッフッ。完璧な作戦だな」
冒険者を襲うだけで、強化素材、聖水、太陽石をタダで手に入れられる。
ついでに憂さ晴らしも出来るし、二十階の赤い宝箱を狙う冒険者を追い出す事も出来る。
この方法なら最短で一日、最長でも一週間で太陽石七個が手に入る。
「さて、最初の獲物は誰かな?」
部屋から出ると、ジェイゾンビを引き摺りながら通路を歩いていく。
現在地が一ヶ月前のピラミッドの一階とは限らない。
とりあえず邪魔なゾンビ荷物を天辺の五階か、底の一階の階段の前に放置したい。
そうすれば誰かが助けてくれるだろう。
「おっ! いたいた……」
適当にピラミッドを進んでいると、一ヶ月振りに普通の人間に出会えた。
斧と剣と盾を装備している二十代前半の男二人組だ。
「おい、アイツ。何か引き摺っているぞ」
「やぁ、こんにちは」
「あぁ……てっ⁉︎ 何で、ゾンビ引き摺ってんだよ⁉︎」
ちょっと二人が警戒していたので軽く挨拶した。どうやら言葉は通じるようだ。
ジェイゾンビを見て動揺しているけど、俺も同じ現場に遭遇したら異常者に出会ったと思う。
だが、安心しろ。お前達は襲わない。
「これは人間のゾンビだ。一ヶ月前にゾンビになった奴でジェイとかいう弓使いだ。連れて行って治療してくれ」
「ジェイ? ジェイって、カナンと一緒にここで死んだやつじゃなかったか?」
「ほぉー……」
剣を装備した男がジェイの名前を聞いて、思い出したように言った。
なるほど。俺達は死んだ事にされているみたいだ。
「あんたはコイツをどこで見つけたんだ?」
「床に張り紙と一緒に落ちていたから拾ってきただけだ。そいつの荷物と冒険者カードだ」
斧を装備した男が聞いてきたので、鞄と冒険者カード、俺が事情を書いた紙を渡した。
二人は冒険者カードと紙を念入りに見ている。
紙には俺が命懸けでジェイを助けて、死亡したという美談を書いてある。
「あぁ……確かに冒険者カードはジェイの物みたいだな。でも、本人なのか?」
「それは俺には分からない。LV7の調べるなら分かるんじゃないのか? とりあえず上の階段の横にでも置いておけばいい。ギルドなら聖水以外の秘密の治療方法を知っているかもしれない」
「確かにその通りだな」
俺の美談が普通に無視されたが、まあいいだろう。
お前達にはそのゴミを引き取ってもらうから見逃してやる。
「おい、どこに行くんだ? あんたがギルドに説明するのが一番だろう」
斧の男が俺を呼び止めるが、今度は俺が無視してやった。
これでやっと自由だ。悪いがその紙に書いてある事が全てだ。
俺はジェイゾンビを拾っただけの、無関係な人間で通させてもらう。
「予想通り現れたな」
一ヶ月間の強制的な引きこもりがやっと終わった。
祭壇に青い宝箱が現れ、壁にはゾンビが落ちてくる穴が現れた。
そして、念願の出入り口の階段も大きく口を開けている。
「俺に同じ手は通用しない」
両手を壁に向けると、祭壇に向かって歩きながら、十四個のゾンビ穴に分厚い岩塊を発射して蓋をしていく。
失敗した経験から、何も学ぼうとしないのは馬鹿がする事だ。
不自然な穴があったら入る前に、塞げ。とにかく塞げば良い事も悪い事も何も起きない。
「これを開けるのは出た後にしないとな」
祭壇の青い宝箱の前まで来たが、不用意に開けて、また閉じ込められるのはゴメンだ。
祭壇の台座を破壊して、台座ごと持ち上げた。あとは宝箱とジェイゾンビと一緒に脱出するだけだ。
「はぁ……長かった」
「グガァ、グガァ!」
大きな岩レンガに閉じ込めた、ジェイゾンビを引き摺りながら、階段を上っていく。
一ヶ月間で一度も空腹や眠気を感じなかった。
お陰様で二十四時間、魔法の修行は出来たが退屈で死にそうだった。
でも、これだけ修行した成果が『地魔法LV6』と中途半端な力を得た程度だった。
まあ、二十四時間でも一ヶ月は短過ぎた。修行効果二倍でも二ヶ月、十倍でも十ヶ月だ。
神に選ばれた大天才の俺でも、LV8になるには三年の修行は必要なのだろう。
「邪魔だ」
ドガァン‼︎ 階段の天井を塞ぐ邪魔な蓋を、地面から大きな石柱を迫り上げさせて、宙に打ち上げた。
この程度で今の俺の足止めが出来ると思ったら大間違いだ。
「ふぅー、これが外の空気か……中と同じだな」
久し振りの外の空気を吸ってみたが、さっきまで居た部屋の中と一緒だった。
まあ、同じ二十階だ。変わらないのは当たり前だ。
部屋の中に誰もいないのが気になるが、五日で助けに誰も来なかった。
無能な奴らには期待するだけ、時間の無駄だと再確認できて良かった。
「さてと、お楽しみの時間だ」
青い宝箱を開けると、銀色の指輪が出てきた。
この時点で『剣術LV1』じゃないかと、嫌な予感がしているが『調べる』を使ってみた。
【神器の指輪:使用者に体術LV1を与える】
【LV2強化素材:ゾンビの骨五本、槍魚人の鱗五枚、獅子王の皮五枚】
「体術か……」
持ってないアビリティだから、指輪を填めれば少しは強くなれる。
だが、強化するにはゾンビの『行動可能階層二十階』をどうにかしないといけない。
人間に戻るまでは、階段にある神の結界で二十階から外には出られない。
でも、調べるでゾンビの情報を見た時に、進化素材:太陽石七個とあった。
おそらく、これが手掛かりだと思う。進化すれば階段を通れる可能性がある。
だが、そう簡単に太陽石を七個も手に入れられないのは知っている。
「よし、これで準備完了だな」
だから、二十階をうろついている冒険者を襲う事にした。
青白い肌に布を巻いて隠して、顔には地魔法で作った仮面を装着した。
これでゾンビだとバレる心配はない。
「フッフッ。完璧な作戦だな」
冒険者を襲うだけで、強化素材、聖水、太陽石をタダで手に入れられる。
ついでに憂さ晴らしも出来るし、二十階の赤い宝箱を狙う冒険者を追い出す事も出来る。
この方法なら最短で一日、最長でも一週間で太陽石七個が手に入る。
「さて、最初の獲物は誰かな?」
部屋から出ると、ジェイゾンビを引き摺りながら通路を歩いていく。
現在地が一ヶ月前のピラミッドの一階とは限らない。
とりあえず邪魔なゾンビ荷物を天辺の五階か、底の一階の階段の前に放置したい。
そうすれば誰かが助けてくれるだろう。
「おっ! いたいた……」
適当にピラミッドを進んでいると、一ヶ月振りに普通の人間に出会えた。
斧と剣と盾を装備している二十代前半の男二人組だ。
「おい、アイツ。何か引き摺っているぞ」
「やぁ、こんにちは」
「あぁ……てっ⁉︎ 何で、ゾンビ引き摺ってんだよ⁉︎」
ちょっと二人が警戒していたので軽く挨拶した。どうやら言葉は通じるようだ。
ジェイゾンビを見て動揺しているけど、俺も同じ現場に遭遇したら異常者に出会ったと思う。
だが、安心しろ。お前達は襲わない。
「これは人間のゾンビだ。一ヶ月前にゾンビになった奴でジェイとかいう弓使いだ。連れて行って治療してくれ」
「ジェイ? ジェイって、カナンと一緒にここで死んだやつじゃなかったか?」
「ほぉー……」
剣を装備した男がジェイの名前を聞いて、思い出したように言った。
なるほど。俺達は死んだ事にされているみたいだ。
「あんたはコイツをどこで見つけたんだ?」
「床に張り紙と一緒に落ちていたから拾ってきただけだ。そいつの荷物と冒険者カードだ」
斧を装備した男が聞いてきたので、鞄と冒険者カード、俺が事情を書いた紙を渡した。
二人は冒険者カードと紙を念入りに見ている。
紙には俺が命懸けでジェイを助けて、死亡したという美談を書いてある。
「あぁ……確かに冒険者カードはジェイの物みたいだな。でも、本人なのか?」
「それは俺には分からない。LV7の調べるなら分かるんじゃないのか? とりあえず上の階段の横にでも置いておけばいい。ギルドなら聖水以外の秘密の治療方法を知っているかもしれない」
「確かにその通りだな」
俺の美談が普通に無視されたが、まあいいだろう。
お前達にはそのゴミを引き取ってもらうから見逃してやる。
「おい、どこに行くんだ? あんたがギルドに説明するのが一番だろう」
斧の男が俺を呼び止めるが、今度は俺が無視してやった。
これでやっと自由だ。悪いがその紙に書いてある事が全てだ。
俺はジェイゾンビを拾っただけの、無関係な人間で通させてもらう。
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