ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
上 下
29 / 172
第一章:人間編

第29話 五階の青い宝箱

しおりを挟む
 ドガッ、ドガッ、ドガッ——

「「「ギュギュー‼︎」」」

 左右の手の平から発射される岩塊に、襲い掛かってくるホーンラビット達が弾き飛ばされていく。
 襲い掛からずに部屋の中で逃げ回ればいいのに、勇敢に立ち向かってくるからこうなる。

「メル、避けるぐらいは出来るな?」
「は、はい、何とか……」
「よし、じゃあやるぞ!」

 五匹ほど勇敢なホーンラビットを倒すと、部屋の奥に逃げた賢い三匹を相手にする。
 三匹同時に相手にするつもりはないので、メルに短剣と盾を構えてもらった。
 これで二対三。一匹片付ければ勝利は確定だ。盾と剣を構えて前進した。

「「「キュキュ!」」」
「きゃあ!」

 生き残った三匹が雄叫びを上げて、一斉にメルに襲い掛かった。
 流石は賢いから狙う相手が分かっている。メルは部屋の中を走って逃げ回っている。
 あとは俺が餌を追いかけている、ホーンラビット達を追いかけて倒すだけだ。

「ハァ、ハァ、はぁー、助かりました……」
「良くやった。宝箱を開けたら帰るぞ」

 生き餌が頑張ったお陰で、無傷でホーンラビット三匹を倒す事が出来た。
 右に左によく曲がって、角頭突きも飛び蹴りも上手く躱していた。
 ちょっと生き餌が疲れ果てているが、もう町に帰るから問題ない。

「また指輪です。これで三個目ですね」
「当たりじゃないか。指輪は手足含めて二十本も付けられる。超お得な装飾品だ。貸してみろ」

 青い宝箱を開けたメルが銅色の指輪を取り出すと、不満そうな顔で見せてきた。
 価値の分からない人間はこれだから困る。
 神器の手袋は左右あるが、片方の手だけ付けてもアビリティの効果はない。
 左右両方に付けて、やっとアビリティの効果が発動する。
 それに引き換え指輪は、填めればアビリティの効果がある。

【神器の指輪:使用者に体力上昇LV1を与える】

「もう持ってるよ!」
「隊長ッ⁉︎」

 受け取った指輪を調べてみたら、すでに同じ指輪を持っていた。
 苦労して苦労して見つけているのに、ゴミアビリティしか手に入らない。
 やっぱり四階とかダンジョン上層は全然駄目だ。

「……よし、帰って休むぞ! 明日は五階と六階だ! そのブロンズダガー改もいい加減強化しないとな」
「そういえば、そうでしたね。赤い宝箱を頑張って見つけましょう」

 まあいい。成功に困難はつきものだ。苦労はしているが、情報は確実に手に入っている。
 もうゴミしかない一階から四階は探す必要はなくなった。
 これからは五階の時代だ。

 ♢

 翌日……当たりしかない地下五階に到着した。
 赤い宝箱を三個見つけるだけで、ブロンズダガー改を強化できる。
 今日は青い宝箱は気にせずに、のんびりとダンジョン探索をするつもりだ。

「隊長、ここよりも九階の枯れ木の方がいいんじゃないですか? 枯れ木の方が動きは遅いですよ」

 ウルフを倒しながら古代遺跡を隅々まで探していると、メルが聞いてきた。
 悪くない考えだが、ジャングルは蒸し暑いからまだ駄目だ。
 それに順番に調べているのは意味があるからだ。

「いや、このまま順番に探していく。九階に青い宝箱がなければ意味がない。それに宝箱を見つけて、宝箱探知のLVを上げるのが一番の目的だからな」
「あぁー、なるほど。完全に忘れてました」
「初心は忘れるなよ。油断していると大怪我するからな」
「はい」

 メルは忘れているようだが、俺はしっかり覚えて数えている。
 宝箱探知がLV2になってから、青い宝箱を四個、赤い宝箱を十九個見つけている。
 そろそろLVアップを希望したいのだが、その気配はまだまだ感じられない。
 今は地道にコツコツ頑張るしかない。

「隊長、モヤモヤがありました!」
「そうか、これで完成するかもしれないな」
「はい、楽しみです!」

 今日、三個目のモヤモヤを見つけた。
 前の二つは赤い宝箱で古代結晶を二個手に入れた。
 次が赤い宝箱なら強化素材が全部揃う。

 建物の中や大木の上に宝箱がないか探していく。
 見つからない時は建物の壁や床をハンマーで叩いて調べていく。
 前の二つは建物の床下から見つかった。

 カァン、カァン……

「ここが怪しいな」

 建物の中を一軒ずつ丁寧に調べていると、違和感のある床を見つけた。
 灰色の煉瓦の床を壊していくと、青い宝箱を見つけてしまった。
 今は赤い宝箱を探しているから、空気を読んで欲しかった。

「隊長、良かったですね。青色の宝箱です。開けますね」
「ああ、頼む」

 赤い宝箱じゃなくてガッカリしていると思ったが、メルは気にしてないようだ。
 そこまで短剣を強化したいわけじゃないのかもしれない。

「靴が入っていました。今回は当たりですね」
「それは確かめるまで分からない」

 青い宝箱を開けると、足の入り口にフサフサの黒毛が付いた灰色の革靴が入っていた。
 確かにこれなら、今まで入手したアビリティとは別の可能性が高そうだ。
 靴を受け取ると早速調べてみた。

【神器の靴:使用者に素早さ上昇LV1を与える】
【LV2強化素材:ウルフの皮五枚、パラライズスネークの皮五枚、ホーンディアの皮五枚】

「素早さねぇ……」

 俺が習得していないアビリティだった。
 走る速さは、筋力上昇と体力上昇が高ければ自然と上がる。
 これは走る速さだけを上げる靴みたいだ。

 まあ、履いてみなければそれも分からない。とりあえず自分の靴を脱いで履いてみた。
 靴のサイズは指輪と同じように、使用者に合わせて変化する。履き心地は問題ない。
 ちょっと部屋の中を走ってみると、確かに足だけが軽くなったような感じだった。

「悪くはないが、俺よりもお前に必要だな」
「えっ、いいんですか?」
「当たり前だ。お前の戦力を上げるのが目的なんだから、お前が使うべきだ」
「分かりました。ありがとうございます」

 靴を脱ぐとメルに渡した。遠慮しているが無理矢理に渡した。
 俺が履いた靴は臭そうで嫌だとか思っているなら、顔面に擦り付けてやる。

「よし、五階はもういい。次は六階を探すぞ」
「はい!」

 これ以上時間をかけて、青い宝箱が無い五階を探すつもりはない。
 神器の靴の強化に必要なホーンディアは十四階にいるから、換金所のオヤジに注文するとしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝
ファンタジー
庭師であった祖父の薫陶を受けて、立派な竹林好きに育ったヒロイン。 大学院へと進学し、待望の竹の研究に携われることになり、ひゃっほう! 忙しくも充実した毎日を過ごしていたが、そんな日々は唐突に終わってしまう。 で、気がついたら見知らぬ竹林の中にいた。 酔っ払って寝てしまったのかとおもいきや、さにあらず。 異世界にて、タケノコになっちゃった! 「くっ、どうせならカグヤ姫とかになって、ウハウハ逆ハーレムルートがよかった」 いかに竹林好きとて、さすがにこれはちょっと……がっくし。 でも、いつまでもうつむいていたってしょうがない。 というわけで、持ち前のポジティブさでサクっと頭を切り替えたヒロインは、カーボンファイバーのメンタルと豊富な竹知識を武器に、厳しい自然界を成り上がる。 竹の、竹による、竹のための異世界生存戦略。 めざせ! 快適生活と世界征服? 竹林王に、私はなる!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

処理中です...