ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

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第一章:人間編

第29話 五階の青い宝箱

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 ドガッ、ドガッ、ドガッ——

「「「ギュギュー‼︎」」」

 左右の手の平から発射される岩塊に、襲い掛かってくるホーンラビット達が弾き飛ばされていく。
 襲い掛からずに部屋の中で逃げ回ればいいのに、勇敢に立ち向かってくるからこうなる。

「メル、避けるぐらいは出来るな?」
「は、はい、何とか……」
「よし、じゃあやるぞ!」

 五匹ほど勇敢なホーンラビットを倒すと、部屋の奥に逃げた賢い三匹を相手にする。
 三匹同時に相手にするつもりはないので、メルに短剣と盾を構えてもらった。
 これで二対三。一匹片付ければ勝利は確定だ。盾と剣を構えて前進した。

「「「キュキュ!」」」
「きゃあ!」

 生き残った三匹が雄叫びを上げて、一斉にメルに襲い掛かった。
 流石は賢いから狙う相手が分かっている。メルは部屋の中を走って逃げ回っている。
 あとは俺が餌を追いかけている、ホーンラビット達を追いかけて倒すだけだ。

「ハァ、ハァ、はぁー、助かりました……」
「良くやった。宝箱を開けたら帰るぞ」

 生き餌が頑張ったお陰で、無傷でホーンラビット三匹を倒す事が出来た。
 右に左によく曲がって、角頭突きも飛び蹴りも上手く躱していた。
 ちょっと生き餌が疲れ果てているが、もう町に帰るから問題ない。

「また指輪です。これで三個目ですね」
「当たりじゃないか。指輪は手足含めて二十本も付けられる。超お得な装飾品だ。貸してみろ」

 青い宝箱を開けたメルが銅色の指輪を取り出すと、不満そうな顔で見せてきた。
 価値の分からない人間はこれだから困る。
 神器の手袋は左右あるが、片方の手だけ付けてもアビリティの効果はない。
 左右両方に付けて、やっとアビリティの効果が発動する。
 それに引き換え指輪は、填めればアビリティの効果がある。

【神器の指輪:使用者に体力上昇LV1を与える】

「もう持ってるよ!」
「隊長ッ⁉︎」

 受け取った指輪を調べてみたら、すでに同じ指輪を持っていた。
 苦労して苦労して見つけているのに、ゴミアビリティしか手に入らない。
 やっぱり四階とかダンジョン上層は全然駄目だ。

「……よし、帰って休むぞ! 明日は五階と六階だ! そのブロンズダガー改もいい加減強化しないとな」
「そういえば、そうでしたね。赤い宝箱を頑張って見つけましょう」

 まあいい。成功に困難はつきものだ。苦労はしているが、情報は確実に手に入っている。
 もうゴミしかない一階から四階は探す必要はなくなった。
 これからは五階の時代だ。

 ♢

 翌日……当たりしかない地下五階に到着した。
 赤い宝箱を三個見つけるだけで、ブロンズダガー改を強化できる。
 今日は青い宝箱は気にせずに、のんびりとダンジョン探索をするつもりだ。

「隊長、ここよりも九階の枯れ木の方がいいんじゃないですか? 枯れ木の方が動きは遅いですよ」

 ウルフを倒しながら古代遺跡を隅々まで探していると、メルが聞いてきた。
 悪くない考えだが、ジャングルは蒸し暑いからまだ駄目だ。
 それに順番に調べているのは意味があるからだ。

「いや、このまま順番に探していく。九階に青い宝箱がなければ意味がない。それに宝箱を見つけて、宝箱探知のLVを上げるのが一番の目的だからな」
「あぁー、なるほど。完全に忘れてました」
「初心は忘れるなよ。油断していると大怪我するからな」
「はい」

 メルは忘れているようだが、俺はしっかり覚えて数えている。
 宝箱探知がLV2になってから、青い宝箱を四個、赤い宝箱を十九個見つけている。
 そろそろLVアップを希望したいのだが、その気配はまだまだ感じられない。
 今は地道にコツコツ頑張るしかない。

「隊長、モヤモヤがありました!」
「そうか、これで完成するかもしれないな」
「はい、楽しみです!」

 今日、三個目のモヤモヤを見つけた。
 前の二つは赤い宝箱で古代結晶を二個手に入れた。
 次が赤い宝箱なら強化素材が全部揃う。

 建物の中や大木の上に宝箱がないか探していく。
 見つからない時は建物の壁や床をハンマーで叩いて調べていく。
 前の二つは建物の床下から見つかった。

 カァン、カァン……

「ここが怪しいな」

 建物の中を一軒ずつ丁寧に調べていると、違和感のある床を見つけた。
 灰色の煉瓦の床を壊していくと、青い宝箱を見つけてしまった。
 今は赤い宝箱を探しているから、空気を読んで欲しかった。

「隊長、良かったですね。青色の宝箱です。開けますね」
「ああ、頼む」

 赤い宝箱じゃなくてガッカリしていると思ったが、メルは気にしてないようだ。
 そこまで短剣を強化したいわけじゃないのかもしれない。

「靴が入っていました。今回は当たりですね」
「それは確かめるまで分からない」

 青い宝箱を開けると、足の入り口にフサフサの黒毛が付いた灰色の革靴が入っていた。
 確かにこれなら、今まで入手したアビリティとは別の可能性が高そうだ。
 靴を受け取ると早速調べてみた。

【神器の靴:使用者に素早さ上昇LV1を与える】
【LV2強化素材:ウルフの皮五枚、パラライズスネークの皮五枚、ホーンディアの皮五枚】

「素早さねぇ……」

 俺が習得していないアビリティだった。
 走る速さは、筋力上昇と体力上昇が高ければ自然と上がる。
 これは走る速さだけを上げる靴みたいだ。

 まあ、履いてみなければそれも分からない。とりあえず自分の靴を脱いで履いてみた。
 靴のサイズは指輪と同じように、使用者に合わせて変化する。履き心地は問題ない。
 ちょっと部屋の中を走ってみると、確かに足だけが軽くなったような感じだった。

「悪くはないが、俺よりもお前に必要だな」
「えっ、いいんですか?」
「当たり前だ。お前の戦力を上げるのが目的なんだから、お前が使うべきだ」
「分かりました。ありがとうございます」

 靴を脱ぐとメルに渡した。遠慮しているが無理矢理に渡した。
 俺が履いた靴は臭そうで嫌だとか思っているなら、顔面に擦り付けてやる。

「よし、五階はもういい。次は六階を探すぞ」
「はい!」

 これ以上時間をかけて、青い宝箱が無い五階を探すつもりはない。
 神器の靴の強化に必要なホーンディアは十四階にいるから、換金所のオヤジに注文するとしよう。
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