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第一章:人間編
第28話 赤と青の確率
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コン、コン……
「んっ? これで三個目だな」
「凄いですね、隊長」
「まぁーな」
岩槍を地下四階の地面に突き刺すと、硬い手応えが返ってくる。
三階には赤い宝箱が二個しかなかった。
難しい場所に隠されているから、青い宝箱とは限らないようだ。
「チッ、今度も赤か」
地面の中から出てきた赤い宝箱を見ると、流石にガッカリした。
三度目の正直はないようだ。
「大丈夫です。三個集めれば、青と一緒です」
「そんなわけない。今日はハズレだ」
メルが適当に励まそうとするが、そんな言葉じゃ無理だ。
もしかすると俺が見つけると、全て赤い宝箱になるのかもしれない。
もちろん、そんな怪奇現象は発生しないが、そんな感じがしてきた。
「よし、次を探すぞ」
だが、気を取り直して四個目の宝箱を探し始めた。
壁沿いを歩いていると、すぐに新しいモヤモヤを発見した。
また地面の上には見つからなかったから、岩槍で地面を突き刺していく。
目に見える場所の宝箱は無いと思った方がよさそうだ。
ドォス、ドォス……
「隊長、他の冒険者も青い宝箱の防具を使っているんですか?」
「んっ?」
暇そうに地面を岩槍で突き刺しながら、メルが聞いてきた。
単純作業の連続で、かなり集中力が落ちている。
「ああ、使っているぞ。だが、ほとんどが上位ランクの冒険者だけだ。何故だか、分かるか?」
「……分かんないです」
「だろうな。だったら、冒険者ギルドのクソ野朗の話をしてやる」
問題を出すと、メルは少し考え込んだが、やっぱり分からなかった。
ちょうどいいので気分転換に、世の中の汚い仕組みを教える事にした。
まず、レアアビリティじゃなければ、未強化の神器を使う冒険者はいない。
でも、上位ランクの冒険者の多くが神器を使っている。
その理由は冒険者ギルドに『調べるLV7』を使える奴がいるからだ。
そいつが冒険者ランクを上げる事で、強化素材を調べて神器を強化してくれるらしい。
もちろん、強化素材の名前は絶対に教えない。明らかに金に汚いクソ野朗だというのは明白だ。
「ギルドにはそんなクソ野朗がいるんですね」
「おい、メル。言葉遣いが汚いぞ。そんな人がいるんですね、だ!」
「すみません……」
「俺が育て方が悪いと注意されるんだからな。まったく気をつけろよ」
「はい、すみません……」
丁寧に冒険者ギルドの闇を教えると、メルがもう悪い影響を受けて汚い言葉を使い始めた。
男はいいが、女は汚い言葉を使ったら駄目だ。
今からキチンと注意しないと、将来ババアみたいな汚い女になって苦労する。
コン、コン……
「あっ、隊長ぉー!」
「おい、青じゃないだろうな……」
少し離れて作業していると、ついにメルの番がやって来たようだ。
地面に岩槍を突き刺して、手を振って俺を呼んでいる。
これで青い宝箱だったら、明らかに男女差別が発生している。
「ここに何かあります」
「そうか……自分で掘れ」
「分かりました」
メルに近づいていくと、地面を指差して教えてきた。
俺は掘るつもりはない。岩スコップを作って手渡した。
メルは喜んで地面を掘っていく。何でも楽しい年頃なんだろう。
「あぁー、残念です。赤でした」
「フッフッ、気にするな。よくある事だ。次は青が見つかる」
地面から現れた赤い宝箱を見ると、メルは謝ってきた。二度あることは三度はないようだ。
何だか、ちょっとだけ優しい気持ちになれた。もう少しだけ頑張れそうだ。
♢
「隊長、ここまでモヤモヤします」
「やっぱり百メートルぐらいしかないな。壁の中に道でもあるのか?」
まだ地下四階にモヤモヤがあるのか、壁沿いを歩いて探してみた。
その結果、おかしな場所を見つけてしまった。
メルのモヤモヤが壁から百メートルぐらい離れると、反応が消えるそうだ。
宝箱探知はLV2のままだから、調べる範囲が減ってラッキーとは思えない。
考えられる宝箱のある場所は、壁の上か中のどちらかだ。
「隊長、どうするんですか?」
「昨日と同じだ。壁を叩いて調べる。何も発見できない場合はさっさと帰るぞ」
メルにどうするのか聞かれたが、そんなのは決まっている。
青い宝箱の可能性が高いのに、諦めるのはまだ早過ぎる。
ハンマー二本を作ると、一本をメルに渡した。
俺が上側、メルが下側をガンガン叩いて、壁に空洞がないか、横に並んで調べていく。
壁に集中し過ぎて、背後からホーンラビットに突き刺されないように注意しないといけない。
カァン、カァン……
「ここか?」
ちょっとだけ音が違う気がする。
叩く力加減のような気もするが、壊してみればすぐに分かるはずだ。
メルを壁から下がらせると、壁に向かって岩塊を全力でぶちかました。
ドガッ! 岩塊が激突した衝撃で、壁にビキビキとヒビ割れが走った。
一発じゃ駄目なのか、ただの壁なのか確認する為にもう一発発射した。
バコォ! 岩塊が激突した壁に明るい穴が開いた。壁の中にやっぱり何かあるようだ。
穴の中を覗いてみると、人が通れる程の通路が続いていた。
「どうやら洞窟探検をしないといけないようだ」
「はい……」
メルにそう言うと壁を壊して、人が入れる大きさの穴を開けていく。
ホーンラビットの大群が穴の奥から襲って来そうな予感がするが、俺を先頭に長方形の通路を進んでいく。
「「「キュキュ!」」」
しばらく問題なく進んでいくと、広くて丸い行き止まりの部屋に到着した。
部屋の真ん中には探している青い宝箱と、それを守るように八匹のホーンラビットがいる。
「守護者がいるようだ。お前は通路に退がっていろ」
「はい……」
メルを通路に退がらせると、俺も通路に退がった。
ここから岩塊の連続発射で、まずは数を減らす。戦況がヤバそうな時は一旦岩壁で通路を塞ぐ。
そして、岩壁の一部に小さな穴を開けて、そこから岩槍で壁の向こう側のウサギ狩りをする。
まさに完璧な作戦だ。
「んっ? これで三個目だな」
「凄いですね、隊長」
「まぁーな」
岩槍を地下四階の地面に突き刺すと、硬い手応えが返ってくる。
三階には赤い宝箱が二個しかなかった。
難しい場所に隠されているから、青い宝箱とは限らないようだ。
「チッ、今度も赤か」
地面の中から出てきた赤い宝箱を見ると、流石にガッカリした。
三度目の正直はないようだ。
「大丈夫です。三個集めれば、青と一緒です」
「そんなわけない。今日はハズレだ」
メルが適当に励まそうとするが、そんな言葉じゃ無理だ。
もしかすると俺が見つけると、全て赤い宝箱になるのかもしれない。
もちろん、そんな怪奇現象は発生しないが、そんな感じがしてきた。
「よし、次を探すぞ」
だが、気を取り直して四個目の宝箱を探し始めた。
壁沿いを歩いていると、すぐに新しいモヤモヤを発見した。
また地面の上には見つからなかったから、岩槍で地面を突き刺していく。
目に見える場所の宝箱は無いと思った方がよさそうだ。
ドォス、ドォス……
「隊長、他の冒険者も青い宝箱の防具を使っているんですか?」
「んっ?」
暇そうに地面を岩槍で突き刺しながら、メルが聞いてきた。
単純作業の連続で、かなり集中力が落ちている。
「ああ、使っているぞ。だが、ほとんどが上位ランクの冒険者だけだ。何故だか、分かるか?」
「……分かんないです」
「だろうな。だったら、冒険者ギルドのクソ野朗の話をしてやる」
問題を出すと、メルは少し考え込んだが、やっぱり分からなかった。
ちょうどいいので気分転換に、世の中の汚い仕組みを教える事にした。
まず、レアアビリティじゃなければ、未強化の神器を使う冒険者はいない。
でも、上位ランクの冒険者の多くが神器を使っている。
その理由は冒険者ギルドに『調べるLV7』を使える奴がいるからだ。
そいつが冒険者ランクを上げる事で、強化素材を調べて神器を強化してくれるらしい。
もちろん、強化素材の名前は絶対に教えない。明らかに金に汚いクソ野朗だというのは明白だ。
「ギルドにはそんなクソ野朗がいるんですね」
「おい、メル。言葉遣いが汚いぞ。そんな人がいるんですね、だ!」
「すみません……」
「俺が育て方が悪いと注意されるんだからな。まったく気をつけろよ」
「はい、すみません……」
丁寧に冒険者ギルドの闇を教えると、メルがもう悪い影響を受けて汚い言葉を使い始めた。
男はいいが、女は汚い言葉を使ったら駄目だ。
今からキチンと注意しないと、将来ババアみたいな汚い女になって苦労する。
コン、コン……
「あっ、隊長ぉー!」
「おい、青じゃないだろうな……」
少し離れて作業していると、ついにメルの番がやって来たようだ。
地面に岩槍を突き刺して、手を振って俺を呼んでいる。
これで青い宝箱だったら、明らかに男女差別が発生している。
「ここに何かあります」
「そうか……自分で掘れ」
「分かりました」
メルに近づいていくと、地面を指差して教えてきた。
俺は掘るつもりはない。岩スコップを作って手渡した。
メルは喜んで地面を掘っていく。何でも楽しい年頃なんだろう。
「あぁー、残念です。赤でした」
「フッフッ、気にするな。よくある事だ。次は青が見つかる」
地面から現れた赤い宝箱を見ると、メルは謝ってきた。二度あることは三度はないようだ。
何だか、ちょっとだけ優しい気持ちになれた。もう少しだけ頑張れそうだ。
♢
「隊長、ここまでモヤモヤします」
「やっぱり百メートルぐらいしかないな。壁の中に道でもあるのか?」
まだ地下四階にモヤモヤがあるのか、壁沿いを歩いて探してみた。
その結果、おかしな場所を見つけてしまった。
メルのモヤモヤが壁から百メートルぐらい離れると、反応が消えるそうだ。
宝箱探知はLV2のままだから、調べる範囲が減ってラッキーとは思えない。
考えられる宝箱のある場所は、壁の上か中のどちらかだ。
「隊長、どうするんですか?」
「昨日と同じだ。壁を叩いて調べる。何も発見できない場合はさっさと帰るぞ」
メルにどうするのか聞かれたが、そんなのは決まっている。
青い宝箱の可能性が高いのに、諦めるのはまだ早過ぎる。
ハンマー二本を作ると、一本をメルに渡した。
俺が上側、メルが下側をガンガン叩いて、壁に空洞がないか、横に並んで調べていく。
壁に集中し過ぎて、背後からホーンラビットに突き刺されないように注意しないといけない。
カァン、カァン……
「ここか?」
ちょっとだけ音が違う気がする。
叩く力加減のような気もするが、壊してみればすぐに分かるはずだ。
メルを壁から下がらせると、壁に向かって岩塊を全力でぶちかました。
ドガッ! 岩塊が激突した衝撃で、壁にビキビキとヒビ割れが走った。
一発じゃ駄目なのか、ただの壁なのか確認する為にもう一発発射した。
バコォ! 岩塊が激突した壁に明るい穴が開いた。壁の中にやっぱり何かあるようだ。
穴の中を覗いてみると、人が通れる程の通路が続いていた。
「どうやら洞窟探検をしないといけないようだ」
「はい……」
メルにそう言うと壁を壊して、人が入れる大きさの穴を開けていく。
ホーンラビットの大群が穴の奥から襲って来そうな予感がするが、俺を先頭に長方形の通路を進んでいく。
「「「キュキュ!」」」
しばらく問題なく進んでいくと、広くて丸い行き止まりの部屋に到着した。
部屋の真ん中には探している青い宝箱と、それを守るように八匹のホーンラビットがいる。
「守護者がいるようだ。お前は通路に退がっていろ」
「はい……」
メルを通路に退がらせると、俺も通路に退がった。
ここから岩塊の連続発射で、まずは数を減らす。戦況がヤバそうな時は一旦岩壁で通路を塞ぐ。
そして、岩壁の一部に小さな穴を開けて、そこから岩槍で壁の向こう側のウサギ狩りをする。
まさに完璧な作戦だ。
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