ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

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第一章:人間編

第27話 違法動物

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 メルを食堂に行かせると、魔石と素材を持って換金所にやって来た。
 二階の青い宝箱には『神器の指輪:体力上昇LV1』が入っていた。

 メルの体力はLV2だから、最低でもLV3まで強化する必要がある。
 必要な強化素材をメモに書いて、受付カウンターの赤毛オヤジに渡した。

「換金と購入だ。このメモの素材を安く売れ。冒険者を紹介できなかった迷惑料だからいいよな?」
「お前、何やったんだ⁉︎ 親父さんが町を探していたぞ!」

 ジジイ達がここまで探しに来たようだ。長居しない方が良さそうだ。
 俺が現れて赤毛オヤジが死ぬほど驚いている。
 この反応は間違いなく、俺が加害者側にされている。

「お前には関係ないだろ。さっさと素材を用意しろよ」
「変な事はしてないだろうな? 違法な動物とか飼ったりしてないな?」
「はぁ? 動物?」

 よく分からないが暴行ではなく、ヤバイ動物を飼っている事にされている。
 多分、メルを探していると言えないから、違法動物を探している事にしている。
 流石はジジイだ。狡賢い手を考える。
 
「動物なんて知らねえよ。お前も家に一匹飼っているだろう」
「お、おい‼︎ 冗談でもやめろ。俺まで疑われるだろう⁉︎」

 赤毛オヤジが余計な事を聞いてきたから、周りに聞こえるように教えてやった。
 確か二十代前半の一人娘がいるらしい。
 メルを連れているのが違法なら、コイツも違法だ。

「嘘吐くなよ。店で働かせているんだろう? 前に可愛いって聞いた事があるぞ」
「な、何を言ってるんだ⁉︎ そんな店は知らない! 本当だ、私は飼ってないからな!」
「えぇ……私達は信じてますよ」

 両隣の受付に必死に否定しているけど、明日には自宅調査される。
 人様の家庭に興味を持つからこうなる。仕事場では仕事しろ。

「き、貴様! 私に何の恨みがあるんだ!」
「だったら、仕事しろ。お前が家庭と職場で疎外されているからって、人様の家庭に首を突っ込むな」
「何だと⁉︎ 俺は疎外されてない! ここでも家庭でも必要とされている人間だ!」
「ひぃっ‼︎」

 本当に疎外されているようだ。
 カウンターを強く叩いて否定してきた。隣の若い女が驚いている。
 これは一人娘に体臭と口臭と存在がウザイから、相当に嫌われている。

「だったら、早く仕事しろよ」
「ぐぬぬぬっ、分かった。この素材でいいんだな?」
「分かっているなら、早くしろよ」
「このぉーッ‼︎」

 家でも疎外されている赤毛オヤジを、怒らせて怒らせて馬鹿にしまくった。
 今にも殴りかかりそうだが、顔を真っ赤にして我慢している。
 ここまでやれば、二度と家庭の話をしようとは思わない。

「おい、素材は全部で一万千ギルだ。お前が持ってきたゴミは二千四百ギルだ。金が足りないぞ」

 お客様に使っていい言葉遣いじゃないが、今日の俺は心が広いから許してやる。
 カウンターの上には注文した素材が並んでいる。
 自分で素材を手に入れればタダだが、手に入れた素材を強化に使うなら一緒だ。
 結局、先払いか後払いかの違いしかない。

「迷惑料がまったく入ってないな。ほら、一万ギルだ。さっさとお釣りを渡せ」
「ほら、千四百ギルだ。次はマシなゴミを持って来い」
「チッ、愛想のない受付だな。さっさとクビになれ」

 カウンターの上に、狼が描かれている一万ギル金貨を一枚置いた。
 この可哀想なオヤジには、値引きする極小の権限も与えられていないらしい。
 可哀想なオヤジからお釣りを受け取ると、食堂で待たせているメルの元に向かった。

 この強化素材で、筋力上昇の手袋と体力上昇の指輪を強化する。
 自然治癒力の指輪は、余裕がある時に強化すればいい。
 治療費は高いから、怪我するつもりも、怪我させるつもりもない。
 
 ♢

 地下三階『縦穴草原』……

「よし、リベンジだ。赤でもいいから一個見つけるぞ!」
「はい、任せてください!」

 昨日は宿屋でゆっくり休んだ。
 体力を完全回復させて地下三階にやって来た。
 今日は予定通りに三階と四階の捜索をする。

 前にも三階で宝箱を探したが、あの時は赤い宝箱も見つけられなかった。
 あの時よりも成長した、俺達の力を見せる時がやって来た。

 まずは壁沿いを調べていく。
 宝箱探知がLV2になった二日前の夜、帰り道にモヤの反応は無かった。
 階段から階段への直線ルートには、宝箱が無いという意味だ。

「昨日に続いて、壁の中にないだろうな?」

 嫌な予感がして、高い壁を見上げた。
 地上五百メートル以上、この高い壁はとても探せない。
 モヤの反応があっても、探すのは地上二メートルまでだ。

「隊長、モヤモヤです!」
「よし、いいぞ。まずは地面の上を調べる。見逃すなよ」
「了解です!」

 捜索を始めると、すぐにモヤを発見した。
 これまでの経験から、地上十メートル、地中一メートル、壁中五十センチまで宝箱があった。
 最初から地上も地中も十メートルも探すつもりはない。まずは地面の上を探していく。

 二十分後……

「しっかり突き刺して調べるんだぞ」
「手袋があります。任せてください」

 地面の上に無いと分かったので、岩槍を作って地面に突き刺している。
 昨日と似たような作業をしているが、昨日と同じ結果になる保証はない。
 昨日と違うのは、メルが筋力上昇LV2の手袋を填めている事だ。
 これで力作業が少しだけ楽になっている。

「あれ……神銅でも探しているのか? たったの千ギルだから買えばいいのに」
「メルちゃんが槍を使っているぞ。槍の練習かな?」
「やっぱり可愛いな。今度知り合いの女の子をダンジョンデートに誘ってみるか」

 岩槍を草原に突き刺しながら歩き回る。
 通りすがりの冒険者の多くが、頑張って宝箱を探している俺達を見ている。
 中には俺ではなく、メルを見ている冒険者もいるが、あれは偽冒険者で変態だ。

「おっ!」

 コンコンと岩槍の先端に、確かな手応えを感じた。
 昨日は青い宝箱を見つけられなかったから、今日は俺の番みたいだ。
 岩槍を地面に突き刺すと、岩スコップを作って、手応えを感じた地面を掘っていく。
 草と土が退けられた地面の中から、赤い宝箱が出てきた。

「まずは一個目だな」

 青い宝箱じゃなくて少し残念だったが、前回のリベンジは成功だ。
 メルを呼んで宝箱を開けさせると、次のモヤを探した。
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