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第一章:人間編
第11話 盗賊
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「これは……⁉︎」
「どうかしたんですか?」
メルが家に暮らし始めて、八日が経過した。
いつものようにスライムを倒して家に帰ると、寝る前にメルを調べた。
すると、昨日までなかったものがあった。
「短剣LV1と職業を習得している」
「本当ですか!」
「ああ、本当だ。盗賊になっている」
「えっ、盗賊ですか……」
喜ぶべきだと思うが、盗賊はちょっと微妙な職業だ。
職業を教えると、喜んでいたメルが急に複雑そうな顔になった。
心当たりがあるのだろうか?
泥棒だから、孤児だからと盗賊になるとは限らない。
実際に盗んでいたとしても、俺の物を盗まなければ何も問題ない。
「盗賊は優秀な職業だ。短剣と弓と素早い動きが得意で、宝箱とモンスターの位置も分かる」
「へぇー、凄い職業なんですね」
良い職業はあるけど悪い職業はない。
盗賊の長所を教えてやると、メルは少し安心したようだ。
それどころか凄い職業を習得したと思い始めている。
「ああ、その通りだ。それに職業も成長する。俺の魔法使いなら、魔法剣士と魔術師になれる」
「だったら、私も魔法盗賊になれるんですね」
「ああ、可能性はあるぞ」
「わぁーい!」
魔法盗賊なんて職業は聞いた事ないが、子供も大人も夢を見る事を忘れたらいけない。
それに職業には上位職業がある。
魔法使いなら、剣と魔法が得意な『魔法剣士』、さらに強力な魔法が使える『魔術師』がいる。
どちらか一つしか選べないが、強化されるのは間違いない。
本棚から職業図鑑を取り出して、盗賊の習得アビリティを調べてみた。
職業限定の特別なアビリティが存在する。
盗賊なら宝箱を見つけると、『宝箱探知』というアビリティを習得できるみたいだ。
まだ戦力として期待できないので、メルには宝箱発見器として活躍してもらおう。
「とりあえず宝箱を開ければいいみたいだ。明日は三階と四階を探してみるか」
「私が三階に付いて行っても大丈夫なんですか?」
明日の予定を話すと、メルが心配そうに聞いてきた。
二階の巨大蚊との戦闘を諦めたから、危険だと心配なんだろう。
戦わせるつもりはないし、週末に七階まで行った。
子供を護衛しながら四階ぐらいは余裕で行ける。
「三階と四階は見晴らしのいい草原だ。俺から離れないようにすれば問題ない」
「そうですね。いつも通りに隊長が守ってくれるなら安心です」
「当たり前だ。三~四階のモンスターは俺の前ではいないのと一緒だ」
明日の予定が決まったので、あとは細かな点を話すだけになる。
命懸けで守るつもりはないが、弱小モンスターを追い払うぐらいはしてやる。
メルは怯えた子猫のように、俺の後ろに隠れていればいいだけだ。
「昼飯はダンジョンで食べるから、トイレ用の紙を忘れるなよ」
「分かりました。お昼ご飯は私が用意しますね」
「ああ、任せる。変なものは買うんじゃないぞ」
「はい、期待してください!」
張り切っているメルに昼飯代千ギルを渡した。
週末に町で遊んで美味しい店でも見つけたのだろう。
お菓子とケーキ以外なら許してやろう。
♢
一週間経って復活した、一階の宝箱四個は昨日取ってしまった。
残り三個はバラバラに復活しているから、誰かがたまに宝箱を開けているようだ。
二階は今日復活しているはずだが、三階と四階に青い宝箱がないか探してみたい。
青い宝箱にはアビリティ付きの特別な装備品が入っている。
メルに装備させれば、五階の探索も安全に出来る可能性がある。
だけど、簡単には手に入らないので期待するだけ無駄だ。
一階の青い宝箱は見つけられていない。
「今日の昼ご飯は私が作ったんですよ」
「そうか、それは楽しみだな」
「肉団子のスパゲッティです」
一階はメルを先頭に炭鉱迷路を進んでいく。
昼飯を買うようにお金を渡したのに、早起きしてババアと一緒に作っていた。
千ギル程度の端た金を節約する為に時間を使うなら、勉強時間に使った方がいい。
クソ不味かったらすぐにやめさせてやる。
「宝箱の気配を感じるか?」
「何も感じないです」
「そうか……」
二階に到着すると先頭を交代して、三階への階段に向かって進んでいく。
一応宝箱の気配を聞いてみたが、やっぱり感じないようだ。
宝箱のアビリティを習得するまでは、今まで通りに目視で探すしかない。
「昨日の夜にも説明したが、時間があるからもう一度説明するぞ」
「お願いします」
冒険者が少し前に通ったのだろう。
巨大蚊が全然いないので、地下三~四階『縦穴草原』の説明をした。
縦穴草原は地面に空いた大きな穴に出来た草原だ。
天候は晴れで、あるのは高い岩壁、緑色の草、地面から突き出た岩と木しかない。
三階には『ビッグアント』と呼ばれる巨大アリが生息している。
四階には『ホーンラビット』と呼ばれる、小さな角が頭に生えた白ウサギがいる。
どちらも大群に襲われると非常に危険なモンスターだ。
「隊長でも危ない時があるんですか?」
「当たり前だ。人間相手でも五対一なら逃げるに決まっている。俺が危ないと思った時は、近くの冒険者に助けを求めて階段に逃げるんだな」
「えぇー! 一緒に逃げましょうよ!」
「逃げられる時は逃げるに決まっている。逃げられない時の話をしているんだ」
万が一の事態に備えて対処方法を教えた。
メルと比べれば、俺は超人的な強さかもしれないが、俺は文化系の人間だ。
体育会系のような馬鹿力は発揮できない。
人間相手の喧嘩は一対一までしかやらない。
本当に危険な時は子供を置き去りに全力で逃げる。
俺はそういう男だ。自分の身は自分で守れるように早く強くなるんだぞ。
「どうかしたんですか?」
メルが家に暮らし始めて、八日が経過した。
いつものようにスライムを倒して家に帰ると、寝る前にメルを調べた。
すると、昨日までなかったものがあった。
「短剣LV1と職業を習得している」
「本当ですか!」
「ああ、本当だ。盗賊になっている」
「えっ、盗賊ですか……」
喜ぶべきだと思うが、盗賊はちょっと微妙な職業だ。
職業を教えると、喜んでいたメルが急に複雑そうな顔になった。
心当たりがあるのだろうか?
泥棒だから、孤児だからと盗賊になるとは限らない。
実際に盗んでいたとしても、俺の物を盗まなければ何も問題ない。
「盗賊は優秀な職業だ。短剣と弓と素早い動きが得意で、宝箱とモンスターの位置も分かる」
「へぇー、凄い職業なんですね」
良い職業はあるけど悪い職業はない。
盗賊の長所を教えてやると、メルは少し安心したようだ。
それどころか凄い職業を習得したと思い始めている。
「ああ、その通りだ。それに職業も成長する。俺の魔法使いなら、魔法剣士と魔術師になれる」
「だったら、私も魔法盗賊になれるんですね」
「ああ、可能性はあるぞ」
「わぁーい!」
魔法盗賊なんて職業は聞いた事ないが、子供も大人も夢を見る事を忘れたらいけない。
それに職業には上位職業がある。
魔法使いなら、剣と魔法が得意な『魔法剣士』、さらに強力な魔法が使える『魔術師』がいる。
どちらか一つしか選べないが、強化されるのは間違いない。
本棚から職業図鑑を取り出して、盗賊の習得アビリティを調べてみた。
職業限定の特別なアビリティが存在する。
盗賊なら宝箱を見つけると、『宝箱探知』というアビリティを習得できるみたいだ。
まだ戦力として期待できないので、メルには宝箱発見器として活躍してもらおう。
「とりあえず宝箱を開ければいいみたいだ。明日は三階と四階を探してみるか」
「私が三階に付いて行っても大丈夫なんですか?」
明日の予定を話すと、メルが心配そうに聞いてきた。
二階の巨大蚊との戦闘を諦めたから、危険だと心配なんだろう。
戦わせるつもりはないし、週末に七階まで行った。
子供を護衛しながら四階ぐらいは余裕で行ける。
「三階と四階は見晴らしのいい草原だ。俺から離れないようにすれば問題ない」
「そうですね。いつも通りに隊長が守ってくれるなら安心です」
「当たり前だ。三~四階のモンスターは俺の前ではいないのと一緒だ」
明日の予定が決まったので、あとは細かな点を話すだけになる。
命懸けで守るつもりはないが、弱小モンスターを追い払うぐらいはしてやる。
メルは怯えた子猫のように、俺の後ろに隠れていればいいだけだ。
「昼飯はダンジョンで食べるから、トイレ用の紙を忘れるなよ」
「分かりました。お昼ご飯は私が用意しますね」
「ああ、任せる。変なものは買うんじゃないぞ」
「はい、期待してください!」
張り切っているメルに昼飯代千ギルを渡した。
週末に町で遊んで美味しい店でも見つけたのだろう。
お菓子とケーキ以外なら許してやろう。
♢
一週間経って復活した、一階の宝箱四個は昨日取ってしまった。
残り三個はバラバラに復活しているから、誰かがたまに宝箱を開けているようだ。
二階は今日復活しているはずだが、三階と四階に青い宝箱がないか探してみたい。
青い宝箱にはアビリティ付きの特別な装備品が入っている。
メルに装備させれば、五階の探索も安全に出来る可能性がある。
だけど、簡単には手に入らないので期待するだけ無駄だ。
一階の青い宝箱は見つけられていない。
「今日の昼ご飯は私が作ったんですよ」
「そうか、それは楽しみだな」
「肉団子のスパゲッティです」
一階はメルを先頭に炭鉱迷路を進んでいく。
昼飯を買うようにお金を渡したのに、早起きしてババアと一緒に作っていた。
千ギル程度の端た金を節約する為に時間を使うなら、勉強時間に使った方がいい。
クソ不味かったらすぐにやめさせてやる。
「宝箱の気配を感じるか?」
「何も感じないです」
「そうか……」
二階に到着すると先頭を交代して、三階への階段に向かって進んでいく。
一応宝箱の気配を聞いてみたが、やっぱり感じないようだ。
宝箱のアビリティを習得するまでは、今まで通りに目視で探すしかない。
「昨日の夜にも説明したが、時間があるからもう一度説明するぞ」
「お願いします」
冒険者が少し前に通ったのだろう。
巨大蚊が全然いないので、地下三~四階『縦穴草原』の説明をした。
縦穴草原は地面に空いた大きな穴に出来た草原だ。
天候は晴れで、あるのは高い岩壁、緑色の草、地面から突き出た岩と木しかない。
三階には『ビッグアント』と呼ばれる巨大アリが生息している。
四階には『ホーンラビット』と呼ばれる、小さな角が頭に生えた白ウサギがいる。
どちらも大群に襲われると非常に危険なモンスターだ。
「隊長でも危ない時があるんですか?」
「当たり前だ。人間相手でも五対一なら逃げるに決まっている。俺が危ないと思った時は、近くの冒険者に助けを求めて階段に逃げるんだな」
「えぇー! 一緒に逃げましょうよ!」
「逃げられる時は逃げるに決まっている。逃げられない時の話をしているんだ」
万が一の事態に備えて対処方法を教えた。
メルと比べれば、俺は超人的な強さかもしれないが、俺は文化系の人間だ。
体育会系のような馬鹿力は発揮できない。
人間相手の喧嘩は一対一までしかやらない。
本当に危険な時は子供を置き去りに全力で逃げる。
俺はそういう男だ。自分の身は自分で守れるように早く強くなるんだぞ。
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