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第1話
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「やあ、こんにちは。僕は26歳の男性会社員です。日常という刺激の少ない退屈な人生を、ゲームという仮想現実で紛らす、何処にでもいる平凡でありきたりな人生を送るゲーム中毒者です。さて、そんな平凡な僕が今日ご紹介するゲームはこちらです。【娘っち】です」
『引っ込め!!』『ぶっ殺すぞ!!』『金返せぇ~!』『地獄に落ちろ!!』『お触り禁止だったぞ!!』『風呂に入る時に水着は着ないぞ!!』
お静かにお願いします。まあ、一部の不健全なロリコン達のお怒りの気持ちは分かります。確かにクソゲーと呼ばれるに相応しいゲームです。私も可愛らしい娘達のパーケッジに騙されて購入したぐらいです。
ゲーム開始から突然始まる強制陣痛、出産イベントで心が折れたプレイヤーも多いでしょう。フルダイブVRゲームでいきなりの最大級の苦痛が訪れるのです。
しかも、出産の時間はランダムです。10分で終わる人もいれば、3時間を超える激闘に何度も、『私を殺してくれ』と願った男性プレイヤーもいるでしょう。
中には『クソババア』と罵っていた自分の母親を、『お母様』や『ママ』と感謝の気持ち込めて呼ぶようになった人もいるでしょう。あの大変な思いをして自分を産んでくれた母親に感謝したプレイヤーは多いはずです。私も温泉旅行をプレゼントしたぐらいです。
さてさて、ゲームの説明ほど、つまらない話はありません。ゲームの最大の楽しみはプレイする事です。では、ポチッとスイッチを押して、【娘っち】の世界に飛び込んでみましょう。
☆
☆
☆
「痛い痛い、はぁゔぁああ~~、殺して、今殺して、早く殺してぇ~~!! 私を殺してください!」
このフルダイブVRゲーム【娘っち】は、ご存知の通り、苦痛から始まります。いや、もはや苦痛と呼べる代物ではない。これは拷問です。
「お母さん、頑張ってください! もう少しですよ。ヒッ、ヒッ、フゥ~、ヒッ、ヒッ、フゥ~」
「この手抜きモブキャラめぇ~~! もう30分以上も同じ事ばかり言って! ゔゔぁぁぁ~!! ヒッ、ヒッ、フゥ~、ヒッ、ヒッ、フゥ~、ゔゔぁぁぁ! やっぱり痛い、痛いじゃない!!」
茶髪のツインテールをした、双子にしか見えない女性助産師2人に両手首を押さえられ、無痛分娩法として知られる【ラマーズ法】という呼吸法を繰り返します。
けれども、腹部の下の方の痛みはますます酷くなります。何が無痛なのか、しっかりと議論したい所です。
そして、この痛みの原因であるゲームの開発者いわく、『開発者達のゲームを産み出す苦痛と、実際の出産の苦痛を表現しました』と、この無駄な表現の所為で、予想売り上げが大きく下回り、開発会社が赤字という別の意味で苦しんだ事は言うまでもありません。
「お母さん、あと少しです。もう少しで産まれますよ。ヒッ、ヒッ、フゥーですよ!」
「今ので、238回だからね! 238回だからね!」
今の『もう少しです』で238回目です。300回を超えたら、この助産師2人に頭突きを喰らわせて、壁に頭部を思い切り打つけて、出産の痛みを少しは身体に分らせてやらないといけません。
けれども、実際にそれをやろうとしたプレイヤーの多くが、この手抜きモブキャラとしか思えない2人に、何の抵抗も出来ずに終わってしまいます。
「グギギィ~~!! もう絶対にお前ら殺してやるぅ~~!!」
「はいはい、お母さん、暴れたら駄目ですよ。ヒッ、ヒッ、フゥーです。もう少しですよ」
この2人は小娘なのに巨人族かと思えるほどに力が強いのです。完全なる手抜きモブキャラの癖に、力だけはS級冒険者に匹敵する高さです。
「ああぁ~~、頭が見えて来ましたよ。あと少しです。あと少しですよ!」
「頭?? 本当に? 本当にあと少し! ヒッ、ヒッ、フゥ~、ヒッ、ヒッ、フゥ~」
騙されました。ここから更に10分経過して、ようやく可愛い赤ちゃんが産まれました。
「おぎゃぁぁぁ!! おぎゃぁぁぁ!!」
「お母さん、よく頑張りましたねぇ。元気な女の子ですよ」
それはパーケッジのタイトルで知っています。これで男の子が産まれたら、ゲーム開発会社をパーケッジ詐欺と暴行で訴えてやります。
肝心の出産シーンはよくテレビで見る出産用の椅子に強制的に座らされ、股を開いて激痛を与えられるだけのものでした。足にかかっている緑のシーツの中がどうなっているのかは結局最後まで分からず終いです。
「あぁ~、なんて可愛い赤ちゃんなんでしょう♡ これからママと一緒に頑張って訓練して、S級冒険者を目指しましょうね」
「おぎゃぁぁぁ!! おぎゃぁぁぁ!!」
まあ、そんな些細な事はもうどうでもいいです。このゲーム最大の関門は突破されました。あとは可愛い娘との楽しい日々を過ごすだけです。世界中に散らばる娘好き達が狂喜乱舞した事でしょう。
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『引っ込め!!』『ぶっ殺すぞ!!』『金返せぇ~!』『地獄に落ちろ!!』『お触り禁止だったぞ!!』『風呂に入る時に水着は着ないぞ!!』
お静かにお願いします。まあ、一部の不健全なロリコン達のお怒りの気持ちは分かります。確かにクソゲーと呼ばれるに相応しいゲームです。私も可愛らしい娘達のパーケッジに騙されて購入したぐらいです。
ゲーム開始から突然始まる強制陣痛、出産イベントで心が折れたプレイヤーも多いでしょう。フルダイブVRゲームでいきなりの最大級の苦痛が訪れるのです。
しかも、出産の時間はランダムです。10分で終わる人もいれば、3時間を超える激闘に何度も、『私を殺してくれ』と願った男性プレイヤーもいるでしょう。
中には『クソババア』と罵っていた自分の母親を、『お母様』や『ママ』と感謝の気持ち込めて呼ぶようになった人もいるでしょう。あの大変な思いをして自分を産んでくれた母親に感謝したプレイヤーは多いはずです。私も温泉旅行をプレゼントしたぐらいです。
さてさて、ゲームの説明ほど、つまらない話はありません。ゲームの最大の楽しみはプレイする事です。では、ポチッとスイッチを押して、【娘っち】の世界に飛び込んでみましょう。
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「痛い痛い、はぁゔぁああ~~、殺して、今殺して、早く殺してぇ~~!! 私を殺してください!」
このフルダイブVRゲーム【娘っち】は、ご存知の通り、苦痛から始まります。いや、もはや苦痛と呼べる代物ではない。これは拷問です。
「お母さん、頑張ってください! もう少しですよ。ヒッ、ヒッ、フゥ~、ヒッ、ヒッ、フゥ~」
「この手抜きモブキャラめぇ~~! もう30分以上も同じ事ばかり言って! ゔゔぁぁぁ~!! ヒッ、ヒッ、フゥ~、ヒッ、ヒッ、フゥ~、ゔゔぁぁぁ! やっぱり痛い、痛いじゃない!!」
茶髪のツインテールをした、双子にしか見えない女性助産師2人に両手首を押さえられ、無痛分娩法として知られる【ラマーズ法】という呼吸法を繰り返します。
けれども、腹部の下の方の痛みはますます酷くなります。何が無痛なのか、しっかりと議論したい所です。
そして、この痛みの原因であるゲームの開発者いわく、『開発者達のゲームを産み出す苦痛と、実際の出産の苦痛を表現しました』と、この無駄な表現の所為で、予想売り上げが大きく下回り、開発会社が赤字という別の意味で苦しんだ事は言うまでもありません。
「お母さん、あと少しです。もう少しで産まれますよ。ヒッ、ヒッ、フゥーですよ!」
「今ので、238回だからね! 238回だからね!」
今の『もう少しです』で238回目です。300回を超えたら、この助産師2人に頭突きを喰らわせて、壁に頭部を思い切り打つけて、出産の痛みを少しは身体に分らせてやらないといけません。
けれども、実際にそれをやろうとしたプレイヤーの多くが、この手抜きモブキャラとしか思えない2人に、何の抵抗も出来ずに終わってしまいます。
「グギギィ~~!! もう絶対にお前ら殺してやるぅ~~!!」
「はいはい、お母さん、暴れたら駄目ですよ。ヒッ、ヒッ、フゥーです。もう少しですよ」
この2人は小娘なのに巨人族かと思えるほどに力が強いのです。完全なる手抜きモブキャラの癖に、力だけはS級冒険者に匹敵する高さです。
「ああぁ~~、頭が見えて来ましたよ。あと少しです。あと少しですよ!」
「頭?? 本当に? 本当にあと少し! ヒッ、ヒッ、フゥ~、ヒッ、ヒッ、フゥ~」
騙されました。ここから更に10分経過して、ようやく可愛い赤ちゃんが産まれました。
「おぎゃぁぁぁ!! おぎゃぁぁぁ!!」
「お母さん、よく頑張りましたねぇ。元気な女の子ですよ」
それはパーケッジのタイトルで知っています。これで男の子が産まれたら、ゲーム開発会社をパーケッジ詐欺と暴行で訴えてやります。
肝心の出産シーンはよくテレビで見る出産用の椅子に強制的に座らされ、股を開いて激痛を与えられるだけのものでした。足にかかっている緑のシーツの中がどうなっているのかは結局最後まで分からず終いです。
「あぁ~、なんて可愛い赤ちゃんなんでしょう♡ これからママと一緒に頑張って訓練して、S級冒険者を目指しましょうね」
「おぎゃぁぁぁ!! おぎゃぁぁぁ!!」
まあ、そんな些細な事はもうどうでもいいです。このゲーム最大の関門は突破されました。あとは可愛い娘との楽しい日々を過ごすだけです。世界中に散らばる娘好き達が狂喜乱舞した事でしょう。
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