6 / 7
謎解きと名探偵
夢のスープ
しおりを挟む「もう一回確認しようか。彼は奥さんを愛していたし、死体性愛者でもサディストでもないのだね」
「YESです。ですが彼は奥方を殺したのです」
「それは彼ににとっても我々にとっても喜ばしいい事かい」
ドイルは穏やかで美しい微笑みを浮かべる。
「NO。名探偵によりまよ。理解が出来るかは」
「ふむ、では細君の死体を見た男は何かを思いつきましたか」
明智君は悪戯好きの少年の様に笑う。
「YES。思いつきました。素敵な事を。ね」
料理長は不敵に大胆に微笑む。
「夢野さん、ワタクシとしては非常に不穏な思い付きの様な気がするのですが」
「NOですよ、乱歩さん。とても愉快で心躍ることですよ」
「なるほど、愉快で素敵で心躍る思いつきですか」
乱歩はやれやれとした態度を取りながら、意味深に微笑んだ。
ドイルは真剣に考えすぎたのか「ふぅ」と息を漏らしながら組んだ脚を組み替える。
「それは妻の容姿に関する事かい」
「YES、NO。生前の容姿には関係しませんが、死後には関係あります」
「なるほど、それは彼が死後彼女に何らかの手を加えたわけだね」
紳士は質問を詰めていく。
「YES、彼は最愛の妻に何か手を加えました」
乱歩は援護射撃の様に質問する。
「それは、妻の見た目を保存、もしくはそうですね衰えさせない様な理由から手を加えたのですか」
「YES、ここまでくれば解るでしょう。名探偵さん。彼は彼女の見た目を保存するため手を加えました」
夢野は熱狂的なショーマンの様なテンションで盛り上げる。
「なるほど」
二人の名探偵はラッパを吹いたように笑った。
「確かにこれは愉快で素敵で心躍る料理だ」
二人は顔を見あせた後、ホームズが静かに口を開いた。
ドイルと乱歩の眼には鷹の様な鋭く、顔には悪戯っ子の様な無邪気な笑みを浮かべていた。
「彼女が死んで、美しさを保存できると思って本当に手を加えたから男は喜んだのだね。そして、本当に若く美しい状態で保存出来てしまったと」
静かな口先には総てを見下すような自信が溢れていた。
「YES、YES。正解です。耐えられなかったのです。彼は愛しすぎたが故に彼女が衰えているのが。思ってたのです。なので彼女が死んだ時これ以上衰えないと。そうして彼は彼女の事を人形にして若さを保存する事が出来て、泣いて喜んでいると言う訳です」
夢野は人を殺した時の様に、不気味に狂気的に微笑んだ。
「愛とは常に狂気的なものです」
深淵の闇を覗いている様な笑みを浮かべる。
「夢野君と言い、乱歩君と言い日本の作家は好事家だね」
ドイルは死体の実験をしてる名探偵の様に微笑む。
「理解していただけると思ったのですがね。幻想狂気の作家の貴男方なら」
夢野は大げさに残念そうにクラクラしたような仕草をする。
「幻想、怪奇好きとしては仕方がないです」
乱歩は苦笑いをしながら言う。
「日本は和風ホラーもそうだけれど、独特だね」
知的な好奇心の為か目を輝かせる。
「では後で一緒にご覧になりませんか。興味深いジャパニーズホラーがあるのです」
乱歩は人差し指を美しい三日月の唇に静かに当てては、片目を軽く閉じた。
「感謝するよ、乱歩君」
ドイルは嬉しそうに目を光らせた。
「そう言えば、夢野君のスープはまだあるのかい」
「ええ、勿論」
「では頂きましょう」
「さて、では次は魚料理です。味わってくださいね。ドイルさん、乱歩さん」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符
washusatomi
キャラ文芸
西域の女商人白蘭は、董王朝の皇太后の護符の行方を追う。皇帝に自分の有能さを認めさせ、後宮出入りの女商人として生きていくために――。 そして奮闘する白蘭は、無骨な禁軍将軍と心を通わせるようになり……。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
消された過去と消えた宝石
志波 連
ミステリー
大富豪斎藤雅也のコレクション、ピンクダイヤモンドのペンダント『女神の涙』が消えた。
刑事伊藤大吉と藤田建造は、現場検証を行うが手掛かりは出てこなかった。
後妻の小夜子は、心臓病により車椅子生活となった当主をよく支え、二人の仲は良い。
宝石コレクションの隠し場所は使用人たちも知らず、知っているのは当主と妻の小夜子だけ。
しかし夫の体を慮った妻は、この一年一度も外出をしていない事は確認できている。
しかも事件当日の朝、日課だったコレクションの確認を行った雅也によって、宝石はあったと証言されている。
最後の確認から盗難までの間に人の出入りは無く、使用人たちも徹底的に調べられたが何も出てこない。
消えた宝石はどこに?
手掛かりを掴めないまま街を彷徨っていた伊藤刑事は、偶然立ち寄った画廊で衝撃的な事実を発見し、斬新な仮説を立てる。
他サイトにも掲載しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACの作品を使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる