ウミガメのスープを名探偵に

藤宮舞美

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謎解きと名探偵

夢のスープ

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「もう一回確認しようか。彼は奥さんを愛していたし、死体性愛者でもサディストでもないのだね」
「YESです。ですが彼は奥方を殺したのです」

「それは彼ににとっても我々にとっても喜ばしいい事かい」
 ドイルホームズは穏やかで美しい微笑みアルカイックスマイルを浮かべる。
NOさてどうでしょう名探偵あなたがたによりまよ。理解が出来るかは」

「ふむ、では細君の死体を見た男は何かを思いつきましたか」
 明智君らんぽは悪戯好きの少年の様に笑う。
「YES。思いつきました。素敵な事を。ね」
 料理長ゆめのは不敵に大胆に微笑む。

「夢野さん、ワタクシとしては非常に不穏な思い付きの様な気がするのですが」
「NOですよ、乱歩さん。とても愉快で心躍ることですよ」
「なるほど、愉快残虐的素敵変態的心躍る狂気的思いつきですか」
 乱歩はやれやれとした態度を取りながら、意味深に微笑んだ。
 ドイルは真剣に考えすぎたのか「ふぅ」と息を漏らしながら組んだ脚を組み替える。

「それは妻の容姿に関する事かい」
「YES、NO。生前の容姿には関係しませんが、死後には関係あります」
「なるほど、それは彼が死後彼女に何らかの手を加えたわけだね」
 紳士ドイルは質問を詰めていく。
「YES、彼は最愛の妻に何か手を加えました」

 乱歩は援護射撃の様に質問する。
「それは、妻の見た目を保存、もしくはそうですね衰えさせない様な理由から手を加えたのですか」
「YES、ここまでくれば解るでしょう。名探偵さんらんぽさん、ドイルさん。彼は彼女の見た目を保存するため手を加えました」
 夢野シェフは熱狂的なショーマンの様なテンションで盛り上げる。

「なるほど」
 二人の名探偵びしょくかはラッパを吹いたように笑った。
「確かにこれは愉快残虐素敵変態心躍る狂気的料理だ」
 二人は顔を見あせた後、ホームズドイルが静かに口を開いた。
 ドイルホームズ乱歩あけちの眼には鷹の様な鋭く、顔には悪戯っ子の様な無邪気な笑みを浮かべていた。
 
「彼女が死んで、美しさを保存できると思って本当に手を加えたから男は喜んだのだね。そして、本当に若く美しい状態で保存出来てしまったと」
 静かな口先には総てを見下すような自信が溢れていた。
「YES、YES。正解です。耐えられなかったのです。彼は愛しすぎたが故に彼女が衰えているのが。思ってたのです。なので彼女が死んだ時これ以上衰えないと。そうして彼は彼女の事を人形にして若さを保存する事が出来て、泣いて喜んでいると言う訳です」
 夢野は人を殺した時の様に、不気味に狂気的にたのしく微笑んだ。
「愛とは常に狂気的なものです」
 深淵の闇を覗いている様な笑みを浮かべる。

「夢野君と言い、乱歩君と言い日本の作家は好事家あくしゅみだね」
 ドイルは死体の実験をしてる名探偵ホームズの様に微笑む。
「理解していただけると思ったのですがね。幻想狂気の作家の貴男方なら」
 夢野は大げさに残念そうにクラクラしたような仕草をする。

「幻想、怪奇好きとしては仕方がないです」
 乱歩は苦笑いをしながら言う。
「日本は和風ホラーもそうだけれど、独特だね」
 知的な好奇心の為か目を輝かせる。
「では後で一緒にご覧になりませんか。興味深いジャパニーズホラーがあるのです」
 乱歩は人差し指を美しい三日月の唇に静かに当てては、片目を軽く閉じた。
「感謝するよ、乱歩君」
 ドイルは嬉しそうに目を光らせた。
「そう言えば、夢野君のスープはまだあるのかい」
「ええ、勿論」
「では頂きましょう」
 
「さて、では次は魚料理ポワソンです。味わってくださいね。ドイルさん、乱歩さんめいたんていのおふたりさん
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