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第二話 マヨヒゴの座敷童
マヨヒゴの座敷童 陸
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そこは、草木の生い茂る寂しい場所だった。
柵が竹林の処に設けられていた。
風が竹林の中を駆け巡る。
竹は誰かに砂を掛けられているのか、ザッザッと音をたてている。
「あ、旦那! 如何したんですかい。こんな所に」
聞き覚えのある声が竹林の奥からした。
「藤華こそ、如何してここに居るのかい」
「さっき此処に座敷童が入ったのが見えたからなんでさぁ。旦那も同じですかい」
「嗚呼、此処に彼女が向かった、と訊いたからね」
私たちは、一時、離れた藤華さんに会った。
藤華さんは、設けられた低い柵を軽々と飛び越えた。
柵の奥にある雑木林の中を捜していたのだろうか。
猫の毛には、落ち葉や土汚れが付いている。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん。どこ? どこにいるの」
座敷童は姉を呼び続けた。
私達も、座敷童の名前を呼んで捜していた。
「どこにいるんだろう。座敷童さん。居たら返事して」
私がそう言うと、草がサワサワと動いた。
私は、何となくそれが気になって、動いた草の方に歩いていった。
草は私の膝下くらいまで大きく伸びている。
私は、先ほど動いていた草の近くに行くと何となく足元を見た。
そこには妹の座敷童に良く似た、黒い和服の女の子が座っていた。
「どうしたの。妹の座敷童ちゃんが待っているよ」
「ここ、私、怪我したの」
彼女はそう言って私に膝を見せた。
膝には擦り傷がある。
擦り傷から血が出て膝が赤く染まっていた。
姉の座敷童は痛みで泣いてしまった。
私は直ぐに香果さんを呼びに言った方が良いと思った。
私は出血を抑えられる様な何かを必死で探した。
ポケットの中に清潔なハンカチが入っていた。
「えっと、これでここの傷口を押えていてね。ちょっと待ってて、直ぐに来るから」
私は姉の座敷童にハンカチで傷元を押えるよう指示をして香果さんのところに急いで向かった。
「香果さん、座敷童のお姉さんが居たよ」
「本当かい」
「ホントに、お姉ちゃん居たの」
香果さんたちは、とても嬉しそうな顔をした。
「でも、怪我しているみたいで」
香果さんの目付きが何時もとは違う真剣な鋭い眼差しに一瞬なった。
それは猛禽類の瞳の様に鋭かった。
「怪我をしているのかい、早く手当てをしてあげないと。八雲君案内を頼めるかい」
私は直ぐに承諾する。
「うん、そこの草のところ。付いて来て」
私は香果さんたちと姉の座敷童の所へ急いで向かった。
柵が竹林の処に設けられていた。
風が竹林の中を駆け巡る。
竹は誰かに砂を掛けられているのか、ザッザッと音をたてている。
「あ、旦那! 如何したんですかい。こんな所に」
聞き覚えのある声が竹林の奥からした。
「藤華こそ、如何してここに居るのかい」
「さっき此処に座敷童が入ったのが見えたからなんでさぁ。旦那も同じですかい」
「嗚呼、此処に彼女が向かった、と訊いたからね」
私たちは、一時、離れた藤華さんに会った。
藤華さんは、設けられた低い柵を軽々と飛び越えた。
柵の奥にある雑木林の中を捜していたのだろうか。
猫の毛には、落ち葉や土汚れが付いている。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん。どこ? どこにいるの」
座敷童は姉を呼び続けた。
私達も、座敷童の名前を呼んで捜していた。
「どこにいるんだろう。座敷童さん。居たら返事して」
私がそう言うと、草がサワサワと動いた。
私は、何となくそれが気になって、動いた草の方に歩いていった。
草は私の膝下くらいまで大きく伸びている。
私は、先ほど動いていた草の近くに行くと何となく足元を見た。
そこには妹の座敷童に良く似た、黒い和服の女の子が座っていた。
「どうしたの。妹の座敷童ちゃんが待っているよ」
「ここ、私、怪我したの」
彼女はそう言って私に膝を見せた。
膝には擦り傷がある。
擦り傷から血が出て膝が赤く染まっていた。
姉の座敷童は痛みで泣いてしまった。
私は直ぐに香果さんを呼びに言った方が良いと思った。
私は出血を抑えられる様な何かを必死で探した。
ポケットの中に清潔なハンカチが入っていた。
「えっと、これでここの傷口を押えていてね。ちょっと待ってて、直ぐに来るから」
私は姉の座敷童にハンカチで傷元を押えるよう指示をして香果さんのところに急いで向かった。
「香果さん、座敷童のお姉さんが居たよ」
「本当かい」
「ホントに、お姉ちゃん居たの」
香果さんたちは、とても嬉しそうな顔をした。
「でも、怪我しているみたいで」
香果さんの目付きが何時もとは違う真剣な鋭い眼差しに一瞬なった。
それは猛禽類の瞳の様に鋭かった。
「怪我をしているのかい、早く手当てをしてあげないと。八雲君案内を頼めるかい」
私は直ぐに承諾する。
「うん、そこの草のところ。付いて来て」
私は香果さんたちと姉の座敷童の所へ急いで向かった。
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