17 / 48
第二話 マヨヒゴの座敷童
マヨヒゴの座敷童 肆
しおりを挟む「あ、あの、この座敷童と似た黒い着物の子を、知りませんか」
「知らないなぁ。ご免ね」
また情報は掴めないない。
私は隣の露店に聞き込みをした。
「座敷童ちゃんのお姉さんを見かけなかった?」
座敷童は心配そうに姉のことを尋ねた。
「些細な事でも良いので、知っていたら教えてください」
「どうでしょう。座敷童の黒い方でしょう。此処には来ていないかと」
「判りました。有難うございます」
もう二、三十件聞き込みをしているだろうか。
この質問と応答をもう何度繰り返しているか。
それすらも分からなくなってきている。
それに、私と座敷童、香果さんの二つに分かれて訊き込みをしている事を考えると、聞き込みをした件数は、六十件以上いっているのではないか。そう思った。
だがまだ見つかっていないのだ。
本当に座敷童はここに来たのか、そんな事を考えてしまう。
しかし、露店はまだまだある。
私達は腐らず一軒ずつ聞き込みに回る。
「ありがてぇ事に、自分は店が忙しくて通行の方など見ちゃぁいませんですから。なんとも」
「そ、そうですか」
「うーん。見てないかな。あの黒い子って意外と注意してないと、景色と一緒になっちゃって分からないのよね」
「もし、何か判ったら教えてください」
「勿論よ」
しばらく聞き込みをしていたが、全く情報が無い。
「おにーちゃん、お姉ちゃんにはもう、会えないの」
座敷童は泣きそうな顔をした。
私は、子供をあやした事が無いので、香果さんの様に慰める事が出来ない。
「大丈夫だよ。きっと見つかるから、安心して。一緒にお姉ちゃんを捜そうか」
私は、安心させるように精一杯の笑顔で言った。
「本当に見つかるの」
「きっと会えるから、心配しなくても良いよ」
「こんなに捜しているのに、見つからないからもしかしたら」
悪い想像が頭を過ぎる。
「大丈夫、きっと見つかるから、お姉ちゃんにあと少しで会えるから」
自分の悪い想像を掻き消す為にも見つかる事を信じなければいけない。
「本当に?」
彼女の目は潤んでいる。
絶対に見つかるとは言えない。
しかし、絶対に見つけたい。
否、見つけるまで捜す。
その気持ちは私にもある。
「絶対にお姉ちゃんは見つかるから、大丈夫だよ」
この慣れない状況の中出来るだけ優しく、ゆっくりと話す。
彼女は目を潤わせて見上げる。
「一緒に捜そう。そうすれば絶対に見つかるから」
これは自分への言葉でもある。
見つからないと言って、弱音を吐いてはいけない。
私は座敷童にゆっくりと手を伸ばす。
「約束だよ。一緒にお姉ちゃんを捜してね」
彼女には不安の表情はまだあったが、少し安心した様にも見える。
私の手をギュッと握るとまた姉を捜す旅に出る覚悟をした。
また気持ちを切り換えて聞き込みをしようとした。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
本日、訳あり軍人の彼と結婚します~ド貧乏な軍人伯爵さまと結婚したら、何故か甘く愛されています~
扇 レンナ
キャラ文芸
政略結婚でド貧乏な伯爵家、桐ケ谷《きりがや》家の当主である律哉《りつや》の元に嫁ぐことになった真白《ましろ》は大きな事業を展開している商家の四女。片方はお金を得るため。もう片方は華族という地位を得るため。ありきたりな政略結婚。だから、真白は律哉の邪魔にならない程度に存在していようと思った。どうせ愛されないのだから――と思っていたのに。どうしてか、律哉が真白を見る目には、徐々に甘さがこもっていく。
(雇う余裕はないので)使用人はゼロ。(時間がないので)邸宅は埃まみれ。
そんな場所で始まる新婚生活。苦労人の伯爵さま(軍人)と不遇な娘の政略結婚から始まるとろける和風ラブ。
▼掲載先→エブリスタ、アルファポリス
※エブリスタさんにて先行公開しております。ある程度ストックはあります。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる