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第二話 マヨヒゴの座敷童
マヨヒゴの座敷童 肆
しおりを挟む「あ、あの、この座敷童と似た黒い着物の子を、知りませんか」
「知らないなぁ。ご免ね」
また情報は掴めないない。
私は隣の露店に聞き込みをした。
「座敷童ちゃんのお姉さんを見かけなかった?」
座敷童は心配そうに姉のことを尋ねた。
「些細な事でも良いので、知っていたら教えてください」
「どうでしょう。座敷童の黒い方でしょう。此処には来ていないかと」
「判りました。有難うございます」
もう二、三十件聞き込みをしているだろうか。
この質問と応答をもう何度繰り返しているか。
それすらも分からなくなってきている。
それに、私と座敷童、香果さんの二つに分かれて訊き込みをしている事を考えると、聞き込みをした件数は、六十件以上いっているのではないか。そう思った。
だがまだ見つかっていないのだ。
本当に座敷童はここに来たのか、そんな事を考えてしまう。
しかし、露店はまだまだある。
私達は腐らず一軒ずつ聞き込みに回る。
「ありがてぇ事に、自分は店が忙しくて通行の方など見ちゃぁいませんですから。なんとも」
「そ、そうですか」
「うーん。見てないかな。あの黒い子って意外と注意してないと、景色と一緒になっちゃって分からないのよね」
「もし、何か判ったら教えてください」
「勿論よ」
しばらく聞き込みをしていたが、全く情報が無い。
「おにーちゃん、お姉ちゃんにはもう、会えないの」
座敷童は泣きそうな顔をした。
私は、子供をあやした事が無いので、香果さんの様に慰める事が出来ない。
「大丈夫だよ。きっと見つかるから、安心して。一緒にお姉ちゃんを捜そうか」
私は、安心させるように精一杯の笑顔で言った。
「本当に見つかるの」
「きっと会えるから、心配しなくても良いよ」
「こんなに捜しているのに、見つからないからもしかしたら」
悪い想像が頭を過ぎる。
「大丈夫、きっと見つかるから、お姉ちゃんにあと少しで会えるから」
自分の悪い想像を掻き消す為にも見つかる事を信じなければいけない。
「本当に?」
彼女の目は潤んでいる。
絶対に見つかるとは言えない。
しかし、絶対に見つけたい。
否、見つけるまで捜す。
その気持ちは私にもある。
「絶対にお姉ちゃんは見つかるから、大丈夫だよ」
この慣れない状況の中出来るだけ優しく、ゆっくりと話す。
彼女は目を潤わせて見上げる。
「一緒に捜そう。そうすれば絶対に見つかるから」
これは自分への言葉でもある。
見つからないと言って、弱音を吐いてはいけない。
私は座敷童にゆっくりと手を伸ばす。
「約束だよ。一緒にお姉ちゃんを捜してね」
彼女には不安の表情はまだあったが、少し安心した様にも見える。
私の手をギュッと握るとまた姉を捜す旅に出る覚悟をした。
また気持ちを切り換えて聞き込みをしようとした。
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