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第二話 マヨヒゴの座敷童
マヨヒゴの座敷童 参
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座敷童は、真っ赤な和服を着ていた。
また顔から髪型、雰囲気まで彼女の全てが市松人形にそっくりだった。
私は、神池を出て直ぐに気になっている事を香果さんに訊く。
「香果さん、座敷童を探すと言っていたけど、座敷童ってこの子じゃないの」
「座敷童は、二人居るのだよ。双子の姉と妹が。この子は妹で、今私たちが探しているのは姉の方なのだよ」
「成る程」
「お姉ちゃんは、こんな感じだよ」
座敷童はそう言って手を広げて、ゆっくり回った。
座敷童は、全身を見れば見るほど、市松人形にそっくりだった。
「お姉ちゃんは、私より少し大きいの。髪も私より少し長くて服は黒だよ」
彼女と似ているなら探しやすい。双子なのだそうから、似ているのは当然といえば当然か。
「どうして逸れちゃったの」
「お姉ちゃんが、お菓子買ってくるから待っていて、って言っていたから私、半刻くらい待っていたの。でも帰って来ないから心配でお姉ちゃんが行った所で捜したんだけど居なくて」
少女は縋る様に小さな声で言う。
「もしかしたら、此処に戻っているかなと思って戻って来たんだけど、やっぱり、い、居なくて。それで」
彼女の目に涙が浮んだ。
香果さんは「心配しなくても大丈夫だよ。今は私達も付いているから」と優しくあやす。
「お姉ちゃんが何処に行ったか、私達に教えてくれるかい」
「こっち」と座敷童は香果さんの手を、クイッと引張った。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん。何処に居るの」
鳴きそうな声で少し震えながら言った。
「早く、早く」
座敷童は一の鳥居を入ってすぐの露店が犇めき合う処に来た。
私達は姉の座敷童を探すため手前の露店から、手掛かりが無いか聞き込みをしていた。
「この座敷童の姉は知りやせんか」
「さぁ、すみません。分からないです」
藤華さんは、けだるそうに帰ってきた。
「駄目でさぁ。全く情報がありやせんね」
何店も回っても情報は全く無かった。
しかし、まだ露店は何店もある。
希望を捨てるには、まだ早い。
「しかし、これでは…」
香果さんは、片手で顎を軽く覆って、考えていた。
「如何しようか、八雲君何か良い考えはあるかい。藤華も何かあれば…」
香果さんは、藤華さんを見て何かを思い付いたのか口角を上げた。
藤華さんはそれを見ると何か察したのか苦いものを噛んだ様な表情をした。
「藤華、彼女のお姉ちゃんを」
「へいへい。旦那の頼みとありゃオレは何でも致しやしすぜ」
藤華さんは香果さんが言い切る前に二つ返事をした。
そして彼は、あっという間に黒猫になり何、処かへ行ってしまった。
何処に行ってしまったのだろうか、そう訊こうと私は香果さんの方を見た。
「さて、私達も藤華に負けない様に頑張らなくてはいけないね」
香果さんはこぶしを握り、キリッと気合を入れた。
きっと藤華さんが何処に行ったか聞くのは野暮なのだろう。
そう思わせる程、彼の目はしっかりと前を見ていた。
「八雲君。見ての通り、ここの露店は数が多いのだよ」
確かにここの露店の数は多い。
ぱっと見ただけで百、二百はあるだろうか。
実際はそこまで無いのかも知れない。だが一軒、一軒調べるとなると一日はかかりそうだ。
「だからね、八雲君。座敷童ちゃんの二人組みになって、聞き込みをしてくれるかい。私は一人で聞き込みをしてくるから」
香果さんはそう言うと「私の方は任せてくれるかい」と悪戯っ子の様に片目を軽く閉じた。
私達は香果さんの提案に乗った。
二組に分かれてもきっと時間はかなり掛かるだろう。
それに加えて、私はまだ神社の地理や妖怪の名前が分かる訳ではないのだ。
しかし、おろおろしていても仕方が無い。
私は妹の座敷童と一緒に、露店の人から姉の座敷童の聞き込みを始めたのだった。
また顔から髪型、雰囲気まで彼女の全てが市松人形にそっくりだった。
私は、神池を出て直ぐに気になっている事を香果さんに訊く。
「香果さん、座敷童を探すと言っていたけど、座敷童ってこの子じゃないの」
「座敷童は、二人居るのだよ。双子の姉と妹が。この子は妹で、今私たちが探しているのは姉の方なのだよ」
「成る程」
「お姉ちゃんは、こんな感じだよ」
座敷童はそう言って手を広げて、ゆっくり回った。
座敷童は、全身を見れば見るほど、市松人形にそっくりだった。
「お姉ちゃんは、私より少し大きいの。髪も私より少し長くて服は黒だよ」
彼女と似ているなら探しやすい。双子なのだそうから、似ているのは当然といえば当然か。
「どうして逸れちゃったの」
「お姉ちゃんが、お菓子買ってくるから待っていて、って言っていたから私、半刻くらい待っていたの。でも帰って来ないから心配でお姉ちゃんが行った所で捜したんだけど居なくて」
少女は縋る様に小さな声で言う。
「もしかしたら、此処に戻っているかなと思って戻って来たんだけど、やっぱり、い、居なくて。それで」
彼女の目に涙が浮んだ。
香果さんは「心配しなくても大丈夫だよ。今は私達も付いているから」と優しくあやす。
「お姉ちゃんが何処に行ったか、私達に教えてくれるかい」
「こっち」と座敷童は香果さんの手を、クイッと引張った。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん。何処に居るの」
鳴きそうな声で少し震えながら言った。
「早く、早く」
座敷童は一の鳥居を入ってすぐの露店が犇めき合う処に来た。
私達は姉の座敷童を探すため手前の露店から、手掛かりが無いか聞き込みをしていた。
「この座敷童の姉は知りやせんか」
「さぁ、すみません。分からないです」
藤華さんは、けだるそうに帰ってきた。
「駄目でさぁ。全く情報がありやせんね」
何店も回っても情報は全く無かった。
しかし、まだ露店は何店もある。
希望を捨てるには、まだ早い。
「しかし、これでは…」
香果さんは、片手で顎を軽く覆って、考えていた。
「如何しようか、八雲君何か良い考えはあるかい。藤華も何かあれば…」
香果さんは、藤華さんを見て何かを思い付いたのか口角を上げた。
藤華さんはそれを見ると何か察したのか苦いものを噛んだ様な表情をした。
「藤華、彼女のお姉ちゃんを」
「へいへい。旦那の頼みとありゃオレは何でも致しやしすぜ」
藤華さんは香果さんが言い切る前に二つ返事をした。
そして彼は、あっという間に黒猫になり何、処かへ行ってしまった。
何処に行ってしまったのだろうか、そう訊こうと私は香果さんの方を見た。
「さて、私達も藤華に負けない様に頑張らなくてはいけないね」
香果さんはこぶしを握り、キリッと気合を入れた。
きっと藤華さんが何処に行ったか聞くのは野暮なのだろう。
そう思わせる程、彼の目はしっかりと前を見ていた。
「八雲君。見ての通り、ここの露店は数が多いのだよ」
確かにここの露店の数は多い。
ぱっと見ただけで百、二百はあるだろうか。
実際はそこまで無いのかも知れない。だが一軒、一軒調べるとなると一日はかかりそうだ。
「だからね、八雲君。座敷童ちゃんの二人組みになって、聞き込みをしてくれるかい。私は一人で聞き込みをしてくるから」
香果さんはそう言うと「私の方は任せてくれるかい」と悪戯っ子の様に片目を軽く閉じた。
私達は香果さんの提案に乗った。
二組に分かれてもきっと時間はかなり掛かるだろう。
それに加えて、私はまだ神社の地理や妖怪の名前が分かる訳ではないのだ。
しかし、おろおろしていても仕方が無い。
私は妹の座敷童と一緒に、露店の人から姉の座敷童の聞き込みを始めたのだった。
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