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第一話 浮世の参拝者
浮世の参拝者 伍
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私は一度案内された部屋の全体を見回した。
それから私は畳に座り、一息つく。
しばらくして香果さんが部屋に来た。
彼が私に町の案内をしてくれるそうなので、私たちは屋敷を出た。
屋敷を出ると薄暗い林を抜け、すぐに神社の拝殿の前に着く。
「八雲君、何か一寸した事があったら迷わず直ぐに此処の拝殿に来るのだよ。此処は根の国だからね。浮世とは違って何があるかわからない。それに君は人間だからね。もしも君に何かあったら大惨事だからね。此処に来てくれれば、君一人くらいは守れるだろう。然し、どんな事があっても本殿だけは来ては行けないからね。」
「拝殿は安全なのですね。でも、香果さんは大丈夫なのですか」
私だけが人間の様に話す香果さんに違和感を覚えた。
彼もきっと人間なのだろう。
それなのに私だけが生きた人間。それ以外ここに居るのは死んだ者、この世のものではない、とでも言うようだ。
なぜそんな云い方をするのだろう。
彼は少し困った様に笑った。
「私は長い間、陰陽師をしているからアヤカシと闘う位何の問題もないと云う訳なのだよ」
「陰陽師ってあの安部晴明とかの?」
「そうだよ」
香果さんは笑うと香果さんの真っ白い歯が少しだけ見えた。
陰陽師、というと狩衣のイメージだが香果さんは紺の袷を着ている。
私には陰陽師というと狩衣に立烏帽子のイメージが強いので、香果さんの袷がラフに感じた。もっとも私は袷ですら着られないのだが。
香果さんの身なりは、古風だが平安時代程歴史的な訳ではない。
しかし、寝殿造りと云い陰陽師と云い、整いすぎた顔立ちと云い、香果さんはどこか平安時代の人にも感じられる。
もし香果さんが本当に平安時代の人だとすればかの美男子と名高い光源氏でさえも、思わず香果さんの耽美さに嫉妬してしまうことだろう。
それから私は畳に座り、一息つく。
しばらくして香果さんが部屋に来た。
彼が私に町の案内をしてくれるそうなので、私たちは屋敷を出た。
屋敷を出ると薄暗い林を抜け、すぐに神社の拝殿の前に着く。
「八雲君、何か一寸した事があったら迷わず直ぐに此処の拝殿に来るのだよ。此処は根の国だからね。浮世とは違って何があるかわからない。それに君は人間だからね。もしも君に何かあったら大惨事だからね。此処に来てくれれば、君一人くらいは守れるだろう。然し、どんな事があっても本殿だけは来ては行けないからね。」
「拝殿は安全なのですね。でも、香果さんは大丈夫なのですか」
私だけが人間の様に話す香果さんに違和感を覚えた。
彼もきっと人間なのだろう。
それなのに私だけが生きた人間。それ以外ここに居るのは死んだ者、この世のものではない、とでも言うようだ。
なぜそんな云い方をするのだろう。
彼は少し困った様に笑った。
「私は長い間、陰陽師をしているからアヤカシと闘う位何の問題もないと云う訳なのだよ」
「陰陽師ってあの安部晴明とかの?」
「そうだよ」
香果さんは笑うと香果さんの真っ白い歯が少しだけ見えた。
陰陽師、というと狩衣のイメージだが香果さんは紺の袷を着ている。
私には陰陽師というと狩衣に立烏帽子のイメージが強いので、香果さんの袷がラフに感じた。もっとも私は袷ですら着られないのだが。
香果さんの身なりは、古風だが平安時代程歴史的な訳ではない。
しかし、寝殿造りと云い陰陽師と云い、整いすぎた顔立ちと云い、香果さんはどこか平安時代の人にも感じられる。
もし香果さんが本当に平安時代の人だとすればかの美男子と名高い光源氏でさえも、思わず香果さんの耽美さに嫉妬してしまうことだろう。
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