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夏の宴 告白 編
宴19
しおりを挟む眉根を寄せたフェリクスが、長い前髪をかきあげて話す。
「・・イコリス様・・。大きい方が良いと言う男も確かにいますが、全ての男がそうではない。・・覚えておいて下さい。ナナラも、ね。」
「兄さんは経験が豊富なので、本質を見極めていると言っても過言では無いと思います。」
フェリクスの背後に立っていた『キース・ストライト』が兄を援護する。しかしながら、その発言はフェリクスを後ろから撃っていた。
「・・キース、余計なことは言わないでくれ・・。」
「あれ?助太刀したつもりだけど・・迷惑だった?ごめん、ごめん。」
フェリクスの弟『キース』が話すところを俺は初めて見たが、思ったより無邪気で明るい。女子達に囲まれた教室では、いつも黙って不機嫌そうにしていた。
「小さい頃に聞いたサイナスの偏った解説を、信じ続けていたとは・・イコリス様は純粋で可愛らしいアルな。ともかく、僕達がイコリス様を巨乳だと思って親交を深めようとしてはいないと、分かってくれたアルか?」
「・・ええ・・いつも、本当にありがとう。・・・フラーグ学院に通って良かった。アッシュ達と学院生活を送れて・・皆と出会えて幸せだわ。」
アッシュの言葉を素直に受け入れたイコリスは、感謝を述べた。
「誤解が解けて良かったアルな。エルード。」
いきなりアッシュから話を振られたエルードは、戸惑っている。
「えっ?は、はい・・。急に偽・・ゴホっ。驚きましたが。あ、あの、・・自分は・・イコリス様が大きいからとか、そういうのじゃなかった・・です・・。」
「エルード、イコリスの胸は大きくはないが、決して小さいわけじゃないからな。痛っ痛っ。」
イコリスの為に補足したのに、俺へイコリスが手刀を繰り出した。
「ぐはっ。」
続いてジェネラスが俺の尻に中段蹴りを入れ、同時にチェリンも肩に拳を叩き込んだ。二人とも本気じゃないが、結構痛い。
「・・今のは、サイナスが悪いよ。」
倒れた俺を立ち上がらせてくれたラビネが、苦言を呈した。
集まっていた一同はイコリスを囲み、語らい始めた。ナナラはファウスト達に目もくれず、イコリスへ話しかけている。
「アイもここに居て、皆の話を聞けば良かったのに・・。」
その輪に加わらないキースが、俺の横でぼそりと呟いた。
「キースはアイと親しいのか?」
「・・幼馴染です。学院では絶対に話しかけるなと、アイに言われてますが・・。」
「キースがアイと話すと、男子が騒ぎそうだもんな。アイも大変だ。」
二人が親しげにすると、アイへ懸想している男子どもは阿鼻叫喚だろう。
「・・そうではなく・・。」
「アイは女子に好かれたいので、キースに好意がある女子から敵視されたくないんだ。それと多分・・アイは男が嫌いだ。なので、花屋の売り上げと縁遠い男子からの印象は、あまり気に止めていない。」
「そうなんですっ。ラビネ様、よく分かりましたね。だから男子が全員、巨乳目当てでは無いという複数の意見を、アイにも聞いて欲しかったなと思って・・。」
「聞いても、男性自体を好きにはならないと思うよ・・・どうしようもないんだ。」
(・・ラビネ・・?)
ラビネは寂しそうに笑っていた。
帰りの馬車では黒い袋を被っていても、イコリスが上機嫌だと判った。
「・・ナナラと仲良くなれて、良かったな。」
「まだ、友達になれるか分からないわ。でも、ジェイサムを格好良いと言ってくれたの。」
俺達を迎えに来たジェイサムを見たナナラが、イコリスとひそひそ話をしていたのは、ジェイサムを褒めてたようだ。
「へえ、ナナラは守備範囲が広いな。」
「新学期が始まったら、ジェイサムの話をナナラさんとしてみたいわ。」
「そうか、今夜は良い夢が見られるんじゃないか?」
「私、そこまでおめでたくないから。巨乳じゃないって知ってもらった位で、将来、お嫁に行けるとか思ってないっ。」
(・・将来の夢という意味で、言ってないけどな・・。まあ、いいか・・。)
俺はさんざんな責め苦に遭いとても疲れていて、訂正するのも面倒だったので何も言い返さず、欠伸をして目を閉じた。
・・違う・・無意識に・・本能で、俺は言明を避けていたのだ。
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