笑ってはいけない悪役令嬢

三川コタ

文字の大きさ
上 下
62 / 100
わくわくwack×2フラーグ学院 箱庭 編

相6

しおりを挟む

「『わくフラ』の主人公って、女の子ですよね?ピンク髪で三つ編みの・・・。」
 秀島氏の正気を疑っているのが丸わかりの口調で、見鷹君が訊ねた。

「フッ。乙女ゲームの主人公なんだから女の子だよ。私の生年月日の、天体位置度数を適用した女の子が登場するんだ。ある意味『箱庭』の中に、私の分身を作る事になるね。」
「・・とうじょう・・ぶんしん・・。」
 私は愉快そうに話す秀島氏の言葉を、ぼんやりと繰り返した。

「緯度経度も『量子コンピュータオンライン研究センター』所在地から、私の出生地に変更した方が良いのかな?精密な西洋占星術サイトだと、出生の市区町村まで入力するようだが。・・『箱庭』でも私の出生地の緯度経度にすると、より私の性格や運命に近づけるのだろうか。」
「・・・奥さん、奥さんっ。」
「・・せいかく・・うんめい・・はっっ。」
 小声で見鷹君から呼びかけられ、私は思考力を取り戻した。

「ええっと、・・、採用している『メッセージ占い』には、無料のホロスコープ作成ソフトで割り出した天体の位置度数を使用しているので、必須入力の所在地を『量子コンピュータオンライン研究センター』にしました。けれど、出生日時の10天体の度数は、緯度経度が違っても変わらないんです。・・精密な西洋占星術は『メッセージ占い』と違って、日の出である太陽の上昇点を正確に出す為に、詳しい緯度と経度が必要ですが。・・この『箱庭』では、星の世界は60進法なので緯度経度も60進法の無料作成ソフ・・・。」
「そうか、じゃあ緯度経度はそのままで。」
 またしても、私の話が途中で遮られてしまった。秀島氏は、情報の要不要の判断が早い。

「ゲームでは主人公の名前は、プレイヤーがつける事になってるから・・・名前は秀島相一そういちそうを訓読みで、『アイ』にするか。私の実家は花屋だから、花屋の娘にしよう。ヒロインらしい家業だ。」
「・・はぁ・・。」

「・・国名は君達が『シーコック』と名付けたみたいだね。・・王太子ファウストは『7世』だったな・・。シーコック建国時に存在するキャラクター達の天体位置度数を算出する生年月日は、『アイ』が産まれる約200年前位に設定することになるのか。」
「・・は?・・」

「フフンッ。『箱庭』内の全キャラクターのステータス設定は、『アイ』を起点とするんだ。・・・『アイ』と同級生の攻略キャラに誕生日はあるが、生年は無い。したがって、攻略キャラ達の生年は私と同じにして、天体の位置度数を出すのさ。それで彼らのステータス値が決まる。」
 いつの間にか攻略対象キャラ達も『箱庭』に登場することになっていた。そして彼らの生れ年は、秀島氏と同じ年に・・・。

「・・シーコックの建国は、私の生年の約200年前だから、初代国王の生年は西暦1700年代ということになる。・・攻略キャラ以外の誕生日を持たないキャラクター達は、自動で出生日が決まるように記述して・・ここら辺は企画仕様書に、『アイ』の誕生から逆算して適当に年表にしておけば、自動で勝手に帳尻を合わせキャラクター達を作成してくれるだろう。」
「・・・・・。」

 私の『箱庭』に、還暦のおじさんのホロスコープ(星の出生図)のヒロイン『アイ』が、登場する事になってしまった。
 そして、秀島氏の分身となる『アイ』を起点にすべてのキャラクター達の生年月日が定まり、『メッセージ占い』のステータス増減値が導かれる。・・・あまりのことに私は絶句してしまっていた。

「そうだな・・シーコック建国から『アイ』が『フラーグ学院』に入学する迄は、『箱庭』の時計進行速度を速めておこう。『わくフラ』の舞台であるアイの学生生活が開始されたら、進行速度を緩め『アイ』の状況や経過を報告してくれ。」
「・・・・・。」

「『箱庭』は商用化するわけでも、学術的に残されるわけでも無いが・・『わくフラ』は私の作品だ。この程度の条件、出してもいいだろう?」
「・・・はい・・・。」
 私は茫然自失となりながら、何とか秀島氏にか細い声で返事をした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...