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わくわくwack×2フラーグ学院 箱庭 編
相6
しおりを挟む「『わくフラ』の主人公って、女の子ですよね?ピンク髪で三つ編みの・・・。」
秀島氏の正気を疑っているのが丸わかりの口調で、見鷹君が訊ねた。
「フッ。乙女ゲームの主人公なんだから女の子だよ。私の生年月日の、天体位置度数を適用した女の子が登場するんだ。ある意味『箱庭』の中に、私の分身を作る事になるね。」
「・・とうじょう・・ぶんしん・・。」
私は愉快そうに話す秀島氏の言葉を、ぼんやりと繰り返した。
「緯度経度も『量子コンピュータオンライン研究センター』所在地から、私の出生地に変更した方が良いのかな?精密な西洋占星術サイトだと、出生の市区町村まで入力するようだが。・・『箱庭』でも私の出生地の緯度経度にすると、より私の性格や運命に近づけるのだろうか。」
「・・・奥さん、奥さんっ。」
「・・せいかく・・うんめい・・はっっ。」
小声で見鷹君から呼びかけられ、私は思考力を取り戻した。
「ええっと、・・、採用している『メッセージ占い』には、無料のホロスコープ作成ソフトで割り出した天体の位置度数を使用しているので、必須入力の所在地を『量子コンピュータオンライン研究センター』にしました。けれど、出生日時の10天体の度数は、緯度経度が違っても変わらないんです。・・精密な西洋占星術は『メッセージ占い』と違って、日の出である太陽の上昇点を正確に出す為に、詳しい緯度と経度が必要ですが。・・この『箱庭』では、星の世界は60進法なので緯度経度も60進法の無料作成ソフ・・・。」
「そうか、じゃあ緯度経度はそのままで。」
またしても、私の話が途中で遮られてしまった。秀島氏は、情報の要不要の判断が早い。
「ゲームでは主人公の名前は、プレイヤーがつける事になってるから・・・名前は秀島相一の相を訓読みで、『アイ』にするか。私の実家は花屋だから、花屋の娘にしよう。ヒロインらしい家業だ。」
「・・はぁ・・。」
「・・国名は君達が『シーコック』と名付けたみたいだね。・・王太子ファウストは『7世』だったな・・。シーコック建国時に存在するキャラクター達の天体位置度数を算出する生年月日は、『アイ』が産まれる約200年前位に設定することになるのか。」
「・・は?・・」
「フフンッ。『箱庭』内の全キャラクターのステータス設定は、『アイ』を起点とするんだ。・・・『アイ』と同級生の攻略キャラに誕生日はあるが、生年は無い。したがって、攻略キャラ達の生年は私と同じにして、天体の位置度数を出すのさ。それで彼らのステータス値が決まる。」
いつの間にか攻略対象キャラ達も『箱庭』に登場することになっていた。そして彼らの生れ年は、秀島氏と同じ年に・・・。
「・・シーコックの建国は、私の生年の約200年前だから、初代国王の生年は西暦1700年代ということになる。・・攻略キャラ以外の誕生日を持たないキャラクター達は、自動で出生日が決まるように記述して・・ここら辺は企画仕様書に、『アイ』の誕生から逆算して適当に年表にしておけば、自動で勝手に帳尻を合わせキャラクター達を作成してくれるだろう。」
「・・・・・。」
私の『箱庭』に、還暦のおじさんのホロスコープ(星の出生図)のヒロイン『アイ』が、登場する事になってしまった。
そして、秀島氏の分身となる『アイ』を起点にすべてのキャラクター達の生年月日が定まり、『メッセージ占い』のステータス増減値が導かれる。・・・あまりのことに私は絶句してしまっていた。
「そうだな・・シーコック建国から『アイ』が『フラーグ学院』に入学する迄は、『箱庭』の時計進行速度を速めておこう。『わくフラ』の舞台であるアイの学生生活が開始されたら、進行速度を緩め『アイ』の状況や経過を報告してくれ。」
「・・・・・。」
「『箱庭』は商用化するわけでも、学術的に残されるわけでも無いが・・『わくフラ』は私の作品だ。この程度の条件、出してもいいだろう?」
「・・・はい・・・。」
私は茫然自失となりながら、何とか秀島氏にか細い声で返事をした。
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