笑ってはいけない悪役令嬢

三川コタ

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王侯貴族 事前登校 編

笑21

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 ジェネラスとチェリン付近の花びらは治まり始めている。

 多量の花びらを浴びながら腕を組み、フラリスは毅然とした態度で言った。
「不可抗力だ。」
 理性の放棄に等しいからなのか、揺れていた前髪が完全に捲れ上がり、左目に着けた眼帯の全容が判明する。
 過去、ブリストン一族が受けた強制力は、慣例の如くフラリスの母親が手作りした眼帯にも働いていた。
 眼に当たるレースは黒い布に変質し、左目の視界を奪い見えなくしているのだ。

 俺は絶望した。これは、耐えられないだろう。
 黒い布への変質は、眼帯全面には及んでいなかった。山型の周囲は、レースのまま残っている。
 つまり、逆三角の黒い布を、1㎝幅程のレースで縁どっていたのだ。そして、鉢巻の紐のレースリボンは変わっていない。

 (官能的なスケスケレースパンツから、レースの縁どりへと可愛く変わるとは。いいや、パンツである事には変わらない。むしろ、よりパンツらしくなったと言えなくもない。)
 現状を整理して平静を取戻し、どうにか乗り切りたかったが、懸念した通りに俺は限界を迎えた。

「イコリス、グーで頼むっ。」
 俺はイコリスへ右の頬を差し出した。
 イコリスは呟く。
「・・・グーだとマスクが取れるかも・・・そうだっ。」
 最上位の痛みで誤魔化すべく拳での顔面殴打を頼んだのだが、イコリスは先程構えた手刀を俺の右肩に思いっ切り振り下ろした。
「ぐあっ。」
 虚を衝かれ、右肩の激痛を起点に手先と脹脛へと痺れが右半身を伝導し、右膝を折る。
 イコリスが何故肩に手刀を繰り出したのか、俺はその時、知る由もなかった。

「私も、お願いっ。」
 今にも溢れそうな涙で瞳を濡らしながら、イコリスは膝を折った俺の顔の前に尻を突き出した。
 イコリスも限界を迎えていた。
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