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フシューーーーーーー
イコリスは背筋を伸ばし臍の下に片手を当て、細く長い息を吐いた。
トゥランやファウストだけでなく、ジェネラス達もイコリスを心配そうに見ている。
五大貴族頭首の嫡子として忌避感を抱いてもおかしくない、魅了で事件を起こしたイコリスだが、同年代の貴族女子は一人だけなので情が移ったようだ。・・・ファウストの働きかけによる印象操作もあっただろう。しかし、交流を重ねイコリスの性分に直に触れていくうちに、情が湧き絆された処も大いにあると思われる。
俺とトゥランがイコリスと出会ったばかりの頃は、彼女に協力的とは言えなかったものだ。
雑念を払い集中力を高めたイコリスが、長い髪とプリーツスカートの裾を揺らしてこちらへ歩いて来る。
校門に踏み入ったイコリスは、光の粒を銀糸の髪に纏わせ、絢爛な装飾を施された荘厳な門に負けない位、気高く美しかった。喋らず妙な動きをしなければ、容姿端麗なのだ。つくづく、残念である。
イコリスが校門をくぐり抜け切る瞬間、両脇辺りから何かが飛び出した。
半円状の白い物体が二つ、それぞれが両耳の高さで弾け飛び、光の粒となって消えた。
俺とファウスト以外は驚いて目を見開いている。どうやら、胸のパッド6枚は盛り過ぎだったらしく、2枚が飛び出し、弾けたみたいだ。
俺はある程度、盛りすぎではないかと推察していたのだが、ファウストがプラントリー一族女子の胸事情を知っているとは思わなかった。登校前にイコリスから聞く迄、俺さえ知らなかったのに・・・王族独自の情報網があるのかもしれない。
取り巻く光がなくなったイコリスは汗をかいていた。強制力で直毛から緩く波打つ巻き髪へと変わった銀色の髪の何本かを、顔に張り付かせている。
胸のパッドが飛び出たのは、イコリスでも焦ったようだ。パッドが減った分、弛んだブラウスを、更に汗をかきながら片手でぎこちなくスカートの胴部分へ押し込む。
「っっ!」
ジェネラスが手で口を押さえ、耳を赤くした。
「どうした?」
「え、いや、色気があったんで焦った。」
俺の問いに予想しない答えが返ってきた。俺から見たイコリスに、色気は微塵もない。
ジェネラスは幼少時より武術を学び、今では現職の警察官や、警察官を目指す者達と稽古している。
それは身分と性別に関係なく・・・そう、近年、婦人警官が導入されたのだ。けしからんことに、男女混合で稽古が行われているそうだ。そして武術には柔術も含まれるとか・・・。
なのにイコリスが汗をかいた位で動揺するとは。俺の中でジェネラスの好感度がちょっとだけ上がった。
「さっき、イコリスの体から蒲鉾が飛ばなかった?」
「いいや、何もなかったよ。」
「そうだよ、別に飛んでない。」
不可解な面持ちで尋ねるフラリスに、ラビネとチェリンはすっとぼけていた。
イコリスは背筋を伸ばし臍の下に片手を当て、細く長い息を吐いた。
トゥランやファウストだけでなく、ジェネラス達もイコリスを心配そうに見ている。
五大貴族頭首の嫡子として忌避感を抱いてもおかしくない、魅了で事件を起こしたイコリスだが、同年代の貴族女子は一人だけなので情が移ったようだ。・・・ファウストの働きかけによる印象操作もあっただろう。しかし、交流を重ねイコリスの性分に直に触れていくうちに、情が湧き絆された処も大いにあると思われる。
俺とトゥランがイコリスと出会ったばかりの頃は、彼女に協力的とは言えなかったものだ。
雑念を払い集中力を高めたイコリスが、長い髪とプリーツスカートの裾を揺らしてこちらへ歩いて来る。
校門に踏み入ったイコリスは、光の粒を銀糸の髪に纏わせ、絢爛な装飾を施された荘厳な門に負けない位、気高く美しかった。喋らず妙な動きをしなければ、容姿端麗なのだ。つくづく、残念である。
イコリスが校門をくぐり抜け切る瞬間、両脇辺りから何かが飛び出した。
半円状の白い物体が二つ、それぞれが両耳の高さで弾け飛び、光の粒となって消えた。
俺とファウスト以外は驚いて目を見開いている。どうやら、胸のパッド6枚は盛り過ぎだったらしく、2枚が飛び出し、弾けたみたいだ。
俺はある程度、盛りすぎではないかと推察していたのだが、ファウストがプラントリー一族女子の胸事情を知っているとは思わなかった。登校前にイコリスから聞く迄、俺さえ知らなかったのに・・・王族独自の情報網があるのかもしれない。
取り巻く光がなくなったイコリスは汗をかいていた。強制力で直毛から緩く波打つ巻き髪へと変わった銀色の髪の何本かを、顔に張り付かせている。
胸のパッドが飛び出たのは、イコリスでも焦ったようだ。パッドが減った分、弛んだブラウスを、更に汗をかきながら片手でぎこちなくスカートの胴部分へ押し込む。
「っっ!」
ジェネラスが手で口を押さえ、耳を赤くした。
「どうした?」
「え、いや、色気があったんで焦った。」
俺の問いに予想しない答えが返ってきた。俺から見たイコリスに、色気は微塵もない。
ジェネラスは幼少時より武術を学び、今では現職の警察官や、警察官を目指す者達と稽古している。
それは身分と性別に関係なく・・・そう、近年、婦人警官が導入されたのだ。けしからんことに、男女混合で稽古が行われているそうだ。そして武術には柔術も含まれるとか・・・。
なのにイコリスが汗をかいた位で動揺するとは。俺の中でジェネラスの好感度がちょっとだけ上がった。
「さっき、イコリスの体から蒲鉾が飛ばなかった?」
「いいや、何もなかったよ。」
「そうだよ、別に飛んでない。」
不可解な面持ちで尋ねるフラリスに、ラビネとチェリンはすっとぼけていた。
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