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転生
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「ん……カリュード……」
目が覚めると私は天蓋付きの寝台に横たわっていた。
部屋に置かれている調度品の様子からして、ここはカリュードの実家であるミュラー侯爵家だろう。
私の手を握りしめていたカリュードの姿が目に入り、起きあがろうとするが体に力が入らない。
「まだ寝ていて。ヴァンパイアに転生してすぐは、色々と不安定なんだ。体調が悪い日が続くかもしれない。でも必ず落ち着くから」
カリュードのその言葉から、彼に牙を立てられたあの記憶は夢ではなかったのだ、と思い知らされる。
「カリュード、私……ヴァンパイアになってしまったの? 」
「ああ。君はこれで俺のものだ。無理矢理になってしまったが、後悔はしていない」
自分の手をよく見てみると、透き通るほど肌が白くなっているようにも見える。
まるで人間離れしているようだ。
「それも、そのうち落ち着くから安心して。だから今は君を屋敷の外には出せない」
「えっ……でもお父様達が心配するわ」
「大丈夫、伯爵家には父の方から伝えてあるから。僕がシェイラに懸想して、囲い込んでしまったと」
なんと強引なのだろうか。
だがミュラー侯爵家の方がはるかに立場が上なので、父達も物申すことはできないだろう。
「シェイラ……」
こちらを見つめるカリュードの瞳は、珍しく熱を帯びているように見える。
すると彼は私の横たわる寝台の上に乗り上げ、私にまたがるような格好となった。
「ちょっ……」
「俺はこれでも我慢してる……君の香りが僕を誘うんだ。あの時よく少量の血液で我慢できたと、自分を褒めてやりたいよ」
だから、と彼は続けた。
「その分君の全てが欲しい。その許しをもらえないだろうか」
「そんないきなり……」
いきなりカリュードから告白され、突然ヴァンパイアに転生させられ、挙句の果てに純潔を今ささげろと言われている。
「君は俺が嫌いか? 」
そう尋ねるカリュードの顔は、切なげで胸が苦しくなる。
私もずっとずっと、彼のことだけ見ていた。
想いが通じ合って、幸せなはずなのだ。
あまりに突然な出来事たちに忘れていたが、ようやくその事実に思い至った。
「私もあなたが好き、カリュード」
やっと言えた。
なんとも口に出そうとしては飲み込んできた想いが、ようやく消化されたのだ。
カリュードは一瞬目を開くと、私をそっと抱きしめた。
「本当に? 俺に気を遣っているわけではなく? 」
「ふふっ……今さらそんなことするわけないじゃない。ずっと前から、あなただけが好きだったわ。でもあなたと私では身分が違うと思っていたし、何よりあなたは私にちっとも興味を示していなかったから……」
「我慢していたんだ。半人前のうちに君に迷惑をかけて嫌われたらと……」
「でも結局、強引ね? 」
「仕方ない。君があんな男と結婚しようとするからだ」
カリュードはそう言って、私の首元に口付けた。
「俺の痕が残っている。俺のものだ」
そしてちゅ、と優しく唇に口付けるとそのままするすると私のドレスを脱がせていく。
「ま、待って! 心の準備が……」
「待たない、もう待てない。覚悟を決めろ」
目が覚めると私は天蓋付きの寝台に横たわっていた。
部屋に置かれている調度品の様子からして、ここはカリュードの実家であるミュラー侯爵家だろう。
私の手を握りしめていたカリュードの姿が目に入り、起きあがろうとするが体に力が入らない。
「まだ寝ていて。ヴァンパイアに転生してすぐは、色々と不安定なんだ。体調が悪い日が続くかもしれない。でも必ず落ち着くから」
カリュードのその言葉から、彼に牙を立てられたあの記憶は夢ではなかったのだ、と思い知らされる。
「カリュード、私……ヴァンパイアになってしまったの? 」
「ああ。君はこれで俺のものだ。無理矢理になってしまったが、後悔はしていない」
自分の手をよく見てみると、透き通るほど肌が白くなっているようにも見える。
まるで人間離れしているようだ。
「それも、そのうち落ち着くから安心して。だから今は君を屋敷の外には出せない」
「えっ……でもお父様達が心配するわ」
「大丈夫、伯爵家には父の方から伝えてあるから。僕がシェイラに懸想して、囲い込んでしまったと」
なんと強引なのだろうか。
だがミュラー侯爵家の方がはるかに立場が上なので、父達も物申すことはできないだろう。
「シェイラ……」
こちらを見つめるカリュードの瞳は、珍しく熱を帯びているように見える。
すると彼は私の横たわる寝台の上に乗り上げ、私にまたがるような格好となった。
「ちょっ……」
「俺はこれでも我慢してる……君の香りが僕を誘うんだ。あの時よく少量の血液で我慢できたと、自分を褒めてやりたいよ」
だから、と彼は続けた。
「その分君の全てが欲しい。その許しをもらえないだろうか」
「そんないきなり……」
いきなりカリュードから告白され、突然ヴァンパイアに転生させられ、挙句の果てに純潔を今ささげろと言われている。
「君は俺が嫌いか? 」
そう尋ねるカリュードの顔は、切なげで胸が苦しくなる。
私もずっとずっと、彼のことだけ見ていた。
想いが通じ合って、幸せなはずなのだ。
あまりに突然な出来事たちに忘れていたが、ようやくその事実に思い至った。
「私もあなたが好き、カリュード」
やっと言えた。
なんとも口に出そうとしては飲み込んできた想いが、ようやく消化されたのだ。
カリュードは一瞬目を開くと、私をそっと抱きしめた。
「本当に? 俺に気を遣っているわけではなく? 」
「ふふっ……今さらそんなことするわけないじゃない。ずっと前から、あなただけが好きだったわ。でもあなたと私では身分が違うと思っていたし、何よりあなたは私にちっとも興味を示していなかったから……」
「我慢していたんだ。半人前のうちに君に迷惑をかけて嫌われたらと……」
「でも結局、強引ね? 」
「仕方ない。君があんな男と結婚しようとするからだ」
カリュードはそう言って、私の首元に口付けた。
「俺の痕が残っている。俺のものだ」
そしてちゅ、と優しく唇に口付けるとそのままするすると私のドレスを脱がせていく。
「ま、待って! 心の準備が……」
「待たない、もう待てない。覚悟を決めろ」
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