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しおりを挟む「レティ、僕が贈ったドレスがよく似合う」
「ありがとうございます、ノア様」
「君には薄桃色がよく映える。その色のドレスを着ている君が一番好きだよ」
翌月、レティはノアと共に王城の舞踏会に参加していた。
これからまさに、皆の前で結婚宣言を行うところである。
ノアに贈られた薄桃色のドレスは、確かにレティの蜂蜜色の髪色によく似合う。
だが実はレティは薄桃色よりも、水色が好きなのだ。
以前ノアにはさりげなく伝えたことがあるのだが、恐らく彼は覚えていなかったのだろう。
レティはノアに手を引かれ、国王夫妻のいる大広間の中央へと足を運んだ。
王太子とその婚約者の姿を一目見ようと、参加者たちが一斉に二人を囲み始める。
「皆の者、静粛に」
息子の到着を確認した国王は、片手を挙げて招待客達を制した。
「我が息子で王太子のノアが、婚約者であるシルク公爵令嬢と結婚宣言を行うこととなった。正式な婚儀は半年後の予定であるが、ぜひ見届けてやってほしい」
国王の発言に貴族達は皆頭を下げる。
一同が静まり返ったことを確認すると、早速ノアは声高々に宣言した。
「私、ノア・ボルドーはこのレティ・シルクと結婚することを宣言する。彼女は忌々しい呪いに侵されたが、私の口付けにより無事に呪いは解かれた。二人の愛の力が証明されたのだ」
貴族たちからは二人を祝福するために、溢れんばかりの拍手が贈られた。
満足気な表情を浮かべたノアは、レティの方を向いて、顎に手をやる。
結婚宣言は、最後に二人が皆の前で口付けを行い、仮の指輪を交換することで完了するのである。
「レティ、愛してる」
ノアはレティと口付けた。
その瞬間、レティの全身にザワザワとした何かが駆け巡る。
「え、嘘……違う……」
「ん? 違う? 」
「あなたではないわ……」
「何がだい? レティ」
ノアは怪訝そうな顔でレティの顔を覗き込むが、レティの頭の中にはもはやノアの存在は無かった。
「レティ? ……って、おい! レティ!? レティ! 」
気付けばレティは彼の突き放すようにしてその腕をすり抜け、大広間を走り抜けて行く。
唖然とした表情のノアを始め、大勢の貴族達が騒然とする中、レティは遂に大広間を出て中庭へと去って行ってしまった。
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