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本編
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「リンド様は、私のことをどうお思いですか?」
カリーナは遂にリンドに尋ねた。
自分の同じエメラルドの瞳をじっと見つめるも、すぐに逸らされる。
「……それは一体どういう意味だ」
リンドの瞳が珍しく戸惑いで揺れる。
「ただの侍女ですか。シークベルト公爵家を盛り上げていくための道具ですか。それとも、少しは私の事を一人の女として見てくださっているのですか? 」
「急に何を言うのだカリーナ。いつもと様子が違うではないか……」
カリーナにはリンドの表情は読めない。
というよりも、リンドの顔を見るのが怖い。
たかが侍女ごときが急に何を言い出したのか、と思われているのであろうか。
「……それで、先程私が問いましたこと、いかがなのですか? 」
ゴクリ、とリンドが息を呑んだように見える。
彼は重い口を開いた。
「……お前は初めて会った時と比べて美しく素晴らしい女性に成長した。俺はそれだけで十分満足なんだ。お前はこれからもっと魅力溢れる女性になるであろう。俺は……カリーナ、お前には幸せを掴んでもらいたい。ただそれだけだ」
カリーナは目の前が真っ暗になっていく。
リンドの答えは、暗にカリーナの思いを拒絶したものであった。
こんな辛く悲しい気持ち、知らない。知りたくない。
出会った時から元々叶わない恋であったと、最初から気付かなければ良かったのに。
公爵にとって自分はやはり侍女のまま、シークベルト公爵家の道具のままなのだ。
公爵に惹かれてしまった自分が身の程知らずで恥ずかしい。
悔しさなのか、悲しさなのかわからないがカリーナの頬を一筋の涙が伝う。
絶対に涙は見せまいと、唇を噛んで堪えたが、涙はとどまってはくれなかった。
カリーナの涙を見た公爵は、ギョッと驚いたような顔をする。
「カリーナ、一体今日はどうしたのだ。様子がおかしい。慣れぬ外出で体が辛いのか? 」
違う、辛いのは心だ。
リンドは恐る恐るカリーナの頬に手を添えて、涙を拭う。
「カリーナ……」
「私はあなたのことを嫌いになりたいのにっ……嫌いになりきれないのはなぜでしょうか……」
リンドの発言を遮る様に発した声に、ピクリとリンドの手が止まる。
2人の視線が重なり合う。
リンドはゆっくり引き寄せられるようにカリーナの頬に手を添え、その唇にそっと自らの唇を重ねた。
「ん……」
二人の吐息が重なると共に唇が離れ、二人は見つめ合う。
とろんと熱を帯びたカリーナの瞳に見つめられたリンドは、そのまま再び口付けを交わそうと近付くが、寸前のところで思いとどまった。
今ここで口付けてしまったら、止まらなくなってしまう。
リンドの男性のしての本能がそう警鐘を鳴らしていたのかもしれない。
「リンド様……」
てっきり口付けされると思っていたカリーナは、離れていったリンドを悲し気な表情で見上げる。
「すまない……カリーナ」
リンドはそう言うとカリーナからさらに離れ、背を向けた。
お互いに何を話せばいいのかわからず、二人の間には沈黙が走る。
一体何が起こったのであろうか。
一瞬ではあるが初めて感じた唇の感覚に、心臓が止まりそうになる。
カリーナはそっと自らの唇に手を当てて、指でなぞった。
リンドの温もりがそこにはあった。
自分はリンドと口付けを交わしたのだ。
その事実が信じられずにそっと離れて座るリンドを顧みるが、彼の表情は見えなかった。
結局馬車が公爵家に到着するまでの間、二人が言葉を発することはなかったのである。
カリーナは遂にリンドに尋ねた。
自分の同じエメラルドの瞳をじっと見つめるも、すぐに逸らされる。
「……それは一体どういう意味だ」
リンドの瞳が珍しく戸惑いで揺れる。
「ただの侍女ですか。シークベルト公爵家を盛り上げていくための道具ですか。それとも、少しは私の事を一人の女として見てくださっているのですか? 」
「急に何を言うのだカリーナ。いつもと様子が違うではないか……」
カリーナにはリンドの表情は読めない。
というよりも、リンドの顔を見るのが怖い。
たかが侍女ごときが急に何を言い出したのか、と思われているのであろうか。
「……それで、先程私が問いましたこと、いかがなのですか? 」
ゴクリ、とリンドが息を呑んだように見える。
彼は重い口を開いた。
「……お前は初めて会った時と比べて美しく素晴らしい女性に成長した。俺はそれだけで十分満足なんだ。お前はこれからもっと魅力溢れる女性になるであろう。俺は……カリーナ、お前には幸せを掴んでもらいたい。ただそれだけだ」
カリーナは目の前が真っ暗になっていく。
リンドの答えは、暗にカリーナの思いを拒絶したものであった。
こんな辛く悲しい気持ち、知らない。知りたくない。
出会った時から元々叶わない恋であったと、最初から気付かなければ良かったのに。
公爵にとって自分はやはり侍女のまま、シークベルト公爵家の道具のままなのだ。
公爵に惹かれてしまった自分が身の程知らずで恥ずかしい。
悔しさなのか、悲しさなのかわからないがカリーナの頬を一筋の涙が伝う。
絶対に涙は見せまいと、唇を噛んで堪えたが、涙はとどまってはくれなかった。
カリーナの涙を見た公爵は、ギョッと驚いたような顔をする。
「カリーナ、一体今日はどうしたのだ。様子がおかしい。慣れぬ外出で体が辛いのか? 」
違う、辛いのは心だ。
リンドは恐る恐るカリーナの頬に手を添えて、涙を拭う。
「カリーナ……」
「私はあなたのことを嫌いになりたいのにっ……嫌いになりきれないのはなぜでしょうか……」
リンドの発言を遮る様に発した声に、ピクリとリンドの手が止まる。
2人の視線が重なり合う。
リンドはゆっくり引き寄せられるようにカリーナの頬に手を添え、その唇にそっと自らの唇を重ねた。
「ん……」
二人の吐息が重なると共に唇が離れ、二人は見つめ合う。
とろんと熱を帯びたカリーナの瞳に見つめられたリンドは、そのまま再び口付けを交わそうと近付くが、寸前のところで思いとどまった。
今ここで口付けてしまったら、止まらなくなってしまう。
リンドの男性のしての本能がそう警鐘を鳴らしていたのかもしれない。
「リンド様……」
てっきり口付けされると思っていたカリーナは、離れていったリンドを悲し気な表情で見上げる。
「すまない……カリーナ」
リンドはそう言うとカリーナからさらに離れ、背を向けた。
お互いに何を話せばいいのかわからず、二人の間には沈黙が走る。
一体何が起こったのであろうか。
一瞬ではあるが初めて感じた唇の感覚に、心臓が止まりそうになる。
カリーナはそっと自らの唇に手を当てて、指でなぞった。
リンドの温もりがそこにはあった。
自分はリンドと口付けを交わしたのだ。
その事実が信じられずにそっと離れて座るリンドを顧みるが、彼の表情は見えなかった。
結局馬車が公爵家に到着するまでの間、二人が言葉を発することはなかったのである。
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