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本編
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しおりを挟む「は……はぁ……? どういうことですの……? 私がこんなに苦しんでいたと言うのに、あなた様はわざわざ避妊魔法をかけて妊娠を拒んでいたんですか!? 私との子が欲しくないなら、なおのこと離縁してくださいませ!! 」
さっきから、はあ?しか言っていないような気がするが致し方ない。
もはや何が何だかわからない。
まさか結婚三年目にして、未だに避妊魔法をかけられているとは思わなかった。
避妊に関してはフィリップ様に任せきりにしていたので、全くの盲点だ。
もっと早くに確認しておけば良かった。
避妊魔法がかけられているなら、たとえ毎日夫婦の交わりを行ったとしても妊娠する訳がないのだ。
むしろ妊娠する方がおかしい。
「違う! 違うのだ! 断じて君の言うような理由ではない……すまぬ。だがとりあえずもう離縁という言葉は言わないでくれ! 絶対に離縁は認められない……君に離縁などと言われては俺はもう……」
フィリップ様は拳を握りしめて震えている。
「……わかりましたわ。離縁するかどうかは置いておいて、今はとりあえずあなた様のお話をお聞きします」
あまりにしゅんとして小さくなっているフィリップ様を目の当たりにすると、これ以上文句を言えなくなってしまった。
だがフィリップ様は何も言葉を発しない。
「あの、フィリップ様……」
私が彼の顔を覗き込もうとしたその時、意を決したようにフィリップ様が話し始めた。
「僕は……エスメラルダ、君のことが好きすぎて……君と二人で過ごす時間が幸せすぎて……子どもができて君が僕から離れていくのが怖かったんだ」
再び私の中の時間が止まった。
……フィリップ様は何を?
「……あの、何を仰っているのかわからないのですけれど……」
私の事が好きで一緒にいるのが楽しいから、避妊魔法をかけていた?
全くもって意味がわからない。
眉間に皺を寄せて不審な目を向ける私を見て、フィリップ様はようやく観念したように真実をポツリポツリと話し出した。
「っ……僕は、本当に君のことを心から愛しているんだ、エスメラルダ。最初は親が決めた結婚だったかもしれない、でも子どもの時から君に夢中だった。もちろんその美しさもそうだが、それだけではない。君と二人でいるとどんな時も楽しい。二人でいるだけで幸せなんだ。君との子どもが欲しくなかったわけではない……。だがもう少しだけ二人きりの時間を味わいたいと思ってしまって……あと少しだけと思ううちに三年が経ってしまった……すまない」
しょんぼりと頭を下げながらも、その青い瞳は真っ直ぐに私を見つめてくる。
その表情を見ると、せっかく固めた離縁への決意が揺らぎそうになってしまい、心の中で慌てて首を振る。
しっかりするのよエスメラルダ。
「ではご自身の物を慰めていた件についてはどのようなご説明を? そんなに私の事を愛してくださっているのなら、毎日のように寝室に来てくださるはず。結婚当初は毎晩朝まで一緒に過ごしていたと言うのに、今では月に数回しか来てくださりません。避妊魔法をかけていたのなら、私が妊娠する心配も無いのですし、夫婦の交わりはできたはずですわ!! 」
そう、先ほどのフィリップ様のお話では、私が目撃した自慰行為の説明にはならない。
「まっ……交わりって……。ゴホン。それはだな……実は……毎晩のように君を求めることは、君にとって負担になると聞いたのだ……」
「一体誰に? 」
「ザリアン公爵とその御令嬢だ」
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