11 / 12
秘めた想い
しおりを挟む
俺がアリアに初めての恋をしたのはいつであっただろうか。
貧しかった両親の元を離れて遠縁の侯爵に引き取られた俺は、初めて目にした幼いアリアの姿に胸惹かれるものがあった。
当時五歳の彼女に対してそんな不埒な思いを抱いた俺は、どこかおかしいのだろう。
いつか成長した彼女と同じ未来を歩んでいきたい、漠然とそう思いながら侯爵家の教育に耐え忍んできたのだ。
成長するにつれてアリアはその美しさを増すばかり。
素直に俺についてきてくれるアリアがかわいくてたまらない。
いつしか彼女は俺の中でかけがえのない女性へと変化を遂げていたらしい。
ありがたいことに、彼女も少なからず俺に好意を抱いてくれていることがわかった。
彼女と想いを通じ合いたい。
男として成長した俺の中で、そんな邪な思いが膨れ始めたのもこの頃であった。
だがそんな俺が直面したのは貴族社会の身分の壁である。
男子のいなかったアリアの実家の侯爵家が、養子として遠縁の男子を受け入れたという話はもちろん社交界中に知れ渡っており。
アリアよりも一足先に社交界へ足を踏み入れた俺は、痛いほどの洗礼を受けたのである。
『お前がアリア嬢と結婚できるわけがないだろう。彼女には由緒正しい貴族の妻の座が良く似合う。所詮平民上がりのお前なら、せいぜい男爵令嬢あたりがお似合いだ』
なかでもアリアに執心気味であったストラブール侯爵家の息子は、俺に対してひと際辛くあたってきた。
彼につられるようにして俺に背を向けていく貴族令息たち。
しつこい奴らを見返したくて、必死に勉学や剣術に励んできたものの、生まれの違いだけはどうしようもなかった。
俺はアリアの夫としてふさわしい男にはどうあがいてもなれない。
俺が彼女の隣に並んだら、彼女の顔に泥を塗ることになるかもしれないだろう。
長年何よりも大切に思ってきたアリアに辛い思いはさせたくない。
俺は苦渋の決断でアリアへの恋心を無理やり封じ込んだのである。
そんな中アリアから受けた突然の告白。
正直気が狂いそうなほどに嬉しく、全身の血が煮えたぎるような興奮をおぼえた。
だが俺ではだめなのだ。
彼女には、その生い立ちにふさわしい男性と幸せになって欲しい。
断腸の思いで彼女の告白を断ってからというもの、アリアの父である義父から頻繁に縁談を持ち込まれるようになった。
しかしどの令嬢と会ってもアリアと比べてしまう。
いつも頭に浮かぶのはアリアのことばかり。
気づかぬうちに俺は結局誰とも結婚をしないまま、二年の月日が流れたのであった
貧しかった両親の元を離れて遠縁の侯爵に引き取られた俺は、初めて目にした幼いアリアの姿に胸惹かれるものがあった。
当時五歳の彼女に対してそんな不埒な思いを抱いた俺は、どこかおかしいのだろう。
いつか成長した彼女と同じ未来を歩んでいきたい、漠然とそう思いながら侯爵家の教育に耐え忍んできたのだ。
成長するにつれてアリアはその美しさを増すばかり。
素直に俺についてきてくれるアリアがかわいくてたまらない。
いつしか彼女は俺の中でかけがえのない女性へと変化を遂げていたらしい。
ありがたいことに、彼女も少なからず俺に好意を抱いてくれていることがわかった。
彼女と想いを通じ合いたい。
男として成長した俺の中で、そんな邪な思いが膨れ始めたのもこの頃であった。
だがそんな俺が直面したのは貴族社会の身分の壁である。
男子のいなかったアリアの実家の侯爵家が、養子として遠縁の男子を受け入れたという話はもちろん社交界中に知れ渡っており。
アリアよりも一足先に社交界へ足を踏み入れた俺は、痛いほどの洗礼を受けたのである。
『お前がアリア嬢と結婚できるわけがないだろう。彼女には由緒正しい貴族の妻の座が良く似合う。所詮平民上がりのお前なら、せいぜい男爵令嬢あたりがお似合いだ』
なかでもアリアに執心気味であったストラブール侯爵家の息子は、俺に対してひと際辛くあたってきた。
彼につられるようにして俺に背を向けていく貴族令息たち。
しつこい奴らを見返したくて、必死に勉学や剣術に励んできたものの、生まれの違いだけはどうしようもなかった。
俺はアリアの夫としてふさわしい男にはどうあがいてもなれない。
俺が彼女の隣に並んだら、彼女の顔に泥を塗ることになるかもしれないだろう。
長年何よりも大切に思ってきたアリアに辛い思いはさせたくない。
俺は苦渋の決断でアリアへの恋心を無理やり封じ込んだのである。
そんな中アリアから受けた突然の告白。
正直気が狂いそうなほどに嬉しく、全身の血が煮えたぎるような興奮をおぼえた。
だが俺ではだめなのだ。
彼女には、その生い立ちにふさわしい男性と幸せになって欲しい。
断腸の思いで彼女の告白を断ってからというもの、アリアの父である義父から頻繁に縁談を持ち込まれるようになった。
しかしどの令嬢と会ってもアリアと比べてしまう。
いつも頭に浮かぶのはアリアのことばかり。
気づかぬうちに俺は結局誰とも結婚をしないまま、二年の月日が流れたのであった
329
お気に入りに追加
702
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
【本編完結】副団長様に愛されすぎてヤンデレられるモブは私です。
白霧雪。
恋愛
王国騎士団副団長直属秘書官――それが、サーシャの肩書きだった。上官で、幼馴染のラインハルトに淡い恋をするサーシャ。だが、ラインハルトに聖女からの釣書が届き、恋を諦めるために辞表を提出する。――が、辞表は目の前で破かれ、ラインハルトの凶悪なまでの愛を知る。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した
Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。
ヒョロガリ殿下を逞しく育てたのでお暇させていただきます!
冬見 六花
恋愛
突如自分がいる世界が前世で読んだ異世界恋愛小説の中だと気づいたエリシア。婚約者である王太子殿下と自分が死ぬ運命から逃れるため、ガリガリに痩せ細っている殿下に「逞しい体になるため鍛えてほしい」とお願いし、異世界から来る筋肉好きヒロインを迎える準備をして自分はお暇させてもらおうとするのだが……――――もちろん逃げられるわけがなかったお話。
【無自覚ヤンデレ煽りなヒロイン ✖️ ヒロインのためだけに体を鍛えたヒロイン絶対マンの腹黒ヒーロー】
ゆるゆるな世界設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる