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幸福な囚われ(アリアsideラスト)

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 それからというもの、私はアンソニーの私室へと連れていかれ一切の外出を禁止された。
 朝から晩まで彼の愛を一心に受け続ける日々。

「私たちの関係が公のものとなりアリアが完全に私のものになるまで、他の男たちの面前にさらしたくはないのだ」

 そんな独占欲を丸出しにしたアンソニーによって、全ての舞踏会への参加も禁じられている。
 私室への立ち入りはたとえ侯爵家の使用人であっても制限され、朝昼晩の食事を持ってくるのはアンソニーの役割となり、私は外の世界から遮断された生活を送っていた。
 そんな日々を続けているうちに、私はアンソニー無しでは生きられない体になってしまったらしい。

「お父様が戻られたら、このままではいけませんわ……」

 恐らく数日以内に侯爵である父が屋敷へと戻ってくるはずなのだ。
 さすがに結婚前の娘がこのような乱れた生活を送るのは、親としても複雑な心境だろう。

「ああ、お義父上が戻られたらすぐに私たちの結婚を認める書類にサインしてもらおう」
「え……」

 さすがにそれは早すぎるような気がするのだが。
 私たちはまだ正式に婚約も結んでいない関係であり、舞踏会で二人の関係を披露することもしていない。

「誰にも文句は言わせない。アリアが隣にいてくれるなら、俺はなんだって耐えられるし大丈夫だから」
「でも……」
「心配なんだ……早く正式にアリアを俺の妻にしないと、横やりを入れられてしまうかもしれない」
 アンソニーが恐ろしいほどに深く歪んだ愛を秘めていたことに、なぜ私は気が付かなかったのだろうか。

「アリア、お前を傷つけるような真似は絶対にしないから」
「お義兄様……」
「アンソニー、だろ」
「んんっ……」

 私が少しでも呼び名を間違えると、こうして口づけが降りてくる。
 そしてまた食事も忘れるかのように彼に抱き続けられるのだ。

 その後の話を少しだけ。
 宣言通り、お父様が帰宅された瞬間に書類へのサインを求めたアンソニー。
 お父様は呆れながらもサインをしてくれたらしく、これで私たちは正式な夫婦となった。
 実はお父様は私たちが互いに思い合っていることに気づいていたらしく。
 縁談を決めるよう私にお願いされてからも、しばらく様子を静観していたらしい。
 だから一向に縁談の話が進まなかったのかとようやく納得した。
 さすがに彼の重すぎるほどの愛にお父様は難色を示していたものの、それを払しょくするほどに次期侯爵としての頭角を現しているらしく。
 内心思うところはあるものの、黙って見守ることとしたらしい。

 そして晴れてアンソニーの妻となった私。
 これでようやく彼の部屋から出してもらえるかと思いきや、今も基本的にはこの部屋の中で生活している。
 結婚後に舞踏会に参加したのは一度だけ。
 これでいいのだろうかと不安にもなるが、私がそばにいるとアンソニーがとても満たされた、幸せそうな表情を浮かべるのだ。
 彼の幸せは私の幸せでもある。
 彼の気が済むまで、この部屋で生活するのも悪くはないだろう。

 いつしか歪んだ彼の愛に快感を覚えてしまうほど、私の心は彼に囚われてしまったのかもしれない。
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