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こうして輿入れから一年の月日が経ち、桔梗は十八を迎えた。
二人は婚儀を執り行い、正式に夫婦として認められたのだ。
「……緊張、しているか? 」
「えっ……」
初夜を迎えた二人は、寝所で向かい合って座っていた。
真っ白な寝衣に着替えた桔梗の姿を義村はまじまじと眺める。
紅を薄くさしただけの化粧は、桔梗の素の美しさを強調し、着物の胸元が妖艶な雰囲気を醸し出すのを見て義村は思わずゴクリと喉を鳴らした。
「大丈夫。そなたを怖がらせるつもりはない。優しくする」
そう言うと義村は桔梗の腰を抱き締め、顎に手をやって口付けた。
柔らかな桔梗の感触が心地よい。
こうして二人は初めての閨を終えた。
「あまりに心地がいい。しばらくそなたを離してやれそうにない」
顔を赤くして恍惚の表情を浮かべる義村に、桔梗まで恥ずかしくなる。
「そなたには無理をさせた」
義村が労わるように桔梗に口付けると、桔梗は義村に擦り寄りこう言った。
「これで、ようやくあなた様のものになれました。初めてお会いしてから十一年、ようやくですわ」
二人の想いが通じ合った瞬間であった。
初夜を終えた桔梗は、義村の腕を枕にしてそのまま寝入ってしまった。
義村はそんな彼女の寝顔をジッと見つめる。
純粋無垢な彼女を、自分が手折ったのだ。
生涯をかけて桔梗を守り抜かなければならないという決意を心に誓う。
それと同時に、もはや自らも桔梗無しでは生きていけないと思うほど彼女の虜になっていることに気付いた。
初めて桔梗と出会った時の自分に聞かせたら、どんなに驚くことだろう。
……愛している。
義村は汗で湿り気を帯びた桔梗の額にそっと口付けたのだった。
次の朝、桔梗が目を覚ますと隣には微笑みながらその様子を眺める義村の姿があった。
「いやだ、ずっと見ていたのですか? 恥ずかしい……」
「あまりにそなたが美しくて目が離せなかった。桔梗、俺は十も歳下のそなたの虜になってしまったようだ。どう責任を取ってくれる? 」
義村はサラリとした桔梗の髪を一房取ると、その束に口付ける。
桔梗はその姿から漂う色気に気がおかしくなりそうになりながら答える。
「私は、ずっとずっと前からそうですわ。初めてあなたとお会いした時からずっと」
「俺と初めて会った時のそなたはまだ子どもであったではないか」
義村はクスクスと笑いながら再び桔梗をその胸の中に抱き締める。
「もう、ひどい。あの時から私がお慕いした殿方は義村様ただ一人ですわ……きゃっ」
桔梗の可愛さに耐えきれず、義村は桔梗を抱き締める腕に力を入れると、口付ける。
「会国でも、桔梗の花が咲くと良いのだがな」
会国は夏でも涼しい気候のせいか、桔梗の花が咲く事はない。
いつか城の庭に桔梗の花が咲くことを密かに義村は願っていた。
二人は婚儀を執り行い、正式に夫婦として認められたのだ。
「……緊張、しているか? 」
「えっ……」
初夜を迎えた二人は、寝所で向かい合って座っていた。
真っ白な寝衣に着替えた桔梗の姿を義村はまじまじと眺める。
紅を薄くさしただけの化粧は、桔梗の素の美しさを強調し、着物の胸元が妖艶な雰囲気を醸し出すのを見て義村は思わずゴクリと喉を鳴らした。
「大丈夫。そなたを怖がらせるつもりはない。優しくする」
そう言うと義村は桔梗の腰を抱き締め、顎に手をやって口付けた。
柔らかな桔梗の感触が心地よい。
こうして二人は初めての閨を終えた。
「あまりに心地がいい。しばらくそなたを離してやれそうにない」
顔を赤くして恍惚の表情を浮かべる義村に、桔梗まで恥ずかしくなる。
「そなたには無理をさせた」
義村が労わるように桔梗に口付けると、桔梗は義村に擦り寄りこう言った。
「これで、ようやくあなた様のものになれました。初めてお会いしてから十一年、ようやくですわ」
二人の想いが通じ合った瞬間であった。
初夜を終えた桔梗は、義村の腕を枕にしてそのまま寝入ってしまった。
義村はそんな彼女の寝顔をジッと見つめる。
純粋無垢な彼女を、自分が手折ったのだ。
生涯をかけて桔梗を守り抜かなければならないという決意を心に誓う。
それと同時に、もはや自らも桔梗無しでは生きていけないと思うほど彼女の虜になっていることに気付いた。
初めて桔梗と出会った時の自分に聞かせたら、どんなに驚くことだろう。
……愛している。
義村は汗で湿り気を帯びた桔梗の額にそっと口付けたのだった。
次の朝、桔梗が目を覚ますと隣には微笑みながらその様子を眺める義村の姿があった。
「いやだ、ずっと見ていたのですか? 恥ずかしい……」
「あまりにそなたが美しくて目が離せなかった。桔梗、俺は十も歳下のそなたの虜になってしまったようだ。どう責任を取ってくれる? 」
義村はサラリとした桔梗の髪を一房取ると、その束に口付ける。
桔梗はその姿から漂う色気に気がおかしくなりそうになりながら答える。
「私は、ずっとずっと前からそうですわ。初めてあなたとお会いした時からずっと」
「俺と初めて会った時のそなたはまだ子どもであったではないか」
義村はクスクスと笑いながら再び桔梗をその胸の中に抱き締める。
「もう、ひどい。あの時から私がお慕いした殿方は義村様ただ一人ですわ……きゃっ」
桔梗の可愛さに耐えきれず、義村は桔梗を抱き締める腕に力を入れると、口付ける。
「会国でも、桔梗の花が咲くと良いのだがな」
会国は夏でも涼しい気候のせいか、桔梗の花が咲く事はない。
いつか城の庭に桔梗の花が咲くことを密かに義村は願っていた。
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