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俺と彼女の八年間とその後 4
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二ヶ月ぶりに見た葵はますます綺麗になっていて、俺と付き合っていた時の翳りがなくなり元の明るい彼女へと戻っていた。
そして彼女の隣に立つ男。
馴れ馴れしく葵と喋りながら歩くその男は、葵の新しい彼氏なのだろうか。
自分と別れてからたった二ヶ月の間にもう彼氏ができてしまったのかと、全身の血が煮えたぎるように熱くなる。
それと同時に、なぜ自分はあれほど魅力的な女性をおざなりにしてちゃんと向き合ってこなかったのだろうかと自己嫌悪に陥った。
その結果冷静に彼女に自分の気持ちを伝えるつもりが喧嘩腰になり、彼女にますます呆れられてしまう始末。
隣にいた男はただの同僚であったらしく、とんだとばっちりであっただろう。
それでも俺は彼女を諦めたくなかった。
あんな街中で周りの人の目を気にせずに彼女への想いを伝えてしまうほどに、彼女に戻ってきて欲しかったのだ。
俺の謝罪によって、葵は再びアパートに戻ってきてくれた。
だが彼女は俺のことが好きだから戻ってきてくれたのではない。
長年付き合った俺が壊れてしまうのを恐れたのだ。
現に俺は彼女が再び家を出たまま戻ってこなくなることを極端に恐れ、毎日毎日彼女の存在をしつこく確認してしまう体たらく。
自分が蒔いた種であるはずなのに、なぜ俺が被害者ぶっているのだろうか。
だがこの関係を終わりにしたら今度こそ葵は手に届かない場所へと離れて行ってしまう気がする。
たとえ彼女に愛されていなくても、同じ屋根の下で暮らすことのできる時間が少しでも延ばせるなら……。
俺は必死に彼女にしがみついていた。
そんな中彼女から切り出された二度目の別れ話。
……いや、今回はもはや付き合ってもいなかったのだから別れ話ですらないだろう。
俺は泣いて謝り狂ったように彼女に縋った。
するとこれまで涙を見せなかった葵が、叫ぶように涙を流しながら思いの丈を打ち明けたのだ。
俺の誕生日に手料理を作って待っていてくれたこと、葵の誕生日に俺の帰りをひたすら待っていたこと。
彼女の体を抱きしめながらその話を聞いていた俺は、聞けば聞くほど自分が嫌になった。
これからの俺の人生を全て捧げて葵に懺悔していきたい。
元通りになれるなんて思っていないけれど、葵のそばで彼女の人生を一緒に見ることは許されるのだろうか。
◇
葵は結局同棲していたアパートを出て、再度一人暮らしをすることを決めたらしい。
いつまた彼女が俺の前から姿を消すのか、考え始めたら怖くてたまらなくなったが、俺は彼女の意思を尊重した。
そしてその代わり毎日のように彼女の元を訪れることにしたのだ。
最初は戸惑い呆れた様子の葵であったがいつしか二人で過ごすことにすっかり慣れたようで、以前付き合っていた時のような柔らかい表情を見せてくれるようになった。
「ねえ俊」
「ん?」
「なんか、私今ものすごく幸せかも」
「え……」
「こういう何でもない日が一番幸せだよね」
食後にコーヒーを飲みながら、そう言ってふんわりと微笑む葵の姿に、再び涙腺が緩みかけたことを彼女は知らない。
彼女と復縁したい。
だが散々彼女を傷つけた自分からはどうしても言い出すことができない。
ただ月日だけが流れていき、俺と葵が初めて付き合い出してから九年が経とうとしていた。
そして彼女の隣に立つ男。
馴れ馴れしく葵と喋りながら歩くその男は、葵の新しい彼氏なのだろうか。
自分と別れてからたった二ヶ月の間にもう彼氏ができてしまったのかと、全身の血が煮えたぎるように熱くなる。
それと同時に、なぜ自分はあれほど魅力的な女性をおざなりにしてちゃんと向き合ってこなかったのだろうかと自己嫌悪に陥った。
その結果冷静に彼女に自分の気持ちを伝えるつもりが喧嘩腰になり、彼女にますます呆れられてしまう始末。
隣にいた男はただの同僚であったらしく、とんだとばっちりであっただろう。
それでも俺は彼女を諦めたくなかった。
あんな街中で周りの人の目を気にせずに彼女への想いを伝えてしまうほどに、彼女に戻ってきて欲しかったのだ。
俺の謝罪によって、葵は再びアパートに戻ってきてくれた。
だが彼女は俺のことが好きだから戻ってきてくれたのではない。
長年付き合った俺が壊れてしまうのを恐れたのだ。
現に俺は彼女が再び家を出たまま戻ってこなくなることを極端に恐れ、毎日毎日彼女の存在をしつこく確認してしまう体たらく。
自分が蒔いた種であるはずなのに、なぜ俺が被害者ぶっているのだろうか。
だがこの関係を終わりにしたら今度こそ葵は手に届かない場所へと離れて行ってしまう気がする。
たとえ彼女に愛されていなくても、同じ屋根の下で暮らすことのできる時間が少しでも延ばせるなら……。
俺は必死に彼女にしがみついていた。
そんな中彼女から切り出された二度目の別れ話。
……いや、今回はもはや付き合ってもいなかったのだから別れ話ですらないだろう。
俺は泣いて謝り狂ったように彼女に縋った。
するとこれまで涙を見せなかった葵が、叫ぶように涙を流しながら思いの丈を打ち明けたのだ。
俺の誕生日に手料理を作って待っていてくれたこと、葵の誕生日に俺の帰りをひたすら待っていたこと。
彼女の体を抱きしめながらその話を聞いていた俺は、聞けば聞くほど自分が嫌になった。
これからの俺の人生を全て捧げて葵に懺悔していきたい。
元通りになれるなんて思っていないけれど、葵のそばで彼女の人生を一緒に見ることは許されるのだろうか。
◇
葵は結局同棲していたアパートを出て、再度一人暮らしをすることを決めたらしい。
いつまた彼女が俺の前から姿を消すのか、考え始めたら怖くてたまらなくなったが、俺は彼女の意思を尊重した。
そしてその代わり毎日のように彼女の元を訪れることにしたのだ。
最初は戸惑い呆れた様子の葵であったがいつしか二人で過ごすことにすっかり慣れたようで、以前付き合っていた時のような柔らかい表情を見せてくれるようになった。
「ねえ俊」
「ん?」
「なんか、私今ものすごく幸せかも」
「え……」
「こういう何でもない日が一番幸せだよね」
食後にコーヒーを飲みながら、そう言ってふんわりと微笑む葵の姿に、再び涙腺が緩みかけたことを彼女は知らない。
彼女と復縁したい。
だが散々彼女を傷つけた自分からはどうしても言い出すことができない。
ただ月日だけが流れていき、俺と葵が初めて付き合い出してから九年が経とうとしていた。
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