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「国王陛下は、王太子殿下の婚約者であるシーラ様の祖国、アトワール国と裏で繋がっている」
「……それはどう言う意味ですか? 」
「国王陛下が即位なさる前、生まれが側妃腹だったことから即位反対派の貴族たちも多くいたんだ。前国王と正妃の正統な血を引く辺境伯や、他国に嫁いだ王女達の子どもを国王として迎えようということだ」
貴族の子女からすれば即妃も十分に高貴な女性なのだが、その地位は正妃のそれとは比べ物にはならないらしい。
「そこで国王陛下は裏でアトワール国からの力添えを得て、即位されたのだ」
アトワール国は非常に広大な領地を数多く抱え、潤沢な資産を持つ豊かな大国である。
そのアトワール国を後ろ盾に持つことができれば、国王の即位を邪魔する貴族はいなくなる。
「今もまだアトワールと国王陛下は繋がっている。陛下がアトワールから多額の賄賂を受け取っていることが判明したのだ。その見返りに王女であるシーラ様を、王太子妃とする約束らしい」
「国王は如何なる者からも賄賂を受け取ることは、法律で禁じられているはずでは? 」
「その通りだ。だから陛下は我がアルマニアを恐れている。アルマニアが忍術魔法を用いて陛下の違法行為を暴いてしまったからだ。これが表に出れば、陛下は苦労して手に入れた国王の座を譲位せざるを得なくなる。それ故、わざとアルマニアの悪い噂を流してアルマニアの立場を悪くしているのだろう」
アデール国でアルマニア公爵家の評判はすこぶる悪い。
私利私欲のため、国を蔑ろにしていると。
実際それは国王そのものなのだが。
今アルマニア公爵家が国王陛下の所業を顕にしたところで、それを信じる貴族は少ないだろう。
国王の狙いはそこだったのだ。
「では陛下は敢えてアルマニア公爵家の悪評を流していたと言うのですか。それでは、アルマニア公爵家の方々にとってはあんまりではないですか」
「賄賂を受け取っているだけならまだ良い。実はもっと重大な問題が潜んでいるんだ……」
カイルはそう言うと、佇まいを直して緊張した面持ちとなった。
言うか言わまいか迷った挙句、ゆっくり口を開く。
「これは言うか迷ったのだが、あなたには隠し事はできそうにない……。国王陛下は、アトワールから賄賂を受け取りシーラ様を王太子妃にすることでその約束を果たすことができると考えているが、それは間違いだ。陛下自身も騙されている」
「それは……一体どう言う意味です? 」
「アトワールは呪術に優れていると言う事を聞いたことはあるか? 」
「はい、古代より優れた呪術師が代々その技術を受け継いできたと聞きますが、それが何か? 」
アデール国で主流となっている魔法は、攻撃魔法を除いて他人に害を及ぼす物はほとんどない。
だが呪術は主に他人への害を目的として行われるため、非常に危険な技術なのだ。
「アトワールは、王太子殿下が国王に即位された際には呪術を使って国王を操り、アデールを乗っ取ろうと企んでいる」
「ええ!? 何ですって!? 」
「しーっ、声が大きい」
つい大きな声が出てしまったルーシーを、カイルが慌てて静止する。
「ご、ごめんなさい。続けて大丈夫ですわ」
「……本当に大丈夫か? まあいい。アルマニアが舞踏会や夜会の度に忍術魔法を使ってスパイ活動をしていると話しただろう? それでこの事実が判明したんだ。アルマニアが王家に対して何か行動を移す様な真似をしたら、公爵家にも呪術をかけようと目論んでいることもな。シーラ様を一足早く王家に潜入させて、城の中からも徐々に支配を拡げていく予定なのだろう」
「……それはどう言う意味ですか? 」
「国王陛下が即位なさる前、生まれが側妃腹だったことから即位反対派の貴族たちも多くいたんだ。前国王と正妃の正統な血を引く辺境伯や、他国に嫁いだ王女達の子どもを国王として迎えようということだ」
貴族の子女からすれば即妃も十分に高貴な女性なのだが、その地位は正妃のそれとは比べ物にはならないらしい。
「そこで国王陛下は裏でアトワール国からの力添えを得て、即位されたのだ」
アトワール国は非常に広大な領地を数多く抱え、潤沢な資産を持つ豊かな大国である。
そのアトワール国を後ろ盾に持つことができれば、国王の即位を邪魔する貴族はいなくなる。
「今もまだアトワールと国王陛下は繋がっている。陛下がアトワールから多額の賄賂を受け取っていることが判明したのだ。その見返りに王女であるシーラ様を、王太子妃とする約束らしい」
「国王は如何なる者からも賄賂を受け取ることは、法律で禁じられているはずでは? 」
「その通りだ。だから陛下は我がアルマニアを恐れている。アルマニアが忍術魔法を用いて陛下の違法行為を暴いてしまったからだ。これが表に出れば、陛下は苦労して手に入れた国王の座を譲位せざるを得なくなる。それ故、わざとアルマニアの悪い噂を流してアルマニアの立場を悪くしているのだろう」
アデール国でアルマニア公爵家の評判はすこぶる悪い。
私利私欲のため、国を蔑ろにしていると。
実際それは国王そのものなのだが。
今アルマニア公爵家が国王陛下の所業を顕にしたところで、それを信じる貴族は少ないだろう。
国王の狙いはそこだったのだ。
「では陛下は敢えてアルマニア公爵家の悪評を流していたと言うのですか。それでは、アルマニア公爵家の方々にとってはあんまりではないですか」
「賄賂を受け取っているだけならまだ良い。実はもっと重大な問題が潜んでいるんだ……」
カイルはそう言うと、佇まいを直して緊張した面持ちとなった。
言うか言わまいか迷った挙句、ゆっくり口を開く。
「これは言うか迷ったのだが、あなたには隠し事はできそうにない……。国王陛下は、アトワールから賄賂を受け取りシーラ様を王太子妃にすることでその約束を果たすことができると考えているが、それは間違いだ。陛下自身も騙されている」
「それは……一体どう言う意味です? 」
「アトワールは呪術に優れていると言う事を聞いたことはあるか? 」
「はい、古代より優れた呪術師が代々その技術を受け継いできたと聞きますが、それが何か? 」
アデール国で主流となっている魔法は、攻撃魔法を除いて他人に害を及ぼす物はほとんどない。
だが呪術は主に他人への害を目的として行われるため、非常に危険な技術なのだ。
「アトワールは、王太子殿下が国王に即位された際には呪術を使って国王を操り、アデールを乗っ取ろうと企んでいる」
「ええ!? 何ですって!? 」
「しーっ、声が大きい」
つい大きな声が出てしまったルーシーを、カイルが慌てて静止する。
「ご、ごめんなさい。続けて大丈夫ですわ」
「……本当に大丈夫か? まあいい。アルマニアが舞踏会や夜会の度に忍術魔法を使ってスパイ活動をしていると話しただろう? それでこの事実が判明したんだ。アルマニアが王家に対して何か行動を移す様な真似をしたら、公爵家にも呪術をかけようと目論んでいることもな。シーラ様を一足早く王家に潜入させて、城の中からも徐々に支配を拡げていく予定なのだろう」
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