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第3章最弱魔王は修学旅行で頑張るそうです
第88話 疾風怒濤
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「いい具合に仕上がったかな~」
死んだサタンが倒れている所まで歩いていき、見下すベルゼブブ。そして、左手で頭を掴み持ち上げる。
「お、いい具合に仕上がったな。それじゃ、少ない魔力だけど食べるか。元々不味そうな上、冷えたらもっと不味くなるしな」
それから、ベルゼブブは暫く黙り込み何かを考える。そして、閃いたように空いている方の手の親指と中指をこすってパチンという音を鳴らした。
「うっし、丸呑みだな! 噛んで血と一緒に魔力を外に漏らしちまったら元々少ないのにもっと減る。それに、不味い思いをしながら食べるのは嫌だしな。何でも美味しく頂く、それが俺のモットーだ!」
ベルゼブブはサタンをどう食べるか、その食べ方について悩んでいたのだ。
「んじゃ、敬意を表して、イタダキマー――」
口を大きく開けてサタンを丸呑みにしようとする。その時――
「待って下さい!」
アズラがベルゼブブの腕を掴み動きを止める。ベルゼブブはアズラの気配に全く気づかず、腕を掴まれてようやく近づかれていたことに気づく。
「何だ? アズラちゃん」
平静を装うも、内心は気配を全く気づくことの出来なかったアズラの謎の恐怖感に不審を抱く。
(なんだ――? いつの間にここまで来ていた――?)
「お願いします・・・サタンさんを食べないで下さい・・・!」
ベルゼブブの腕を掴む力が自然と強くなる。
(サタンさんは消化さえされなければきっと生き返れます・・・だから、私が絶対にサタンさんを食べさせたりなんかさせません! ・・・・・・って言いますか、サタンさんが不味いなんてこと絶対にありませんから!)
サタンを食べさせないという思いが益々腕に伝わり力が増幅していく。
「それはないぜアズラちゃん。せっかく、ここまで調理したのに完成を頂けないなんて辛すぎる。俺はまだ腹が空いてるんだ」
しかし、ベルゼブブは腕を掴まれる力が強くなっても決してサタンを離そうとしない。それどころか、食べる意思は強くなる一方だ。
「――ええ、分かっています。・・・・・・だから、私を食べていいです。私がサタンさんの身代わりになります。サタンさんよりも私の方が魔力もありますし、それで充分でしょう?」
アズラが言ったことは事実である。魔王であるサタンよりアズラの方が魔力がある。自分を犠牲にして大切なサタンを守る。
「でもなぁ、魔王の方が悪魔を食うよりも威張れるしなぁ――」
「あまり――あまり私を怒らせない方が身のためですよ・・・言うことを聞いてください」
「・・・・・・っ!?」
まただ。急に感じる謎の恐怖感。ベルゼブブは本能的にアズラの殺気を感じとる。これ以上の言い訳は自分の身に何が起こるか分からない。ベルゼブブは渋々、アズラの申し出を了承した。
「分かっ、た」
アズラがベルゼブブの腕を離すとサタンをそこら辺りに雑に放り投げる。その行動に腹が立つが、突っかかるとサタンを食べられてしまうかもしれない。アズラは苛立ちをグッと堪え胸の内にしまう。
「じゃあ、アズラちゃんを頂く」
「くれぐれも私を食べた後にサタンさんを食べようと思っているのなら止めておいた方がいいですよ。もし、そんな事をしたら私が食べられた後でもあなたに復讐しますからね」
全て考えを見抜かれている。ベルゼブブはアズラが言った事を考えていた。アズラさえいなくなれば魔王を好きに出来る。魔王を食べて魔王になる。そう考えていた。しかし、アズラの言葉を聞いて考えを改める。
(この悪魔は本当に俺をどうにかするつもりだ・・・そして、それを実行出来る力をもっている・・・!)
「わ、分かってる。魔王には手を出さない。・・・・・・にしても、本当に大きくなったなアズラちゃん。あの小さかった頃からは信じられないぜ」
「あなたがいない間に色々とありましたからね・・・」
「俺だって別にアズラちゃんや魔王を好んで食べたい訳じゃない。一応、魔界の仲間だしな。だけど、仕方ないよな。俺は腹を空かせてるんだから!」
「分かってますから、早くしてください!」
(とことんムカつきます! 今更、申し訳ない程度の言い訳など聞きたくありません!)
「ああ~じゃあそうさせてもらうぜ!」
「う・・・・・・」
自分の方が立場が上と分かった今怖いものなどない。元々怖いものなどないが僅かに感じた恐怖感。しかし、その感じた恐怖感を出したアズラでさえ今、料理として目の前にいる。ベルゼブブはアズラの首を左手で掴み、持ち上げる。
「ああ、そうそう。最後にひとつだけ聞きたいことがあったんだった。・・・・・・あの頃から――子供の頃から仲良しだった天使は今どうしてる?」
◇
くそ・・・! また、死んだ・・・!
サタンはベルゼブブが投げた銛に体と心臓を貫かれて殺された後、いつものように魔柱72柱の悪魔と出逢う暗い空間で嘆いていた。
魔王パンチは全くダメージを与えれない・・・奥義である魔導砲もたかが銛を投げられるだけでかき消される・・・
打つ手なし。それが、今のサタンの実力。最弱の魔王は悪魔に勝てない・・・。
だから、どうした? それでも、俺は勝たないといけないんだ! 朝までにホテルまで戻らないといけないんだよ!
サタンは記憶した魔書に書かれていた魔柱72柱の悪魔を思い出す。
次は“狼の悪魔・マルコシアス”だったか・・・確か、蛇の尾を持ち、翼を持つ狼だったな。火を吐くことが出来る能力を所持していると書いてあったな・・・
マルコシアスについて今一度確認をしていると奥から何者かがやって来る。その姿を見てサタンは困惑した。
え・・・!?
「――誰だ!?」
サタンの前に現れたのは、蛇の尾と翼を持つ狼・・・などではなく――
「ははは。酷いですね。魔王様。私を覚えてくれていないなんて」
翼の生えた馬に乗る、美男子だった。
「私の名はセーレ。魔柱72柱の一員です」
そして、セーレは金髪の髪をかきあげるとニヤリと笑った。
「セーレ!? セーレはマルコシアスの次のはずじゃ・・・」
サタンはセーレと名乗る悪魔を前にし、魔書に書かれてあった事を思い出す――。
『ふむふむ・・・“美男の悪魔・セーレ”は移動する速度に長けている・・・瞬時に移動し、物を運ぶ事が出来る、と――』
魔書に書かれてあった順番だと確実にマルコシアスの次がセーレとなっていた。それは、はっきりと覚えている。ならば、何故現れるはずのマルコシアスが現れないで、現れるはずのないセーレが今目の前にいるのか。
「嫌だなぁ、魔王様。魔王様とマルコシアスは既に繋がっているじゃないですか」
「・・・・・・は!?」
セーレは笑いながら、まるでサタンが冗談を言っているかのように受け流す。しかし、サタンは冗談のつもりなど全くない。本当に分かっていないのだ。
「俺がいつ死んだって言うんだよ!?」
「忘れたのですか~魔王様は昨日死んでいたじゃないですか~」
昨日・・・? 昨日って、何してたっけ? 確か、海で遊ん――
ダディ研究所で過ごしている内に、いつの間にか日付が変わっていた。昨日――つまり、海で溺れた事を思い出してハッとする。
「ま、まさか――」
「ええ。そのまさかですよ。魔王様、あなたは――昨日海で溺れて溺死したのです」
溺死。そう、サタンは昨日既に一回死んでいたのだ。海に沈んでいくのと同時に死に、メルが人工呼吸をしようとする寸分前に生き返ったのだ。
ああーーー! 俺、結局死んでたのかよ! 魔王なのに溺死するって・・・もうなんか心折れる・・・
「全く魔王様は情けないですね。溺死で死ぬ魔王様なんて聞いたことないですよ」
「す、すまん・・・」
魔王であるサタンの方がセーレに向かって謝る。本当にそうだ。こんな魔王に仕える悪魔の事を思うと申し訳ない気持ちが溢れるサタン。
「本当ですよ。・・・・・・ま、そんな魔王様の事を放っておけないから私もマルコシアスも魔王様の力になるんですけどね」
「マルコシアス――」
マルコシアスの姿が次第に薄くなっていく。サタンの中へと入る刻がきたのだ。
「ああ、そうそう。魔王様が昨日死んだ時、小さな勇者は泣いていましたよ。そして、人工呼吸をしてでも魔王様を助けようとしていました」
「メルが・・・」
そうだ。俺はまだメルに礼を言うことも出来ていないんだ・・・
「ええ。だから、彼女のためにも魔王様のためにも――皆のためにも全てを終わらして早く帰りましょう。私とマルコシアスの能力が加われば可能ですから――」
セーレは爽やかな笑みを浮かべると薄れ消えサタンの中へと入った。
ああ・・・俺とお前達の能力があれば俺は――
サタンを眩い光が包んだ――。
「――天使はどうしてる?」
アズラの首を絞め上げながら、“天使”、という単語を口にするベルゼブブ。
「――それを、答える必要がありますか・・・?」
「ああ、あるねぇ。俺は昔からアズラちゃんと仲良くしてた天使の子を食べたくて食べたくてしょうがなかったんだからな」
「それを聞いて私が答えるとでも・・・?」
アズラは決して天使について答えない。
「へへ。ま、そりゃそうだよな。あんなに仲良しだったもんな。じゃ、まぁアズラちゃんを食べた後に探すとでもするよ」
「・・・・・・好きにすればいいでしょう・・・」
「へへへ。じゃ、悪いけどイタダキマー――」
アズラを食べるために口をガパッと大きく開ける。同じ悪魔としてのせめてもの情け。一口でいく。
(・・・・・・っ、サタンさん・・・)
アズラは食べられる事を覚悟し、目を瞑った。最後にまぶたに浮かんだサタンの姿を心で声にして――
「ガハッ!」
目を開けた。耳に入ってきた。サタンの声が。
「サタンさん!」
アズラは食べられそうになっているにも関わらず、声が聞こえてきた方を向く。すると、そこには口にたまった血を咳き込みながら吐き出しているサタンの姿があった。
(良かった・・・間に合ったんですね。でしたら、私は――)
「な、何事だ・・・? 魔王は死んだはずだろ・・・」
生き返ったサタンを見て驚愕に驚いているベルゼブブ。
「すいません・・・私――」
「あ!?」
「あなたに食べられる気など一歳ありません。私を食べていいのはサタンさんだけですから!」
「何言って――」
途端にベルゼブブの目と鼻から汚ない緑色の液体が飛び出した。体が小刻みに震えだす、特に下半身が生まれたての小鹿みたいにビクビクしている。
アズラはベルゼブブの股間をおもいきり蹴ったのだ。
「これは、さっきサタンさんを投げたお返しです!」
「あ、アズラァァァァァァ!」
体を走る痛みが腕に伝わり、アズラを掴み上げていた力が弱まり落としてしまう。
「待てぇぇぇぇぇぇぇ!」
「いいえ、待ちません!」
アズラはこの瞬間を待っていた。離された一瞬で自分の足下にワープを展開する。そして、そのまま落ちながらワープへと吸い込まれサタンの近くへと現れる。
「大丈夫ですか、サタンさん!?」
「アズラ・・・今のワープは一体・・・」
途中から顔を上げて全てを見ていたサタン。見ることが出来たのも、血を吐き出しただけの音を聞き取って、声を出してくれたアズラのおかげである。
「私も成長したんです。これくらいの距離なら一瞬で移動出来るようになったんです!」
「そうか・・・」
アズラの成長を聞いて納得がいった。俺よりも魔力があるもんな・・・
手をついて起き上がるサタン。まだ、体の傷が全て治った訳ではない。それでも、戦えるだけの力はある。
「アズラ・・・ありがとうな・・・時間を稼ぐために犠牲になろうとしていたんだろ?」
「・・・・・・はい・・・私はサタンさんが無事でいてくれるならそれだけで満足ですから」
「そうか・・・でも、そんな事は止めてくれ。俺もアズラには無事でいてほしいんだから。何もされなかったか?」
「っ・・・・・・はい・・・。・・・・・・何もされていませんけど、私・・・あんな破廉恥でお下劣な事をしてしまいました・・・サタンさんのためとは言え恥ずかしいです・・・」
ベルゼブブの股間を蹴った事を今更恥ずかしがるアズラ。顔を赤くしてモジモジと恥じらう。
ふっ・・・本当に可愛いなーーーアズラは!
アズラの可愛さに笑みを浮かべながら両手をグッと握ってみる。
「サタンさん・・・?」
「アズラがここまで稼いでくれた時間、無駄にしない」
サタンは頭に思い描く。背中の翼は闇色から魔界の者にとっては似つかわしい白き翼。今まで考えた事もなかった蛇の尾がある姿。獲物を狩るために両手の爪が鋭く伸びた姿を――。
「変身《マキシム》―――!」
サタンの体から眩い光が放たれる――!
近くにいたアズラも、股間の痛みを押さえるベルゼブブもあまりの眩しさに目を瞑る。
やがて、光は輝きを失っていき、そこには――
「ふぅ」
サタンが思い描いた通りの魔王がいた。ストラスの翼が光の翼へと伸び変わり、尾にはアンドロマリウスの蛇、両手の爪にはマルコシアスの鋭利の爪がある。
「お、お前は一体・・・何者なんだ――!? 俺は確実にお前を調理したはずだぞ!」
「何度も言わせるなよ・・・俺は魔王だ!」
サタンが答えるのと同時に、ベルゼブブはサタンまで一瞬で跳躍し奇襲をかける。
「だったら、俺がもう一度調理して食ってやる! 今度はアズラの言うことを聞かない! 二人とも俺が食ってやるよぉぉぉぉぉぉ!」
ベルゼブブの手がサタンへと伸びる――
しかし、その瞬間そこにサタンとアズラの姿はなかった。サタンは瞬時にアズラの手を引き、ベルゼブブからずいぶんと離れた後方まで移動した。
「さ、サタンさん・・・」
アズラは驚く。これまでにないサタンの素早さに。手を引かれたことにさえ気づくことが出来なかった。
これが、セーレの魔能力、か・・・
アズラが驚いている隣でサタンもまた自分の動きに驚いていた。頭で考えるよりも咄嗟に体が動いていたのだ。しかし――
これなら勝てる――!
先程まで、頭に浮かんでいた“勝てない”という言葉完全に消えた。
再び、向かってくるベルゼブブ。
「アズラはここにいてくれ」
サタンはそう言い残し、光の翼で空中を飛ぶ。それを見たベルゼブブも羽で空中へと舞う。しばらくの対峙。そして、ベルゼブブが先に動いた。
翼をむしり取ろうとサタンの背後へと回る。手を伸ばし捕まえる――。が、捕まえる前にサタンの拳が頬にめり込んでいた。
メリメリとめり込む拳。続けてサタンはベルゼブブよりも高く飛ぶと、やられたように空中で一回転し、かかとで壁に向かって蹴り落とす。
壁に打ちつけられるベルゼブブ。多数の分岐したヒビが壁に入る。サタンはゆっくりと降り、足をつく。
「もう終わらせる!」
「ガァァァァァァァァァァ!」
ベルゼブブは壁に突き刺さったままの魔銛を引き抜くと気が狂ったようにサタンへと突っ込む。怒濤の魔銛攻撃。次から次へと尖端が伸び、交わすサタンの頬や肩、体に少しずつであるが確実に傷を負わせていく。
「く――」
魔銛攻撃を交わしながら右手に魔力を込める――
頼む、お前達――! 魔力を貸してくれ――!
――魔王様。
セーレ!
――片手では奴に勝てません。両手に魔力を込めてください!
サタンはセーレに言われた通り、もう片方――左手にも魔力を込める。
これだと、時間がかかる! 交わしきれるか分からないぞ!
――だったら、俺の魔能力を使え。
ダンタリオン!
サタンは残像を出す。時間を稼ぐにはこれが一番の方法だ。
「またかぁぁぁぁぁ!」
いい加減、怒りが頂点に達したのか、サタンの残像に怒りを露にするベルゼブブ。魔銛を振り回し、残像を薙ぎ払う。
「ふーふー、これで、残りはお前達二人だけだーーー! 俺は絶対にお前達二人を食ってやるぅぅぅぅ!」
サタンの残像を全て消し去ったベルゼブブ。魔銛に魔力を流し込み、より一層大きく鋭く変形させる。
「突き刺せ――串刺しぃぃぃぃぃ!」
魔銛でサタンとアズラを一気に突き刺そうと投げる動作に入るベルゼブブ。その瞬間――
――今です、魔王様!
この時を狙っていたかのようにセーレが合図した。両手の力は十分に貯まっている。
「よし――」
サタンはセーレの合図と共に飛び出す。そして、ベルゼブブが魔銛を投げる前に、両手を引いて――
「二重《ツイン》魔王パンチ――!!!」
右手から先にベルゼブブの腹部へと拳をめり込ませた。
「ガハッ・・・!」
そして、休む暇なく、今度は左手でベルゼブブの腹部へと拳をめり込ませる。何度も何度も何度も繰り返す。腹部だけでない。顔も、腕も足も――体全体に何度も何度も拳をめり込ます。ベルゼブブにやられた事をやり返す。
「ま、だだ・・・まだ、終わらねぇぇぇぇぇ!」
朦朧とする意識をはっきりとさせ、落としそうになっていた魔銛を握り直し、サタンに向かって突き刺す。
「く・・・」
魔力を纏った拳と魔銛が激しくぶつかり合う。しかし、魔力を纏ったと言っても所詮は拳。魔銛は少しずつサタンの拳を使えないものにしていく。
もっとだ・・・もっと早く・・・刺されるよりも前に、拳を届かせる――!
「アァァァァァァァァ――!」
疾風怒濤の勢いで多拳を突いたサタン。やがて、ゆっくりと動きを止めた。グラグラと前後に体を動かし、膝から崩れ落ちたベルゼブブ。もはや意識もなければ生きているとも思えない。しかし、サタンは決して殺してなどいない。
こんなのでも魔界を元に戻すためには必要かもしれないからな・・・ま、必要であっても実力差を教えてやったんだ。悪さもしないだろ・・・とにかく――
「俺の――勝ちだ――っ!」
サタンはベルゼブブに勝利した。さぁ、早く次へと進まなければならない。
無事でいろよ、ペント・・・!
死んだサタンが倒れている所まで歩いていき、見下すベルゼブブ。そして、左手で頭を掴み持ち上げる。
「お、いい具合に仕上がったな。それじゃ、少ない魔力だけど食べるか。元々不味そうな上、冷えたらもっと不味くなるしな」
それから、ベルゼブブは暫く黙り込み何かを考える。そして、閃いたように空いている方の手の親指と中指をこすってパチンという音を鳴らした。
「うっし、丸呑みだな! 噛んで血と一緒に魔力を外に漏らしちまったら元々少ないのにもっと減る。それに、不味い思いをしながら食べるのは嫌だしな。何でも美味しく頂く、それが俺のモットーだ!」
ベルゼブブはサタンをどう食べるか、その食べ方について悩んでいたのだ。
「んじゃ、敬意を表して、イタダキマー――」
口を大きく開けてサタンを丸呑みにしようとする。その時――
「待って下さい!」
アズラがベルゼブブの腕を掴み動きを止める。ベルゼブブはアズラの気配に全く気づかず、腕を掴まれてようやく近づかれていたことに気づく。
「何だ? アズラちゃん」
平静を装うも、内心は気配を全く気づくことの出来なかったアズラの謎の恐怖感に不審を抱く。
(なんだ――? いつの間にここまで来ていた――?)
「お願いします・・・サタンさんを食べないで下さい・・・!」
ベルゼブブの腕を掴む力が自然と強くなる。
(サタンさんは消化さえされなければきっと生き返れます・・・だから、私が絶対にサタンさんを食べさせたりなんかさせません! ・・・・・・って言いますか、サタンさんが不味いなんてこと絶対にありませんから!)
サタンを食べさせないという思いが益々腕に伝わり力が増幅していく。
「それはないぜアズラちゃん。せっかく、ここまで調理したのに完成を頂けないなんて辛すぎる。俺はまだ腹が空いてるんだ」
しかし、ベルゼブブは腕を掴まれる力が強くなっても決してサタンを離そうとしない。それどころか、食べる意思は強くなる一方だ。
「――ええ、分かっています。・・・・・・だから、私を食べていいです。私がサタンさんの身代わりになります。サタンさんよりも私の方が魔力もありますし、それで充分でしょう?」
アズラが言ったことは事実である。魔王であるサタンよりアズラの方が魔力がある。自分を犠牲にして大切なサタンを守る。
「でもなぁ、魔王の方が悪魔を食うよりも威張れるしなぁ――」
「あまり――あまり私を怒らせない方が身のためですよ・・・言うことを聞いてください」
「・・・・・・っ!?」
まただ。急に感じる謎の恐怖感。ベルゼブブは本能的にアズラの殺気を感じとる。これ以上の言い訳は自分の身に何が起こるか分からない。ベルゼブブは渋々、アズラの申し出を了承した。
「分かっ、た」
アズラがベルゼブブの腕を離すとサタンをそこら辺りに雑に放り投げる。その行動に腹が立つが、突っかかるとサタンを食べられてしまうかもしれない。アズラは苛立ちをグッと堪え胸の内にしまう。
「じゃあ、アズラちゃんを頂く」
「くれぐれも私を食べた後にサタンさんを食べようと思っているのなら止めておいた方がいいですよ。もし、そんな事をしたら私が食べられた後でもあなたに復讐しますからね」
全て考えを見抜かれている。ベルゼブブはアズラが言った事を考えていた。アズラさえいなくなれば魔王を好きに出来る。魔王を食べて魔王になる。そう考えていた。しかし、アズラの言葉を聞いて考えを改める。
(この悪魔は本当に俺をどうにかするつもりだ・・・そして、それを実行出来る力をもっている・・・!)
「わ、分かってる。魔王には手を出さない。・・・・・・にしても、本当に大きくなったなアズラちゃん。あの小さかった頃からは信じられないぜ」
「あなたがいない間に色々とありましたからね・・・」
「俺だって別にアズラちゃんや魔王を好んで食べたい訳じゃない。一応、魔界の仲間だしな。だけど、仕方ないよな。俺は腹を空かせてるんだから!」
「分かってますから、早くしてください!」
(とことんムカつきます! 今更、申し訳ない程度の言い訳など聞きたくありません!)
「ああ~じゃあそうさせてもらうぜ!」
「う・・・・・・」
自分の方が立場が上と分かった今怖いものなどない。元々怖いものなどないが僅かに感じた恐怖感。しかし、その感じた恐怖感を出したアズラでさえ今、料理として目の前にいる。ベルゼブブはアズラの首を左手で掴み、持ち上げる。
「ああ、そうそう。最後にひとつだけ聞きたいことがあったんだった。・・・・・・あの頃から――子供の頃から仲良しだった天使は今どうしてる?」
◇
くそ・・・! また、死んだ・・・!
サタンはベルゼブブが投げた銛に体と心臓を貫かれて殺された後、いつものように魔柱72柱の悪魔と出逢う暗い空間で嘆いていた。
魔王パンチは全くダメージを与えれない・・・奥義である魔導砲もたかが銛を投げられるだけでかき消される・・・
打つ手なし。それが、今のサタンの実力。最弱の魔王は悪魔に勝てない・・・。
だから、どうした? それでも、俺は勝たないといけないんだ! 朝までにホテルまで戻らないといけないんだよ!
サタンは記憶した魔書に書かれていた魔柱72柱の悪魔を思い出す。
次は“狼の悪魔・マルコシアス”だったか・・・確か、蛇の尾を持ち、翼を持つ狼だったな。火を吐くことが出来る能力を所持していると書いてあったな・・・
マルコシアスについて今一度確認をしていると奥から何者かがやって来る。その姿を見てサタンは困惑した。
え・・・!?
「――誰だ!?」
サタンの前に現れたのは、蛇の尾と翼を持つ狼・・・などではなく――
「ははは。酷いですね。魔王様。私を覚えてくれていないなんて」
翼の生えた馬に乗る、美男子だった。
「私の名はセーレ。魔柱72柱の一員です」
そして、セーレは金髪の髪をかきあげるとニヤリと笑った。
「セーレ!? セーレはマルコシアスの次のはずじゃ・・・」
サタンはセーレと名乗る悪魔を前にし、魔書に書かれてあった事を思い出す――。
『ふむふむ・・・“美男の悪魔・セーレ”は移動する速度に長けている・・・瞬時に移動し、物を運ぶ事が出来る、と――』
魔書に書かれてあった順番だと確実にマルコシアスの次がセーレとなっていた。それは、はっきりと覚えている。ならば、何故現れるはずのマルコシアスが現れないで、現れるはずのないセーレが今目の前にいるのか。
「嫌だなぁ、魔王様。魔王様とマルコシアスは既に繋がっているじゃないですか」
「・・・・・・は!?」
セーレは笑いながら、まるでサタンが冗談を言っているかのように受け流す。しかし、サタンは冗談のつもりなど全くない。本当に分かっていないのだ。
「俺がいつ死んだって言うんだよ!?」
「忘れたのですか~魔王様は昨日死んでいたじゃないですか~」
昨日・・・? 昨日って、何してたっけ? 確か、海で遊ん――
ダディ研究所で過ごしている内に、いつの間にか日付が変わっていた。昨日――つまり、海で溺れた事を思い出してハッとする。
「ま、まさか――」
「ええ。そのまさかですよ。魔王様、あなたは――昨日海で溺れて溺死したのです」
溺死。そう、サタンは昨日既に一回死んでいたのだ。海に沈んでいくのと同時に死に、メルが人工呼吸をしようとする寸分前に生き返ったのだ。
ああーーー! 俺、結局死んでたのかよ! 魔王なのに溺死するって・・・もうなんか心折れる・・・
「全く魔王様は情けないですね。溺死で死ぬ魔王様なんて聞いたことないですよ」
「す、すまん・・・」
魔王であるサタンの方がセーレに向かって謝る。本当にそうだ。こんな魔王に仕える悪魔の事を思うと申し訳ない気持ちが溢れるサタン。
「本当ですよ。・・・・・・ま、そんな魔王様の事を放っておけないから私もマルコシアスも魔王様の力になるんですけどね」
「マルコシアス――」
マルコシアスの姿が次第に薄くなっていく。サタンの中へと入る刻がきたのだ。
「ああ、そうそう。魔王様が昨日死んだ時、小さな勇者は泣いていましたよ。そして、人工呼吸をしてでも魔王様を助けようとしていました」
「メルが・・・」
そうだ。俺はまだメルに礼を言うことも出来ていないんだ・・・
「ええ。だから、彼女のためにも魔王様のためにも――皆のためにも全てを終わらして早く帰りましょう。私とマルコシアスの能力が加われば可能ですから――」
セーレは爽やかな笑みを浮かべると薄れ消えサタンの中へと入った。
ああ・・・俺とお前達の能力があれば俺は――
サタンを眩い光が包んだ――。
「――天使はどうしてる?」
アズラの首を絞め上げながら、“天使”、という単語を口にするベルゼブブ。
「――それを、答える必要がありますか・・・?」
「ああ、あるねぇ。俺は昔からアズラちゃんと仲良くしてた天使の子を食べたくて食べたくてしょうがなかったんだからな」
「それを聞いて私が答えるとでも・・・?」
アズラは決して天使について答えない。
「へへ。ま、そりゃそうだよな。あんなに仲良しだったもんな。じゃ、まぁアズラちゃんを食べた後に探すとでもするよ」
「・・・・・・好きにすればいいでしょう・・・」
「へへへ。じゃ、悪いけどイタダキマー――」
アズラを食べるために口をガパッと大きく開ける。同じ悪魔としてのせめてもの情け。一口でいく。
(・・・・・・っ、サタンさん・・・)
アズラは食べられる事を覚悟し、目を瞑った。最後にまぶたに浮かんだサタンの姿を心で声にして――
「ガハッ!」
目を開けた。耳に入ってきた。サタンの声が。
「サタンさん!」
アズラは食べられそうになっているにも関わらず、声が聞こえてきた方を向く。すると、そこには口にたまった血を咳き込みながら吐き出しているサタンの姿があった。
(良かった・・・間に合ったんですね。でしたら、私は――)
「な、何事だ・・・? 魔王は死んだはずだろ・・・」
生き返ったサタンを見て驚愕に驚いているベルゼブブ。
「すいません・・・私――」
「あ!?」
「あなたに食べられる気など一歳ありません。私を食べていいのはサタンさんだけですから!」
「何言って――」
途端にベルゼブブの目と鼻から汚ない緑色の液体が飛び出した。体が小刻みに震えだす、特に下半身が生まれたての小鹿みたいにビクビクしている。
アズラはベルゼブブの股間をおもいきり蹴ったのだ。
「これは、さっきサタンさんを投げたお返しです!」
「あ、アズラァァァァァァ!」
体を走る痛みが腕に伝わり、アズラを掴み上げていた力が弱まり落としてしまう。
「待てぇぇぇぇぇぇぇ!」
「いいえ、待ちません!」
アズラはこの瞬間を待っていた。離された一瞬で自分の足下にワープを展開する。そして、そのまま落ちながらワープへと吸い込まれサタンの近くへと現れる。
「大丈夫ですか、サタンさん!?」
「アズラ・・・今のワープは一体・・・」
途中から顔を上げて全てを見ていたサタン。見ることが出来たのも、血を吐き出しただけの音を聞き取って、声を出してくれたアズラのおかげである。
「私も成長したんです。これくらいの距離なら一瞬で移動出来るようになったんです!」
「そうか・・・」
アズラの成長を聞いて納得がいった。俺よりも魔力があるもんな・・・
手をついて起き上がるサタン。まだ、体の傷が全て治った訳ではない。それでも、戦えるだけの力はある。
「アズラ・・・ありがとうな・・・時間を稼ぐために犠牲になろうとしていたんだろ?」
「・・・・・・はい・・・私はサタンさんが無事でいてくれるならそれだけで満足ですから」
「そうか・・・でも、そんな事は止めてくれ。俺もアズラには無事でいてほしいんだから。何もされなかったか?」
「っ・・・・・・はい・・・。・・・・・・何もされていませんけど、私・・・あんな破廉恥でお下劣な事をしてしまいました・・・サタンさんのためとは言え恥ずかしいです・・・」
ベルゼブブの股間を蹴った事を今更恥ずかしがるアズラ。顔を赤くしてモジモジと恥じらう。
ふっ・・・本当に可愛いなーーーアズラは!
アズラの可愛さに笑みを浮かべながら両手をグッと握ってみる。
「サタンさん・・・?」
「アズラがここまで稼いでくれた時間、無駄にしない」
サタンは頭に思い描く。背中の翼は闇色から魔界の者にとっては似つかわしい白き翼。今まで考えた事もなかった蛇の尾がある姿。獲物を狩るために両手の爪が鋭く伸びた姿を――。
「変身《マキシム》―――!」
サタンの体から眩い光が放たれる――!
近くにいたアズラも、股間の痛みを押さえるベルゼブブもあまりの眩しさに目を瞑る。
やがて、光は輝きを失っていき、そこには――
「ふぅ」
サタンが思い描いた通りの魔王がいた。ストラスの翼が光の翼へと伸び変わり、尾にはアンドロマリウスの蛇、両手の爪にはマルコシアスの鋭利の爪がある。
「お、お前は一体・・・何者なんだ――!? 俺は確実にお前を調理したはずだぞ!」
「何度も言わせるなよ・・・俺は魔王だ!」
サタンが答えるのと同時に、ベルゼブブはサタンまで一瞬で跳躍し奇襲をかける。
「だったら、俺がもう一度調理して食ってやる! 今度はアズラの言うことを聞かない! 二人とも俺が食ってやるよぉぉぉぉぉぉ!」
ベルゼブブの手がサタンへと伸びる――
しかし、その瞬間そこにサタンとアズラの姿はなかった。サタンは瞬時にアズラの手を引き、ベルゼブブからずいぶんと離れた後方まで移動した。
「さ、サタンさん・・・」
アズラは驚く。これまでにないサタンの素早さに。手を引かれたことにさえ気づくことが出来なかった。
これが、セーレの魔能力、か・・・
アズラが驚いている隣でサタンもまた自分の動きに驚いていた。頭で考えるよりも咄嗟に体が動いていたのだ。しかし――
これなら勝てる――!
先程まで、頭に浮かんでいた“勝てない”という言葉完全に消えた。
再び、向かってくるベルゼブブ。
「アズラはここにいてくれ」
サタンはそう言い残し、光の翼で空中を飛ぶ。それを見たベルゼブブも羽で空中へと舞う。しばらくの対峙。そして、ベルゼブブが先に動いた。
翼をむしり取ろうとサタンの背後へと回る。手を伸ばし捕まえる――。が、捕まえる前にサタンの拳が頬にめり込んでいた。
メリメリとめり込む拳。続けてサタンはベルゼブブよりも高く飛ぶと、やられたように空中で一回転し、かかとで壁に向かって蹴り落とす。
壁に打ちつけられるベルゼブブ。多数の分岐したヒビが壁に入る。サタンはゆっくりと降り、足をつく。
「もう終わらせる!」
「ガァァァァァァァァァァ!」
ベルゼブブは壁に突き刺さったままの魔銛を引き抜くと気が狂ったようにサタンへと突っ込む。怒濤の魔銛攻撃。次から次へと尖端が伸び、交わすサタンの頬や肩、体に少しずつであるが確実に傷を負わせていく。
「く――」
魔銛攻撃を交わしながら右手に魔力を込める――
頼む、お前達――! 魔力を貸してくれ――!
――魔王様。
セーレ!
――片手では奴に勝てません。両手に魔力を込めてください!
サタンはセーレに言われた通り、もう片方――左手にも魔力を込める。
これだと、時間がかかる! 交わしきれるか分からないぞ!
――だったら、俺の魔能力を使え。
ダンタリオン!
サタンは残像を出す。時間を稼ぐにはこれが一番の方法だ。
「またかぁぁぁぁぁ!」
いい加減、怒りが頂点に達したのか、サタンの残像に怒りを露にするベルゼブブ。魔銛を振り回し、残像を薙ぎ払う。
「ふーふー、これで、残りはお前達二人だけだーーー! 俺は絶対にお前達二人を食ってやるぅぅぅぅ!」
サタンの残像を全て消し去ったベルゼブブ。魔銛に魔力を流し込み、より一層大きく鋭く変形させる。
「突き刺せ――串刺しぃぃぃぃぃ!」
魔銛でサタンとアズラを一気に突き刺そうと投げる動作に入るベルゼブブ。その瞬間――
――今です、魔王様!
この時を狙っていたかのようにセーレが合図した。両手の力は十分に貯まっている。
「よし――」
サタンはセーレの合図と共に飛び出す。そして、ベルゼブブが魔銛を投げる前に、両手を引いて――
「二重《ツイン》魔王パンチ――!!!」
右手から先にベルゼブブの腹部へと拳をめり込ませた。
「ガハッ・・・!」
そして、休む暇なく、今度は左手でベルゼブブの腹部へと拳をめり込ませる。何度も何度も何度も繰り返す。腹部だけでない。顔も、腕も足も――体全体に何度も何度も拳をめり込ます。ベルゼブブにやられた事をやり返す。
「ま、だだ・・・まだ、終わらねぇぇぇぇぇ!」
朦朧とする意識をはっきりとさせ、落としそうになっていた魔銛を握り直し、サタンに向かって突き刺す。
「く・・・」
魔力を纏った拳と魔銛が激しくぶつかり合う。しかし、魔力を纏ったと言っても所詮は拳。魔銛は少しずつサタンの拳を使えないものにしていく。
もっとだ・・・もっと早く・・・刺されるよりも前に、拳を届かせる――!
「アァァァァァァァァ――!」
疾風怒濤の勢いで多拳を突いたサタン。やがて、ゆっくりと動きを止めた。グラグラと前後に体を動かし、膝から崩れ落ちたベルゼブブ。もはや意識もなければ生きているとも思えない。しかし、サタンは決して殺してなどいない。
こんなのでも魔界を元に戻すためには必要かもしれないからな・・・ま、必要であっても実力差を教えてやったんだ。悪さもしないだろ・・・とにかく――
「俺の――勝ちだ――っ!」
サタンはベルゼブブに勝利した。さぁ、早く次へと進まなければならない。
無事でいろよ、ペント・・・!
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