45 / 156
第2章最弱魔王はクラスメートのために頑張るそうです
第45話 ゴウカ、アゲイン④
しおりを挟む
「おい!俺の名はサンタだ――」
突然、ゴウカにメルの彼氏だと思われているその男――もといサタンは自分の名前をゴウカに名乗った。
(サンタ・・・? ああ・・・サンタさん、か・・・うん、興味ないし無視しよ)
ゴウカはサタンの挨拶を無視した。するとサタンはゴウカにもう一度全く同じ挨拶をした。
(しつこいな~興味ないんだよ)
ゴウカはサタンを無視し続けた。すると、サタンはゴウカの頬を引っ張った。
(ああ~もう・・・無視してるのに)
ゴウカはしつこいサタンにだんだんとムカついてきた。
そして、
「おい! 聞いてるのか? 聞いてるんだったら返事くらい――」
「うるさい・・・! 君、誰?」
「な、誰ってさっきから言ってるだろ! 俺は――」
「黙らないと君燃やすよ……」
気がつくとゴウカは掌に炎を宿して返事をしていた。
「ちょ、ちょっと二人とも――」
メルまでもが会話に参加してきた。
「メル・・・こいつは誰?」
「本当に聞いてなかったんですか!?」
「うん。興味ないから」
「テメェー!」
サタンがゴウカの胸ぐらを掴見上げる。
「だったらもう一度言ってやる! 俺の名はサンタだ!」
(顔近いしなんかイラッとするな~)
ゴウカはサタンに胸ぐらを掴み上げられているにもかかわらず涼しい顔をして、
「で、いつまで掴んでるつもりなの?」
サタンに掌を向けた。
(軽く驚かしてやろうかな?)
少しイタズラしようとゴウカはサタンに向かって炎を出そうとした。すると、
「こらーーーお前らーーー何してるーーーっ!」
教室にダエフが叫びながら入ってきた。
「お前らやめないか! 同じクラスの仲間どうしで!」
ダエフに言われサタンはゴウカの胸ぐらから手を放した。いがんだ服を正しながらゴウカはダエフに問う。
「仲間? 僕とこのうるさい人が・・・? 今日初めて会ったのに?」
「それでも仲間だ! だから仲良くしろ!」
「分かりましたよ・・・でも、僕はこれで帰るよ」
ゴウカはこれ以上教室にいたくなかった。それは、これ以上ダメな自分の姿を見せたくなかったからだ。
だからゴウカは教室を出ようとしてドアに向かって歩き出した。
教室の周りにはたくさんの生徒がいてゴウカの邪魔になる。
(くそっ・・・邪魔だよ!)
周りにいるたくさんの生徒を掻き分けてゴウカは外へと出た。
そして、一人になって自分に呆れた。
「はぁ~・・・僕は何がしたかったんだろう?」
見上げた空は泣けるほど青く澄みわたっていた――。
それから、ゴウカは授業が終わるまでの時間、町を見て回ったりして適当に過ごした。町の中を見ているとモカと二人で寄った時や出掛けた時の事を嫌でも思い出す。
(そろそろ時間か・・・)
ゴウカは町の中にある大きな時計を見た。そろそろ授業が終わる時間。
ゴウカはある一つの疑問を解決するためにもう一度スタレマン学園へと向かった。
その疑問とは――サタンの実力を確かめることだった。
(あの・・・名前何だっけ? まぁ名前なんてどうでもいいや・・・あのうるさいのがどれ程の実力かは知らないけどそれなりの強さがあれば僕はまだ安心して結婚出来る。だから、それを確かめに行く!)
ゴウカはサタンの実力がどれ程のものなのかどうしても確かめたかった――。
そして、サタンが学校から出て来るのを見るとゴウカは校庭のグラウンドへと出向き、
「やぁ、待ってたよ。え~と、誰だっけ? まぁ、誰でもいいや・・・とりあえず僕と能力《チカラ》比べしてもらうよ!」
サタンを指差して能力《チカラ》比べを挑んだ――。
「それでは、初めっ!」
ダエフが手を上げて能力《チカラ》比べの開始を合図をした。
一度はサタンに断られたゴウカだったが色々とあって結局今こうして戦えている。
「いくぞ! ゴウカァァァァ!」
サタンがゴウカに向かって走る。
(さぁ、君の実力を確かめさしてくれ)
ゴウカは心のどこかで僅かに期待していた。もしかしたらサタンが強いんじゃないかと。それで、モカやメル、イサムにダエフの事を任せられるんじゃないかと――。それなのに・・・、
「すいません! 降参します!」
ゴウカはサタンが自分に向かって綺麗に腰を曲げて謝っているのを見て戸惑う。
(・・・え!? ちょっと、ちゃんと戦ってくれないと――)
ゴウカが戸惑っていると、
「なんて言うと思ったかぁ!」
サタンが笑いながら殴ってくる。
「パンチ!!」
自分に向かってくるサタンの手を見ながらゴウカは、
(君には失望したよ・・・少しでも期待していた僕が馬鹿だったよ)
ため息をついた。そして、体から溢れんばかりの炎を出して、
「炎よ燃やせ」
サタンに向かって放った。
「があぁぁぁぁぁぁ!」
サタンは炎をもろに体に受けて地面に倒れた。
(終わった・・・本当に弱かった・・・)
結果はゴウカの圧勝だった。
「じゃ、僕の勝ちだからこれで――」
圧勝だと思ったゴウカは立ち去ろうとした。しかし、下からゴウカを止める声が聞こえてきた。
「ま、まだだ・・・」
サタンはよろよろと立ち上がった。
「へぇ・・・まだ立てるんだ・・・!」
「う、うるせぇ・・・」
(弱いと思ったけど意外とやるんだね!)
立ち上がった姿を見てゴウカは喜んでいた。ゴウカの炎をくらって立ち上がれるやつはそう多くはいない。それが、この学校の同じクラスにいたのだ。
(だったら、僕がとる行動は一つだ・・・)
ゴウカに向かって歩いてくるサタンに向けて、
「愚かだね・・・」
再び炎を放った。今度は確実に気を失わすために。
「くっ、そ・・・」
サタンは今度こそ気を失い倒れた。
「サンタっ!」
メルがサタンの元へ掛けてくる。
「メル・・・彼に伝えてくれ」
ゴウカは下にいる二人に言った。
「何、を・・・?」
「もっと強くなってって――」
(――そして、クラスの皆を守ってってね)
ゴウカはそれだけ言うと校門に向かって歩き出した。
「ゴウカっ!」
歩き出したゴウカに向かってモカが叫ぶ。
「モカ・・・」
「ゴウカ・・・どこに、行くの・・・?」
ゴウカは出そうになる声をグッと飲み込んだ。
「ごめん・・・バイバイ・・・」
それだけを言い残してゴウカは歩いていく。
「バイバイって――」
(モカ・・・本当にごめん・・・)
ゴウカが校門を出ると突如としてエフノールと王城にいた人達の集団が現れた。
「ゴウカ様」
「エフノールさん・・・」
(エフノールさんが来たという事はそろそろ時間か・・・)
ゴウカは最後にもう一度だけモカを見た。モカもずっとゴウカの事を見ていた。
「いかなくちゃ・・・本当にさようなら、モカ・・・」
そう呟いてゴウカはエフノールと城にいた人達の集団と共に姿を消した。
(本当にありがとう・・・! 皆と過ごした時間、楽しかった・・・! 何より、モカ・・・小さい頃からずっと僕と一緒にいてくれてありがとう! これからは会えなくなるけどいつか必ず――)
◇
「申し訳ありません、ゴウカ様・・・」
王城に帰るとエフノールがゴウカに謝った。
「いや、エフノールさんのせいじゃないよ。だから気にしないで」
ゴウカが手を横に振りエフノールに頭を上げるよう促す。そんな事をしていると後ろからガドレアルが姿を現した。
「帰ったか? ゴウカ」
「はい・・・」
「最後の外は楽しかったか?」
ゴウカは答えないでいた。
「まぁ、いい、明日からは式の準備を進める。今夜はゆっくりしておけ」
ガドレアルはそう言い残すと、とっととどこかへ消えた――。
「ゴウカくん・・・その、今日は楽しかった・・・?」
「ええ、楽しかったですよ・・・レアル様」
「そう・・・それは良かった」
その日の夜、ゴウカはレアルの部屋にいた。出来るだけ一緒の時間を過ごしておいた方が良かったからだ。
「あの、ゴウカくん・・・本当にごめんなさい・・・わたくしのせいでこんな事に巻き込まれて・・・」
レアルはまた泣き出しそうになる。
元々、何故ゴウカがこんな事に巻き込まれたかというと全てはレアルのせいだった。レアルと出会ったあの日――レアルはガドレアルやエフノールと共に数いる婿候補の一人に会いに行っていたのだと言う。
ガドレアルには王城残っていろと言われていたそうだが無理を言って無理やりついて行ったのだそうだ。そして、勝手に相手の城から脱け出してあんな目に遭っているところをゴウカが助けたのだ。
その事を未だに気にしているレアル。しかし、ゴウカは、
「大丈夫です。僕はもう覚悟しましたから!」
レアルの頭を優しくなでて言った。すると、レアルは、
「ゴウカくん・・・ありがとう・・・!」
涙を浮かべて可愛く笑った。
(僕は――僕は決めたんだ! これからはレアル様を僕が守るって!)
「――それよりも、レアル様の方が良かったんですか? 僕なんかと婚約になって・・・正直、僕よりももっといい人がいたのでは?」
「わ、わたくしはゴウカくんがいい・・・――いえ、ゴウカくんじゃなきゃ嫌です!」
言い終わってから顔を真っ赤にするレアル。
「そ、そうですか?」
真っ赤に照れるレアルを見てゴウカも恥ずかしくなった。
「と、とりあえず明日からもまたよろしくお願いします」
ゴウカは何故だか分からないがレアルに頭を下げた。
「は、はい! こちらこそです」
レアルも急いで頭を下げた。
そして、一ヶ月後――ゴウカとレアルが結婚する今日がきたのだ。
「ゴウカくん・・・ふつつかものですが今日から末永くよろしくね」
「はい!」
ゴウカとレアルは向かい合う。
「では、誓いのキスをしてください」
神父が言った。
(い、いきなりキス!?)
ゴウカが戸惑い固まっていると、
「本当にごめんなさい・・・」
レアルが恥ずかしそうに謝る。
「い、いえ・・・そ、それでは――」
ゴウカは覚悟を決めた。
(キス軟鉄したことない・・・けど、こんな顔をしてるけど僕だって男だ!)
心臓の音が高鳴る。ゴウカはレアルの唇に自分の唇を重ねようと体をかがめ――
「くらえ!」
突然、結婚式をしている部屋の外が騒がしくなった。
「な、何でしょう・・・?」
レアルが驚いて扉の向こうを見る。
「レアル様僕の後ろにいてください」
「はい」
ゴウカは一応何かあった時のためレアルを自分の後ろにやって前に立った。
ゴウカがレアルを後ろにやったのと同時に扉が勢いよく開いた。
「ゴウカっ!」
ゴウカに聞こえてくる懐かしい大好きな声。そこにいたのは――、
「メルっ! ・・・と、誰だっけ?」
突然、ゴウカにメルの彼氏だと思われているその男――もといサタンは自分の名前をゴウカに名乗った。
(サンタ・・・? ああ・・・サンタさん、か・・・うん、興味ないし無視しよ)
ゴウカはサタンの挨拶を無視した。するとサタンはゴウカにもう一度全く同じ挨拶をした。
(しつこいな~興味ないんだよ)
ゴウカはサタンを無視し続けた。すると、サタンはゴウカの頬を引っ張った。
(ああ~もう・・・無視してるのに)
ゴウカはしつこいサタンにだんだんとムカついてきた。
そして、
「おい! 聞いてるのか? 聞いてるんだったら返事くらい――」
「うるさい・・・! 君、誰?」
「な、誰ってさっきから言ってるだろ! 俺は――」
「黙らないと君燃やすよ……」
気がつくとゴウカは掌に炎を宿して返事をしていた。
「ちょ、ちょっと二人とも――」
メルまでもが会話に参加してきた。
「メル・・・こいつは誰?」
「本当に聞いてなかったんですか!?」
「うん。興味ないから」
「テメェー!」
サタンがゴウカの胸ぐらを掴見上げる。
「だったらもう一度言ってやる! 俺の名はサンタだ!」
(顔近いしなんかイラッとするな~)
ゴウカはサタンに胸ぐらを掴み上げられているにもかかわらず涼しい顔をして、
「で、いつまで掴んでるつもりなの?」
サタンに掌を向けた。
(軽く驚かしてやろうかな?)
少しイタズラしようとゴウカはサタンに向かって炎を出そうとした。すると、
「こらーーーお前らーーー何してるーーーっ!」
教室にダエフが叫びながら入ってきた。
「お前らやめないか! 同じクラスの仲間どうしで!」
ダエフに言われサタンはゴウカの胸ぐらから手を放した。いがんだ服を正しながらゴウカはダエフに問う。
「仲間? 僕とこのうるさい人が・・・? 今日初めて会ったのに?」
「それでも仲間だ! だから仲良くしろ!」
「分かりましたよ・・・でも、僕はこれで帰るよ」
ゴウカはこれ以上教室にいたくなかった。それは、これ以上ダメな自分の姿を見せたくなかったからだ。
だからゴウカは教室を出ようとしてドアに向かって歩き出した。
教室の周りにはたくさんの生徒がいてゴウカの邪魔になる。
(くそっ・・・邪魔だよ!)
周りにいるたくさんの生徒を掻き分けてゴウカは外へと出た。
そして、一人になって自分に呆れた。
「はぁ~・・・僕は何がしたかったんだろう?」
見上げた空は泣けるほど青く澄みわたっていた――。
それから、ゴウカは授業が終わるまでの時間、町を見て回ったりして適当に過ごした。町の中を見ているとモカと二人で寄った時や出掛けた時の事を嫌でも思い出す。
(そろそろ時間か・・・)
ゴウカは町の中にある大きな時計を見た。そろそろ授業が終わる時間。
ゴウカはある一つの疑問を解決するためにもう一度スタレマン学園へと向かった。
その疑問とは――サタンの実力を確かめることだった。
(あの・・・名前何だっけ? まぁ名前なんてどうでもいいや・・・あのうるさいのがどれ程の実力かは知らないけどそれなりの強さがあれば僕はまだ安心して結婚出来る。だから、それを確かめに行く!)
ゴウカはサタンの実力がどれ程のものなのかどうしても確かめたかった――。
そして、サタンが学校から出て来るのを見るとゴウカは校庭のグラウンドへと出向き、
「やぁ、待ってたよ。え~と、誰だっけ? まぁ、誰でもいいや・・・とりあえず僕と能力《チカラ》比べしてもらうよ!」
サタンを指差して能力《チカラ》比べを挑んだ――。
「それでは、初めっ!」
ダエフが手を上げて能力《チカラ》比べの開始を合図をした。
一度はサタンに断られたゴウカだったが色々とあって結局今こうして戦えている。
「いくぞ! ゴウカァァァァ!」
サタンがゴウカに向かって走る。
(さぁ、君の実力を確かめさしてくれ)
ゴウカは心のどこかで僅かに期待していた。もしかしたらサタンが強いんじゃないかと。それで、モカやメル、イサムにダエフの事を任せられるんじゃないかと――。それなのに・・・、
「すいません! 降参します!」
ゴウカはサタンが自分に向かって綺麗に腰を曲げて謝っているのを見て戸惑う。
(・・・え!? ちょっと、ちゃんと戦ってくれないと――)
ゴウカが戸惑っていると、
「なんて言うと思ったかぁ!」
サタンが笑いながら殴ってくる。
「パンチ!!」
自分に向かってくるサタンの手を見ながらゴウカは、
(君には失望したよ・・・少しでも期待していた僕が馬鹿だったよ)
ため息をついた。そして、体から溢れんばかりの炎を出して、
「炎よ燃やせ」
サタンに向かって放った。
「があぁぁぁぁぁぁ!」
サタンは炎をもろに体に受けて地面に倒れた。
(終わった・・・本当に弱かった・・・)
結果はゴウカの圧勝だった。
「じゃ、僕の勝ちだからこれで――」
圧勝だと思ったゴウカは立ち去ろうとした。しかし、下からゴウカを止める声が聞こえてきた。
「ま、まだだ・・・」
サタンはよろよろと立ち上がった。
「へぇ・・・まだ立てるんだ・・・!」
「う、うるせぇ・・・」
(弱いと思ったけど意外とやるんだね!)
立ち上がった姿を見てゴウカは喜んでいた。ゴウカの炎をくらって立ち上がれるやつはそう多くはいない。それが、この学校の同じクラスにいたのだ。
(だったら、僕がとる行動は一つだ・・・)
ゴウカに向かって歩いてくるサタンに向けて、
「愚かだね・・・」
再び炎を放った。今度は確実に気を失わすために。
「くっ、そ・・・」
サタンは今度こそ気を失い倒れた。
「サンタっ!」
メルがサタンの元へ掛けてくる。
「メル・・・彼に伝えてくれ」
ゴウカは下にいる二人に言った。
「何、を・・・?」
「もっと強くなってって――」
(――そして、クラスの皆を守ってってね)
ゴウカはそれだけ言うと校門に向かって歩き出した。
「ゴウカっ!」
歩き出したゴウカに向かってモカが叫ぶ。
「モカ・・・」
「ゴウカ・・・どこに、行くの・・・?」
ゴウカは出そうになる声をグッと飲み込んだ。
「ごめん・・・バイバイ・・・」
それだけを言い残してゴウカは歩いていく。
「バイバイって――」
(モカ・・・本当にごめん・・・)
ゴウカが校門を出ると突如としてエフノールと王城にいた人達の集団が現れた。
「ゴウカ様」
「エフノールさん・・・」
(エフノールさんが来たという事はそろそろ時間か・・・)
ゴウカは最後にもう一度だけモカを見た。モカもずっとゴウカの事を見ていた。
「いかなくちゃ・・・本当にさようなら、モカ・・・」
そう呟いてゴウカはエフノールと城にいた人達の集団と共に姿を消した。
(本当にありがとう・・・! 皆と過ごした時間、楽しかった・・・! 何より、モカ・・・小さい頃からずっと僕と一緒にいてくれてありがとう! これからは会えなくなるけどいつか必ず――)
◇
「申し訳ありません、ゴウカ様・・・」
王城に帰るとエフノールがゴウカに謝った。
「いや、エフノールさんのせいじゃないよ。だから気にしないで」
ゴウカが手を横に振りエフノールに頭を上げるよう促す。そんな事をしていると後ろからガドレアルが姿を現した。
「帰ったか? ゴウカ」
「はい・・・」
「最後の外は楽しかったか?」
ゴウカは答えないでいた。
「まぁ、いい、明日からは式の準備を進める。今夜はゆっくりしておけ」
ガドレアルはそう言い残すと、とっととどこかへ消えた――。
「ゴウカくん・・・その、今日は楽しかった・・・?」
「ええ、楽しかったですよ・・・レアル様」
「そう・・・それは良かった」
その日の夜、ゴウカはレアルの部屋にいた。出来るだけ一緒の時間を過ごしておいた方が良かったからだ。
「あの、ゴウカくん・・・本当にごめんなさい・・・わたくしのせいでこんな事に巻き込まれて・・・」
レアルはまた泣き出しそうになる。
元々、何故ゴウカがこんな事に巻き込まれたかというと全てはレアルのせいだった。レアルと出会ったあの日――レアルはガドレアルやエフノールと共に数いる婿候補の一人に会いに行っていたのだと言う。
ガドレアルには王城残っていろと言われていたそうだが無理を言って無理やりついて行ったのだそうだ。そして、勝手に相手の城から脱け出してあんな目に遭っているところをゴウカが助けたのだ。
その事を未だに気にしているレアル。しかし、ゴウカは、
「大丈夫です。僕はもう覚悟しましたから!」
レアルの頭を優しくなでて言った。すると、レアルは、
「ゴウカくん・・・ありがとう・・・!」
涙を浮かべて可愛く笑った。
(僕は――僕は決めたんだ! これからはレアル様を僕が守るって!)
「――それよりも、レアル様の方が良かったんですか? 僕なんかと婚約になって・・・正直、僕よりももっといい人がいたのでは?」
「わ、わたくしはゴウカくんがいい・・・――いえ、ゴウカくんじゃなきゃ嫌です!」
言い終わってから顔を真っ赤にするレアル。
「そ、そうですか?」
真っ赤に照れるレアルを見てゴウカも恥ずかしくなった。
「と、とりあえず明日からもまたよろしくお願いします」
ゴウカは何故だか分からないがレアルに頭を下げた。
「は、はい! こちらこそです」
レアルも急いで頭を下げた。
そして、一ヶ月後――ゴウカとレアルが結婚する今日がきたのだ。
「ゴウカくん・・・ふつつかものですが今日から末永くよろしくね」
「はい!」
ゴウカとレアルは向かい合う。
「では、誓いのキスをしてください」
神父が言った。
(い、いきなりキス!?)
ゴウカが戸惑い固まっていると、
「本当にごめんなさい・・・」
レアルが恥ずかしそうに謝る。
「い、いえ・・・そ、それでは――」
ゴウカは覚悟を決めた。
(キス軟鉄したことない・・・けど、こんな顔をしてるけど僕だって男だ!)
心臓の音が高鳴る。ゴウカはレアルの唇に自分の唇を重ねようと体をかがめ――
「くらえ!」
突然、結婚式をしている部屋の外が騒がしくなった。
「な、何でしょう・・・?」
レアルが驚いて扉の向こうを見る。
「レアル様僕の後ろにいてください」
「はい」
ゴウカは一応何かあった時のためレアルを自分の後ろにやって前に立った。
ゴウカがレアルを後ろにやったのと同時に扉が勢いよく開いた。
「ゴウカっ!」
ゴウカに聞こえてくる懐かしい大好きな声。そこにいたのは――、
「メルっ! ・・・と、誰だっけ?」
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
Age43の異世界生活…おじさんなのでほのぼの暮します
夏田スイカ
ファンタジー
異世界に転生した一方で、何故かおじさんのままだった主人公・沢村英司が、薬師となって様々な人助けをする物語です。
この説明をご覧になった読者の方は、是非一読お願いします。
※更新スパンは週1~2話程度を予定しております。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる