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第2章最弱魔王はクラスメートのために頑張るそうです
第36話 ゴウカ②
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「ワァーワァー!」「どっちも頑張れ~!」「ゴウカ~瞬殺を期待してるぞ~!」「ゴウカく~ん、可愛い~頑張って~!」
校庭の真ん中に立つサタンとゴウカ。その周りでたくさんの生徒が熱狂していた。その数は今朝、教室を取り囲んでいたよりも遥かに多い。
俺はどうしてゴウカの前に立って今にも戦い出そうとしてるんだ・・・? ちゃんと断ったのに・・・
校庭の真ん中でサタンは悩んだ。そして、数分前の出来事を思い出していた――。
「勿論、断るに決まってるぜ!」
サタンはどや顔でゴウカとの能力《チカラ》比べを断った。
「だってさ、聞いたかゴウカ?サンタは断るそうだから能力《チカラ》比べはなしだ」
「そもそも俺には戦う理由がないからな!」
サタンはゴウカを指差して言った。
「はぁ・・・君さぁ~、何でこの学園に入ったの? この学園に入ったんなら戦うこと位出来なくちゃダメだよ? そんな弱腰で本当に卒業する気ある? この貧弱弱虫君」
ゴウカはため息をつきながらサタンを挑発する。
「あ゙あ゙~そうかよ・・・あいにく俺は好きでこの学校に入ったわけじゃないんでね。それに、俺は――俺は、出来れば一生学校なんて行きたくなかったからな!」
「ああ~君はクズだったのか~だったら、今すぐ退学でもしてこの学園から去れば?」
ゴウカはさらにサタンを挑発していく。
「ちょ、ちょっと、ゴウカどうしちゃったの!? 昔のゴウカはそんなんじゃなかったじゃない!」
モカが慌ててゴウカを止める。
「ごめんね、モカ・・・でも、僕はもう昔の僕みたいにはいられないんだ・・・」
ゴウカは何か抱えてそうな顔をしてモカに謝った。
アイツ本当に何なんだ!? くそムカつくんですけど!?
サタンの怒りは頂点に達した。
「決めた・・・」
「サタン・・・?」
サタンはゴウカの前にまで歩いていきゴウカを指差した。
「おい! ゴウカ! その能力《チカラ》比べってやつやってやるよ! そして、絶対お前をぶん殴るってやる!」
サタンはゴウカを睨み付けながら言った。
「いいね、その目。じゃあ、やろっか」
ゴウカは笑って答えた。
(はぁ~あ、サタンのアホ・・・)
メルはサタンを見てため息をついた――。
そして、今のこの状況に至るというわけだが。
あああーそうだったー! 挑発に乗って受けるって答えたんだったーー!
サタンは頭を抱えて心の中で叫ぶ。
「いいか、二人とも。相手を殺すのは駄目だからな! せめて気絶するまでだ。どうしても危なそうな時は俺が間に入って止めるからな」
ダエフがサタンとゴウカの間に立って言う。
「ああ」
「分かってるよ、先生」
サタンとゴウカは共に頷く。
「ルールは道具を使わないこと。それ以外なら能力を使ってもいいし、正々堂々と戦ってもいい。まぁ何でもいいってこと」
ダエフが能力《チカラ》比べのルールを説明する。
「よし――では、始め!」
ダエフが手を上げて戦いの合図を出した。
サタンはダエフの手が上がった瞬間、ゴウカに向かって走った。
悪いな・・・最初から全力でいかせてもらうぜ・・・――
「サタン! 分かっているんですか!? 自分が何を言ったのか!?」
ゴウカと戦う前にサタンはメルに人気のない校舎裏へ連れていかれた。そして、そこでサタンはメルから説教を受けていた。
「おい・・・学校でその名前はあんまり言わない方が・・・」
「そんなの今は関係ありません! 相手はあのゴウカなんですよ!?」
メルは止まらない。
「分かってるよ。ちゃんと手加減しろってことだろ? 俺が魔王の力を使えば一瞬で終わってしまうんだからな!」
サタンがメルを抑えながら言うとメルは顔をしかめた。
「はぁっ? ぜんっぜん分かってないですよ! むしろその逆ですよ」
首を横に勢いよく振るメル。
「逆って・・・?」
「最初から全力でいかないとあなたが瞬殺されますよ」
「えっ・・・? ゴウカってそんなに強いの・・・?」
サタンは唾をゴクリと飲み込みながら恐る恐る聞く。
「強いとかそういうのの次元じゃないですよ。なにしろゴウカはこの学園でも最強の部類に入るんですから!」
「マジ・・・?」
「マジです!」
サタンはポカーンと口を大きく開けた――。
「例え、お前が最強だろうとこの技の前だと手も足も出まい!」
サタンは勢いよくゴウカに向かって走った。そして、ゴウカの前に立つと腰を90度に曲げた。
「すいません! 降参しますっ!」
とても綺麗な姿勢でゴウカに言った。
「・・・・・・は?」
一瞬動揺するゴウカ。
「――なんて、言うと思った、か?」
ゴウカの顔を下から見てニヤリと笑うサタン。
「とぉぉおりゃぁぁああ!」
そのまま、サタンはゴウカのお腹に向かって拳を突き上げる。拳がゴウカのお腹に直撃する。ボカッという効果音が鳴った。
次にサタンは地面の砂を拾い、ゴウカの顔に投げつけた。砂はゴウカの顔に命中する。
「ちょっと! ゴウカきゅんになんてことするのよ!」「そうよそうよ! 真面目に戦いなさいよ!」「卑怯よ! この最悪男!」
こんな卑怯な戦いをすると予想通りたくさんの野次がサタンに飛んできた。が、サタンは気にもせず続けた。
「こいつで決まりだ」
サタンは軽くジャンプして拳に力を込めた。
魔王――
「パンチ!!」
ゴウカの頬にサタンの拳が届いた。と思ったその瞬間――。
「あつ・・・! な、何だ!?」
ゴウカの体から溢れんばかりの炎が出ていた。炎によってサタンの拳が妨害される。
「炎よ・・・燃やせ」
ゴウカが言うと溢れんばかりの炎がサタン目掛けて襲いかかってきた。
「があぁぁぁぁぁぁ!」
サタンは炎をまともに受けて地面に倒れた。
「君の戦いは全然戦ってる感じじゃないね」
ゴウカはサタンをゴミクズを見るかのように見下す。
「そこまで! 勝者、ゴウ――」
「ま、まだだ、まだ俺はやれる・・・」
ダエフによって勝敗が決められる時、フラフラとしながらサタンは立ち上がった。
「ま、まだ、終わってない・・・」
「続けられるんだな、サンタ?」
ダエフに向かって頷くサタン。
「よし・・・再会だ!」
ダエフの合図により再びサタンとゴウカの戦いが始まった。
「ひゅーひゅー・・・へ、なかなか熱い炎じゃねーか・・・」
「へ~僕の炎を喰らって立ち上がれるなんて根性だけはあるんだね」
ゴウカはサタンを馬鹿にするように褒める。
「うるせぇ・・・」
どうする? 今の俺に何が出来る・・・? 変身《マキシム》して、アンドロかストラスの力を借りれば勝てるかもしれね~――けど、そんな事したら魔王だとバレるかもしれない・・・
サタンはゴウカを見ながら考える。
絶対絶命じゃん・・・! でも、この魔王があれだけ言われて何も出来ないなんて嫌だ! だから、せめてでも一発だけアイツの顔を殴ってやる!
サタンは拳を強く握りしめた。
「は~は~・・・ま、考えてもしょうがね~・・・俺は俺のやり方でやる!」
ゴウカに向かって歩き出すサタン。
「愚かだね・・・」
ゴウカはそんなサタンを見つめて掌をサタンに向けた。
「炎よ・・・燃やせ」
ゴウカの掌から出た炎が再びサタンを襲う。
「グワアァァァァァ!」
サタンは炎に焼かれてその場に倒れた。
「く・・・っそ・・・!」
サタンは地面に這いずり気を失った。
「意外と頑張ったことだけ覚えておくよ。え~っと・・・誰だっけ?」
「サンタの気絶により勝者ゴウカ!」
ダエフが手を上げてゴウカを指した。
「ウオォォォォーーー!」
校庭を取り囲んでいた連中から沸き上がる歓声。
「さっすがゴウカきゅん! あんなセコいヤツ負けて当然よ!」「ゴウカきゅん! 強可愛い~!」
取り囲んでいた連中の女子達はゴウカにメロメロだ。
「サンタ! 大丈夫ですか!? サンタ!」
メルが気を失ったサタンに駆け寄って言葉をかけるがサタンの返事はない。
「メル、大丈夫だよ。気絶してるだけだから」
そこへ、ゴウカがやって来る。
「ゴウカ・・・」
「メル・・・彼に伝えておいて・・・」
「何を・・・です?」
「もっと強くなってってこと」
ゴウカはサタンを見下ろしてそう言った。
そう言うと校門を出ていこうするゴウカ。
「ゴウカっ!」
「モカ・・・」
校門から出ていこうとするゴウカの手をモカが掴む。
「一体・・・どうしちゃったの・・・? 何かあったらなら私に話してよ・・・!」
「ごめん・・・モカ・・・バイバイ・・・」
「バイバイって――」
その時、突如として王城の制服を着た集団が校門の前に現れた。
その中から一人の美しくもあり、かつ、恐ろしい空気を感じさせる女が先頭に立ってゴウカに頭を下げる。
「ゴウカ様そろそろお時間です」
「エフノールさん・・・」
「王様がお待ちです。早くいらして下さい」
「はい・・・今、行きます・・・」
ゴウカはモカの手を振り払って行く。
「モカ・・・じゃあね・・・!」
ゴウカはモカに笑いながら手を振った。
「っ・・・ゴウカ!」
モカはゴウカに伸ばした手を引っ込めた。
「では、皆さん、失礼します」
エフノールはゴウカが校庭を出たのを確認すると皆に向かって頭を軽く下げ、一礼した。
そして、次の瞬間ゴウカとエフノール達は陽炎のようにその場から姿を消した――。
◇
「お~い」
どこからかサタンを呼ぶ声が聞こえる。
「お~い起きてろ~サタン」
サタンは自分が呼ばれていることに気がつき、うっすらと目を開けた。
見えるのはまたしても暗闇。
「俺は・・・また、死んだのか・・・」
サタンは意識がハッキリとしない頭でポツリと呟いた。
「いや、君はまだ死んでない。気を失っているだけだ」
サタンは突然自分の目の前に現れた男に驚いた。
え、誰!?
目の前にいた男はいかにも魔王らしきマントを背中に巻き、頭からは二本の先端が内側に曲がった角をはやした格好をしている。
「あんたは一体・・・?」
サタンは驚きながらもその男を指差す。
「俺か? 俺は――99代目の魔王――ヨハネだ」
「99代目の魔王――ヨハネ・・・あんたが・・・?」
ヨハネを指差すサタンの手がプルプルと震える。
「そう。俺はお前の先代魔王だ」
「先代魔王のあんたが・・・いや、あなたがどうしてここに・・・?」
「お前に伝えるたい事があるからだ」
ヨハネは逆にサタンを指差して言った。
「俺に・・・?」
「そう・・・お前の魔能力――死者転生についてだ!」
校庭の真ん中に立つサタンとゴウカ。その周りでたくさんの生徒が熱狂していた。その数は今朝、教室を取り囲んでいたよりも遥かに多い。
俺はどうしてゴウカの前に立って今にも戦い出そうとしてるんだ・・・? ちゃんと断ったのに・・・
校庭の真ん中でサタンは悩んだ。そして、数分前の出来事を思い出していた――。
「勿論、断るに決まってるぜ!」
サタンはどや顔でゴウカとの能力《チカラ》比べを断った。
「だってさ、聞いたかゴウカ?サンタは断るそうだから能力《チカラ》比べはなしだ」
「そもそも俺には戦う理由がないからな!」
サタンはゴウカを指差して言った。
「はぁ・・・君さぁ~、何でこの学園に入ったの? この学園に入ったんなら戦うこと位出来なくちゃダメだよ? そんな弱腰で本当に卒業する気ある? この貧弱弱虫君」
ゴウカはため息をつきながらサタンを挑発する。
「あ゙あ゙~そうかよ・・・あいにく俺は好きでこの学校に入ったわけじゃないんでね。それに、俺は――俺は、出来れば一生学校なんて行きたくなかったからな!」
「ああ~君はクズだったのか~だったら、今すぐ退学でもしてこの学園から去れば?」
ゴウカはさらにサタンを挑発していく。
「ちょ、ちょっと、ゴウカどうしちゃったの!? 昔のゴウカはそんなんじゃなかったじゃない!」
モカが慌ててゴウカを止める。
「ごめんね、モカ・・・でも、僕はもう昔の僕みたいにはいられないんだ・・・」
ゴウカは何か抱えてそうな顔をしてモカに謝った。
アイツ本当に何なんだ!? くそムカつくんですけど!?
サタンの怒りは頂点に達した。
「決めた・・・」
「サタン・・・?」
サタンはゴウカの前にまで歩いていきゴウカを指差した。
「おい! ゴウカ! その能力《チカラ》比べってやつやってやるよ! そして、絶対お前をぶん殴るってやる!」
サタンはゴウカを睨み付けながら言った。
「いいね、その目。じゃあ、やろっか」
ゴウカは笑って答えた。
(はぁ~あ、サタンのアホ・・・)
メルはサタンを見てため息をついた――。
そして、今のこの状況に至るというわけだが。
あああーそうだったー! 挑発に乗って受けるって答えたんだったーー!
サタンは頭を抱えて心の中で叫ぶ。
「いいか、二人とも。相手を殺すのは駄目だからな! せめて気絶するまでだ。どうしても危なそうな時は俺が間に入って止めるからな」
ダエフがサタンとゴウカの間に立って言う。
「ああ」
「分かってるよ、先生」
サタンとゴウカは共に頷く。
「ルールは道具を使わないこと。それ以外なら能力を使ってもいいし、正々堂々と戦ってもいい。まぁ何でもいいってこと」
ダエフが能力《チカラ》比べのルールを説明する。
「よし――では、始め!」
ダエフが手を上げて戦いの合図を出した。
サタンはダエフの手が上がった瞬間、ゴウカに向かって走った。
悪いな・・・最初から全力でいかせてもらうぜ・・・――
「サタン! 分かっているんですか!? 自分が何を言ったのか!?」
ゴウカと戦う前にサタンはメルに人気のない校舎裏へ連れていかれた。そして、そこでサタンはメルから説教を受けていた。
「おい・・・学校でその名前はあんまり言わない方が・・・」
「そんなの今は関係ありません! 相手はあのゴウカなんですよ!?」
メルは止まらない。
「分かってるよ。ちゃんと手加減しろってことだろ? 俺が魔王の力を使えば一瞬で終わってしまうんだからな!」
サタンがメルを抑えながら言うとメルは顔をしかめた。
「はぁっ? ぜんっぜん分かってないですよ! むしろその逆ですよ」
首を横に勢いよく振るメル。
「逆って・・・?」
「最初から全力でいかないとあなたが瞬殺されますよ」
「えっ・・・? ゴウカってそんなに強いの・・・?」
サタンは唾をゴクリと飲み込みながら恐る恐る聞く。
「強いとかそういうのの次元じゃないですよ。なにしろゴウカはこの学園でも最強の部類に入るんですから!」
「マジ・・・?」
「マジです!」
サタンはポカーンと口を大きく開けた――。
「例え、お前が最強だろうとこの技の前だと手も足も出まい!」
サタンは勢いよくゴウカに向かって走った。そして、ゴウカの前に立つと腰を90度に曲げた。
「すいません! 降参しますっ!」
とても綺麗な姿勢でゴウカに言った。
「・・・・・・は?」
一瞬動揺するゴウカ。
「――なんて、言うと思った、か?」
ゴウカの顔を下から見てニヤリと笑うサタン。
「とぉぉおりゃぁぁああ!」
そのまま、サタンはゴウカのお腹に向かって拳を突き上げる。拳がゴウカのお腹に直撃する。ボカッという効果音が鳴った。
次にサタンは地面の砂を拾い、ゴウカの顔に投げつけた。砂はゴウカの顔に命中する。
「ちょっと! ゴウカきゅんになんてことするのよ!」「そうよそうよ! 真面目に戦いなさいよ!」「卑怯よ! この最悪男!」
こんな卑怯な戦いをすると予想通りたくさんの野次がサタンに飛んできた。が、サタンは気にもせず続けた。
「こいつで決まりだ」
サタンは軽くジャンプして拳に力を込めた。
魔王――
「パンチ!!」
ゴウカの頬にサタンの拳が届いた。と思ったその瞬間――。
「あつ・・・! な、何だ!?」
ゴウカの体から溢れんばかりの炎が出ていた。炎によってサタンの拳が妨害される。
「炎よ・・・燃やせ」
ゴウカが言うと溢れんばかりの炎がサタン目掛けて襲いかかってきた。
「があぁぁぁぁぁぁ!」
サタンは炎をまともに受けて地面に倒れた。
「君の戦いは全然戦ってる感じじゃないね」
ゴウカはサタンをゴミクズを見るかのように見下す。
「そこまで! 勝者、ゴウ――」
「ま、まだだ、まだ俺はやれる・・・」
ダエフによって勝敗が決められる時、フラフラとしながらサタンは立ち上がった。
「ま、まだ、終わってない・・・」
「続けられるんだな、サンタ?」
ダエフに向かって頷くサタン。
「よし・・・再会だ!」
ダエフの合図により再びサタンとゴウカの戦いが始まった。
「ひゅーひゅー・・・へ、なかなか熱い炎じゃねーか・・・」
「へ~僕の炎を喰らって立ち上がれるなんて根性だけはあるんだね」
ゴウカはサタンを馬鹿にするように褒める。
「うるせぇ・・・」
どうする? 今の俺に何が出来る・・・? 変身《マキシム》して、アンドロかストラスの力を借りれば勝てるかもしれね~――けど、そんな事したら魔王だとバレるかもしれない・・・
サタンはゴウカを見ながら考える。
絶対絶命じゃん・・・! でも、この魔王があれだけ言われて何も出来ないなんて嫌だ! だから、せめてでも一発だけアイツの顔を殴ってやる!
サタンは拳を強く握りしめた。
「は~は~・・・ま、考えてもしょうがね~・・・俺は俺のやり方でやる!」
ゴウカに向かって歩き出すサタン。
「愚かだね・・・」
ゴウカはそんなサタンを見つめて掌をサタンに向けた。
「炎よ・・・燃やせ」
ゴウカの掌から出た炎が再びサタンを襲う。
「グワアァァァァァ!」
サタンは炎に焼かれてその場に倒れた。
「く・・・っそ・・・!」
サタンは地面に這いずり気を失った。
「意外と頑張ったことだけ覚えておくよ。え~っと・・・誰だっけ?」
「サンタの気絶により勝者ゴウカ!」
ダエフが手を上げてゴウカを指した。
「ウオォォォォーーー!」
校庭を取り囲んでいた連中から沸き上がる歓声。
「さっすがゴウカきゅん! あんなセコいヤツ負けて当然よ!」「ゴウカきゅん! 強可愛い~!」
取り囲んでいた連中の女子達はゴウカにメロメロだ。
「サンタ! 大丈夫ですか!? サンタ!」
メルが気を失ったサタンに駆け寄って言葉をかけるがサタンの返事はない。
「メル、大丈夫だよ。気絶してるだけだから」
そこへ、ゴウカがやって来る。
「ゴウカ・・・」
「メル・・・彼に伝えておいて・・・」
「何を・・・です?」
「もっと強くなってってこと」
ゴウカはサタンを見下ろしてそう言った。
そう言うと校門を出ていこうするゴウカ。
「ゴウカっ!」
「モカ・・・」
校門から出ていこうとするゴウカの手をモカが掴む。
「一体・・・どうしちゃったの・・・? 何かあったらなら私に話してよ・・・!」
「ごめん・・・モカ・・・バイバイ・・・」
「バイバイって――」
その時、突如として王城の制服を着た集団が校門の前に現れた。
その中から一人の美しくもあり、かつ、恐ろしい空気を感じさせる女が先頭に立ってゴウカに頭を下げる。
「ゴウカ様そろそろお時間です」
「エフノールさん・・・」
「王様がお待ちです。早くいらして下さい」
「はい・・・今、行きます・・・」
ゴウカはモカの手を振り払って行く。
「モカ・・・じゃあね・・・!」
ゴウカはモカに笑いながら手を振った。
「っ・・・ゴウカ!」
モカはゴウカに伸ばした手を引っ込めた。
「では、皆さん、失礼します」
エフノールはゴウカが校庭を出たのを確認すると皆に向かって頭を軽く下げ、一礼した。
そして、次の瞬間ゴウカとエフノール達は陽炎のようにその場から姿を消した――。
◇
「お~い」
どこからかサタンを呼ぶ声が聞こえる。
「お~い起きてろ~サタン」
サタンは自分が呼ばれていることに気がつき、うっすらと目を開けた。
見えるのはまたしても暗闇。
「俺は・・・また、死んだのか・・・」
サタンは意識がハッキリとしない頭でポツリと呟いた。
「いや、君はまだ死んでない。気を失っているだけだ」
サタンは突然自分の目の前に現れた男に驚いた。
え、誰!?
目の前にいた男はいかにも魔王らしきマントを背中に巻き、頭からは二本の先端が内側に曲がった角をはやした格好をしている。
「あんたは一体・・・?」
サタンは驚きながらもその男を指差す。
「俺か? 俺は――99代目の魔王――ヨハネだ」
「99代目の魔王――ヨハネ・・・あんたが・・・?」
ヨハネを指差すサタンの手がプルプルと震える。
「そう。俺はお前の先代魔王だ」
「先代魔王のあんたが・・・いや、あなたがどうしてここに・・・?」
「お前に伝えるたい事があるからだ」
ヨハネは逆にサタンを指差して言った。
「俺に・・・?」
「そう・・・お前の魔能力――死者転生についてだ!」
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