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第1章最弱魔王は魔界で頑張ると決めたそうです
第19話 母と娘②
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「ふぅ~ごちそうさまでした!」
サタンは丁寧に両手を合わせてお辞儀した。
「どういたしまして!」
ラエルはそう言うとサタンとメルの食べ終えた食器を持っていこうとする。
「食器ぐらい私が洗うからお母さんは座ってて!」
メルが慌ててラエルから食器を取った。
「で、でも・・・」
「いいから! 私に任せてお母さんは座ってて!」
メルは椅子にラエルの肩を押して座らせる。
「そう・・・? じゃあ、お願いね」
「任せて!」
メルは笑って食器を持ってキッチンへ行った。
メルが台所で食べ終えた食器を洗っている。サタンはラエルと二人きりで黙って座っていた。
き、気まずい・・・何か話題を・・・そうだ!
「あの・・・お母さん・・・」
「お母、さん・・・?」
ラエルの顔に怒りマークが入る。
えぇ・・・! 俺、また何かやらかしたのか?
「お母さん・・・は駄目だよ~サタン君~君は私の子じゃないんだから~!」
ふふふ、と笑いながら言うラエル。
「あ、はい! そうですね! では失礼して・・・ラエルさん、でいいですか?」
「いいわよ。それで、どうしたの? はっ――ま、まさか、メルの可愛さについて教えてほしいのっ!?」
キラキラと目を輝かせるラエル。
「あ~いえ、そうではなくてですね・・・二人のやりとりを見ていて思ったんですけど・・・別に仲が悪そうには見えないのにどうして二人は別々に暮らしているんだろう・・・と、思いまして・・・」
サタンは思いきって気になっていた事を聞いた。
「そうね・・・」
すると、ラエルは食器を洗うメルを見ながらどこか悲しげな表情をした。
「す、すいません! 初めて会ったのに図々しくて・・・」
「メルからは何も聞いてないの・・・?」
「はい・・・」
「そう・・・」
「あっ、べ、別に答えたくなかったら大丈夫です! 俺が気になっただけですので・・・」
「サタン君はさぁ・・・メルの事どう思う?」
「えっ!?」
サタンは唐突の質問に戸惑う。
「そ、それは――」
「いいから答えて」
ラエルの真剣な目を見てサタンは答えた。
「口が悪くてすぐに力いっぱい暴力を振るってくる――」
「やっぱり・・・まだ、すぐに手が出るのね・・・」
「――けど、けど、努力家でちょっとキャラが変わったりとかドジなところもあっていい子だと思います。それに、可愛い!」
「それ! 本当にそれなのよ! サタン君なかなか見る目あるね! 気に入ったわ」
指をパチンと鳴らし興奮するラエル。
「お、落ち着いてください、ラエルさん」
サタンは興奮するのを抑えるようラエルに言う。
「あ、そうね、ごめんなさいね」
テヘヘと後ろ髪を触りながら舌を出すラエル。
「しっかし・・・サタン君・・・君はなかなかのイケメンだね」
「ヴェッ!? いっ、いやいや全然そんな事ないですよっ!」
急に何を言い出すんだ・・・ラエルさん・・・俺がイケメンとかあり得ね~・・・俺は悪魔で普通だ、普通・・・
「そんなに謙遜しなくても大丈夫だよ~うん・・・私が独自で作ったリストの上位に入れといてあげるね!」
「あ、ありがとうございます・・・?」
一体何のリストなんだろう・・・?
「まぁ、リストって言ってもまだサタン君一人しかいないんだけどね!」
「は、はぁ・・・」
ますます気になる・・・一体何のリストなんだ!?
「それで――どうして二人は一緒に暮らしていないのか、だったね・・・」
チラッとメルの方を見てからラエルは話始めた。
「昔、昔あるところに一人の女の人がいたの・・・彼女はそれは、それは綺麗で美しくたいへん気が強かったわ。その美しさ故に彼女には信頼出来る人や友とよべる人が一人もいなかった」
「彼女の美しさが彼女の周りの男達を虜にしそれがまた周りの女達にとって気にくわなかったんでしょうね。だから、誰も声をかけなかった。でも、別に彼女も独りということを全く気にしていなかった。彼女自身他人に興味があまりなかったからね」
「彼女は思っていたわ・・・きっと自分は、このまま独りで生きていくのだろう、と。けどね、そんな彼女が大人になったある日、一人の男と出会ったの。そこから彼女の運命が変わりだしたわ――」
◇
突然どこからともなく突風が吹いてきた。
(今日は快晴だって天気予報で言っていたのに・・・)
私は風になびく白銀の髪を手で押さえながら心の中で呟く。
(今日はもう帰ろうかしら・・・いいえ、ダメよ! ここまで来たんだから絶対に行かないと! 何故なら今日は――新作苺ショートケーキの発売日なんだから!)
このまま進もうと決意した時、何故だか前方の坂から巨大な岩が転がってきた。
(う、嘘っ!? 何であれほど大きな岩が町中でいきなり転がってくるのよっ!?)
巨大な岩は私に向かって勢いよく転がってくる。
(よけられないっ・・・!)
私は突然の出来事に一歩も動けないでいた。周りにいる人も天使も悪魔もざわめきはするがどうしようもなく見ているだけ。
(嘘・・・私、ここで死ぬの・・・? まだ新作苺ショートケーキも食べてないのに・・・そんなの絶対に嫌!)
私が目を瞑った瞬間――
「力よ増幅せよ――馬鹿力!」
「え・・・?」
颯爽として私の前に現れた男の人が巨大な岩を片手で軽々と受け止めた。そして、受け止めている手に力を込めて巨大な岩を粉々に砕いた。
「大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!?」
「え、ええ・・・」
あまりにも一瞬の出来事で私には一体なにが起きたのか分からず其れだけしか答える事が出来なかった。その光景を見ていた周りの人も天使も悪魔もただただ呆然としているだけだった。
「そうですか! それは何よりです! では、僕はこれで失礼します」
そう言うと男の人はさっさと去っていった。
(スゴい・・・弱そうな見た目なのにあれほどの巨大な岩を軽々と砕くなんて・・・!)
私もその場から立ち去ろうとした時、ヒラヒラと一枚の紙が地面に落ちた。
(あれは、さっきの・・・)
私はその紙を拾い目を通した。
(え~っと、何々・・・勇者やっています・・・?)
その紙には職業勇者という事が書かれていた。
(名前は――ユウキ・エメ・・・?)
それが私とエメとの出会いだった。
サタンは丁寧に両手を合わせてお辞儀した。
「どういたしまして!」
ラエルはそう言うとサタンとメルの食べ終えた食器を持っていこうとする。
「食器ぐらい私が洗うからお母さんは座ってて!」
メルが慌ててラエルから食器を取った。
「で、でも・・・」
「いいから! 私に任せてお母さんは座ってて!」
メルは椅子にラエルの肩を押して座らせる。
「そう・・・? じゃあ、お願いね」
「任せて!」
メルは笑って食器を持ってキッチンへ行った。
メルが台所で食べ終えた食器を洗っている。サタンはラエルと二人きりで黙って座っていた。
き、気まずい・・・何か話題を・・・そうだ!
「あの・・・お母さん・・・」
「お母、さん・・・?」
ラエルの顔に怒りマークが入る。
えぇ・・・! 俺、また何かやらかしたのか?
「お母さん・・・は駄目だよ~サタン君~君は私の子じゃないんだから~!」
ふふふ、と笑いながら言うラエル。
「あ、はい! そうですね! では失礼して・・・ラエルさん、でいいですか?」
「いいわよ。それで、どうしたの? はっ――ま、まさか、メルの可愛さについて教えてほしいのっ!?」
キラキラと目を輝かせるラエル。
「あ~いえ、そうではなくてですね・・・二人のやりとりを見ていて思ったんですけど・・・別に仲が悪そうには見えないのにどうして二人は別々に暮らしているんだろう・・・と、思いまして・・・」
サタンは思いきって気になっていた事を聞いた。
「そうね・・・」
すると、ラエルは食器を洗うメルを見ながらどこか悲しげな表情をした。
「す、すいません! 初めて会ったのに図々しくて・・・」
「メルからは何も聞いてないの・・・?」
「はい・・・」
「そう・・・」
「あっ、べ、別に答えたくなかったら大丈夫です! 俺が気になっただけですので・・・」
「サタン君はさぁ・・・メルの事どう思う?」
「えっ!?」
サタンは唐突の質問に戸惑う。
「そ、それは――」
「いいから答えて」
ラエルの真剣な目を見てサタンは答えた。
「口が悪くてすぐに力いっぱい暴力を振るってくる――」
「やっぱり・・・まだ、すぐに手が出るのね・・・」
「――けど、けど、努力家でちょっとキャラが変わったりとかドジなところもあっていい子だと思います。それに、可愛い!」
「それ! 本当にそれなのよ! サタン君なかなか見る目あるね! 気に入ったわ」
指をパチンと鳴らし興奮するラエル。
「お、落ち着いてください、ラエルさん」
サタンは興奮するのを抑えるようラエルに言う。
「あ、そうね、ごめんなさいね」
テヘヘと後ろ髪を触りながら舌を出すラエル。
「しっかし・・・サタン君・・・君はなかなかのイケメンだね」
「ヴェッ!? いっ、いやいや全然そんな事ないですよっ!」
急に何を言い出すんだ・・・ラエルさん・・・俺がイケメンとかあり得ね~・・・俺は悪魔で普通だ、普通・・・
「そんなに謙遜しなくても大丈夫だよ~うん・・・私が独自で作ったリストの上位に入れといてあげるね!」
「あ、ありがとうございます・・・?」
一体何のリストなんだろう・・・?
「まぁ、リストって言ってもまだサタン君一人しかいないんだけどね!」
「は、はぁ・・・」
ますます気になる・・・一体何のリストなんだ!?
「それで――どうして二人は一緒に暮らしていないのか、だったね・・・」
チラッとメルの方を見てからラエルは話始めた。
「昔、昔あるところに一人の女の人がいたの・・・彼女はそれは、それは綺麗で美しくたいへん気が強かったわ。その美しさ故に彼女には信頼出来る人や友とよべる人が一人もいなかった」
「彼女の美しさが彼女の周りの男達を虜にしそれがまた周りの女達にとって気にくわなかったんでしょうね。だから、誰も声をかけなかった。でも、別に彼女も独りということを全く気にしていなかった。彼女自身他人に興味があまりなかったからね」
「彼女は思っていたわ・・・きっと自分は、このまま独りで生きていくのだろう、と。けどね、そんな彼女が大人になったある日、一人の男と出会ったの。そこから彼女の運命が変わりだしたわ――」
◇
突然どこからともなく突風が吹いてきた。
(今日は快晴だって天気予報で言っていたのに・・・)
私は風になびく白銀の髪を手で押さえながら心の中で呟く。
(今日はもう帰ろうかしら・・・いいえ、ダメよ! ここまで来たんだから絶対に行かないと! 何故なら今日は――新作苺ショートケーキの発売日なんだから!)
このまま進もうと決意した時、何故だか前方の坂から巨大な岩が転がってきた。
(う、嘘っ!? 何であれほど大きな岩が町中でいきなり転がってくるのよっ!?)
巨大な岩は私に向かって勢いよく転がってくる。
(よけられないっ・・・!)
私は突然の出来事に一歩も動けないでいた。周りにいる人も天使も悪魔もざわめきはするがどうしようもなく見ているだけ。
(嘘・・・私、ここで死ぬの・・・? まだ新作苺ショートケーキも食べてないのに・・・そんなの絶対に嫌!)
私が目を瞑った瞬間――
「力よ増幅せよ――馬鹿力!」
「え・・・?」
颯爽として私の前に現れた男の人が巨大な岩を片手で軽々と受け止めた。そして、受け止めている手に力を込めて巨大な岩を粉々に砕いた。
「大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!?」
「え、ええ・・・」
あまりにも一瞬の出来事で私には一体なにが起きたのか分からず其れだけしか答える事が出来なかった。その光景を見ていた周りの人も天使も悪魔もただただ呆然としているだけだった。
「そうですか! それは何よりです! では、僕はこれで失礼します」
そう言うと男の人はさっさと去っていった。
(スゴい・・・弱そうな見た目なのにあれほどの巨大な岩を軽々と砕くなんて・・・!)
私もその場から立ち去ろうとした時、ヒラヒラと一枚の紙が地面に落ちた。
(あれは、さっきの・・・)
私はその紙を拾い目を通した。
(え~っと、何々・・・勇者やっています・・・?)
その紙には職業勇者という事が書かれていた。
(名前は――ユウキ・エメ・・・?)
それが私とエメとの出会いだった。
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