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第1章最弱魔王は魔界で頑張ると決めたそうです

第10話 ウルトラスーパーデンジャラスアターク!!!①

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 全力で拳を突き出したサタン。よくアニメであるような風が吹き砂ぼこりが舞う。

「っ、サタンさん・・・!」

 な・・・嘘だろ? 俺の魔王パンチを片手だけで受け止めるなんて・・・!

 サタンの繰り出した魔王パンチはメルに軽々と受け止められた。

「はぁ・・・もう一度聞きますけど――あなたほんっっっとおに魔王・・・なんですか?」

 呆れた目で聞いてくるメル。

「ああ・・・そうだよ・・・」

 サタンが答えるとメルはため息をつきながら地面に唾を吐き捨てた。

「はぁ~・・・けっ・・・!」

 ・・・こいつ、ほんとに勇者か? それ以前に女の子としてやっちゃダメだろ。

「こんなんじゃ――」

 ボソっと何かを呟くメル。

「ん――ウワッ!」

 サタンが聞き返そうとした時、メルが剣をサタンに向かって振った。驚いたサタンは尻餅をついた。

「こんな弱い魔王じゃ倒しても胸をはって倒したって言えないじゃないですか!」

 メルは尻餅をついたサタンに剣先を向けて言った。

「だったら、今すぐやめよう! うん、そうしよう! 俺は見てのとおり弱々だから戦っても何も意味がないし、お前はめちゃめちゃ強い魔王を討伐したって嘘ついときゃ全て解決だ! よし、これでいこう! な?」

 サタンは万事解決の案を思いつきメルの肩に手を置いて案を提案した。

「な・・・・・・」

 メルはその場で固まった。

「よ~し、これで全部解決だ~~! お互いお疲れ様!」

 サタンはう~んと腕を伸ばしメルから離れていく。

「あっ、アズラ逃げてなかったのか? ったくしょうがないな・・・」

 サタンは結局逃げていなかったアズラの姿を見るとアズラに近づいた。

「すいません・・・でも、やっぱりサタンさん一人を置いて逃げるなんて出来ません!」

 アズラはサタンを見つめ言う。こんなにも自分を大切にしてくれているアズラにサタンはそれ以上何も言えなかった。

 まぁ・・・何事も起こらなかったし、こんなにも俺の事を思ってくれてるアズラにこれ以上言えないよな!

「じゃあ、城に入るか? ちょうどお腹も空いてきたし何か作ってくれるか?」
「もちろんです!」

 サタンがアズラに聞くとアズラは顔を輝かせ答えた。

「じゃ、早く行こうぜ。あ、メルも子どもなんだから早く帰れよ~じゃあな」

 サタンはメルに手を振り城に入った。

「は~い」

 アズラはサタンの後に続く。

「メルさんもお疲れ様でした! またどこかでお会いしたらその時は仲良くしてくださいね」

 アズラはメルに軽く頭を下げて城に入った。

 この間、メルはいっさい動かなかった。


「しかしなかなか手強い相手だったな」

 キッチンの椅子に座りながらサタンはアズラに言った。

「サタンさん何もしてませんけどね・・・!」

 手を動かしながらジトーっとサタンを見つめるアズラ。

「ウグッ・・・ま、まあ、それはおいといて・・・それにしても可愛いかったし勇者とかじゃなかったら魔界にスカウトしてたんだけどな~」
「へぇ~・・・まぁ、可愛いかったですもんねぇ・・・?」

 ピタリの動きが止まったアズラからゴゴゴと何か見えないものが溢れだす。

「まあ、アズラには負けてたけどな!」

 アズラの体がピクッと僅かに反応する。

「な、なな、何言ってるんですか!?」
「いや、だってアズラの方が可愛いの事実だし」

 極当たり前のように言うサタンにアズラは恥ずかしくなり手を動かしスピードが上がった。

「や、やめてください・・・もう・・・恥ずかしいです・・・それより、はい、おにぎりです!」

 コトっとお皿に盛られて出てきたのは白米がキラキラと輝くいかにも美味しそうなおにぎりだった。

「これは旨そうだ! 頂きまーす!」

 サタンはおにぎり3個をすぐに完食した。

「ふ~旨かった~!」
「お腹は満腹になりましたか?」
「ああ、充分だよ。ありがとうなアズラ」
「それは良かったです」
「それじゃあもう一眠りしてくるかな、おやすみアズラ。アズラも出来るだけ早く寝てくれな」
「は~い、おやすみなさいサタンさん」

 サタンはアズラと別れると部屋に戻って布団に潜り込み眠りについた。


「う~ん、よく寝たぁ~」

 サタンは部屋に入ってくる朝陽に目を覚ました。

「外の空気でも吸ってくるか・・・」

 って、外の空気吸うとかカッコつけすぎじゃね? 俺・・・。

 サタンはそう思いながらも寝起きすっきりするために外に出た。

「ウオッ!」

 外に出てサタンは驚いた。
 何故ならメルが一歩も動かないままの状態でその場に立っていたからだ。

「お~い、メル何してるんだ?」

 サタンは驚きながらメルに近づく。

「・・・・・・ふざけるな」
「えっ?」
「ふざけるなって言ってるんでーーーす!!!」

 突然メルが勢いよく剣をサタンに向かって振り下ろした。
 サタンは間一髪剣をかわした。剣は地面に直撃し地面にヒビをいれる。

「いきなり何するんだよ!?」
「何が・・・」
「えっ!?」
「な~にが嘘をつけですか!? このクズ野郎が! 勇者に向かって嘘をつけ!? あなたは最低です! よってあとかたもなく消しとばします!」
「ちょ、待て待て待て!! 落ち着けって」
「いいえ! 待ちません!」

 メルはサタンの話も聞かずに剣を連続で振り降ろした。

「消す消す消す消す・・・」
「おい! ちょっと待てって!」
「うるさい!」

 サタンは逃げながらメルを止めようとするがメルは一向に聞こうとしない。

「逃げてないで早く殺《や》られなさい!」
「誰が黙って殺られるもんかっ!」

 サタンは城の周りを走って逃げ続けた。

 はぁ、はぁ・・・ヤバイな、堪忍袋が完全に切れてやがる

 サタンはチラッとメルの方を見る。

 うん! 完全に自我を忘れてるね! 今も死ね、死ねしか言ってないし・・・・・・

「死ね死ね死ね・・・」

 メルの目は完全に殺意に満ちていた。

 俺の何が一体悪かったんだ?

 走りながら何が悪かったかを考えるサタン。

 う~ん・・・やっぱ分かんねー・・・

 しかし考えた結果、結局分からなかったサタン。

 このまま逃げ続けても何も変わらねーよな・・・

 後ろを振り返りメルを見るサタン。メルは一心不乱に剣を振るっている。

 はぁ・・・もう一度魔王パンチで立ち向かうか? でも――

 サタンは右手を握りしめるが全然効かなかった事を思い出す。

 ったく考えてる暇はねぇ!

 だんだん疲れてきたサタンは考えるのを止めて急回転しメルに向かって走り出した。
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