魔王が最弱でスライムが最強の世界!?

クソニート

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第5章最弱魔王は悪魔のために頑張るそうです

第120話 元気になるまで②

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「出掛けるって言ったって……どこにだ?」

 急なアズラの提案に疑問を浮かべるサタンは聞き返す。すると、アズラはふふんと胸を揺らしながら自慢気に答えた。

「無人島ですっ!」

「…………は、無人島っ!?」

 無人島ってあれか? 人が誰もいない島のこと……だよな?

 馬鹿なサタンであっても行ったことがなくても流石に無人島がどういう場所なのかは知っていた。
 無人島について考えているサタンにアズラは目をうるうるとさせながら確認をとる。

「ダメ……ですか?」

「いや、ダメじゃないけど……どうして無人島なんだ? それに、俺はまた人間界に行こうとしてたんだが……」

「私が行きたいからです。付き合ってください!」

 サタンは一生懸命頼むアズラを見て考えた。

 人間界に魔物らしきものが現れた時のために行こうと思ったが――まぁ、未来は変えられないんだよな……

 サタンにとって人間も大事である。これと言って人間を助ける理由はないがメルに何故だか申し訳ない気持ちがあって助けていたのだ。だが、それ以上にアズラの方が大切であった。アズラと見ず知らずの人間、どちらが大切かと聞かれると答えるまでもない。

「うん、分かった。じゃあ、行くか無人島に」

 サタンが答えるとパアアッと顔を輝かせて喜ぶアズラ。

「ありがとうございます。では、急いで用意しますから少し待っててください」

 二人分の食べ終えた食器を持っていき急いで水で洗い出す。一つ一つの反応がいちいち可愛いアズラにサタンは笑いながら頬杖をついた。

「ゆっくりでいいぞ。時間はいっぱいあるんだからな」

「いいえ、急ぎます。時間は限られていますから」

 素早く手を動かし食器を洗い流していく。
 そして、あっという間に食器を洗い終えたアズラはサタンに先に上で待っていてくださいと伝えた。


 魔界城を出て階段を上がり赤褐色の蓋を押し上げて地上に出る。時間は昼。昇った太陽が眩しい。

「ニャーニャー」

「……っと、アオニャンいたのか?」

 足元で鳴くアオニャンの存在に驚くサタン。そんなこと気にもしないアオニャンは鳴き続けた。

「いつの間についてきてたんだ……って、おい、どこ行くんだ?」

 撫でようとしゃがんだサタンであったがアオニャンは駆け出しどこかへ消えていった。少し残念そうに頭をかきながら立っていると赤褐色の蓋を押し上げてアズラが出てきた。

「お、お待たせしました~」

「全然待ってないぞ……って、その荷物は?」

 サタンは息を荒げるアズラが手にしている小さな手さげカバンのような物が気になり聞く。

「ああ、この中ですか。この中にはですねレジャーシートとパラソル、水筒が入ってます」

「重そうだし俺が持つ」

 サタンはアズラからカバンを取るとずっしりとした重みが手に伝わった。

 うっ、結構重いな。よく普通に持ってられたな……

 アズラの凄さを改めて感じ、カッコつけたため重たいなんて言えないまま持っていた。

 まぁ、重たいなんて恥ずかしくて言えないしな……それに――

「ありがとうございます、サタンさん!」

 あんなに嬉しそうに言われるとしょうがないよな……

「それでは、行きましょう。いざ、無人島へ」

 アズラは白く光輝く円――ワープを展開した。二人はワープに乗る。すると、光は強くなり一瞬にして魔界の地から二人の姿を消した。


 ◇


 とある場所のとある無人島。その場所にボワッと輝く白い光の円が砂浜に浮かび上がった。

「ここ、は……」

「はい。ここが私が一緒にきたかった無人島です」

 サタンは一先ずぐるりと辺りを見回すが見回している最中からデジャブのようなものを感じていた。

 なんっもない……人っ子一人いない。まぁ、いるはずがないんだが……それよりも、自然も何もない。周りは海だらけ……

 無人島は小さな孤島のような島。ぐるりと一周してギリギリ魔王城がここに建てられる程の大きさだった。そして、周りは見渡す限り碧一色が広がっている。
 サタンは初めて魔界を見た時のような妙に懐かしく感じる光景にさざ波の音を聞きながら陥っていく。

「サタンさん、お荷物を貸してください」

 アズラに言われたようにカバンを渡す。すると、アズラはテキパキとカバンの中からレジャーシートを取り出し広げて敷いた。さらに、その近くに折り畳み式パラソルを広げて刺す。

「ささっ、どうぞ」

 アズラはレジャーシートをポンポンと叩きながらサタンを呼ぶ。言われるがまま近くに行き腰をおろしたサタン。その隣にアズラも座った。
 静かに海を眺める二人。太陽は真上に昇り陽射しが強いがパラソルがしっかりと守り涼しい。何もない……だからこそ、まるで時間が止まっているかのように思え、心は休まっていく。

「どうですか、ここは――いい場所だと思いませんか?」

 アズラはいつも以上に気持ち良さそうにしながらサタンへと聞いた。

「いい場所だな……静かで落ち着いていて――いつ見つけたんだ?」

「少ーし前ですかね。まだ、サタンさんと会う前の頃に……」

「俺と会う前の頃か――」

 そう言えば俺は出会う前のアズラのことを何も知らないんだな……3界戦争で独りになったってことしか知らない……

「それで、ここに俺と一緒に来て何がしたかったんだ?」

「何も」

「え?」

 予想外の答えにサタンは間の抜けた声を出す。

「何もしないのか?」

 コクっと頷くアズラ。意図が読めない。何を考えているのかが分からない。

「じゃあ、なんで俺をこんな所に――」

「ゆっくりしてほしかったんです。ここで、何も考えずにゆっくりと――」

 アズラの言う通りここにいれば今までのことなどなかったかのように感じ、自分で勝手に思っていたこともしないでゆっくりと出来る。
 自分では思っていなくてもサタンの心は勝手に思っていたのだ。人々を守るのは自分だと……。
 なんとなくそのことを察していたアズラは毎日人間界へ行くサタンを休ませるためここへ連れて来たのだ。

「さぁ、サタンさんもこうしてください」

 ゴロンと仰向けになるアズラ。サタンも言われた通り隣で仰向けになった。

「そして、目を閉じてください」

 サタンは言われた通り目を閉じた。すると、今までも静かだった世界がさざ波の音だけしか聞こえなくなりさらに静けさを増した。吹き抜ける風が髪を撫でるようでなんとも気持ちがいい。

「どうですか、サタンさん――おやおや……」

 いつの間にかサタンはスースーと寝息を立て眠っていた。気持ち良さそうに頬を緩ませながら眠る姿にアズラは可愛さで胸を撃たれた。そして、キュンとしたのと同時に少し心配にもなった。

「やはり、体は疲れていたんですね……」

 眠るサタンの横顔を見ながら一人頑張る姿を思い返す。
 魔物らしきものを見て以来毎日人間界に一日のほとんど在住していたサタン。敵は魔物らしきものだけでなく人間もだというのに毎日行っていた。そんな体は自然と疲労を覚えていったのだ。心では気づかないまま。
 ここに連れてきて正解だったとアズラは思えた。

 アズラがここを見つけたのは少し前のことだ。ここはその時から無人島であった。安全な居場所が魔界という小さな場所だけ――いや、安全な居場所などこの世界のどこにもないなかで唯一の安全な居場所と言える場所だったのだ。

(かつて、私が大罪を犯した時、ここは自然と心を休ませてくれる不思議な場所だったのです。だから、サタンさんもしっかりと休んでください――)

「ここなら誰にも見つかりません。邪魔も入りません。おやすみなさい――」

 小さく口にするとアズラは左手でサタンの右手を握った。そして、そのまま目を閉じ眠りの世界へと落ちていった。
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