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駆け抜ける火の玉
駆け抜ける火の玉
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表彰式。MVPが発表される。スタジアムに静寂が走る。静まり返るスタジアムの静寂を破るアナウンスが突然鳴り響いた。
『MVPはクリムゾンウォーリアズ、上山蓮!!』
アナウンサーの声に俺は信じられない思いに包まれていた。ボーっとしているとオッサンが俺に言った。
「上山!早く行かんか!」
俺は表彰台にあがるとMVPのカップを受け取った。MVPのカップを高々と頭上に差し上げる。再び歓声がスタジアムを包み込む。興奮と歓喜がさらに熱気を帯びていた。俺は歓声に応えると力強く拳を突き上げた。
俺が表彰台から降り、元の場所に戻ると矢野さんが言った。
「やったな!上山!おめでとう!」
矢野さんがそう言って握手を交わす。他のメンバーも俺を祝福してくれ、お互いに握手を交わす。みんな自分がMVPを取ったように喜んでくれている。本当に素晴らしい仲間たちだ。
続けてチャンピオンズカップの授与。オッサンは帽子を脱ぐと脇に帽子をはさみチャンピオンズカップを受け取る。
オッサンの手にチャンピオンズカップが渡ったと同時に俺たち全員が表彰台に上がる。オッサンを真ん中にして俺たちは咆哮を上げる準備に入った。
「俺たちがチャンピオンだあ!!!」
オッサンがそう叫ぶと雨のように降る紙吹雪の中、サポーターの歓声がより熱気を帯びていた。オッサンは誇らしげにチャンピオンズカップを高々をあげる。
俺たちは頂点まで来たんだ。揺れるスタジアムの中、俺たちはお互いを称え合った。
俺たちは…そして俺はやったんだ!優勝したんだ!一つの頂点に駆け上ったんだ!闘いは終わった訳じゃない。しかし、やったんだ!
そう思うと胸に熱いものが込み上げてきた。
その後、インタビュー、祝勝会と続いた。
「監督、上山選手はまさに"疾風のサムライ"の後継者ですね!」
アナウンサーのその一言にオッサンは嬉しそうに笑顔で応えた。
「いえ、彼は"疾風"を越えた"火の玉"です。スタリオンズの今川選手もウチの村上も彼をそう評価しています」
オッサンの嬉しそうな笑顔と祝福の時間の中、俺は気になっていた。ほのかさんとの約束だ。
早く、河原の公園に行かないと。もしかしたら、もう来ているかもしれない。
「続いてMVPの上山選手です。ナイスシュートでした!」
「あ、はい、ありがとうございます」
俺はほのかさんが気になってインタビューになんて応えているのかわからない。いつまでここにいればいいんだ?
「上山選手、皆さんが"火の玉"とおっしゃっています。それについてはいかがですか?」
「あのう、まあ、その期待に応えられるように、これからも頑張ります」
俺は気の無い返事を繰り返していた。インタビューが終わり俺は横にいた矢野さんに聞いた。
「あの、この後は予定あるんですか?」
「この祝勝会が終わったら、記者会見だけだ」
矢野さんが俺に微笑みながらグラスを渡してそう言った。たくさんの記者の方々のフラッシュと部屋を包む勝利に酔いしれる空気があたたかく流れる。
「そうですか、じゃあ俺用事ありますんで、これで失礼します」
俺はそう言って、グラスをテーブルに置くとその場を立ち去った。
「おい!上山、どこ行くんだ?」
矢野さんのその声を振り切り、俺は河原の公園に向かって走り出した。早く行かなきゃ!約束なんだ!
俺は、はやる気をおさえつつ河原の公園に向かった。出入り口を勢いよく駆け抜けると河原に向かう。暗闇の中、背中を照らすスタジアムの灯りだけがまぶしい。
やがて堤防が見えてきた。一気に駆け上がり、河原の公園のグラウンドに向かう。
「遅かったか?それとも俺に対する答えはNOなんだろうか?」
俺は独り言を言いつつ、周りを見渡した。誰もいない。闇が周りを包むだけだ。
「ふう。やっぱりダメか…」
「何がダメなの?」
俺は後ろを振り向いた。ほのかさんが立っている。俺はドキドキしてきた。胸が張り裂けそうだ。
「優勝とMVPおめでとう。蓮くん」
そう言うと、ほのかさんは俺に笑顔でクリムゾンウォーリアズのマスコットのぬいぐるみを渡した。だけど、何か違う。俺の背番号8の下の名前が[UEYAMA]でなく[REN]になっている。
「これね、私の手作りなの。優勝した時のお祝いにと思って」
「ほのかさん」
俺はそれしか言えなかった。するとほのかさんが俺に抱きついてきた。俺のドキドキする鼓動の音がほのかさんに聞こるんじゃないかと思うと恥ずかしくなってきた。
「私の答えはYESよ。父がなんと言おうと私は蓮くんと結婚する。だから守ってね」
「うん、必ず守る」
「約束よ」
俺はぬいぐるみを落とすとほのかさんを抱きしめた。強く。静かに流れる時の中、ほのかさんのぬくもりが伝わる。
水面に映る月の明かりが俺たちをまぶしく包んでいた。
『MVPはクリムゾンウォーリアズ、上山蓮!!』
アナウンサーの声に俺は信じられない思いに包まれていた。ボーっとしているとオッサンが俺に言った。
「上山!早く行かんか!」
俺は表彰台にあがるとMVPのカップを受け取った。MVPのカップを高々と頭上に差し上げる。再び歓声がスタジアムを包み込む。興奮と歓喜がさらに熱気を帯びていた。俺は歓声に応えると力強く拳を突き上げた。
俺が表彰台から降り、元の場所に戻ると矢野さんが言った。
「やったな!上山!おめでとう!」
矢野さんがそう言って握手を交わす。他のメンバーも俺を祝福してくれ、お互いに握手を交わす。みんな自分がMVPを取ったように喜んでくれている。本当に素晴らしい仲間たちだ。
続けてチャンピオンズカップの授与。オッサンは帽子を脱ぐと脇に帽子をはさみチャンピオンズカップを受け取る。
オッサンの手にチャンピオンズカップが渡ったと同時に俺たち全員が表彰台に上がる。オッサンを真ん中にして俺たちは咆哮を上げる準備に入った。
「俺たちがチャンピオンだあ!!!」
オッサンがそう叫ぶと雨のように降る紙吹雪の中、サポーターの歓声がより熱気を帯びていた。オッサンは誇らしげにチャンピオンズカップを高々をあげる。
俺たちは頂点まで来たんだ。揺れるスタジアムの中、俺たちはお互いを称え合った。
俺たちは…そして俺はやったんだ!優勝したんだ!一つの頂点に駆け上ったんだ!闘いは終わった訳じゃない。しかし、やったんだ!
そう思うと胸に熱いものが込み上げてきた。
その後、インタビュー、祝勝会と続いた。
「監督、上山選手はまさに"疾風のサムライ"の後継者ですね!」
アナウンサーのその一言にオッサンは嬉しそうに笑顔で応えた。
「いえ、彼は"疾風"を越えた"火の玉"です。スタリオンズの今川選手もウチの村上も彼をそう評価しています」
オッサンの嬉しそうな笑顔と祝福の時間の中、俺は気になっていた。ほのかさんとの約束だ。
早く、河原の公園に行かないと。もしかしたら、もう来ているかもしれない。
「続いてMVPの上山選手です。ナイスシュートでした!」
「あ、はい、ありがとうございます」
俺はほのかさんが気になってインタビューになんて応えているのかわからない。いつまでここにいればいいんだ?
「上山選手、皆さんが"火の玉"とおっしゃっています。それについてはいかがですか?」
「あのう、まあ、その期待に応えられるように、これからも頑張ります」
俺は気の無い返事を繰り返していた。インタビューが終わり俺は横にいた矢野さんに聞いた。
「あの、この後は予定あるんですか?」
「この祝勝会が終わったら、記者会見だけだ」
矢野さんが俺に微笑みながらグラスを渡してそう言った。たくさんの記者の方々のフラッシュと部屋を包む勝利に酔いしれる空気があたたかく流れる。
「そうですか、じゃあ俺用事ありますんで、これで失礼します」
俺はそう言って、グラスをテーブルに置くとその場を立ち去った。
「おい!上山、どこ行くんだ?」
矢野さんのその声を振り切り、俺は河原の公園に向かって走り出した。早く行かなきゃ!約束なんだ!
俺は、はやる気をおさえつつ河原の公園に向かった。出入り口を勢いよく駆け抜けると河原に向かう。暗闇の中、背中を照らすスタジアムの灯りだけがまぶしい。
やがて堤防が見えてきた。一気に駆け上がり、河原の公園のグラウンドに向かう。
「遅かったか?それとも俺に対する答えはNOなんだろうか?」
俺は独り言を言いつつ、周りを見渡した。誰もいない。闇が周りを包むだけだ。
「ふう。やっぱりダメか…」
「何がダメなの?」
俺は後ろを振り向いた。ほのかさんが立っている。俺はドキドキしてきた。胸が張り裂けそうだ。
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そう言うと、ほのかさんは俺に笑顔でクリムゾンウォーリアズのマスコットのぬいぐるみを渡した。だけど、何か違う。俺の背番号8の下の名前が[UEYAMA]でなく[REN]になっている。
「これね、私の手作りなの。優勝した時のお祝いにと思って」
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俺はそれしか言えなかった。するとほのかさんが俺に抱きついてきた。俺のドキドキする鼓動の音がほのかさんに聞こるんじゃないかと思うと恥ずかしくなってきた。
「私の答えはYESよ。父がなんと言おうと私は蓮くんと結婚する。だから守ってね」
「うん、必ず守る」
「約束よ」
俺はぬいぐるみを落とすとほのかさんを抱きしめた。強く。静かに流れる時の中、ほのかさんのぬくもりが伝わる。
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