夜明けの鏡

しょちぃ

文字の大きさ
上 下
20 / 32
交差する思い

交差する思い

しおりを挟む
昼間だというのに暗い部屋の中、宮川が久米さんを殴り続ける音と久米さんの悶絶する声が部屋の中に響き渡る。

「もうやめて!やめてください!久米さんをそれ以上殴るのはやめてください!」

私は思わずそう叫んだ。しかし、宮川はまだ久米さんを殴り続けている。

「申し訳ございませんねぇ、ミセスかの子。久米修を倒すのは、ある意味私の夢。私も武術をかじっているもんで」

そういうとまた宮川は久米さんを残忍なまでに殴り続けている。
すると小田がいきなり宮川の頬にビンタを浴びせた。

「この愚か者が!ミセスかの子がやめてくださいとおっしゃっているのに、まだ続けるとは!やめんか!愚か者!ミセスかの子に楯突くつもりか!」

小田が宮川にそう言って、さらにビンタを2回浴びせた。宮川は久米さんを離した。久米さんはそのまま、ズルズルと宮川の身体に全身を浴びせるような体勢で床に落ちて動かない。

私は久米さんが心配で側に駆け寄った。宮川や小田が近くにいたが、そんなことより久米さんが心配だ。

「久米さん!久米さん!しっかりして下さい!大丈夫ですか!?すみません、私のために……」

久米さんは少しだけ身体を起こした。

「……か、かの子さん、あやまるのは私だ。か、勝手なことをして……」

久米さんがそこまでいうと宮川が久米さんを抱え上げた。

「もういいでしょう、ミセスかの子。久米は然るべき場所に移します」

「待ってください!まさか、久米さんを殺す気じゃ!」

私が宮川に対してそういうと小田がニヤリと笑いながら私に言った。

「ミセスかの子、大丈夫ですよ。殺しはしません。あの方も大切なミセスかの子の人質ですからね。丁重にお世話させていただきます。
ああ、アバラが5本程折れてますし他にもお怪我されてますが、きちんと治療致しますので、ご安心を」

小田はそういうと宮川に合図し、久米さんを連れて行った。久米さんは手で大丈夫と私に合図し、精一杯の笑顔を私に送った。

不気味に静まり返った部屋に小田と私は向かい合い、小田はニヤリと笑い、さっきの壁のスクリーンのスイッチをつけた。

スクリーンには悲惨な光景がたくさん映し出されている。目をふさぎたくなるような映像ばかりが映し出される。

飢えた人達、争いで傷ついた人達、様々な病気で苦しむ人達…その他にも表現できない悲惨な光景が映し出されている。
それを見ながら小田は身体をナワナワと震わせている。

「ミセスかの子!これが現実なのです!このような悲惨な状況を目の当たりにして、あなたは何もお感じになられませんか!我々はこのような人達を救う為に組織を作ったのです!
その為にはあなたの力が必要だ!ミセスかの子!我々に力を!」

小田は怒りに満ちた表情で私にそう言った。私は小田の気持ちもわからないでもないと感じた。そして私の大切な人達の為にも決断しないといけない。

「わかりました。あなたがたに協力しましょう。ただし、殺しだけでなく暴力を振るった時点で私は協力はしません」

私は震える身体を必死におさえながら、そう叫んだ。小田がニヤリとさっきよりも、より不気味に嬉々とした表情で笑った。

「おお!ミセスかの子!やっとわかっていただけましたか!そうです!その通りです!あなたの協力さえあれば、たくさんの人類は救われる!
暴力?ハハハ。ご安心ください。我々はそのような野蛮な真似は致しません!」

小田はさらに嬉々とした笑みを浮かべて私を見つめる。私はぞっとして吐き気がしてきた。

「さて、ではこれからのことをご説明させていただきましょうか!ミセスかの子!ハハハ。愉快ですね!たくさんの人類が救われる!ハハハ。
ではご説明といきましょう!」

小田はそういうと私の前にさらに近づく。私は震える全身を必死でおさえながら小田を見つめていた。
説明ってなんなんだろう?私の不安はさらに深まった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔の鴉がやってくる。『雨宿りの女』

安田 景壹
キャラ文芸
闇に潜む怪物どもを狩る魔女、七ツ森麻來鴉。 彼女は雨の日に怪異に憑りつかれたという少女、能見晶子の除霊を引き受ける。 だが、彼女の中に潜む怪異は、過去の因縁を経てやってきた恐るべき存在だった――……

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

CODE:HEXA

青出 風太
キャラ文芸
舞台は近未来の日本。 AI技術の発展によってAIを搭載したロボットの社会進出が進む中、発展の陰に隠された事故は多くの孤児を生んでいた。 孤児である主人公の吹雪六花はAIの暴走を阻止する組織の一員として暗躍する。 ※「小説家になろう」「カクヨム」の方にも投稿しています。 ※毎週金曜日の投稿を予定しています。変更の可能性があります。

処理中です...