夜明けの鏡

しょちぃ

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交差する思い

交差する思い

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私は小倉町の古ビルに向かった。青木町と同じく、古ビルと言われればすぐにわかる。
まだ昼間というのに、遠くに見える古ビルはとても不気味だ。

青木町の古ビルがアジトであったように、小倉町の古ビルもアジトだとしたら、もっとアジトはあるに違いない。
もしかしたら私が思う以上に大きな組織かもしれない……。

しかし、今は尚輝と真希と静佳を救うことを優先しないといけない。
私はドンドン近づいてくる古ビルを見つめながら、そのことだけを考えていた。

やがて、古ビルの入口に着いた。
私ははじけそうな鼓動を感じながら、カラカラになった喉を振り絞って懸命に言った。

「如月かの子です。約束通り来ました。私の夫と友達を解放して下さい」

私がそう言って、3分程経って小田と宮川が入口に現れた。後ろには数えきれない程の男達がいる。

「ようこそ、ミセスかの子。ようやくお越しになられましたか。まあ、あなたにはこれから重要な役目がございます。さあ、どうぞお上がり下さい」

小田がまた貴族の挨拶のように手を体の前に回して挨拶する。私は入口に向かう。

「私の夫と友達は無事でしょうね?そうでないなら私は殺されても協力しません!」

私の言葉に小田はニヤリと笑った。宮川はニヤニヤしている。

「ご安心ください、ミセスかの子。皆様、しかるべき、お部屋で丁重におもてなしさせていただいております」

小田はそういうと私を招くような仕草をした。私はここは行くしかない。
とにかく行かなければ、3人を助ける術も思いつかない。

「夫と友達が無事だという証拠を見せてください。そうで無いなら、私は殺されてもあなたがたの言うことは聞きません」

私がそういうと小田は部屋に招き入れ、そして
壁のスイッチを押した。
壁が左右に開く、そこにはスクリーンが現れた。
小田が指を鳴らすとスクリーンには尚輝と真希と静佳がそれぞれ違う部屋に捕らえられているのが映し出された。

「ミセスかの子。これでお分かりですね。三人とも、ご無事。さあ、我々に協力してくださいますね」

小田はそういうとスクリーンを消し、私に向かって両手を広げて言った。

「前にも申し上げた通り、我々は平和の為に集まった同士。これから全ての人類の平和が始まるのです!これからそのご説明を致しましょう!ミセスかの子!」

私は身体中が緊張で動かない中、夢を見ているような錯覚に襲われた。

「ミセスかの子、手が血で汚れておられる。まずは手を清めては如何ですか?その後からでもご説明は遅くありません」

私はあの切り刻まれた指を思い出した。あの指は三人の指では無かった。しかし、あれだけの指を切り刻むなんて、やはりこの人達は人を殺めている。

私は言われるままに手をきれいにして、尚輝の結婚指輪を指にはめた。
尚輝の結婚指輪が今の私にはお守りなんだ。

手をきれいにして、再び小田の前に行く。
私は小田に言った。

「私がする協力とは何ですか?まさか人を殺めることじゃないでしょうね?」

私の言葉に小田は鼻で笑った。

「我々は人は殺めません。例外を除いて。なんでも例外はありますからね。まあ、それは後から説明するとして、あなたには新興宗教の教祖になっていただきます」

私はその言葉に驚いた。まさか予想していたことと違いすぎることを要求されるとは……。
小田はさらに続けて言う。

「あなたのその力を広めるには宗教が一番だ。巷に溢れているチンケな似非教祖と違い、あなたは本物の力をお持ちだ。そうやって人々を集めて、人類平和の為の良き人材、実際は捨て石ですが、そのような人達を集めていただいく。そして、その後本番です」

やはり愚劣なことを考えている。しかし、その後の本番とはなんだろう?

「その後の本番とはなんですか?」

私は震える声で懸命に言った。

「それは後のお楽しみ。さあ、協力しますね!で、なければ、あなたの大切な三人に悪い事が起こりますよ。どっちになさいます?」

私はここは言うことを聞くしかないと観念した。
その時、何か動く影が見えた。

「ふん、ネズミが入ってますね。どっしょうかな?まずはネズミ退治。それからミセスかの子のお返信を聞きましょうか」

小田はそういうと合図をした。影はなおも動いている。私は言い表せない緊張の中、その光景を見つめていた。
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