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追駆する影
追駆する影
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私は混沌とした気持ちのまま、ボディガードの方々に支えられて部屋に入り、そのまま横になった。
「かの子さん、ゆっくりなさってください」
ボディガードの方の一人がそう言って、そのまま踵を返すと部屋の前に立ち、私の警護に戻った。
私は緊張して眠れなかったが、知らない間に寝てしまっていた……。
気がつくと午後3時を過ぎている。
「すみません。あれから何日経ったんですか?」
私はボディガードの方々に向かって聞いた。
「あれから4日経ちました。今のところ異変はありません」
4日経った!尚輝は?真希は?静佳は?私は居ても立っても居られず、ボディガードの方々に聞いた。
「私の夫や友達は帰ってますか!」
「いえ、まだお戻りではありません。私達の先生と門下生は戻っております」
私はボディガードの方の言葉に気持ちが焦るのを感じた。あれから誰も帰ってない。
久米さんと弟子の方々だけ戻ってきたってどういうこと?
まさか、3人を見殺しにして帰ってきたの?
久米さんはそんな人じゃないわ。3人が見つからなかったのよ。
私は心の中で問答するように何度も何度も同じ言葉を繰り返した。
「すみません。かの子さん、3人は見つからないままです」
そう言いながら久米さんが部屋に入ってきて、頭を下げる。
「いえ、私こそ、久米さんを巻き込んでしまって……」
私はそこまでしか言葉が出てこなかった。
「そう言えば、あなたがたの職場の施設長、佐川さんがあなた宛ての小包が届いていると届けに来られました」
私はまた、嫌な予感がしたけど、職場宛てなら大丈夫かも?と思い、小包を開けた。
開けた瞬間、私の身体から血の気が失せていくのがわかる。悲鳴も出ない。
「こ、こ、これ何?なんなの!?」
私はそのまま額を畳に打ちつけるように前のめりになった。
小包の中身は血まみれの指が何本も入っている!
「かの子さん、どうしました?こ、これは!」
久米さんも血まみれの指をみて驚愕の表情をしている。
小包には、また手紙が入っていた。
[ミセスかの子。もうそろそろ決断して頂かないと我々も困ります。大変困ります。あなたにとっても困ることになると存じますがね。
その指は誰の指でしょうね?大切なご主人の尚輝さんでしょうか?それともご友人の真希さんか静佳さんでしょうか?
どちらにしても我々は良いお返事をお待ちしているんですがね。
我々も気が長いほうじゃない。このままご決断が延びれば誰かが犠牲になりますよ。世界の平和の為なら多少の犠牲は仕方ないですからね。
我々は世界の平和の為の組織ですからね。多少の犠牲は仕方ないですね。うんうん、仕方ない。良いお返事をお聞かせくださるなら、今度は小倉町の古ビルに来て下さい。お待ちしてますよ。ミセスかの子]
手紙にはそう書いてあった。
私は小包の中に手を入れた。尚輝の指なら!
私はそう思い、血まみれの指に手を入れ何かを探した。
私の指に何か当たった。
……指輪だ。これは尚輝の結婚指輪……!
じゃあ、これは尚輝の指なの!?
私は混乱する気持ちにあたるように、さらに指に手を入れて調べる。
「やめるんだ!かの子さん!」
その言葉に私は手を止めた。久米さんが私の手を掴んでいる。
「わ、私……尚輝が死んでるかもしれないんです!お願いです!私をここから出して彼らのところに行かせて下さい!」
久米さんはフーッと息を吐くと私に言った。
「かの子さん、奴らは私達のような修練をつんだ人間でもかなわない奴らです。そんなところにあなたを行かせる訳にはいかない。私が必ず、皆さんを助けます。約束します。かの子さんの気持ちはわかります。だから今は我慢して下さい」
久米さんは本当に決意に満ちた顔で言われた。
「久米さん。お気持ちはうれしいです。でも、彼らは私が行かなければ、もっとたくさんの犠牲者を出すでしょう。私は死んでも構いません。元々、病気でいつまで生きるかわからない身体だったんです。それが奇跡的に治りました。これはきっと、彼らのような人達を許してはならないということだと思うんです」
私がそこまで言うと久米さんは「かの子さん」とだけ言って黙ってしまった。
「私は行きます。これは尚輝の結婚指輪なんです。きっと私を守ってくれると信じてます」
私はそういうと部屋から出た。手には尚輝の結婚指輪を握りしめている。
「私も行きます。あなた一人じゃ危険だ」
久米さんがそう言った。
「いえ、これは私の問題です。ありがとうございます。久米さん本当にありがとうございます」
私はそういうと踵を返して久米さんの家を後にした。私の心に蒼く冷たい炎が燃えているのを感じる。これから何があっても私はもう逃れられない運命に捕らわれていることを感じていた。
「かの子さん、ゆっくりなさってください」
ボディガードの方の一人がそう言って、そのまま踵を返すと部屋の前に立ち、私の警護に戻った。
私は緊張して眠れなかったが、知らない間に寝てしまっていた……。
気がつくと午後3時を過ぎている。
「すみません。あれから何日経ったんですか?」
私はボディガードの方々に向かって聞いた。
「あれから4日経ちました。今のところ異変はありません」
4日経った!尚輝は?真希は?静佳は?私は居ても立っても居られず、ボディガードの方々に聞いた。
「私の夫や友達は帰ってますか!」
「いえ、まだお戻りではありません。私達の先生と門下生は戻っております」
私はボディガードの方の言葉に気持ちが焦るのを感じた。あれから誰も帰ってない。
久米さんと弟子の方々だけ戻ってきたってどういうこと?
まさか、3人を見殺しにして帰ってきたの?
久米さんはそんな人じゃないわ。3人が見つからなかったのよ。
私は心の中で問答するように何度も何度も同じ言葉を繰り返した。
「すみません。かの子さん、3人は見つからないままです」
そう言いながら久米さんが部屋に入ってきて、頭を下げる。
「いえ、私こそ、久米さんを巻き込んでしまって……」
私はそこまでしか言葉が出てこなかった。
「そう言えば、あなたがたの職場の施設長、佐川さんがあなた宛ての小包が届いていると届けに来られました」
私はまた、嫌な予感がしたけど、職場宛てなら大丈夫かも?と思い、小包を開けた。
開けた瞬間、私の身体から血の気が失せていくのがわかる。悲鳴も出ない。
「こ、こ、これ何?なんなの!?」
私はそのまま額を畳に打ちつけるように前のめりになった。
小包の中身は血まみれの指が何本も入っている!
「かの子さん、どうしました?こ、これは!」
久米さんも血まみれの指をみて驚愕の表情をしている。
小包には、また手紙が入っていた。
[ミセスかの子。もうそろそろ決断して頂かないと我々も困ります。大変困ります。あなたにとっても困ることになると存じますがね。
その指は誰の指でしょうね?大切なご主人の尚輝さんでしょうか?それともご友人の真希さんか静佳さんでしょうか?
どちらにしても我々は良いお返事をお待ちしているんですがね。
我々も気が長いほうじゃない。このままご決断が延びれば誰かが犠牲になりますよ。世界の平和の為なら多少の犠牲は仕方ないですからね。
我々は世界の平和の為の組織ですからね。多少の犠牲は仕方ないですね。うんうん、仕方ない。良いお返事をお聞かせくださるなら、今度は小倉町の古ビルに来て下さい。お待ちしてますよ。ミセスかの子]
手紙にはそう書いてあった。
私は小包の中に手を入れた。尚輝の指なら!
私はそう思い、血まみれの指に手を入れ何かを探した。
私の指に何か当たった。
……指輪だ。これは尚輝の結婚指輪……!
じゃあ、これは尚輝の指なの!?
私は混乱する気持ちにあたるように、さらに指に手を入れて調べる。
「やめるんだ!かの子さん!」
その言葉に私は手を止めた。久米さんが私の手を掴んでいる。
「わ、私……尚輝が死んでるかもしれないんです!お願いです!私をここから出して彼らのところに行かせて下さい!」
久米さんはフーッと息を吐くと私に言った。
「かの子さん、奴らは私達のような修練をつんだ人間でもかなわない奴らです。そんなところにあなたを行かせる訳にはいかない。私が必ず、皆さんを助けます。約束します。かの子さんの気持ちはわかります。だから今は我慢して下さい」
久米さんは本当に決意に満ちた顔で言われた。
「久米さん。お気持ちはうれしいです。でも、彼らは私が行かなければ、もっとたくさんの犠牲者を出すでしょう。私は死んでも構いません。元々、病気でいつまで生きるかわからない身体だったんです。それが奇跡的に治りました。これはきっと、彼らのような人達を許してはならないということだと思うんです」
私がそこまで言うと久米さんは「かの子さん」とだけ言って黙ってしまった。
「私は行きます。これは尚輝の結婚指輪なんです。きっと私を守ってくれると信じてます」
私はそういうと部屋から出た。手には尚輝の結婚指輪を握りしめている。
「私も行きます。あなた一人じゃ危険だ」
久米さんがそう言った。
「いえ、これは私の問題です。ありがとうございます。久米さん本当にありがとうございます」
私はそういうと踵を返して久米さんの家を後にした。私の心に蒼く冷たい炎が燃えているのを感じる。これから何があっても私はもう逃れられない運命に捕らわれていることを感じていた。
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