16 / 32
追駆する影
追駆する影
しおりを挟む
私達はボディガードの人達に部屋に連れていかれた。部屋の前にはボディガードの人が立っている。
私は気の抜けた空気の中、無力感に襲われ、周りの空気が薄透明な真っ白になるのを感じていた。
私も尚輝も黙ったままうつむき、何時間経っただろう。久米さんが戻ってきた。
「かの子さん、申し訳ない。連中を追いかけたが、途中見失ってしまって……しかし、かの子さんの友達は必ず救い出します。私の命に変えても」
久米さんは力強くそう言った。
「そう言えば、青木町の古ビルに連中はいたわ。本当のアジトかどうかはわからないけど」
私がそういうと久米さんはお弟子さんのひとりに合図して、私にこう言った。
「かの子さん達はその古ビルで奴らと会ったんですね。まだいる可能性が高い。私は弟子と共に今から古ビルに行きます。かの子さんと尚輝さんはここで待っていて下さい」
久米さんは大勢のお弟子さんを連れて古ビルに向かった。
何人か残ったお弟子さんは私達のボディガードとして私と尚輝と一緒に家に残った。
しばらく沈黙が続く。尚輝が私を見つめて言った。
「かの子、かの子の玉の力はかの子が言う通り、まだ全てわかってない。僕はあの窓から部屋を抜け出して、真希さんと静佳さんを助けに行く。もし、僕が帰らなかったら、玉の力を使って僕や真希さんや静佳さんを助けてくれ」
尚輝の言葉に私は凄まじい恐ろしさを感じた。
いくら玉の力が尋常じゃないとしても、もし、3人に何かあれば……。
「ダメ!今は久米さんに任せましょう。大丈夫よ。きっと」
私は自分を励ますように言った。
「いや、こんなことを言っては失礼だが、あんな屈強な人達でもかなわない。なら僕が行く。僕は一度古ビルで捕まっている。奴らのアジトのことはだいたいわかっている」
「でも、どうやって?方法はあるの?」
私は尚輝に言った。
いくら古ビルで捕まったとしても詳しいことはわからない。このまま尚輝を行かせて危険な目に遭わせる訳にはいかない。
私の手を振り払うと尚輝は小さな窓から部屋を抜け出していく。
私は声に出せなくてどうしていいのかもわからなかった。
尚輝は窓から出た後、顔だけ出して笑顔を私に送った。
私は何もできないまま、尚輝が出ていった部屋でポツンとしている。
それからどれくらい経っただろう。尚輝が出ていった窓から何かが落ちてきた。
よく見ると箱が落ちている。一体どうして?
私はそう思い、箱をあけた。
「きゃー!!!」
私の悲鳴にボディガードの方々が部屋に入ってくる。
「どうしました!?何かありましたか!?」
ボディガードの方々の一人が私にそう尋ねてきた。
「か、か、髪の毛……皮、きっと頭の……皮……」
私がそういうとボディガードの方々は箱の中を調べだした。
なんなの?これは?私は恐怖で体が凍りつき声が出ない。
「確かに人間の皮だ。しかも頭。髪の毛もついている」
ボディガードの方々も驚愕した様子で見つめている。
また手紙のようなものが入っている。
私は恐ろしいけど、読まなきゃ!とおもいきって、手紙を開いた。
[ミセスかの子、今回の贈り物は如何でしょうか?これは人間の頭の皮ですね。エレガントにも髪の毛までつけましたよ。この皮は真希さんのでしょうか?静佳さんのでしょうか?
それとも他の誰かでしょうか?
かわいそうにどちらにしても痛かったでしょうねぇ。さあ、もうそろそろ我々に協力して下さいよ、ミセスかの子。良いお返事をお待ちしてます]
手紙にはそう書いてある。
人間の頭の皮を剥がすなんて普通じゃない……狂ってる!あの人達に真希と静佳が……!?
いや、それだけは無いわ!
私は真希と静佳が無事だと思いたかった。
「ど、どうして、どうしてそこまでするの?
私の力が必要って、人が犠牲になっても大切なことなの?ま、真希……静佳、ごめんね。私がこんな力持ったために……」
私はそのまま、その場に伏して泣いてしまった。もう体中の力も無くなっている。
ボディガードの人達が気遣い、私に声をかける。でも何も聞こえない……。
尚輝!尚輝は無事なの!
私は混沌とした頭の中に翻弄され、ただその場に伏して泣いていた。
私は気の抜けた空気の中、無力感に襲われ、周りの空気が薄透明な真っ白になるのを感じていた。
私も尚輝も黙ったままうつむき、何時間経っただろう。久米さんが戻ってきた。
「かの子さん、申し訳ない。連中を追いかけたが、途中見失ってしまって……しかし、かの子さんの友達は必ず救い出します。私の命に変えても」
久米さんは力強くそう言った。
「そう言えば、青木町の古ビルに連中はいたわ。本当のアジトかどうかはわからないけど」
私がそういうと久米さんはお弟子さんのひとりに合図して、私にこう言った。
「かの子さん達はその古ビルで奴らと会ったんですね。まだいる可能性が高い。私は弟子と共に今から古ビルに行きます。かの子さんと尚輝さんはここで待っていて下さい」
久米さんは大勢のお弟子さんを連れて古ビルに向かった。
何人か残ったお弟子さんは私達のボディガードとして私と尚輝と一緒に家に残った。
しばらく沈黙が続く。尚輝が私を見つめて言った。
「かの子、かの子の玉の力はかの子が言う通り、まだ全てわかってない。僕はあの窓から部屋を抜け出して、真希さんと静佳さんを助けに行く。もし、僕が帰らなかったら、玉の力を使って僕や真希さんや静佳さんを助けてくれ」
尚輝の言葉に私は凄まじい恐ろしさを感じた。
いくら玉の力が尋常じゃないとしても、もし、3人に何かあれば……。
「ダメ!今は久米さんに任せましょう。大丈夫よ。きっと」
私は自分を励ますように言った。
「いや、こんなことを言っては失礼だが、あんな屈強な人達でもかなわない。なら僕が行く。僕は一度古ビルで捕まっている。奴らのアジトのことはだいたいわかっている」
「でも、どうやって?方法はあるの?」
私は尚輝に言った。
いくら古ビルで捕まったとしても詳しいことはわからない。このまま尚輝を行かせて危険な目に遭わせる訳にはいかない。
私の手を振り払うと尚輝は小さな窓から部屋を抜け出していく。
私は声に出せなくてどうしていいのかもわからなかった。
尚輝は窓から出た後、顔だけ出して笑顔を私に送った。
私は何もできないまま、尚輝が出ていった部屋でポツンとしている。
それからどれくらい経っただろう。尚輝が出ていった窓から何かが落ちてきた。
よく見ると箱が落ちている。一体どうして?
私はそう思い、箱をあけた。
「きゃー!!!」
私の悲鳴にボディガードの方々が部屋に入ってくる。
「どうしました!?何かありましたか!?」
ボディガードの方々の一人が私にそう尋ねてきた。
「か、か、髪の毛……皮、きっと頭の……皮……」
私がそういうとボディガードの方々は箱の中を調べだした。
なんなの?これは?私は恐怖で体が凍りつき声が出ない。
「確かに人間の皮だ。しかも頭。髪の毛もついている」
ボディガードの方々も驚愕した様子で見つめている。
また手紙のようなものが入っている。
私は恐ろしいけど、読まなきゃ!とおもいきって、手紙を開いた。
[ミセスかの子、今回の贈り物は如何でしょうか?これは人間の頭の皮ですね。エレガントにも髪の毛までつけましたよ。この皮は真希さんのでしょうか?静佳さんのでしょうか?
それとも他の誰かでしょうか?
かわいそうにどちらにしても痛かったでしょうねぇ。さあ、もうそろそろ我々に協力して下さいよ、ミセスかの子。良いお返事をお待ちしてます]
手紙にはそう書いてある。
人間の頭の皮を剥がすなんて普通じゃない……狂ってる!あの人達に真希と静佳が……!?
いや、それだけは無いわ!
私は真希と静佳が無事だと思いたかった。
「ど、どうして、どうしてそこまでするの?
私の力が必要って、人が犠牲になっても大切なことなの?ま、真希……静佳、ごめんね。私がこんな力持ったために……」
私はそのまま、その場に伏して泣いてしまった。もう体中の力も無くなっている。
ボディガードの人達が気遣い、私に声をかける。でも何も聞こえない……。
尚輝!尚輝は無事なの!
私は混沌とした頭の中に翻弄され、ただその場に伏して泣いていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔の鴉がやってくる。『雨宿りの女』
安田 景壹
キャラ文芸
闇に潜む怪物どもを狩る魔女、七ツ森麻來鴉。
彼女は雨の日に怪異に憑りつかれたという少女、能見晶子の除霊を引き受ける。
だが、彼女の中に潜む怪異は、過去の因縁を経てやってきた恐るべき存在だった――……
カフェぱんどらの逝けない面々
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
キャラ文芸
奄美の霊媒師であるユタの血筋の小春。霊が見え、話も出来たりするのだが、周囲には胡散臭いと思われるのが嫌で言っていない。ごく普通に生きて行きたいし、母と結託して親族には素質がないアピールで一般企業への就職が叶うことになった。
大学の卒業を間近に控え、就職のため田舎から東京に越し、念願の都会での一人暮らしを始めた小春だが、昨今の不況で就職予定の会社があっさり倒産してしまう。大学時代のバイトの貯金で数カ月は食いつなげるものの、早急に別の就職先を探さなければ詰む。だが、不況は根深いのか別の理由なのか、新卒でも簡単には見つからない。
就活中のある日、コーヒーの香りに誘われて入ったカフェ。おっそろしく美形なオネエ言葉を話すオーナーがいる店の隅に、地縛霊がたむろしているのが見えた。目の保養と、疲れた体に美味しいコーヒーが飲めてリラックスさせて貰ったお礼に、ちょっとした親切心で「悪意はないので大丈夫だと思うが、店の中に霊が複数いるので一応除霊してもらった方がいいですよ」と帰り際に告げたら何故か捕獲され、バイトとして働いて欲しいと懇願される。正社員の仕事が決まるまで、と念押しして働くことになるのだが……。
ジバティーと呼んでくれと言う思ったより明るい地縛霊たちと、彼らが度々店に連れ込む他の霊が巻き起こす騒動に、虎雄と小春もいつしか巻き込まれる羽目になる。ほんのりラブコメ、たまにシリアス。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる