夜明けの鏡

しょちぃ

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追駆する影

追駆する影

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私達はボディガードの人達に部屋に連れていかれた。部屋の前にはボディガードの人が立っている。
私は気の抜けた空気の中、無力感に襲われ、周りの空気が薄透明な真っ白になるのを感じていた。

私も尚輝も黙ったままうつむき、何時間経っただろう。久米さんが戻ってきた。

「かの子さん、申し訳ない。連中を追いかけたが、途中見失ってしまって……しかし、かの子さんの友達は必ず救い出します。私の命に変えても」

久米さんは力強くそう言った。

「そう言えば、青木町の古ビルに連中はいたわ。本当のアジトかどうかはわからないけど」

私がそういうと久米さんはお弟子さんのひとりに合図して、私にこう言った。

「かの子さん達はその古ビルで奴らと会ったんですね。まだいる可能性が高い。私は弟子と共に今から古ビルに行きます。かの子さんと尚輝さんはここで待っていて下さい」

久米さんは大勢のお弟子さんを連れて古ビルに向かった。
何人か残ったお弟子さんは私達のボディガードとして私と尚輝と一緒に家に残った。

しばらく沈黙が続く。尚輝が私を見つめて言った。

「かの子、かの子の玉の力はかの子が言う通り、まだ全てわかってない。僕はあの窓から部屋を抜け出して、真希さんと静佳さんを助けに行く。もし、僕が帰らなかったら、玉の力を使って僕や真希さんや静佳さんを助けてくれ」

尚輝の言葉に私は凄まじい恐ろしさを感じた。
いくら玉の力が尋常じゃないとしても、もし、3人に何かあれば……。

「ダメ!今は久米さんに任せましょう。大丈夫よ。きっと」

私は自分を励ますように言った。

「いや、こんなことを言っては失礼だが、あんな屈強な人達でもかなわない。なら僕が行く。僕は一度古ビルで捕まっている。奴らのアジトのことはだいたいわかっている」

「でも、どうやって?方法はあるの?」

私は尚輝に言った。

いくら古ビルで捕まったとしても詳しいことはわからない。このまま尚輝を行かせて危険な目に遭わせる訳にはいかない。

私の手を振り払うと尚輝は小さな窓から部屋を抜け出していく。
私は声に出せなくてどうしていいのかもわからなかった。

尚輝は窓から出た後、顔だけ出して笑顔を私に送った。
私は何もできないまま、尚輝が出ていった部屋でポツンとしている。

それからどれくらい経っただろう。尚輝が出ていった窓から何かが落ちてきた。
よく見ると箱が落ちている。一体どうして?

私はそう思い、箱をあけた。

「きゃー!!!」

私の悲鳴にボディガードの方々が部屋に入ってくる。

「どうしました!?何かありましたか!?」

ボディガードの方々の一人が私にそう尋ねてきた。

「か、か、髪の毛……皮、きっと頭の……皮……」

私がそういうとボディガードの方々は箱の中を調べだした。
なんなの?これは?私は恐怖で体が凍りつき声が出ない。

「確かに人間の皮だ。しかも頭。髪の毛もついている」

ボディガードの方々も驚愕した様子で見つめている。
また手紙のようなものが入っている。
私は恐ろしいけど、読まなきゃ!とおもいきって、手紙を開いた。

[ミセスかの子、今回の贈り物は如何でしょうか?これは人間の頭の皮ですね。エレガントにも髪の毛までつけましたよ。この皮は真希さんのでしょうか?静佳さんのでしょうか?
それとも他の誰かでしょうか?
かわいそうにどちらにしても痛かったでしょうねぇ。さあ、もうそろそろ我々に協力して下さいよ、ミセスかの子。良いお返事をお待ちしてます]

手紙にはそう書いてある。

人間の頭の皮を剥がすなんて普通じゃない……狂ってる!あの人達に真希と静佳が……!?
いや、それだけは無いわ!
私は真希と静佳が無事だと思いたかった。

「ど、どうして、どうしてそこまでするの?
私の力が必要って、人が犠牲になっても大切なことなの?ま、真希……静佳、ごめんね。私がこんな力持ったために……」

私はそのまま、その場に伏して泣いてしまった。もう体中の力も無くなっている。
ボディガードの人達が気遣い、私に声をかける。でも何も聞こえない……。

尚輝!尚輝は無事なの!

私は混沌とした頭の中に翻弄され、ただその場に伏して泣いていた。

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