夜明けの鏡

しょちぃ

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追駆する影

追駆する影

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私はあのズタズタにされたネコのお墓をつくりたいと久米さんに頼んだ。
久米さんは快く、ご自分の庭の隅をネコのお墓にと言って下さった。

「かの子さん、あなたはやさしい人ですね」

久米さんがやさしく微笑みそう言った。

「いえ、私はやさしくは無いです。私内気で、友達もできなくて……それにネコちゃんが私達の身代わりに殺されたと思うと……。ただそれだけなんです」

私はそういうと涙がこぼれてきた。今の思いはなんて言ったらいいかわからない。

「私達は友達じゃないの。かの子」

「私は親友と思ってたんだけどなあ」

私の言葉に真希と静佳がそう言って、少しふくれた顔をしている。

「ごめんね。二人は大切な友達だよ……ホントにごめんね」

私は親友まで巻き込んでしまったことがとても申し訳なかった。
人々の幸せや平和を謳いながら平気で残酷なことをする人達がこの世にいるなんて……。
私は吐き気にも似た嫌悪感にさいなまれていた。

「小田だっけ。あんな奴、私がやっつけてやるよ。かの子、安心しな」

静佳が私にまぶしい笑顔でそう言った。
みんな、私の為に必死なんだ。なんとかしないと。

「かの子、深刻な顔しないで。かの子には、あの不思議な力があるじゃない」

真希がそう言って私の肩に手を置いた。真希の手からとてもあたたかいものを感じる。 

そうだ、私には不思議な玉の力がある。それを狙って奴らは私に協力を強要してくるんだ。
私はある程度は玉の力は把握していた。しかし、玉の力全てを知っているわけでは無い。もし恐ろしい力を秘めていたとしたら……。

「さあ、もう戻ろう」

静佳がそういうとみんな部屋に戻っていく。
尚輝が一緒に行こうと手をつないだけど、私は「もう少し、ここにいる」と尚輝に伝えた。
尚輝は黙って、うなずき部屋に戻った。

私はネコのお墓をみつめ、ネコに何度も謝っていた。そして同時にあの残酷な組織にどう対したらいいのか考えていた。
こんな酷いことをネコにするなんて……!
きっと今にあらゆる人達にも……!

「かの子!かの子!大変だ!」

尚輝が慌てて、駆け寄ってくる。私はまた何か不吉なことが起こったと感じた。

「真希さんと静佳さんがいない!誰かに連れ去られたみたいだ!」

尚輝の言葉に私は吐き気に似た怒りを感じた。
また、小田だ。善人ぶり教説を説くが冷酷なエゴイスト!

「久米さんはどうしたの?お弟子さん達は?」

「それが、ボディガードのお弟子さん達はみんなやられて。久米さんと残りのお弟子さん達は行方を探している」

私の言葉に尚輝はそうこたえた。あの屈強な人達が一瞬のうちにやられてしまうなんて……。
私の玉の力で対抗できるんだろうか?
いや、そんなことを考えている暇はない。
私も二人を探さないと。

「かの子!どうした?ぼんやりして。二人を探さないと」

尚輝の言葉に私はハッとした。

「うん、部屋に何か手がかりになるものはないかしら。私見てみる」

私はそういうと真希と静佳の部屋に向かった。尚輝もついてくる。

部屋に行くと、あまり荒らされた様子は無い。やはり、あの連中はただ者じゃない。
しばらく、部屋を調べていたら、何か紙が二人のカバンの間に置いてある。
私はそれを手にした。また手紙だ。

[ミセスかの子、なぜ私達と共に平和の為に協力しないのですか?人々が幸せになる!これ以上のことはないではありませんか!
また我々の誘いを拒むとおっしゃるのなら、あなたの大切なお友達がどうなるでしょうね?
あのネコをみればお察しになられるでしょう}

手紙にはそう書いてある。

このままでは真希と静佳の命が危ない!

「尚輝!真希と静佳が危ないわ!早く二人を探しましょう!」

尚輝は私から手紙を受け取り読むと黙ってうなずいた。
私達はボディガードの人達にこのことを伝えると外に出ようとした。

でも、ボディガードの人達が私達を外に出さない!

「何故邪魔するんですか?私の友達の命が危ないんです!」

「わかっております。しかし、私達はかの子さんとみなさんの命を守るように命じられております。ここは我慢して下さい。私達にまかせて下さい」

そういうとボディガードの何人かの人達は外に急ぎ出た。私達は屈強なボディガードの人達に羽交い締めにされて身動きができない。

私の心も羽交い締め……奴らに翻弄され、友達も助けられないなんて……。
私は自分自身が訳のわからないものに縛られ力が奪われていくように感じた。
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