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玉の力
玉の力
しおりを挟む「かの子、びっくりしたよ!いつからあんな凄い事できるようになったの!?」
「ホント、ホント!かの子凄いよ!ねぇ、教えて!?」
職場の帰り道、真希と静佳が私にからみつくように話してくる。
私は玉のことや、あの不思議な緑色の人のことは言えないから、なんて言っていいのか困った。
二人が興奮して前も見ずに私に話してくる気持ちはわかる。誰だってあんなこと見てしまったら普通の気持ちでいられるはずはないから。
「…あのね、なんか、わからないけど、気がついたらできてたの」
私は言葉に困ってやっとのことで二人にそう言った。
「えー!じゃあ、かの子元々凄い力持ってたってこと!?超能力だよ!」
「違う違う!!あれは超能力を超えてたよ!超超能力だよ!」
真希の言葉をさえぎるように静佳がそう言った。確かに超能力なんてもんじゃない。
あの玉の力には、まだ凄い力があるような気がする。
「あっ!危ない!」
私はその言葉のほうに振り向いた!
小さな男の子がトラックに轢かれそうになっている!私はとっさに男の子の体が浮くように念じた!高く!なるだけ高く!
「えっ!?えええっ!?」
道行く人達がみんな男の子が空高く浮いていることに驚いている。トラックは大きなブレーキ音を残し止まった。
トラックの運転手の方はしばらくボーっとして、ハッと我に返ると運転席から道路を確認し、その後運転席から降りると、しばらく道路を見回していた。
「男の子は大丈夫です」
私はそう運転手の方に言うと、男の子を静かに地上に下ろした。
「あ、あんた何したの?男の子は無事!よかった!!」
運転手の方はそういうと胸に手を当てすごく安堵の表情でいた。
周りは凄い人集りになっていた。
男の子はすごく泣いていて話もできない。
真希と静佳があやしても泣きやまない。
「大丈夫大丈夫。このお姉さんが助けてくれたから。もう心配ないよ」
真希がそう言っても泣きやまない。周りは人集りがますます増えてゆき、このままでは他の車の通行に差しつかえる。
私は男の子が、車に轢かれそうな記憶だけ消えるように念じた。
男の子はキョトンとして泣きやみ、私達を見つめている。
「さあ、お母さんが待ってるよ。おうちにかえろうか」
私がそういうと男の子は大きな声で『うん!』と言って走って、うちに帰っていった。
「かの子、何かしたの?」
静佳が私に聞いてきた。
「うん、あんな事故、怖いだろうから事故の記憶だけ消したの。それがいいことかどうかはわからないけどね……」
真希も静佳も、口をあけたまま黙っている。
運転手の方は私の前にヨロヨロとしながらきて言った。
「あんた、あの子を助けたの?あんただろ?凄い、なんて言ったらいいかわかんないが、あんた凄いよ!本当にありがとう!」
運転手の方はそういうと私に何度も何度もお礼を言って、またトラックに乗って立ち去った。
周りの人達は私のことを噂している。
「さあ、今日は久しぶりに3人で夕ご飯だよ。二人ともそんな顔してないでお店に行きましょう」
私がそういうと真希と静佳は黙って、うなずきついてきた。
私達の周りをたくさんの人が取り囲んでくる。
「あの~。あの力なんですか?」
「凄いですね!なんか修行したんですか?」
「あなたは、あの男の子の命の恩人よ!なんて素晴らしい人なの!」
私に周りにいた多くの人達がいろいろとキリがない程尋ねてくる。
中には真希や静佳に『あなた方はお友達ですか?』と聞いてくる人達もいる。
私はちょっとうんざりして、真希と静佳に合図すると私達3人だけお店の前に一瞬で行けるように念じた。
すぐにお店の前についた。
「何?何?何?」
静佳がびっくりしてそう言った。
「かの子、大丈夫?あんなに野次馬がいたんじゃたまらないよ。これからも大丈夫?」
真希がそう言った。
「大丈夫。心配しないで。それより、今日は楽しみましょう」
私はそういうとお店の中に入った。真希と静佳もついてくる。
私達は久しぶりに美味しい料理を食べながら楽しい時を過ごした。
その時、不思議と気になる視線を感じたけど、真希と静佳との時を大切にしたいから、私は無視した。
私は楽しく料理に舌鼓をうちながら楽しんだ。
真希も静佳も楽しそうだった。
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