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幸せな夢の終わり 第四十九話
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「父上!!どういう事ですか!僕は殴られた…被害者ですよ!」
リリーとギルバートの前にクレイが跪く形で騎士に押さえつけられている。
縋るような顔で自身の父親である国王に必死に弁解を述べる。
「黙れ!!お前の愚行、全部見せてもらった。」
そう言ってギルバートの方に向けて頷く。水晶のような小さな透明な玉を手のひらに乗せたギルバートが前に出る。
「こちらを見ても、自分が被害者と言えるか?」
怒気を孕んだ声色で水晶玉に少しの魔力を流すと、白い壁に先ほどのリリーを脅す場面が映し出される。
免罪を認め、謝る姿もバッチリ撮れていた。
「ヴォルフに教えられ、ワシも廊下で聞いておった。情けない。本当に情けない。」
「ヴォルフ?帰ったのか?」
クレイが顔を上げあたりをみまわし、懐かしい名前の騎士を探す。すると、王座の間の重厚な扉が開かれ、衣服が淫れたあられもない姿で暴れるアクアを引きずりながらヴォルフとシルビアが入室してくる。
「離しなさいよ!!なんなのよ!」
怒り狂ったアクアはヴォルフの腹や足を適当に殴るが少しも効いていないようで、平然とクレイの隣にアクアを跪かせる。
「お人形相手に色仕掛けしてましたよ。あなたの婚約者は」
「騙したわね!!許さないから!!」
そう。東屋にいたシルビアはヴォルフの魔力を使った操り人形であった。途中で気がついたアクアは怒り狂いあたりのものを壊して回ったが、護衛騎士に紛れ込んでいた本物のシルビアに捕えられた。
「許さないとどうなるのかな?」
ギルバートが一歩前に出てアクアに話しかける。
ハッとしたように動きを止めたアクアは、勝利を確信したかのような顔で国王に助けを求める。
「陛下!!ほら!やはりわたくしを貶めようとしてきたではありませんか!今回も自分の手のものを使って誘惑し、無理やり体を暴こうとしてきたのです…」
嬉々として自分が被害者であると国王に伝えるアクアの視線の先に、赤色がかった金髪が揺れる。
「覚えていますか?」
怒りを露わにしたリリーの一言には呪いの力がのってしまったのか、アクアはピクリとも動かなくなってしまった。
「冤罪をかけられたものは他にもいます。陛下、どうか、ご自身で調べていただきたい。王太子はもう、この魔女に取り込まれてしまっている。」
ヴォルフが片膝をつき、国王に進言する。はぁ、とため息をついた王はアクアに向かって侮蔑の視線を送る。
「よくもまぁ、好きにやってくれたな。この愚か者共。クレイ、お前は廃嫡だ。その女共々北の塔に幽閉させてもらう。」
「いやだ…いやです!リリーと一緒にいたい!!こんな女!嫌だ!」
クレイに指さされアクアが激高する。
「なんですって!!みんな、なぜわたくしを責めるの?!わたくしはこの世界の中心でしょう!!酷い目に合わせるわよ!」
再び暴れ、拘束を解こうとするアクアからジリジリと黒いモヤが出始める。
押さえ込んでいたヴォルフはさらに力を込め床に押し付けようとするが、モヤが邪魔をしてうまく動きを制御できない。
「何を勘違いしてるのかわからないけど、君は世界の中心なんかじゃないよ」
モヤを手で払いながら、シルビアが冷たく言い放つ。
「うそよ!わたくしは未来をみたのよ!そして、全て思うままに人生を変えてきた。幸せになれるように!わたくしは特別な人間なのよ!」
「それは呪いが見せていた幸せな夢だよ。」
シルビアに掴み掛かろうと体制を起こしながら叫ぶアクアにシルビアが手をかざすと黒い塊が一気に体から飛び出す。なぜか、クレイからも引き摺り出されるモヤの量はとてつもない量だった。
「夢じゃない…!!夢なんかじゃ!!!」
アクアが叫んだ瞬間、吸い込みきれていなかった黒いモヤが一気にアクアの体を取り込み魔物に変化していく。
髪の毛が異常に伸び、触手のように自由に動き回り、周りの壁や窓を一気に叩き破壊する。
「アクア!!やめろ!!」
触手は縦横無尽に暴れ回り、柱や仕切りを薙ぎ倒す勢いでぶつかっていく。クレイのそばにもその打撃は届き、凄まじい土埃に包まれる。国王を守るためにモアラートの騎士たちは国王の周りに集まる。
ジェントクランにはシルビアの作る氷の壁が盾となり触手が届く事はない。
「わたくしが一番幸せなのよ!!」
なおも自身の願望を叫びながらめちゃくちゃに攻撃を続ける魔物と化したアクアはついにクレイを捕まえて持ち上げる。
悲鳴を上げながら天井近くまで持ち上げられたクレイを思い切り地面に叩きつける…
すんでのところでヴォルフが触手を断ち切り、ギルバートがキャッチする。
「大義名分を持って、殴らせていただきます。」
ガチン!と拳同士を打ち鳴らしリリーが不敵に微笑む。
リリーとギルバートの前にクレイが跪く形で騎士に押さえつけられている。
縋るような顔で自身の父親である国王に必死に弁解を述べる。
「黙れ!!お前の愚行、全部見せてもらった。」
そう言ってギルバートの方に向けて頷く。水晶のような小さな透明な玉を手のひらに乗せたギルバートが前に出る。
「こちらを見ても、自分が被害者と言えるか?」
怒気を孕んだ声色で水晶玉に少しの魔力を流すと、白い壁に先ほどのリリーを脅す場面が映し出される。
免罪を認め、謝る姿もバッチリ撮れていた。
「ヴォルフに教えられ、ワシも廊下で聞いておった。情けない。本当に情けない。」
「ヴォルフ?帰ったのか?」
クレイが顔を上げあたりをみまわし、懐かしい名前の騎士を探す。すると、王座の間の重厚な扉が開かれ、衣服が淫れたあられもない姿で暴れるアクアを引きずりながらヴォルフとシルビアが入室してくる。
「離しなさいよ!!なんなのよ!」
怒り狂ったアクアはヴォルフの腹や足を適当に殴るが少しも効いていないようで、平然とクレイの隣にアクアを跪かせる。
「お人形相手に色仕掛けしてましたよ。あなたの婚約者は」
「騙したわね!!許さないから!!」
そう。東屋にいたシルビアはヴォルフの魔力を使った操り人形であった。途中で気がついたアクアは怒り狂いあたりのものを壊して回ったが、護衛騎士に紛れ込んでいた本物のシルビアに捕えられた。
「許さないとどうなるのかな?」
ギルバートが一歩前に出てアクアに話しかける。
ハッとしたように動きを止めたアクアは、勝利を確信したかのような顔で国王に助けを求める。
「陛下!!ほら!やはりわたくしを貶めようとしてきたではありませんか!今回も自分の手のものを使って誘惑し、無理やり体を暴こうとしてきたのです…」
嬉々として自分が被害者であると国王に伝えるアクアの視線の先に、赤色がかった金髪が揺れる。
「覚えていますか?」
怒りを露わにしたリリーの一言には呪いの力がのってしまったのか、アクアはピクリとも動かなくなってしまった。
「冤罪をかけられたものは他にもいます。陛下、どうか、ご自身で調べていただきたい。王太子はもう、この魔女に取り込まれてしまっている。」
ヴォルフが片膝をつき、国王に進言する。はぁ、とため息をついた王はアクアに向かって侮蔑の視線を送る。
「よくもまぁ、好きにやってくれたな。この愚か者共。クレイ、お前は廃嫡だ。その女共々北の塔に幽閉させてもらう。」
「いやだ…いやです!リリーと一緒にいたい!!こんな女!嫌だ!」
クレイに指さされアクアが激高する。
「なんですって!!みんな、なぜわたくしを責めるの?!わたくしはこの世界の中心でしょう!!酷い目に合わせるわよ!」
再び暴れ、拘束を解こうとするアクアからジリジリと黒いモヤが出始める。
押さえ込んでいたヴォルフはさらに力を込め床に押し付けようとするが、モヤが邪魔をしてうまく動きを制御できない。
「何を勘違いしてるのかわからないけど、君は世界の中心なんかじゃないよ」
モヤを手で払いながら、シルビアが冷たく言い放つ。
「うそよ!わたくしは未来をみたのよ!そして、全て思うままに人生を変えてきた。幸せになれるように!わたくしは特別な人間なのよ!」
「それは呪いが見せていた幸せな夢だよ。」
シルビアに掴み掛かろうと体制を起こしながら叫ぶアクアにシルビアが手をかざすと黒い塊が一気に体から飛び出す。なぜか、クレイからも引き摺り出されるモヤの量はとてつもない量だった。
「夢じゃない…!!夢なんかじゃ!!!」
アクアが叫んだ瞬間、吸い込みきれていなかった黒いモヤが一気にアクアの体を取り込み魔物に変化していく。
髪の毛が異常に伸び、触手のように自由に動き回り、周りの壁や窓を一気に叩き破壊する。
「アクア!!やめろ!!」
触手は縦横無尽に暴れ回り、柱や仕切りを薙ぎ倒す勢いでぶつかっていく。クレイのそばにもその打撃は届き、凄まじい土埃に包まれる。国王を守るためにモアラートの騎士たちは国王の周りに集まる。
ジェントクランにはシルビアの作る氷の壁が盾となり触手が届く事はない。
「わたくしが一番幸せなのよ!!」
なおも自身の願望を叫びながらめちゃくちゃに攻撃を続ける魔物と化したアクアはついにクレイを捕まえて持ち上げる。
悲鳴を上げながら天井近くまで持ち上げられたクレイを思い切り地面に叩きつける…
すんでのところでヴォルフが触手を断ち切り、ギルバートがキャッチする。
「大義名分を持って、殴らせていただきます。」
ガチン!と拳同士を打ち鳴らしリリーが不敵に微笑む。
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